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ジェンダーサイエンス(2)「月経 苦しみとタブーの真実」(前編)

NHK
2021年11月6日 午後9:50 公開

番組のエッセンスを5分の動画でお届けします

(2021年11月6日の放送内容を基にしています)

<最新科学が迫る! 月経 苦しみとタブーの真実>

体の性の実態に最新科学で切り込み、ジェンダーを問い直す、シリーズ「ジェンダーサイエンス」。第2集は、月経です。

月経について、およそ1,000人の女性に聞いたアンケート。86%の女性が、「男性に月経のことをもっと理解してほしい」と答えています。

仕事のパフォーマンスへの影響も深刻です。労働損失は年間4,900億円あまりと試算されています。

実はいま、女性の体に、人類史上かつてない“異常事態”が起きています。何百万年もの間、生涯に経験する月経の回数は、50回ほどだったといいます。

しかし現代は、450回。9倍にまで増加しているのです。

そうしたなか、最新科学が、苦しみとタブーの真実を解き明かそうとしています。月経は、母親と赤ちゃんが、互いに生き延びようと進化した結果、うまれたことが分かってきたのです。

月経の仕組みや役割を知ることで、誰もが生きやすい社会を実現するためのヒントを探ります。

千原ジュニア「いや、僕もう、ほんとに全く分からないんで、ただただ、勉強させてもらうということだけです」

YOU「ね、分からないもんね」

千原ジュニア「月経って、生理ってことですよね」

YOU「そうです」

千原ジュニア「それが、昔は50回やったんですか?」

久保田佑佳アナウンサー「驚きの少なさ」

YOU「どういうあれなんだろうね。月1回とかじゃないっていうことだよね!?」

久保田アナウンサー「NHKスペシャル・ジェンダーサイエンス第2集、テーマはズバリ、『月経』です。ジュニアさんはご家族で、お母様や奥様から話を聞いたことっていうのは?」

千原ジュニア「母親とそういう話をしたことは1回もないですし、奥さんにいつ月経がきてるのかも、僕は全く知らないです。生理用品がどこに置いてあるのかも知らないです」

YOU「一緒に生活してて、だいたいね、生理前とか、ちょっと突っかかって、けんか吹っかけたりとかしてましたから、私は。だって、幅跳びとか絶対したくないもんね」

久保田アナウンサー「絶対したくないですね(笑)」

YOU「大股でカツカツとかできないんですもん。もうずっと着物着てるみたいに」

久保田アナウンサー「月経について女性たちがどう感じているのか調査したアンケートがあるんですが、『女性どうしなら月経のことを理解しあえる』と答えた人はたった16.5%。女性どうしでも分かりあえないと思っている人がほとんどなんですね」

千原ジュニア「へえー」

久保田アナウンサー「実際の声で、『生理のたびに具合が悪くなって電車の中で倒れる私は、生理痛のない女性の先輩から仮病だと思われていた』」

千原ジュニア「女性でも理解できない人がいるってことですね。軽い人なんかは、すごく重たい人に対して」

YOU「そう」

久保田アナウンサー「男性も女性も知らないことが多い月経ですが、女性の活躍が推進されて働きやすい環境作りが求められる今、月経は誰にとってもひと事ではないんです」

<女性活躍は待ったなし ひと事ではない月経>

1万2千人が働く生命保険会社(大樹生命保険)です。社員の8割以上は女性。その活躍推進を、企業目標に掲げています。しかし、管理職のおよそ8割を占めるのは男性。月経に対するサポートは進んできませんでした。

そこでことし、女性の執行役員が男性管理職へのヒアリングを始めました。

執行役員 丹波由規枝さん「女性は月経っていって、月に1回しんどいときがくるんですが、課題として感じていることとか、全然関心なかったよとか、本音を教えていただきたいんですけど」

男性管理職「意識はしてはいませんでした」

男性管理職「積極的になにか、気遣うとかいうところまでは至っていないのが現状かなと」

全員、月経についての知識はほとんどありませんでした。なかには、こんな声も。

男性管理職「相手の受け止め方によっては、セクハラに取られかねないこともあるので、非常に距離感をはかりながら会話するというか、そんなことがいちばん難しいなあというところですね」

<井上咲楽さんの月経周期に密着! 毎月女性の体で何が>

では実際、女性たちは、月経についてどんなことに悩んでいるのでしょうか。

タレントの井上咲楽さん、22歳です。

テレビや雑誌で大活躍の毎日ですが、1か月のうち半分、月経の苦しみに悩まされています。

井上咲楽さん「ずーっと眠いんですよ、生理中」

この日は月経初日、猛烈な眠気と、痛みに襲われていました。

井上さん「おなかの下らへんがきゅーって痛くなったりとか。思わず、ううって縮こまりたくなるような。ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるきゅー。きゅーって絞られて痛いみたいな感じですかね」

月経がいつ始まるのかも把握しにくく、こんな経験も。

井上さん「生放送の仕事のときに、極度の緊張みたいになっちゃって、本番15分前に、ぱっと立ったときにお尻のところが、すごい真っ赤になっていて、いきなり生理がきちゃってて。そのとき座ったソファーも拭いて衣装も着替えて」

本番には間に合いましたが、2時間の生放送中、月経血の漏れが気になり集中できませんでした。

その月経血、ただの血液だと思っていませんか?実は、子宮内膜の細胞がまじっています。

子宮の内側にある粘膜、子宮内膜。毎月分厚くなり、受精卵を迎え入れる準備をします。

妊娠しなければ、子宮内膜は排出されます。これが月経です。

子宮は子宮内膜を外に出すため、しぼりだすように収縮します。

子宮を収縮させるのは、プロスタグランジンという物質。この物質が下腹部の痛みだけでなく、他の臓器の筋肉や血管にも作用し、さまざまな不調を引き起こします。

井上さん「起きたときの腰痛が最悪でした。明らかにいつもとはちょっと違うような重だるさだったりとか、頭の回転の悪さだったりとか」

仕事中は、こうした不調を見せないようにしている井上さん。男性はおろか、女性のスタッフや共演者にも話せないと言います。

井上さん「甘えてる気がして嫌だなって思っちゃう部分もあるし。『生理期間でこんなことがあって』と言っても、『普段からそうじゃない』って思われたら嫌だなとか、そこまで考えちゃうとなかなか生理だからこうなんですよねとも言いづらいですよね」

5日間の月経が終わると、およそ1週間、絶好調のときが訪れます。

井上さん「体調はすごい万全です。バッチリです。仕事に集中して、それだけに集中できるっていうのは、ありがたいって思うし。『おい、(いつも)これくらいでいておけ』って思うんですけど」

この時期は、最高のパフォーマンスを発揮できると言う井上さん。体のなかでは、エストロゲンというホルモンが上昇しています。肌にツヤを与えるなど女性の健康に欠かせないものです。

このエストロゲンには、もうひとつ重要な役割があります。子宮内膜を、分厚くさせるのです。厚さ1~2ミリから、およそ2週間で10倍近くになります。

次の月経まで、あと1週間となったころ。

絶好調だった井上さんに異変が起きていました。食欲が止まらず、気分の落ち込みが激しくなっていたのです。

井上さん「私なんでこれ我慢できないんだろうな、とか、食欲さえもコントロールできないんだなとか、どんどん嫌になりますよね」

排卵を機に、エストロゲンは降下。代わりに上昇するのが、プロゲステロンというホルモンです。分厚くなった子宮内膜を維持する働きがあります。このように、ふたつのホルモンが大きく変動するため、月経中でないにもかかわらず、不調をきたすのです。

イライラするなど精神面にも影響をおよぼし、『PMS・月経前症候群』と診断されることもあります。

月の半分は体調に影響が出る井上さん。これを毎月繰り返しています。

井上さん「これからもずっと続くものだし。(閉経の平均年齢50歳まで)あと30年?30年続くと思って・・・、しかも毎月、みたいな」

千原ジュニア「そこまで、そんなに仕事に影響すんのかっていう。だから、例えばテレビはもちろんですけど、例えば舞台とか。女性芸人が集まって1位決めるみたいな、生放送であったりするときも、そこに当たるか外れるかで、全然違うんじゃないかなとか思いました。もっと言ったら、やりたいコントあったけど、きょうこれやから無理やとか」

YOU「それもありえますし、ほぼね、3週間、なんか不自由なんですよ。イエーイっていうのは1週間ぐらいで」

千原ジュニア「うわ~、すごいそれ」

<人類史上初の“異常事態”  現代女性を苦しめる月経>

女性の仕事や日常生活に大きな影響を与える月経。日本など先進国の女性が生涯に経験する月経は、およそ450回にのぼります。実はこれ、人類史上かつてない“異常事態”なのです。

いったいどういうことなのか、アフリカ・ウガンダにそのヒントがありました。

自給自足の生活を送る、ギスと呼ばれる民族。カナ・ナンドゥトゥさん(35歳)は、18歳のとき1人目を出産し、6人の子どもを育てています。

ウガンダの農村部の女性が産む子どもの数は、平均6人。日本の4倍以上です。妊娠中、月経はおきません。授乳中も排卵機能が抑制され、月経の再開が遅れる傾向があります。ここでは粉ミルクが普及しておらず、2年間にわたり母乳で育てます。

カナ・ナンドゥトゥさん「妊娠・授乳中の2年以上は月経がないから、長い間月経をお休みすることになるの」

ギスの民族を研究している大阪大学大学院の杉田映理 准教授が、もうひとつ着目したのは、月経が始まる、初経の年齢でした。

大阪大学大学院 准教授 杉田映理さん「ギスという民族の女子中高生に聞き取りをしたところ、(初経年齢の)平均が14.6歳だったんですね。(日本より)2年半くらい遅いというイメージですかね」

日本の平均初経年齢は12歳に対し、ギスの女性は14.6歳。日本は、食生活が豊かになり、栄養状態が高くなったなどの理由で、早く月経が始まります。さらに、初産の年齢。日本の30.7歳に対しウガンダは19.2歳です。初経から初産の期間だけでも、月経回数に大きな差が生じるのです。

杉田さん「初産も早いし子どももたくさん産む。そういった意味では、少子化が進んでいる日本の状況とは(月経回数が)だいぶ違うのかなと思います」

何百万年もの間、女性が経験する月経の回数は、50回ほどだったと言われています。

それが先進国では、社会の発展とともにライフスタイルが一変し、450回まで増加。かつての9倍となっているのです。

そして、月経回数の増加は、女性の体に深刻な病をもたらしています。日常生活に支障をきたすほどの痛みが生じる「月経困難症」。日本では800万人が苦しんでいます。

月経困難症の患者「焼きごてでおなかの中をぐあーって、刺されているような強烈な痛みで目が覚めて。(仕事で)ちゃんとしたパフォーマンスを出さなきゃいけないということで、病院に行くのに時間が空いてしまったということもあって、気がついたら大変なことになっちゃった」

さらに、月経を経験するほど発症リスクが上がる「子宮内膜症」も切実です。260万人が患っています。

子宮内膜は月経によって、すべて排出されるわけではなく、一部が卵管を逆流することがあります。

月経が起きるたびに、その機会も増加。卵巣などに付着して炎症を引き起こし、3割から5割が不妊症となります。

この女性は、卵巣のなかに古い血液などがたまった5センチあまりののう胞ができていました。

女性は去年、35歳で結婚。いま、不妊治療を行っています。

子宮内膜症の患者「子どものことも考え始めていたので、『このタイミングか』と正直思いました」

東京大学医学部 産婦人科 准教授 甲賀かをりさん「今のいろんな女性の社会進出とかもそうですし、文明の発達のおかげで起きた恩恵と、このネガティブなことのバランスだと思うんですけれども、今いきなりみんなでやっぱり文明を昔に戻して、じゃんじゃん子ども産みましょうっていうことには、なかなかならないと思うので、月経を何回経験するとしても困らないような、医学的なこともそうですし、社会の仕組み等も変えていく必要があるんじゃないかと思います」

久保田アナウンサー「ここからは2人の専門家の方にも加わっていただきます。改めて、現代の日本人女性の月経回数、昔のおよそ9倍に増えているんですよね」

総合研究大学院大学 准教授 大槻久さん「はい。これはもう異常事態が起きてるんですよね。伝統社会の女性であるとか、日本も戦前は7~8人産むっていうのが当たり前だったと思うんですよ。ところが、この50~60年で少子化が起きて、今、日本だと子どもを1人とか2人とか、あと、産まないっていう選択をされる女性も多いと思うんです。そうすると、ずっと月経がくるわけですね。それで月経の回数が9倍になってしまった。これは人類史600万年から見ると本当に最近のことで、人類史を1年に例えるとすると、大みそかの数分ぐらいの出来事なんです」

東京大学医学部 産婦人科 准教授 甲賀かをりさん「本来の人類の歴史から考えても、こんなに多く、排卵・月経、排卵・月経を繰り返すっていうことに(体が)想定されていないというか」

久保田アナウンサー「先ほどの井上さんもつらそうだなと、拝見したんですけれども、この月経、毎月つらい方はどうすればいいんでしょうか」

甲賀さん「最近では、医療の力でもお薬等で月経をコントロールする方法もいくつか出てきております。井上さんのような方は、産婦人科のクリニックに相談していただければ、いろいろな方法をご提供できると思います」

久保田アナウンサー「先ほどもありました子宮内膜症ですけれども、病気自体は昔からあったんですが、今ライフスタイルが変化して、現代、さらに悩みが大きくなっているということなんです。女性が第一子を出産したときの平均年齢の移り変わりです。1950年には第一子の出産の平均は24.4歳。30歳までに3人産んでいた。これが2020年には、30.7歳が最初の子どもを出産している平均年齢なんですね。で、子宮内膜症というのは、実は30代から患者さんが増えてくる」

甲賀さん「昔は同じ30歳でり患した場合でも、もうお子様を産み終わっているので、子宮も、例えば手術で取っちゃってもいいです。卵巣も取っちゃってもいいですっていうんで、わりと治療法が迷わなかった。ところが、今はこのご病気になってから、『子どもが欲しい』となるので、そうすると、子宮、卵巣を取ってしまう、手術で取ってしまうってこともできないですし、それから、ホルモンの治療などもいろいろと、お子さんが欲しいということがあると限りがありまして、治療に難渋することがある」

YOU「結局今の社会で、じゃあ23、24歳、大学を出たら子どもを産みましょうっていうのは、なかなかありえないと思うんですよ、選択として。なんかでも、人の体とかって、進化するじゃないですか。今、30代、40代で産む方が増えてくると、そうやって変わっていかないですかね」

大槻さん「やはりね、進化はね、ゆっくりなんですよね。例えば月経っていう現象は、猿はどのぐらい持っているかっていうと、3000万年とかそういうスケールでずっと持っているものだから。今減らしたいって言っても、やっぱり進化が起きるにはですね、何百万年とかそういうタイムスケールで待たないと、月経が減るっていうことは、自然にはないと思うんですね」

YOU「逆に、じゃあ、男性は女性の月経に当たるような、なんかこう、自分ではコントロールしにくくて、人にもなかなか相談しないみたいな、体のことってあるんですか?」

千原ジュニア「ないです」

大槻さん「ないですよね、うん」

YOU「のんきね」

大槻さん「月経の話をね、聞いてしまうとどうしても、それに比するようなものはないような感じがしますね」

千原ジュニア「全くないです」

YOU「だとすると、ちょっと不公平ですね」

千原ジュニア「妊娠・出産のためとは言え、そこまで大変じゃなくてもいいんじゃないのと思いますけどね」

YOU「そうだよね」

(後編へ)