ウィズコロナの新仕事術(後編)

NHK
2022年1月12日 午後6:18 公開

(前編はこちら)

(2022年1月3日の放送内容を基にしています)

<「変化についていけない」 苦境の声にどう応える?>

時代が大きく動く中、変化を前向きに受け止められる人ばかりではありません。新型コロナの影響で12万人を超える人が仕事を失い、住宅ローンを払えなくなる人が急増。政府の支援が十分行き届いていないという指摘もあります。

変化についていけないという苦境の声にどう応えるか。行政と民間それぞれがいま何をすべきか、議論になりました。

武田アナ「コロナ禍で生活が困窮している人の相談件数。コロナ禍前と比べてですね、およそ3.2倍。目の前の暮らしに苦しんでる人々が、こんなにいらっしゃるということなんですね。端羽さん、働き方を変える以前にですね、まず、今手当をしなくてはいけないことがあると思うんですけれども、これはどんなことが必要でしょうか」

端羽英子さん「間違いなく目の前で困窮されてる方に対する、セーフティーネットっていうのは絶対に必要で、コロナっていう突発事態が起きたときに、誰もがそれに備えてられたわけがないので、そういったセーフティーネットっていうのは絶対に必要ですよと。それと、この働き方の強みを作っていく話を一緒にしないということが、結構大事だと思っています。緊急で大変な方っていうのは絶対に社会は救うべきだと。やっぱりコロナで大変になった方々も、コロナが終わったあと、そこからの先の生活のほうが長いわけなので、じゃあどうやったら、その方々がまた稼げる方になっていけるかどうかっていう。そこをどういうふうに設計するかっていうのは、これも絶対にやらなきゃいけないことだと思いますね」

武田アナ「新浪さんは政府の経済財政諮問会議のメンバーでもいらっしゃるわけですけれども、このコロナ禍で変化についていけない、前に進めないという方に、どういう手当が今必要でしょうか」

新浪剛史さん「今、ほんとに考えていかなきゃいけないのは共助だと思うんです。NPO。これは社会ベンチャーでもあると思うし、地域、地域の状況に応じて対応できる、そういう方々が今たくさん若い方々で増えてきてるっていうのは、すごくいいことだと思うんです。寄付税制を考えるとか、また、ふるさと納税なんかもですね、確かにいろんな商品をもらうのもいいんですが、『こういうNPO頑張ってるから』とか、例えば子ども食堂みたいなところに『みんなで出しましょう』とかですね、こういう社会を作っていくことだと。民であるNPOと、われわれや企業、個人が一緒になってやってこうじゃないか、こういうモメントを作っていくことではないか。私はこのコロナ禍を経て、私たちがそういう学びがあったんじゃないかなと思うんです」

これまで通りの仕事を続けている人の中にも、「変化についていけない」という声があります。コロナをきっかけに多くの会社では業務の見直しを進めていますが、それに不安を感じている人も少なくありません。

武田アナ「コロナ禍で生じた変化を今後も続けたいか聞いた調査です。不要な業務の見直しについて、61%が『希望する』と答えた一方で、39%が『希望しない』という結果になりました」

端羽英子さん「不要な業務の見直しはしないほうがいいっておっしゃった方は、たぶん、『自分が不要な業務に実は携わってるんだ』っていう自己認識がある方か、もしくは、不要な業務を見直しすることに、ものすごく忙しい目にあわされている方かの、どちらかなんだと思うんですよね。『大変すぎるから、もうやらなくていいんじゃないか』っていうのか。で、もし、ご自身が『不要な業務を実はやってるんだろうな』『この業務がなくなってしまったら、自分の仕事がなくなってしまうんじゃないかな』というふうに思ってらっしゃる方がこの割合いるとしたら、やっぱり、それは何らか変わっていかなきゃいけないことだと思っていて、まずやっぱり、人は自分の業務のことが不要じゃないって思いたいはずなので」

武田アナ「そうですよね」

端羽英子さん「そうすると、この不要な業務がなくなった代わりに、あなたの時間はこういうことに使えるよっていう、不要な業務を見直されたあとにも、あなたはこういうところで求められているよっていうストーリーをどのくらいお見せできるかで、もう少し割合が変わってくるんじゃないのかなっていうふうに思いました」

山井梨沙さん「必要ない仕事。改善したいかしたくないかっていう、それもなんか表れてると思うんですけど、やっぱり、誰のための仕事なのかっていうのを、前提としてしっかり持っておかないと、それは仕事ではなくて、作業になってしまうと思っていて。ひとつの歯車の1個っていうよりかは、経営者としては、常にわれわれの存在意義、企業価値、ビジョンというのを掲げ続けて、それを社員に伝え続けることで、最終的には自分たちの仕事が、誰の幸せにつながっているのか、どういった社会的な意義があるのかっていうことは、意識しながら働いてもらえるような環境作りはしてます」

<変化の時代 どうチャレンジすればいい?>

「働く人」も「会社」もそれぞれが変化を迫られているウィズコロナ時代。どうチャレンジをしていけばよいのか、ここからは、出演者の新たな取り組みとともに考えます。

池野さんはいま、ふるさと浜松から日本を変えようとチャレンジをはじめています。

「日本は現在高齢化率ダントツ世界トップです。その高齢化社会に対する解決するアイデアを出せば、それが将来日本だけでなくて、世界の高齢化社会に貢献できるようになるかもしれません」(TED×Hamamatsuより)

進めているのは、自治体と企業が連携し、デジタル技術を駆使して、高齢者が病気になるのを未然に防ごうというプロジェクト。地元の自動車メーカーや保険会社などが参加し、世界に先駆けた新たなサービスを生み出そうとしています。

自動車メーカー「本年度より日常の運転行動と、認知機能の相関関係の検証を始めております」

池野文昭さん「最終的には浜松市民が、みなさん幸せになるというところをゴール設定として、その経験を日本、場合によっては世界に展開していただきたい」

端羽さんは、日本人の働き方をさらに変える挑戦を始めています。2021年11月に訪れたのは、買収したばかりのアメリカの企業です。この会社は端羽さんと同じような人材のマッチングサービスを、世界各国で展開してきました。買収によって、日本人の登録者が、スキルやノウハウを海外の企業にも提供できるようになりました。

買収した企業のケビン・コールマンさん「人々はオンラインで知識を交換しあえる時代です。こうしたやり方が今後ますます重要になっていきます。2022年も私たちの成長は続いていくでしょう」

武田アナ「池野さんはいかがですか。まさにこの今、直面している社会課題の中に、私たちの新しい仕事っていうものを見つけるヒントがある」

池野文昭さん「例えばですけども、日本は今世界ダントツの高齢化率、約29%と言われています。これはどんどん、また増えていって、労働人口が減っていくということが、予想できると思うんですけども。日本の問題だけではなくてですね、日本から遅れて、やはり欧米、またアジアの国々が、同様な高齢化社会に突き進んでいくんですね。で、東京と比べてやはり地方は、平均値29%よりもさらに高齢化率が高い。つまり、もう課題がすでに顕在化しているところですね。それに対して、まさに、いろんなテクノロジー、そして企業の参入も含めて行政とコラボレーションして、その課題を解決していくのは、まさに地方じゃないかと」

池野文昭さん「やはり課題、“Necessity is the mother of invention.”ってよく言いますよね。“必要性っていうのは発明の母”であると。要するに必要、困っていることを、いかに見つけて、つまりニーズを見つけて、それに対してアイデアを出して、前に進めていくっていうことが、いちばんの最初の原点だと思います。その意味では、地方は課題は山積みであると。逆にそれがチャンスに変えるひとつの機会なのかなと思っております」

端羽英子さん「実は私も起業したのが33歳か34歳か、そのくらいだったんですけど、そのとき思って、今でもすごく座右の銘のように思ってるんですけど、『ゼロよりプラス』と思ってるんですね。変化しなかったらゼロだと。変化して失敗しても何か学べてるから、100点にならないかもしれなくて、10点で終わるかもしれないけど、変化しなかったらゼロのままだから、何でもゼロよりプラスぐらい、ちょっと期待値低めにしてったらいいんじゃないかなと思ってまして。そうしていくうちに、10点になった自分がもう1回チャレンジしたら0点よりも賢くなってるから、何かチャレンジできるかもしれない。変化に前のめって、ゼロよりプラス、100点じゃなくてもいいって思っていくのが、大事なんじゃないかなと思ってますね」

武田アナ「山井さんはいかがですか、若い世代の経営者として」

山井梨沙さん「何か新しいことが生まれるきっかけっていうのは、『当たり前のことに対して、当たり前と思わない違和感』だったりとか、『何か、こういうところをもっとよくしていきたい』っていう疑問とかから生まれてくると思うんです。世の中、多様性とは言ってますけれども、今の社会構造だったり、物事の価値観とか、どんどん平均化されてしまっているような感覚はすごくあって。ちょっと常識に飼いならされているんじゃないかとか。やっぱり時代がこれだけのスピード感で変化して中でいくと、リアルの、予定調和ではない、何が起こるかわからない状況で事業が展開されていったほうが、未来にとっては、すごく利益があることなんじゃないのかなって、お話をお伺いして感じました」

新しいチャレンジを行うために、会社もそのあり方が問われています。

新浪さんの会社では、リモートワークを進めてきた結果、新しい発想が生まれにくくなっているという課題が見えてきています。

「ウェブコミュニケーションの良さも当然ありますが、やはり限界がある。われわれの強みであり、イノベーションの源泉である、リアルコミュニケーションを中心とした働き方をしっかり実現していきたい」

去年導入された自動販売機。2人で社員証をかざすと飲み物は無料です。何気ない会話からアイデアが生まれることを期待しています。

感染対策を徹底した上で、「飲み会」も。

「飲み会がなくなって、平和だと思っていた時期を通り越して、業務じゃないコミュニケーションって大事だなって、一回離れて戻ってきたという気持ち」

新浪剛史さん「コミュニケーションが非常に絶えてしまったと。なんて言うか、腹割って話そうぜっていうのが非常にできなくなってしまった。ここでもう一度本音で語り合える場を作っていこう、っていうことで始めたんですね。決してテレワークを否定してるわけではないんです。しかし、テレワークを真面目にやってきただけに、『今度はもっとコミュニケーション深くやろうじゃないか』っていう、そういったほうへ振れてるんですね、そっちへ。わざと振れてるんです。そうすると、何か新しいアイデアも出るし、『実はそうだったの?』っていうのもある。ウィズコロナになって初めて、『実はしゃべったほうがいいんだ』と。『あいついいやつだね』、『あの方、実は、うるさいけども実はいい人なんだね』って、この発見が信頼につながると」

武田アナ「山井さん、うなずいていらっしゃいましたけれども」

山井梨沙さん「はい。そうですね。やっぱり信頼関係っていうのは、何をする上でもいちばん大事ですよね。デジタル化だったり、リモートワークだったり、リアルな世界から離れているからこそ、いま一度、信頼関係を強くするための、デジタルの裏側にあるリアルっていうところも強化していくことが、もしかしたら大事なんじゃないのかなと、今お話をお伺いしてて思いました」

<わたしたちはどんな「豊かさ」を目指すべき?>

ウィズコロナ時代の働くヒントを探ってきたリーダーたち。最後は、価値観が大きく変わっていく中で、どんな豊かさを目指すべきか、聞きました。

武田アナ「キーワードを挙げるとするとどうなりますでしょうか。池野さんはいかがですか」

池野文昭さん「そうですね、キーワードを挙げると、『健幸(けんこう)』。『健康』とは漢字が違います。『健幸』の『けん』は健康の『健』で、ウエルネスです。で、『こう』は幸福の『幸』で、ハピネスですよね。これがすごく僕は重要だと思っています。もちろん、いろんなことをやりたいんだけど、体の具合が悪いっていうのは、なかなか思い切ってできないので、やはりヘルシー、ウエルネスという健康は重要です。それは体の健康でもあり、心の健康でもあり、そして社会とのつながりという意味での健康。この3つがすごく重要です。それがある程度できていて、かつ同時並行で、やはり“やりがい”ですよね。自分でやりたいこと、そういうものを見つけていく態度、こういうものがすごく重要だと思います。で、『俺の人生はやっぱりよかったな』と言えるのが、本当の豊かさだと思うので。だから、自分が幸せであるということを、やっぱ追求してくっていうのは、僕は重要なのかなって思います」

武田アナ「新浪さん、いかがですか」

新浪剛史さん「やっぱり今のやり方は、デジタルだとかいろんなものを使って、便利な社会にはなるんだけど、だからこそ人間、いわゆるヒューマニティーっていう、それがみんなで助け合う、支え合うっていう社会、そういう社会をもう一度作っていくことじゃないかなって。私は日本という国は、もともとそれがすごく強い国であったんだと思うんです。しかし、バブルがはじけて以降、自分1人1人が、または家族が、生きるのが精いっぱいなぐらい大変な時代だったわけですね。人のことは、もう面倒見られないっていう、そういう社会になってきてしまったんではないかな。だから、デジタルだとか、すごくテクノロジーが進めば進むほど、『共感』、そして『共助』、こういったものがある社会にいることが、豊かなんじゃないかなって私は思うんです」

武田アナ「端羽さんはいかがですか」

端羽英子さん「キーワードを挙げるとすると、豊かさとは選択肢の多さだと思っていて。やっぱりそれぞれ今、豊かさの基準が人それぞれ違うはずだと。いろんな豊かさがあっていいと思っていて、自分が信じる豊かさをちゃんと選べるような選択肢があること。それに向かって頑張れること。これが豊かな社会だと思いますし、自分は選択肢を広げる仕事をしたいと思いますし、人と比べて自分は足りないかもしれないってずっと焦り続ける、それよりは『自分はこれを選んだんだ』、『選びたいものが選べたんだ』って思えるような選択肢の多さっていうのが、豊かさなのかなと思ってます」

武田アナ「山井さん」

山井梨沙さん「利己的ではなくて利他的に行動できること自体が、豊かなんじゃないかと思います。それこそ自分自身が幸せっていうのは、人が幸せになったときとか、自分は今経営者の仕事をしていて、自分自身のために何かを得て幸せってことって、あまりないなと思っていて(笑)。やっぱり、自分と関わる対個人の幸せだったり、対企業の幸せだったり、対地球だったりとか、何かこうよくしていきたいとか、幸せにしたい、より課題を見つけて解決していきたいっていう対象が、個人単位から、社会だったり地球規模にどんどん、自分の中ではすごく妄想が広がっていって。自分がよくできる対象って地球規模なんじゃないかみたいな。それをひとつずつ解決できて、やっぱりよりよくできたりとか。そういったことが豊かなんじゃないのかなって思います」

武田アナ「今回はほんとに皆さんのお話を伺って、私自身もいろいろ考えるところがありました。ウィズコロナ時代。4人のリーダーのお話を伺って、私たち自身にもまだまだ成長できる可能性が埋もれているかもしれない。自分なりの幸せを感じられる、新しい働き方や生き方を見つけていけるかもしれないと、希望を感じました。同時に、社会としてこの変化に取り残されている人への手の差しのべ方も、変えていかなければならないと思います。かつてない変化を個人や社会の豊かさにどうつなげていけるか、問われる1年になります」