命をつなぐ生きものたち 第2集 水中の恋

NHK
2022年8月28日 午後9:48 公開

番組のエッセンスを5分の動画でお届けします

https://movie-a.nhk.or.jp/movie/?v=t11dl6p0&type=video&dir=XAw&sns=true&autoplay=false&mute=false

(2022年8月28日の放送内容を基にしています)

多くの命であふれる地球。生きものたちは、ありとあらゆる場所で、その命をつなぎ続けてきました。子孫を残す相手と、うまく出会って結ばれたい!そのための恋の駆け引きが、生きものたちに多種多様な進化をもたらしました。

3回シリーズでお届けする「命をつなぐ生きものたち」。NHKとイギリスBBCが3年の歳月をかけ、最新鋭の8Kカメラで、世界各地の生きものたちの驚きの求愛戦略に迫りました。

第2集の舞台は、水の中の世界。どこまでも広く果てしない海の中では、オスとメスの出会いは困難を極めます。なんとか恋を実らせるため、生きものたちは驚きの方法を身につけてきました。闘いによって、オスになるかメスになるかが決まるもの。出会いのチャンスを生み出すため、性別を臨機応変に変えるもの。さらに深い深い海の中で、メスとオスの信じられない姿が、初めて捉えられました。水中の恋。その神秘の物語を見にいきましょう。

大泉 洋さん「生きものたちの恋の不思議を見ていく番組の2回目です」

小池 栄子さん「今回は、水中の生きものということで、私たちは品川の水族館に来ております。いったい水の中では、どんな恋が繰り広げられているのでしょうか。今回も、オスとメスの進化を専門にされている総合研究大学院大学 学長 長谷川眞理子さんにお話を伺います」

大泉さん「魚は恋をするんですか?」

総合研究大学院大学 学長 長谷川眞理子さん「『恋』というのは人間の言葉ですけれど、出会って繁殖するために求愛するというのはその通りですから」

大泉さん「動物たちの繁殖行動を『恋の駆け引き』と、われわれは表現しておりますけれども、海の中ではどうなんでしょう?」

長谷川さん「海は広いですものね。3次元の空間で広くて…だからなんとか出会わないといけない。まずは出会わないと」

大泉さん「まずは出会うこと」

小池さん「陸よりそこが厳しいかもしれないということですね」

<広く果てしない海 “出会い”が大変>

どこまでも続く大海原。出会いを果たすために、長い旅をする生きものがいます。

ザトウクジラです(下写真)。

ふだん、メスとオスは別々に泳ぎ回って暮らすため、めったに出会うことはありません。

恋の舞台のひとつは、ハワイの海です。毎年冬、メスとオスは、それぞれ北の海から4000km以上も長旅をして、ここへやってきます。メスにとって、ハワイ近海は暖かく、出産や子育てに最適の場所です。メスが目指す海に、オスも集まってくるのです。とは言っても、広い海の中です。出会いを果たすため、クジラたちは独特な方法を編み出しました。

海に、不思議な音が響き渡ります。クジラの鳴き声です。

オスはメスに向けて、恋の歌を歌うと考えられています。この歌が、出会いには欠かせないのです。水は空気よりも音を伝えやすく、なんと数十km先まで自分の存在を知らせることができます。

大海原を1頭で泳ぐメスも、オスを探しています。大きな胸ビレを海面にたたきつけ、大きな音をたてています。メスもまた、音を使って、自分の居場所を教えていると考えられています。

その音を聞きつけたのか、あちこちから次々とオスたちが集まってきました。その数、20頭以上。たくさんのオスの中から、メスが恋の相手を決める基準は「体力」です。徐々にスピードを上げるメスを、オスたちは必死に追いかけます。ライバルより少しでも前に出て、メスに近づこうとします。その過程で、重さ35トンものオスの巨体がぶつかり合います。また、下から突き上げる一撃を加えるものもいます。弱いオスは、次々と脱落していきます。

突然、クジラたちが動きを止めました。気付けば、残ったオスは半分以下。このあと、誰も見たことのないメスとオスのやり取りを目撃しました。

1頭のオスがメスに近寄り、体にそっと触れました。このオスが、選ばれたようです。広大な海で、音を手がかりにようやく巡り合ったメスとオス。でも、2頭の恋は、無事結ばれるまで気は抜けません。まだあきらめないライバルとの恋の駆け引きは、このあとも続いていきます。

続いてこちらは、日本の奄美の海です。出会いの難しさを、芸術的とも言える方法で乗り越える生きものが暮らしています。恋の舞台は、一面砂地が広がる海底です。辺りは薄暗く、遠くまでは見通せません。

体長わずか15cm。フグのオスです。

砂の模様に溶け込んで、なんとも目立たない姿をしています。これでは恋の相手に見つけてもらうのも大変そうです。

突然、フグのオスが、砂を巻き上げ始めました(下写真)。何度も何度も繰り返します。

すると、砂にいくつもの溝が出来上がってきました。ほとんど休みなく作業を続けること、数日間。現れたのは、芸術作品のような模様です。直径およそ2m。この見事な模様は、目立たないオスに代わって、恋の目印になるのです。

メスがやってきました(下写真・右)。砂一面の世界で、メスはこの模様を頼りに、オスを見つけ出すと考えられています。

やってきたメスに、突然オスが、かみつきました。この一瞬のうちにメスが産卵し、そこへオスが精子をかけるのです。このオスのもとには、次々メスがやってきました。モテモテです。実は、溝の数が多いほど、メスに人気なのです。模様を上手に作れば、それだけ多くのメスと出会い、子孫を残せるというわけです。出会いの難しい海の中。生きものたちはいろいろな工夫をして、命をつないでいるのです。

小池さん「ザトウクジラの映像は圧巻ですね」

大泉さん「すごいですね。クジラは『音』でね」

小池さん「求愛行動なんですね」

大泉さん「何十kmも聞こえるんですか?あの音が」

長谷川さん「海は水だから濁っているときもあるし、視界はそんなに頼りになりませんよね。でも音はすごく届きやすいので」

大泉さん「そして、あのフグは、すごかったですね」

小池さん「あんなふうにして、ステージを作るのね」

大泉さん「立派なものを作れたら、それだけメスが寄って来るということですか?」

長谷川さん「砂に溶け込むような色をしているから、派手になると食べられてしまう。隠れたままどうやってメスを引き寄せるかというと、ああいうものを作ることになったんですね」

大泉さん「あそこにさまざまなメスが来て、1匹のオスが、さまざまなメスの卵に精子をかけるわけですか」

長谷川さん「だからメスを引きつけることができれば、たくさんメスが来ますよね。せっかく作っても誰も来ないオスもいるはずです」

長谷川さん「ただね、出会うだけではダメでしょ。子孫を残すというところに2段階あって、まず出会って、交尾する。それから子ども(卵)が生き残る。この両サイクルが終わらないと、繁殖が成功したとは言えない」

小池さん「卵を生き残らせるのも大事な恋の戦略と考えていいんですか?」

<卵をどう生き残らせる? メスとオスの多彩な戦略>

そうなんです。水の中の生きものにとって、卵を無事に生き残らせることが、恋を成功させること。そのために、多様な戦略を生み出してきました。

現れたのは、カンムリブダイ。

メスとオスが、どこからともなく大集結しました。その数、なんと1000匹以上います。

目的は、「一斉産卵」です。1匹のメスを、オスたちが取り囲み、一度に数十万もの卵を受精させます(下写真)。これを繰り返し、合わせて数千万個の卵が、海に放たれます。

実は多くの魚が、水の中に大量の卵を産み放つ戦略を取っています。

なぜか?

海の中では、大きな魚が、水に漂う卵をどんどん食べていきます。でも、卵がたくさんあると、さすがに全部は食べきれません。「たくさん産めば、必ずある程度は生き残る」という割り切った作戦なのです。

一方で、少ない数の卵を産んで、それを大事に大事に守るよう進化した魚もいます。

日本でおなじみのホッケです(下写真)。

ホッケは、オスとメスが1匹ずつでペアを作ります。

しま模様のメスが産卵しました。オスが用意していた岩の隙間などに産みつけます。卵の数は、数千個。「周りから丸見えで大丈夫?」と、思いますよね。

ここからオスが、大活躍するのです。2か月ものあいだ、オス1匹で卵を守り続けます。新鮮な海水を送ったり、掃除をしたり…マメです。

でも、本当の試練はこのあとです。

ウニが忍び寄ってきました。すると、オスがすかさず攻撃します。鋭いトゲをものともしません。

続いて訪れたのは、巨大なタコ。大人のホッケを食べてしまうこともあります。それでも、オスは果敢に立ち向かい、なんとか追い払いました。ホッケは、オスが少ない卵を命懸けで守ることで、子孫を確実に残すよう進化したのです。

ところかわって、南米アマゾンです。ここにも、オスが意外な方法で卵を守る魚が、暮らしています。

スプラッシュテトラのオスです。

体長5cmほどの小さな魚が心待ちにしているのは、雨です。

雨季のジャングルでは、雨でどんどん水位が上がり、水上の葉っぱに、水面が近づきます。

オスはこのときを待っていました。なんと、水中から葉っぱにジャンプ!そして、くっつきました。この葉っぱに、産卵してもらおうというのです。

準備は万端。オスは水中に戻ります。メスがやってくると、水面へと誘い出します。

そして、息を合わせて、先ほどの葉っぱ目がけてジャンプします。2匹そろって葉っぱにくっつき、メスは卵を産みつけます。しばらくすると、メスはいったん水中へ戻ります。オスのおなかの下には、卵が見えます。葉っぱに産めば、大事な卵が他の魚に食べられる心配はありません。卵は50個ほど。数が少ない分、手厚く守る作戦です。

でも、卵は水にぬれていないと、死んでしまいます。

そこでオスが、水中から水を飛ばし、卵を乾燥から守ります。卵がかえるまでの数日間、気は抜けません。子孫を残すため、オスの懸命な努力が続きます。

小池さん「感動しちゃうね。愛情を感じますよね、子どもに対して。魚の感性は分からないですけど」

大泉さん「正直、魚は、どれだけ食べられても、それに負けないぐらい大量に卵を産むしかないのかなと思っていました」

小池さん「ホッケとスプラッシュテトラ。ホッケは、お父さんが2か月間、いろんな天敵から守って」

大泉さん「こんなに頑張っていたのかと思いますよね」

小池さん「すごくオスが協力的ですが、あれは父性じゃないんですか?」

長谷川さん「オスは、自分が受精させた卵を守っているわけだから、それを父性と言えばそうですよね。メスは、産んだ卵を守るよりは、また食べて、次の卵を作らなければならない。それに対してオスは暇があるんだったら守った方がいいというふうに、戦略が違ってきます」

小池さん「そんなに栄養をつけないといけないということなんですね、メスは。次なる卵を産むために」

長谷川さん「栄養がたくさんないと、卵ってできないのよね。ちょっとこちらをごらんください」

長谷川さん「これを精子だと考えましょう。全長1cmの精子の模型ね。サケの精子がこれだとしたら、イクラ、(サケの)卵は、どのくらいの大きさになると思いますか?」

小池さん「大きいということでしょ? 5cmくらい?」

長谷川さん「まだまだ大きい。正解はこちらです」

長谷川さん「1個の卵が、精子の200倍。サケの精子が1cmだとしたら、サケの卵は直径およそ2mあるんです」

大泉さん「イクラだって、すごい数あるわけでしょ?」

長谷川さん「そう、だからメスが卵を作るために、どれだけ栄養が必要かということですよね」

<卵と精子 誕生の秘密>

小池さん「でも、どうして精子と卵に分かれるように進化したんでしょうかね?」

長谷川さん「それは何段階もある複雑な話なんですけれど、これはゾウリムシですね。ゾウリムシというのは、ふだんは1つの体が分裂して2匹になるという、そういう生き物なんです」

長谷川さん「時々、違う個体が2つつながって、お互いに遺伝子を交換するんです(下写真)」

大泉さん「その場合、オス・メスはあるんですか?」

長谷川さん「それは、ないのよ」

長谷川さん「そのうち、体のどこかに『卵』という細胞を作る、『精子』という細胞を作る。それを体の外に出して合わせて次の世代にするというやり方が始まったの」

小池さん「強くなるんですか?遺伝子的に」

長谷川さん「別のタイプになるから、今までとちょっと違ういいところがあったり、悪いところもあったりするけれど、変わるわけですね。変わっていくということが大事」

小池さん「繁殖行為をするようになったということですか?」

長谷川さん「それがあとから出てきたんですね。ゾウリムシみたいなものから」

長谷川さん「栄養たっぷりで動かない『栄養型』か、栄養をなくして、とにかく走り回って見つけて合体してあとは栄養をもらうという「探索型」か、どっちかに分かれた」

大泉さん「探索型の精子を作るもののことをオスと呼ぶ。動かない栄養型の卵を作るもののことをメスと呼ぶということ?」

長谷川さん「そういうことです」

<自由奔放! 性のさらなる進化> 

生きものたちの進化の過程で生まれた、メスとオス。でも、水の中では、性を巡るさらなる進化が起きました。

こちらはカクレクマノミ(下写真)。

身を守るため、決まったイソギンチャクを住みかにして、群れで暮らしています。狭い世界で暮らすこの魚の性別には、ある決まりがあります。メスはいちばん大きいクマノミ1匹だけ。オスも2番目に大きい1匹だけ。それより小さいものは、メスにもオスにもなっていないクマノミなのです。

クマノミの群れをよく見ていると、小さいクマノミが、大きいクマノミにいじめられているように見えます。メスでもオスでもない小さいものは、立場が弱いのです。それでも耐え忍んで、群れで暮らしているのには、ワケがあります。

クマノミの暮らすサンゴ礁は、危険がいっぱいです。天敵が多く、1匹しかいないメスやオスが、突然いなくなることも珍しくありません。そんなときチャンスが巡ってくるのが、メスでもオスでもないクマノミたちなのです。

もしメスがいなくなった場合、オスが、次のメスになります。性を変えるのです。そしてメスでもオスでもなかったものの1匹が、次のオスになります。これならイソギンチャクの狭い世界でも、常にペアを保つことができます。

でも、オスだったものが、どうやってメスになるのでしょう?

秘密は生殖器にあります。オスは精子を作る精巣だけではなく、同時に卵を作る卵巣も持っています。メスになるときには精巣をなくし、卵巣だけを発達させます。使う生殖器を切り替えるだけで、性を変えることができるのです。臨機応変に自分の性別を変えてしまうというすごい進化が、水の中では起こっていたのです。

性を巡るさらなる進化は、海に暮らす他の生きものでも起こりました。

ウミウシです(上写真)。

メス・オス両方の生殖機能を合わせ持つ「雌雄同体」の生きものです。メスでもあり、オスでもある状態が、一生続きます。

どんなふうに、子孫を残すのでしょうか?ウミウシの多くは海底をはって動くため、ゆっくりしか移動できません。ピンと立った触覚で、匂いを頼りに、恋の相手を探します。

このウミウシは、ようやく相手と出会えました。一度会ったら、そのチャンスは逃せません。

ここでいよいよ、雌雄同体の本領発揮です。2匹が隣り合って、体の一部をくっつけています(下写真)。この瞬間、驚くことが起こっているのです。出会った2匹は、どちらも自分の精子を相手に渡します。そして、互いの卵を受精させます。一度の出会いで2匹とも、卵を産むことができるのです。オス・メス両方の働きを同時に行うという、ウミウシが編み出した繁殖戦略。これなら、出会った相手の性別に関わらず、どちらも子孫を残すことができます。

性の区別にとらわれない水中の恋。驚くのはまだ早いですよ!

続いては、ナンカイニセツノヒラムシです(下写真)。

こちらも雌雄同体ですが、恋の形は全く違っています。活発に動き回って相手を探すヒラムシ。その恋は、ちょっと危険な香りがします。

向かった先で、パートナーを見つけました。2匹は、徐々に距離をつめていきます。

ところが、このあと、とんでもないことが起こります。

ヒラムシたちが、突然、体を起こしました。おなかの白い突起は、精子を送り込むための生殖器です。それを振りかざし、闘いが始まりました。相手より先に、生殖器を刺そうとしています。場所はどこでも構いません。先に刺された方は、体の中の卵が受精します。そのあと産卵するまで、エネルギーを取られることになります。ヒラムシたちにとっては、先に刺して精子を送り込んだ方の勝ち。すぐに次の繁殖に向かうことができるため、子孫を残すチャンスが、増えるのです。恐るべし、水中の恋。闘いの勝者は、次の相手を求めて去って行きました。

小池さん「ちょっと驚くことばかり!」

長谷川さん「動けない、動きが鈍い、動きづらいっていうのは、相手が探しづらいので、そういうのは雌雄同体が多いですね。他に例えば、サンゴとか、ホヤ、マシジミなどがあります」

大泉さん「大昔に、そういう雌雄同体の生きものが多かったんですか?」

長谷川さん「大昔ではないと思います。もともとは卵(メス)と精子(オス)に分かれたところから始まったわけだけど、その中で、あまりにも出会いにくいとか、動きにくいというときに、雌雄同体とか性転換というやり方が始まったんですね」

<発見! タツノオトシゴの新事実>

水中で繰り広げられるメスとオスのさまざまな恋模様。続いて登場するのは、命をつなぐため、驚くべき進化を遂げた海の生きものたちです。

こちらは、タツノオトシゴです。

恋の季節を迎え、メスは相手を探しているようです。

その様子を、熱いまなざしで見つめる、オス(下写真)。

2匹が出会い、まもなく産卵が始まろうとしています。その方法は、とても変わっています。オスのおなかにご注目ください。大きく膨らんでいます。実はメスが卵を産む場所は、オスのおなかにある専用の袋の中なのです。お互いのおなかをくっつけ合って産卵し、オスが袋の中で受精させます。一度の産卵で、メスからオスへ、およそ300個の卵が託されます。産卵が終わると、メスは次の産卵に備えて栄養を蓄えるため、去っていきます。

ここからは、オスが孤軍奮闘です。3週間にもわたって、おなかに卵を抱え続けます。そんなオスの体に、驚くべき機能が備わっていることが、最近明らかになりました。あるタツノオトシゴで、袋の中に、胎盤のようなものが見つかったのです。オスは、卵に栄養を与えたり、いらないものを受け取ったり、まるで哺乳類のように卵を育んでいたのです。

このオスに、待ちに待った瞬間が訪れました。オスによる出産です。安全なオスのおなかの中で、大人と同じ姿にまで成長した子どもたち。外に出た瞬間から独り立ちです。水中の生きものたちは子孫を残すため、性別にとらわれない柔軟な進化を遂げてきたのです。

<究極の恋!? オスとメスが行き着いた姿>

水中の恋の物語。最後は、深い深い海の世界へ潜ってみましょう。

ここは大西洋。光のまったく届かない「深海」です。オスとメスが出会うには、最も不向きな場所です。ここで、究極とも言えるようなオスとメスの恋の形が、初めて撮影されました。

水深800mの深海に漂うチョウチンアンコウです。

長いヒレに、ずんぐりした体。メスのおなかの下をよく見ると、小さな魚がくっついています。実は、これがオス。オスはメスに出会うとかみつき、離しません。このあと、オスの体にすごい変化が起こります。メスの血管がオスへと伸びて、一体化するのです。そして、生殖に関係のない内臓や目などが、なくなっていきます。最後に残るのは精巣だけ。メスの体の一部となって、命ある限り精子を作り続けます。オスとメスが行き着いた究極の恋の形なのかもしれません。

大泉さん「オスが、吸収までされなきゃダメですかね?」

長谷川さん「一度受精して別れると、二度目のチャンスがないんだと思います。深海だと。離れてどこかへ行っても、もう二度と出会えない。だからずっとくっついていた方がいい」

大泉さん「目もなくなって、血管も融合されてしまうわけだ。精巣だけが残って・・・」

長谷川さん「ちょっと見ていただきたいものがございます」

長谷川さん「アンコウの標本です」

大泉さん「大きいのがメスで、先ほど見たように、オスが付いているわけですね」

大泉さん「分かるのは、ここに一匹、くっついていますよ。だけど、何匹も付いていますよ、オスが」

長谷川さん「そうなんですよ」

大泉さん「4匹…?」

小池さん「4匹もいたら、みんなが子孫を残せているわけではないということですか?」

長谷川さん「それは偶然ですね、メスの卵に行き着いた精子が受精する」

大泉さん「みんなが受精している可能性もあるということですね?」

長谷川さん「それは確率。何匹も(オスが)付いていると、子どもにも多様性が出ます」

大泉さん「子孫を残すというのは、これぐらい大変なことだということですね…。陸の生きものとまず違うのは、やっぱり圧倒的に海が大きくて、出会うことがまずなくて、出会ったらそれは逃してはならないんだというのを感じました」

小池さん「もっと知りたくなりましたね。なかなか海の中の生きものと触れ合うこともなかったですけれど、こんなに面白いんだというのは思いました」

大泉さん「ホッケとか身近な魚が、『おまえそんなに偉いやつだったんだ…』みたいなね」

小池さん「そんなに頑張って残してくれていたんだ、というありがたみを感じました」

命をつなぐ生きものたち。恋の物語は、まだまだ終わりません。第3集は「ギリギリの恋」。生きることすらやっとの世界。そこでもオスとメスは、命懸けで恋を実らせてきました。しかし今、人間の影響で、恋の在り方を変えなければならないものも出てきています。あのパンダの知られざる恋のヒミツもご紹介します。お楽しみに!