ウィズコロナの新仕事術(前編)

NHK
2022年1月12日 午後6:19 公開

(2022年1月3日の放送内容を基にしています)

新型コロナの不安が続く中、2022年はどんな年になるのでしょうか?

集まったのは、コロナ禍で過去最高の売り上げを記録している経営者や、シリコンバレーで活躍する医師、そして大企業のトップ。

「変化の時代に、どうチャレンジすればいいのか?」「会社とわたしたちの関係はどう変わるのか?」、一方「“変化についていけない”という人も多い中、苦境の声にどう応えるのか?」

ウィズコロナ時代の働くヒントを探ります。

<あなたは“どこ”で“どう”働く?>

武田アナ「さあ、今回、私たちが考えていきたいのは、まずウィズコロナ時代、私たちは“どこ”で“どう”働いていけばいいのでしょうか。コロナ禍で続々と生まれている新しい働き方についてご覧ください」

今回出演の山井梨沙(やまい・りさ)さんが社長を務める、アウトドア用品メーカー「スノーピーク」では、社員たちは、自分の好きな場所で自由に働いています。コロナ禍で自然志向が高まったことを追い風に、会社の業績は過去最高を更新しています。

本社の敷地は、なんと 15万坪。キャンプ場が併設されていて、社員は、ミーティングや商談を、焚き火を囲みながら行うこともあります。

製品開発担当者「リラックスして打ち合わせしたりとか。頭もフレッシュに常にできている」

先月、会社が行った新しい働き方の体験会には、製造業やITなど様々な業界の企業が参加しました。「オフィスで机に向かって」という日本の当たり前を覆す働き方に、注目が集まっています。

参加者「どういう人と、どういう場所で、どういう仕事が重要かって、やっぱり考えるステージに来ているのかなって思います」

副業など、新しい働き方の可能性を広げているのが、「ビザスク」CEO・端羽英子(はしば・えいこ)さんが手がけるビジネス。大手精密機器メーカーに勤めるかたわら、副業をしている40代の男性は、自分の経験やスキルを、端羽さんの会社のサイトに登録。

ノウハウが欲しい企業から声がかかると、在宅勤務の合間にアドバイスをしています。報酬は1時間で3万円です。

副業をしている40代男性「僕にとって当たり前のことが、クライアント様にとっては当たり前じゃなくて、それを喜んでいただけたこともありますし、刺激になっている感じです」

仕事は1時間単位で請け負うことができ、登録者数はコロナ禍で増え続け、40万人を超えています。端羽さんは去年11月、経済誌「フォーブス」で「アジア太平洋地域で影響力のあるビジネスウーマン20人」のひとりに選ばれています。

武田アナ「新型コロナウイルスが世界に広がって2年、ご自身の暮らしや働き方、そして、皆さんの会社にとって、何がいちばん変わったかということについて、お伺いしていきたいんですが、まず山井さん」

山井梨沙さん(アウトドア用品メーカー社長)「はい。今、世の中的に今までの延長線のことをやっていても、企業として存続が危ういって感じられた方ってすごく多いと思っていて、私自身の経営者としての存在意義っていうのもすごく考えましたし、社員1人1人も個人単位で考えてくれた結果、すごく主体性が上がった。ほんとコロナ影響もあったので」

武田アナ「社員の皆さんの主体性」

山井梨沙さん「はい。逆境に強くなるっていうのは、何か新しいことが始まる、ひとつのきっかけになっているんじゃないのかなと思います」

武田アナ「時間や場所にとらわれないばかりか、いわば遊びながら働くと。そんな働き方をいち早く採り入れてこられたのは、どういう考えからだったんですか」

山井梨沙さん「事業自体が遊びをクリエイトする、遊びの中にある体験価値を作っていくのが仕事だったので、(本社敷地に併設しているキャンプ場は)お客さん、一般のキャンパーの方たちも利用できるキャンプ場なんですけど、社員も日々、自分たちの製品がどうやって使われているのかとか、実際それを見て、自分たちも外に机を持ち出してとか、テントを張って、外で自分たちも体験をしながら、頭だけじゃなくて体も動かしながら、体験から新しい製品、サービスを生み出し続けられている会社なので。ほんとにひと言で言うと楽しいですね」

武田アナ「私もそうなんですけど、テレワークでね、働く場所が自宅に変わっただけ。オフィスが、そのまま自宅に移ってきたというだけの方も多いと思うんですよ。この、時間や場所にとらわれず働くということを、じゃあどうすれば、さらなる生産性や創造性アップにつなげていけばいいのか、そこはどうお考えになってるんですか」

山井梨沙さん「在宅のミーティングって、アジェンダベースの、わりと答えが決まっていることに対しては機能していると思ってるんですけど。やっぱり、うちの会社の開発ミーティングとか新規事業のミーティングとか、なかなか現場の空気感が伝わりにくいっていうのは、すごくあったので、目的に対しての使い分け、動かなくてもできることはウェブでやって、何か新しい価値を生み出さなきゃいけないことは“対面”みたいな、そういう座組みは社内でもできてきているように感じますね」

武田アナ「さあ、そして端羽さん。副業というとなかなかハードルが高いなというイメージもあったと思うんですけれども、自分では当たり前だと思っていた経験が、実はほかの会社では高く売れるってことがあるんだなというのは、ちょっとびっくりしました。実は1人1人の能力っていうのを、もっと活用できる可能性があるってことですよね」

端羽英子さん(人材マッチングサポート会社CEO)「これはほんとにそのとおりで、皆さん登録して活躍してくださった方から、『自分に案件があると思いませんでした』と。『自分の知見が、ほかの業界の人から見ると当たり前じゃない知見』だったんだと、自分にはこんな強みがあったのかっていうふうに。皆知見者に聞きたいっていうと、よくわれわれ、『20年しか働いてないから』と。『世の中には30年も40年も働いてる方もいるから』っておっしゃるんですよね。でも、その業界の中の第一人者の声だけを聞きたいわけじゃなくて、ほかの業界の方が学びたいんだっていうところに価値があると」

端羽英子さん「2015年、16年ぐらいから、例えば副業解禁とか、モデル就業規則の改定とかの、働き方改革っていうのはすでに起きていたんですけれども、やっぱり会社のほうが、基本的には対面で仕事するのが当たり前です、と。もしくは社外の方、ミーティングするにしても来ていただかないといけませんと。でもこれが、コロナによってすべてのミーティングが1度オンライン化してみて、そうすると、1時間の社外の知見も、より活用しやすくなって、自然に今までの仕事のやり方で、勝手にハードルだと思っていたことが、案外やってみたら、アジェンダさえ明確なものであれば、オンラインのコミュニケーションでよかったじゃないかって。これがやっぱりウィズコロナで進んだ部分なんじゃないかなと思います」

リモートで参加の、大手飲料メーカー「サントリーホールディングス」社長、新浪剛史(にいなみ・たけし)さん。国の経済政策を話し合う経済財政諮問会議のメンバーでもあります。コロナ前には想像できなかった働き方の変化が起きていると肌で感じています。

新浪剛史さん(サントリーホールディングス社長)「これは驚くべく超優良企業と言われるような会社でも、副業をやられる方が増えてるって、この事実を見て私は愕然としてるんですが。先ほど、端羽さんがすばらしいことおっしゃってたのは、『自分が持ってるものって、ほかの方々にとっては、すごいことなんだ』と、こういう気づきも出てくるわけで。そうすると、『ひょっとして私、将来何かほかのこともやれるかもしれない』とか、そういうことにもなってくるわけで。おもしろいのは世の中が3割ぐらい、そうなってくるとみんな動いていくわけですよね。今、そういう方向に動いてると思います。驚くデータがありまして、日本は先進国の中でですね、エンゲージメント(仕事に対するやる気)が、実は先進国の中で最低なんですね」

新浪剛史さん「意外な事実でして、自分がやってることが、すごくおもしろいと思ってる方が半数もいないんです。自分自身がやらされ感だとか、もしくは、無駄なんだけど、ここにしがみついてかなきゃいけないんだよなって方々も多くおられると。そういった意味で、私たち経済人として考えなきゃいけないのは、本当にやりたいこと、もしくは成長産業に人材が流動するような仕組みを作ってかなきゃいけないんですね。そしてまた、これは驚くことに日本はバブル以降、企業は教育研修費を思いっきり減らしてきてるんです。人を大切にという日本企業はですね、実は実態は、賃金はですね、非正規の方々をたくさん雇い、そして、いわゆる教育研修を減らす、と。こういうことで、人に対する投資をしてきてないんですね。そういういろんな変化を、われわれ経営が作り上げていかなきゃいけない。そういうティッピングポイント、まさに変わんなきゃいけない、これが、コロナが故にですね、われわれ経営は考えるそういうタイミングに来たと思います」

<「会社」と「わたしたち」関係はどう変わる?>

武田アナ「働き方の選択肢が広がっていくことで、会社と私たちの関係はどう変わっていくのか。こちらのデータをご覧ください」

希望する働き方が変化していることをうかがわせるデータがあります。社員1000人以下の会社では、7割近くが、「同じ勤め先で長く働くことにはこだわらず、仕事内容などを優先する」と回答。1000人より多い会社でも、その数は半数近くにのぼっています。

池野文昭さん(医師・スタンフォード大学主任研究員)「例えば、日本っておもしろくて、大学を卒業して一斉にみんな就職して、60歳または65歳で一斉に退職するっていう社会システムなんですけど、たぶん、世界中でほかにこんな国はないと思うんですね。アメリカではありえない話だと思うんです」

アメリカ在住の医師で、スタンフォード大学主任研究員の池野文昭(いけの・ふみあき)さんです。

21年前に渡米した池野さん。日本にいたころには想像できなかった、多様な働き方が実践できているといいます。

シリコンバレーで200社を超える医療ベンチャーの研究や開発などに携わり、投資家としても活動しています。リモートワークをフル活用し、日本の10以上の大学で客員教授などをつとめるほか、企業や自治体にもアドバイスをしています。

池野文昭さん「日本人っていうのは世界一の長寿で、かつ健康寿命も世界一。ということは、向こうたぶん20年ぐらいは、ひょっとしたら現役で働けるような体力も活力も、精神的にもある状況下で、そこでストンって切れてしまうと。その間、同じ会社にいて同じタイプの仕事だけをしていると、ひょっとしたら65歳以降に、時代についていけなくなってるリスクはあると思うんですよね」

池野文昭さん「私自身ですね、34歳のときに渡米して、6年ぐらい研究を一生懸命やりましたけど、だんだん自分の知識とか経験が、周りの人から遅れてるなっていうのを、だんだんだんだん自分で実感してきたんですね。私自身はですね、40歳から45歳とか、ちょうど社会・会社にも慣れてきて、でも次、第二の人生も含めて、ここからまたひとつ違うギアを入れる、違う種類の知識を身につけるっていうタイミングとして、45歳ごろっていうのは、タイミングとしてはベストかなと思ってですね」

武田アナ「新浪さん、まさにですね、定年や終身雇用について提言されてきてますけれども、私たちはどう働いていくべきだとお考えなんでしょうか。根本のところをお聞かせいただきたい」

新浪剛史さん「まさに池野さんがおっしゃったとおりで、60歳から、今度65歳に定年を延ばし、そして70歳になっていくというような、そういう流れができてきつつあるんですね。しかし、そのあとの人生長いわけですから、リカレント教育(社会人の学び直し)だとか、場合によっては違った教育訓練だとか、そういったものを官民でやるとか、こういうようなことをやりながら、60歳、70歳でも社会とのつながりを持てるようにしていく、そういうような人生設計をするように企業も働きかけますし、自分自身もまず考えるってことをやんなきゃいけない」

新浪剛史さん「それとですね、この激動の時代、今いる大企業が本当に10年、20年後あるかどうかわからないんですよ。そういう中で、自分自身が置かれた立場で会社に寄りかかると、その会社そのものがほんとに大丈夫ですかって、常に自分の置かれた立場ってものを考えたら、私は生涯教育、自分自身を学びの、何かしら学べる社会というものを作っていこうと。それに企業も、そして行政も携わることがすごく重要だと。そういった意味で提唱してるわけで、何か定年を早めて、『あなたやめなさい』っていう意味ではなくてですね。やはりどこかのタイミングで本当に考えないと、自分の人生楽しくなくなっちゃうよ、そういうことを言いたかったんです」

武田アナ「新浪さん、ただですね、私自身今50代半ばになって、ずっとNHKで働いてるわけですけれども、振り返ってみてですね、やっぱり忙しい日々の仕事をこなしながら、さらに自分を高めていくっていうのが、なかなかこれは難しいなと思う方もいらっしゃるんじゃないかと思うんですよ。『そうは言ってもこの忙しさの中で、また学び直しとか、そんなこと言われてもな』っていう、そういう方も多いんじゃないかと思うんですが、いかがですか」

新浪剛史さん「ただね、武田さんね、実は40代、50代の人が副業を始めてるんですよ。20代、30代の人よりも、40代、50代の方々が、将来に対して、『やっぱり自分も接点を何かしら持って学びたい』、『自分のノウハウをまた生かしたい』、こういうふうになってきてるのも事実で、20代、30代じゃなくて50代の方々もおられるんで、武田さんもできますよ」

武田アナ「そうですかね、はい。だといいんですけれども」

<明日からできる自己PR 武田アナが実践>

終身雇用が崩れつつあるいま、自分がどこまで通用するのか、不安に感じる人も多いと思います。「自分の強み」を改めて知ることが大切だと、端羽さんがとっておきの方法を教えてくれました。

端羽英子さん「簡単にですね、3分間で、自己紹介していただきます。アナウンサーとしてご自身が、どうほかのアナウンサーの方と違うのかという、そういう自己紹介していただいてもよろしいでしょうか」

武田アナ「わかりました。実はちょっとメモも用意してきましたので、頑張ってやりたいと思います。私は1990年にNHKに入局いたしまして、アナウンサー一筋、今年で33年目を迎えることになります。東京のほか、熊本、松山、沖縄で勤務しました。現在は大阪で勤務をいたしております。地方から日本を見るということも、できるのではないかと思っております。特に印象に残っていますのは、やはり東日本大震災や熊本地震といった大災害ですね。その災害が起きた当初もそうですし、その後の人々の歩みも伝えてまいりました」

災害報道の先頭に立ってきた経験や、全国各地で勤務した経験などをアピールしました。

端羽英子さん「皆さんお手元の紙にですね、心に残ったキーワード、武田さんってこういう方なんだなっていう心に残ったキーワードを3つ書いていただきたいんです。で、武田さんには、『3分話して、自分はきっとこう覚えてもらえたはずだ』、というのを書いていただきたい」

武田アナ「わかりました。早速書きます。ちょっと緊張するな。はい」

端羽英子さん「はい、それでは一斉に。せーの、ジャン!全然違いますね」

武田アナウンサーが挙げたのは、「緊急報道などの経験」「地方の視点」「人々の心に共感し伝える」。

一方、新浪さんは、「地方都市のプロ」「報道のプロ」「沖縄を知っているアナウンサー」。池野さんは「聞き上手」「オールラウンドプレーヤー」「経験に基づく共感力」。山井さんは「価値観が広い」「他者思い」「安心感」でした。

端羽英子さん「『緊急報道などの経験』。どなたも選ばれなかったのが、武田さんは、いちばん上に来てます」

武田アナ「うーん。そうですね。これが私のいちばんの強みだと・・・」

端羽英子さん「しかも、結構時間も長かったんですよね、緊急報道のところ」

武田アナ「はい。災害のことについてもお話ししました」

端羽英子さん「そうですね。これがやっぱりこのワークショップのポイントでして、自分が一生懸命、強みなんじゃないかと思って伝えたことが、まず相手には伝わってないと」

武田アナ「私はでも、ずっとニュースをやってきたんですよ。にもかかわらず・・・」

端羽英子さん「そう。にもかかわらず、まずそれが伝わってないということがひとつと、あとは、そうじゃない価値観を拾っていただいているっていうところがあって、例えば「オールラウンドプレーヤー」っていうのは、ご自身では明確におっしゃらなかったんですけど、3分の中でものすごく漂ってきてた、とかですね。あと、全然出てこなかったですけど、沖縄を知っているとかですね。そしたら、『意外とこっちを推していこうかな』っていうものにも気付くと」

武田アナ「こうやって拝見しますと、確かに『聞き上手である』とか、『価値観が広い』とおっしゃいますけど、僕、いろんな幅広い経験をさせていただいているんですけど、必ずしもそんなに価値観が自分で広いなとは思わないんですよ(笑)」

山井梨沙さん「『聞き上手』、私も書こうと思いました」

武田アナ「あ、そうなんですか。妻からはいつも、『あんた全然人の話全然聞かないね』と言われるんですけど」

端羽英子さん「やっぱり人から見ると、自分が持っていない強みがある。これをわれわれ、“キーワードのかけ算”と言ってまして、キーワードをかけ算していくとオンリーワンになれると」

武田アナ「キーワード」

端羽英子さん「例えば『インターネットについて話せます』って言うと、インターネットについて話せる人がたくさんいるわけですよね。でも、『何業界の何業界の、どういうシステム使った効率化について話せます』とか、そうやってキーワードを重ねていく。そのことに詳しい人は、そんなに世の中にたくさんいなくなるぐらいまでキーワードを重ねていくと、競争しなくていい自分、自分だけの強みが見つかっていく」

武田アナ「これはほんとに1人1人働く人にとって、すごく勇気のいることですけれども、うん、大事なことのように感じました。池野さん、どうですか」

池野文昭さん「自分の1つの人生を小説に例えるとですね、まだ皆さんお若いので、たぶんまだ3割ぐらいしか、まだいかないわけですね。あと7割、小説書いてかなきゃいけないわけですよ」

武田アナ「私50代半ばですけど、まだ小説の残りが」

池野文昭さん「われわれ同じ年なので、僕、自分で言ってるんですけど、まだ小説の5割です。あと半分やんなきゃいけないんですよ」

武田アナ「そこはまだ、いくらでも書きようがあるということですね」

池野文昭さん「それがモチベーションになると。それをできる、まさに新浪さんや、会社、経営者たちがですね、社員にそういうことを提供できる環境に努めてもらうっていうのは、すごく重要かなと思いました」

(後編へ)