君の声が聴きたい ~若者が願う 幸せのカタチ~(前編)

NHK
2022年5月13日 午後6:09 公開

(2022年5月7日の放送内容を基にしています)

2020年のユニセフの調査によると、日本の子どもや若者の「精神的幸福度」は、38の先進国のうち37位でした。身体的健康は第1位でしたが、「精神的幸福度」は、下から2番目に低かったのです。

日本の子どもや若者が、あまり幸せを感じられていないのはなぜなのか。NHKスペシャルでは、全国の若い世代1万人にアンケートを実施しました。質問は「もしひとつだけ願いがかなうとしたら、何を願いますか?」。どんな願いがかなえば、幸せになれるのかを探るためです。

ユニセフの報告には「子どもや若者の幸せについての考え方は必ずしも大人と一緒ではない」。そのため「子どもや若者の意見を聴くことが、なにより大事」とあります。子どもたちの幸福度をあげるために、大人ができることは何なのでしょうか?

今回、1万人アンケートに寄せられた若い世代の「願い」に、8人の大人たちが耳を傾け、語り合いました。田村淳さん、和久田麻由子アナウンサーの進行のもと、カンニング竹山さん、YOUさん、トラウデン直美さん、たんぽぽの白鳥久美子さん、ぺえさんが語り合いました。臨床心理学が専門で、長年カウンセラーとして若者の声を聴いている近藤卓さん(日本ウェルネススポーツ大学教授)も加わりました。

和久田 麻由子アナウンサー「まずはこの夜空、見上げてみてください。今回、番組に寄せられた若い世代の皆さんの願いです。小学生から大学生まで、全国1万人の声。世界の平和を願うものや、幸せになりたい、推しに会いたいという願いもありますね。

寄せられた言葉を分類してみたのが、下の星座のような図になります。たくさん使われていた言葉ほど、大きな星として表現されています。何度も一緒に使われていた言葉は、線で結ばれ、近くに配置されています」

和久田アナウンサー「この言葉をテーマごとに分類すると、このようになりました。人間関係、お金、コロナ、学校、仕事、戦争、平和と、分類できました」

和久田アナウンサー「まずは、今回最も多く寄せられた『お金が欲しい』という願いについて、聞いてみましょう」

<お金が欲しい>

「私の願いは『非課税、もしくは金塊で5億円欲しい』です」

若者の願いに耳を傾けるのは、白鳥久美子さん。

白鳥 久美子さん「すごいですね。5億円っていうね。いろんなお話を聞きたいです」

願いを寄せてくれた、大学1年生のきなこさん。この地域(神奈川 小田原)に、江戸時代から伝わる人形浄瑠璃の一座に、小学生のときから参加しています。「5億円欲しい」という願いは、この人形浄瑠璃に関っていました。

白鳥さん「けっこう立派な着物、着ているじゃないですか?」

きなこさん「例えば西陣織を人形のサイズに打ち直してもらうので」

伝統の人形を維持するためには、お金がかかるのです。一体のメンテナンスに、200万円以上かかることもあるといいます。

きなこさん「支えられるなら支えたいという気持ちがありました」

人形浄瑠璃のためだという5億円。それにしても大金ですが・・・

白鳥さん「5億円あったら、余るんじゃない?って考えもちょっとあるわけ」

きなこさん「めちゃめちゃ余ります」

白鳥さん「5億円に行き着くまでの考えはあったのかなとか、気になるんだけれど」

きなこさん「前提的に将来が不安で。ニュースとかでも見るじゃないですか。高齢者世代が大きくなっちゃって、若者世代が減っちゃって、年金がもらえる保証ないんじゃないかと思ったり」

白鳥さん「私たち、40代でもびっくりした『老後2000万円必要だ』みたいなニュース、知っている?」

きなこさん「聞きました」

白鳥さん「18歳で考える?」

きなこさん「自分がどれだけ生きているのか、働けるのか、全然分からないので。そういうことを考えると漠然と不安」

きなこさんは、5人兄弟の真ん中。親に負担をかけたくないと、高校のときから、携帯電話代や交通費など、すべてバイト代でまかなってきました。人形浄瑠璃をきっかけに、地域の文化を学びたいと、大学は歴史文化学科に進学。しかしその学費も、奨学金を申請しています。

きなこさん「(奨学金を)みんな使うなら使うし、親が『使え』と言っているなら、まあ使うかと思って申請はしていたんですけど、調べたり考えたりしているうちに、これしっかり“借金”だなって。大人になって、何十年、返すんだなって、改めてそこで思いましたね」

きなこさんが借りる奨学金は、総額340万円ほど。卒業後、20年近くかけて返済する必要があります。

今回のアンケートで「お金が欲しい」という願いを寄せた人は、1万人のうち1700人以上にのぼりました。

さらんさん(21歳 女性)「お金が欲しい。お金があると安心できる。ただし豪遊したいわけではない。普通の人と同じように生きたい」

makaさん(19歳 女性)「7億円の宝くじ当てたい。不安や心配をしながら生活しなくていいだけで、心の治安がとても良いと思います」

多くの願いに、経済的な不安を抱えている様子がつづられていました。

将来のお金の不安を誰かに相談したいと考えていた、きなこさん。白鳥さんと、専門家を訪ねました。

きなこさん「自分の今後にかかってくる費用って、年代とか性別とかで、平均的に分かるんですか」

ファイナンシャルプランナー 風呂内 亜矢さん「サンプルを作ることはできるので、試してみましょう」

大学卒業後に会社に就職し、平均年収300万円ほどで、奨学金を返済(19年)しながら、1人暮らしを続けると、60歳で2000万円の貯金ができるものの、それが77歳でなくなってしまいます。

しかし、試しに40歳以降、月々の生活費を一定の水準に抑えてみると・・・

風呂内さん「『生活水準を上げない』みたいなことをすれば、意外と、87歳まで資金がもつというような計算になる」

きなこさん「こんなに変わっちゃうんですね」

風呂内さん「お金の数字を整理することを『お化け屋敷の電気をつけるようなものだ』という例えがあるんです。そこの角曲がったら、お化けが来ている。怖い、嫌じゃないですか。でも電気がついていたら怖くない。お金の話も、嫌なことはいっぱいある。すごく貯めないといけないし。でも先に分かっていたら、『そこの角、曲がるのやめよう』みたいなことも、できるかもしれない」

きなこさん「知れて安心が半分と、その通りにできない気がしてきちゃって。あんなにうまく生きられるかな」

白鳥さん「自分が18歳のときって、無駄に自信があったというか。『お金なんてどうにかなるや』と思っていたから、将来の夢がいっぱいあるような子が『こんなに悩むんだ』ってのが、私は正直ショックでしたね」

ぺえさん「今の若い子は、すごく現実的すぎるんじゃないかって思われるかもしれないけど、現実的に考えなければいけない社会になっているって思う。私も、奨学金、あと300万くらい残ってるのかな。いまだに3万円ずつ、3万円ずつ返すのを続けている」

竹山さん「奨学金って、できたときは皆を救うものだったと思うんです。大学に行けば、いいところに就職できて、収入も増えますよ、お金も返せますよって。現実は、大学に行ったからってお金が増えるかっていえば、そんな時代じゃなくなっているじゃないですか」

和久田アナウンサー「実際に日本の経済状況、こんな数字があるんです」

これは、全世帯の所得の分布を示したグラフ。1990年代に比べて、所得が300万円以下の世帯の割合が増えています。こうした経済状況が、若い世代の不安につながっているのでしょうか?

白鳥さん「親としても、子どもにお金の不安をかけないで、どうやって育てていけばいいんだとか。大人の考えを子どもが何よりも敏感に感じているのかなと思っていて。大人の不安が、子どもに伝わっていることが、いちばん問題・・・」

日本ウェルネススポーツ大学 教授 近藤 卓さん「親っていうのは最後のとりでというか、防波堤の役割が大きいと思う。社会の大波から、親が守らないといけないと思うんですね。だから親自身の、『大人の幸福度』がとても大事だと思う」

白鳥さん「私が安心したのは、子どもが生まれたときに、3歳から保育園のお金ってかからないんだとか、3歳から5歳まで無償化なんだとか、医療費はかからないんだとか分かったときに、すごく安心したんですよね。だから、そういうバックアップしてくれる仕組みがあると、家庭において、とってもいい空気になるのかなとも思いましたね」

和久田アナウンサー「では続いての願いにまいりましょう。1万人の願いに使われていた言葉を分類した『星空』を見ると、『自分』と『人』という言葉を中心に、『人間関係』に関する言葉が広がっています。なかでも、『家族』にまつわる願いが多く寄せられました」

<人間関係>

「私の願いは『親には、子どもが違う価値観を持っていることを認めてほしい』です」

まきまき貝さんが寄せてくれたのは、父親に対しての願いです。

小学生のとき、卓球経験者の父親の勧めで地元のクラブに通い始めました。本当は通いたくありませんでしたが、自分の気持ちを伝えることはできなかったといいます。

まきまき貝さん「お父さんが全部正しいみたいな感じで、父が求めている回答と違うことを言うと、どなられましたね。だから自分の思っていることを言うよりも、父が求めていることを探して考えて、言っている感じ」

父親はいつも「子どもの幸せのためだ」と話していました。

まきまき貝さん「たぶん本人は『うまくなってほしい』というか、ひとつのことに打ち込んで、その結果が出て、将来の糧になるというか、つながると思っていたのかなと思います」

この春、社会人になる、まきまき貝さん。願いにこめたのは、ずっと父親に伝えられずにいた思いでした。

まきまき貝さん「価値観を認めてくれていれば、今もっと自信を持って生きていけるのかなと思って。やっぱり自分の意見とか、思っていることを言うと、すべて否定されてしまうので、1回受け入れてほしいというか聞いてほしい」

今回、「人間関係」について寄せられた願いは、1万人のうち、1200人以上。中には、意外な願いを寄せてくれた人もいました。

大学3年生のVonさん(22)です。

宝物だというものを見せてくれました。

Vonさん「時々見て、アイスランドに対する思いを上げる。行きたいな、住みたいな、生まれたいな」

小学生の頃、クラスメイトからいじめを受けたというVonさん。人を信じることができなくなり、中学、高校でも、友達ができなかったといいます。大学へ入学しても、周りの人たちとうまく関係を築けず、その後、およそ2年間、家に引きこもりました。

Vonさん「『周りの人たちは自分より優れている』という、実際どうかは分からないにしても、そういうふうに見えたこともありまして、ある種の劣等感を抱いてしまった。明日のことは考えたくない。とりあえず、生きたくない」

そのときVonさんの支えとなったのが、あるアニメでした。

Vonさん「うっぷんとした環境で、ヒロインは生きてきた感じで。ヒロインがバイクに乗って逃走するシーンで、ある種の解放感を感じた。共感を覚えたといいますか」

そのアニメで使われていたのが、アイスランドをイメージした音楽。調べてみると、アイスランドは幸福度が高く(世界3位(World Happiness Report 2022))、他人への寛容さもある国だとされていました。

そこでなら、居心地のいい関係が築けるかもしれない。

Vonさん「人間関係が健常でないと、そういった(幸福度が高い)ことって、ほぼありえないと思いますし、そういうことを考えたら、アイスランドっていうのは、理想の国なんじゃないかな。“Von”という言葉は、アイスランド語で“希望”という意味になるんですけど、とにかくアイスランドに住んでみたいです」

白鳥さん「私、Vonさんの気持ちがすごく分かって、私もいじめられっ子だったんで。私はとにかく逃げ場をいろいろ探したんですよ。おばあちゃんちだったりとか、誰も来ない放送室の上とか。最終的に行き着いたのが、演劇部だったんですね。5人しかいなかったんですけど。そこで、私のことを認めてもらえて。ひとつの場所では失敗して人間関係がうまくいかなかったりするんだけど、ほかを見ると、意外とできる人間関係があったりして」

淳さん「ただ俺がちょっと不安になったのは、あまりにもアイスランドを信じ込みすぎてて、思いが強すぎて、アイスランドに裏切られたときに、彼は大丈夫かなっていう」

淳さん「一方で、お父さんが卓球をやってほしいっていっていた、まきまき貝さん。お父さんの思いにこたえなきゃっていう、苦しい気持ちを話していましたね」

近藤さん「親の立場にしてみれば、俺の立場、俺の価値観を認めろよって、子どもに言いたいんでしょうね。それが支配と被支配の関係になってしまっているときに、不幸が生まれるんだと思うんですよね」

トラウデンさん「全部言われたことをやらなきゃいけないってなると、自分のやりたいことが見えなくなっちゃうというか、自分がやりたかったの何だったっけってなっちゃうと、もうそのあとの生きる希望というか、何していいんだろうになっちゃうから、少しでも自分で模索するチャンスを、残しておいてほしい」

YOUさん「大人が、失敗してもいいからやってみようって言えるといい。失敗を責める人が多いんですかね」

近藤さん「若者にしてみると、失敗したときに、どこまで落ちていくか分からない不安があると、失敗はできない。失敗しても大丈夫、自分はここまでは大丈夫っていう、いちばん根本的なところで、心を支えるものがしっかりとできていれば、失敗が怖くないんですよね」

淳さん「『自己肯定感』みたいなものが、日本は低いって言われていますよね」

これは、内閣府が実施した調査。各国の若者に「自分に満足しているか」尋ねたところ、そう思う、どちらかといえばそう思うと答えた若者が、日本は45.1%。ほかの国が7割を超える中、唯一半数を割りました。

和久田アナウンサー「ではどうすれば、子どもや若い世代の自己肯定感が上がるのか、若い世代の皆さんの願いの星空を見ますと、『自分』や『自信』という言葉のそばに、『顔』『容姿』『スタイル』といった見た目についての言葉がたくさん連なっていました。見た目と自己肯定感とにどんな関係があるのか、寄せられた願いを見てみましょう」

<美人になりたい>

「私の願いは『今よりもかわいく、美しく生まれなおしたい』です」

今回、願いを寄せた女性を訪ねたのは、ryuchellさん。同じように、美しくなりたいという願いを抱いてきたといいます。

ryuchellさん「やっぱり『容姿端麗な方が、自分の人生はもっとうまくいったはず』『人と目を見て話せたはず』とか、そういう気持ちになったことは、僕も何回もあります」

大学2年生のすみれさんです。

ryuchellさん「すみれさんの願い。今、思っていることとか聞いてもいいですか」

すみれさん「もっとかわいく、美しく生まれたかったなっていうのはあります」

ryuchellさん「そう思うきっかけとしては、どういうことが多かったんですか?」

すみれさん「やっぱりインスタの普及ですね」

見た目のことが気になり始めたのは、高校1年生のとき。初めてスマホを持ち、最初は友達との写真をアップしたりするのを楽しんでいました。ところが、SNSの“おすすめ機能”で、次々ときれいな女性の姿が出てくるようになり、自分と比べるようになったといいます。

すみれさん「一般人でサロンモデルしていますみたいな、かわいい人、多いじゃないですか。『かわいい子だらけだ。この日本は』って思って。比べて、私の方が劣っているなっていうのを、分かっているのに見ちゃうし、落ち込んじゃったりすることが多いです」

それでも、友達づきあいのため、SNSを見ないわけにはいきませんでした。

すみれさん「『誰々の投稿、見た?』とか、見ていないと話に入れない。平安時代とか、昭和の親世代に生まれたかったって、すごい思っていて。平安時代って、なんか楽しそうじゃないですか。スマホとかの機器もないから、自然とかに目を向けて、交友関係もSNSの仲間じゃなくて、人対人みたいな感じだし」

そんなすみれさんが、今、気になっているのが、大学のあるイベントです。

すみれさん「ミスコンやって、誰が得するんだろうって思って。顔で搾取している感じがしたので」

今回のアンケートで、すみれさんは、ミスコンの関係者に話を聞きたいと書きました。そもそも、なぜ開かれているのか。訪ねたのは、ライターで、長年ミスコンの取材を続ける霜田明寛さん。これまで50以上の大学のミスコンに足を運び、出場者や主催者の話を聞いてきたといいます。

すみれさん「いちばん聞きたいのは、ミスコンをやる意味は何なのかっていうのが、すごく気になっていまして」

ライター 霜田明寛さん「1891年に、日本最古のミスコンと言われている『東京百美人』というコンテストが開催されている」

霜田さんが語り始めたのは、容姿を競うコンテストの歴史。明治時代、最初に開かれたコンテストは、浅草の観光用の建物で行われた、集客のための芸者の人気投票でした。

1970年代に広まった大学のミスコンは、次第に、アナウンサーなど人前に立つ職業の登竜門となっていきます。

最近では、SNSの普及で一般からの“ネット投票”も拡大。フォロワーの多い大学生をPRに活用する企業も出てきています。見た目の評価が、就職やビジネスにつながっていったという話を聞いた、すみれさん。

すみれさん「アナウンサーも、情報が伝わればいいし、なんでわざわざ、そこに外見を重視するのかなと思って」

霜田さん「難しい問題だなと思うのが、美人のアナウンサーが出た方が、視聴率が取れるとか、われわれ見る側の欲求に応えた結果でもあるんじゃないか。僕らの心から、誰かのことを美しいと思う気持ちを取り除けるかと言われると・・・」

すみれさん「難しいんですよね、この問題って」

「もっと美しくなりたい」という願いと、どうつきあっていけばいいのか。

すみれさん「やっぱり、かわいい方が得なんじゃないかなって思ってて」

ryuchellさん「見た目がいい方が、人生も楽しくなるしっていうのは、本当に僕も思ったりもする。けど、そんな中で、自分が人生の中で、いちばん大切にしているのは何かっていう、そういう自分の軸を大切に、よりしていきたい」

すみれさん「外見に執着しないで自分の内面とか、もっといいところを探そうって、すごい自分では努力しているんですけど、自分の芯をまだ持てていないというか、『自分は自分でいいんだ』っていう、それを持てていないから、『やっぱり顔じゃない?』って思っちゃう自分もいるんですよね」

淳さん「不思議なのは、きれいになりたいと思っているんだけど、見た目至上主義みたいなのは、彼女は否定しているっていう。でも、それが彼女の中の葛藤なんだろうなと」

ぺえさん「やっぱりSNSが鍵なのかなって。だって普通に生きてたら、体重30キロとか40キロ台の女性なんてなかなかいない。だけどSNSで、こんなにたくさんスタイルのいい人がいるのかなっていう感覚になっちゃって、なんか自分自身も、それを追い求めなきゃいけないというか。みんながみんなじゃないのに、みんながみんななんだっていう感覚になっちゃってるのかな」

和久田アナウンサー「近藤さん、今回、見た目に関する願いがたくさん寄せられたことと、若者の自己肯定感との関係についてどう思ってらっしゃいますか?」

近藤さん「SNSの影響もあるとは思いますけれども、子どもたちが、他者との比較に過度に頼ってしまって、競争にさえ勝てば、それで幸せになれるみたいに、思い込まされている」

近藤さんによると、自分を大切に思う感情には2つのパターンがあるといいます。他人との比較によって自分を肯定するのが「社会的自尊感情」。これは、競争に勝てば高まりますが、負けるとしぼんでしまいます。一方、ありのままの自分を肯定するのが「基本的自尊感情」。失敗や挫折で失われることなく、自分自身を支え、幸福感を得るための土台となるといいます。

和久田アナウンサー「基本的自尊感情を育てるためにはどうしたらいいんでしょうか」

近藤さん「ひと言でいうと、『共有体験』ということだと思うんですね。共感をする、横にいる誰かと同じことを考え、同じ体験をして一緒に感じるということが、自分をありのままに認める、受け入れるということにつながっていくんだと思うんです。例えば映画を見ているときに、隣にお母さんがいて、今つらいな、悲しい場面だなと思ったときに、お母さんが横で涙をにじませているのを感じたときに、自分の今の感じ方って間違っていないんだ、同じようにお母さんも感じているんだ、自分はこのままでいいんだっていう気持ち。だから、横にいる例えばお母さんかお父さんか友達、あるいは先生でもいいと思うんですね。つまり、同じ景色を見たり、同じ時間を過ごしたり、同じものを食べたりしながら、同じように感じることが大切です」

1万人アンケートでは、ほかにも若い世代が特に多くの願いを寄せた「テーマ」があります。記事の最後に、いくつかの願いをご紹介します。

<学校・学歴について>

ようちーさん(18)「私の願いは『学校がもっと熱のある場になってほしい』。答えのない問いを、どう導き出していくかっていうような、そういう活動がもっと増えればなって思っています」

chamaさん(22)「自分の願いは『学歴を気にしないで生きたい』。やっぱり、コンプレックスを抱きますね。わりと好奇心旺盛ですし、いろんなことにチャレンジしている部分はあります。そういったものに頑張っていって、周りからも学歴を気にしないぐらいに思われるようになったら、そのときにやっと、学歴から解放されるかもしれないですね」

<戦争・平和について>

KKさん(18)「私の願いは『戦争のない世界』です。同じクラスの子が、大学生になるときに台湾に行くんですけど、この(ウクライナでの)戦争がまだ続いてたりとか、あとは戦争の参加国が広まったりしたときに、行った先に戦争があったら、その子はどうなっちゃうんだろう」

きゅうりさん(17)「僕の願いは『対立ではなく歩み寄りを大切にしてほしい』ことです。やっぱり、戦争はやめてほしい。歴史の勉強とかで違う年代で同じようなことを繰り返してきていると感じます」

BTSのファン りんごさん(18)「私の願いは『世界平和』です。推しが、3人いるんですけど、(BTSは)国連でスピーチするくらいですから、世界中にファンを持っていると思います。ウクライナにアーミー(BTSのファン)がいると、ひと事ではないと思います」

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