命をつなぐ生きものたち 第3集 ギリギリの恋

NHK
2022年9月4日 午後9:48 公開

番組のエッセンスを5分の動画でお届けします

https://movie-a.nhk.or.jp/movie/?v=lyo3m917&type=video&dir=XAw&sns=true&autoplay=false&mute=false

(2022年9月4日の放送内容を基にしています)

3回シリーズでお届けしている「命をつなぐ生きものたち」。NHKとイギリスBBCが3年をかけ、最新鋭8Kカメラで、世界各地の生きものたちの驚きの求愛戦略に迫りました。

今回見つめるのは「ギリギリの恋」です。

命を落とすかもしれないギリギリの極限環境で恋をするもの。恋すること自体が命がけのもの。そして、私たち人間による環境破壊で、子孫を残せるかどうかの瀬戸際に追いやられているもの。さまざまなギリギリの状況の中で、生きものたちはどうやって恋を実らせるのか。そこには、私たちの想像を超えた切実なドラマがありました。いよいよ最終回。命を巡る不思議な物語を見にいきましょう。

小池 栄子さん「今日は東武動物公園に来ています。関東でいちばん大きい動物園で、1200頭もの動物がいるそうです」

大泉 洋さん「これまで2回にわたって『生きものの恋の駆け引き』を見させていただきました」

小池さん「今回はどんなものが見られるんでしょうか。今回も、オスとメスの進化を専門にされている総合研究大学院大学 学長 長谷川眞理子さんにお話を伺います。長谷川さん、今私たちがいるのは動物園の裏側なんですよね」

総合研究大学院大学 学長 長谷川眞理子さん「特別に動物園の裏側に入れさせていただいたの。これは、ベンガルトラです(下写真)。白っぽいのは珍しいのだけど…そもそもベンガルトラというのが、もうほとんどいないんですよ。珍しくなってしまったの。人間が増えて生息地が破壊されて、毛皮をとられたりして、どんどん少なくなって、今は絶滅危惧種。ギリギリっていう動物なんです」

小池さん「今回のテーマは、生きものたちの『ギリギリの恋』だそうです」

大泉さん「『ギリギリの恋』というのはどういうことなんでしょう?」

長谷川さん「極限の環境…本当に命の危険があるような危ないところで、生きものたちがどうやって次の世代をつくっているのか、それを見ていきましょう」

<コウテイペンギン オスとメスの絆>

最初の舞台は、地球で最も寒い場所、南極大陸・アトカ湾です。冬の始まり、ふだんは海を泳ぎまわっているコウテイペンギンがやってきます。数千羽のペンギンたちが、凍った海の上を50kmも歩いて、出会いの場にやってきました。

総勢1万羽。どうしてわざわざ極寒の地にやってくるのでしょう。理由は、ヒナをより安全に育てるためです。親鳥は、海が凍り天敵のシャチやカモメが南極周辺からいなくなる冬に恋をして、卵をかえすのです。

早速パートナー探しを始めます。オスが、鳴き声でメスにアピールします。コウテイペンギンは、ふだんは単独で暮らしますが、恋の季節は、基本的に毎年同じ相手をパートナーに選びます。鳴き声を頼りに、パートナーと再会を果たします。厳しい環境で子孫を残すには、一緒に子育てを成功させた経験のある相手とまた組む方が、確実なのです。メスが歩み寄ってきました。寄り添う2羽。動きをシンクロさせます。再会する度に、こうしてお互いの絆を深め合うのです。そして、結ばれました。

数週間後、メスは無事に卵を産んでいました。しかし、ここからが大変です。コウテイペンギンたちは、ギリギリの状態に追い込まれていきます。ここは海から遠いため、この1か月、食べ物に全くありつけていません。特にメスは産卵で、体重の4分の1を失っています。

さて、どうするのでしょうか。

メスがオスに卵を託しました。オスは、卵を冷やさないよう足の上で温めます。メスは、一旦この場を離れ、海に戻って栄養をつけ、さらにヒナの食べ物を集めてこようとしているのです。海までは往復100kmもの道のりがあります。コウテイペンギンのゆっくりとした歩きでは、どんなに急いで戻っても2か月はかかります。その間、オスはさらに飲まず食わずで、卵を温め続けます。

残されたオスたちに、荒れ狂う南極の嵐が襲いかかります。気温は氷点下60度。オスたちは身を寄せ合い、寒さに耐え続けます。しかし、すべてのオスが卵を抱き続けられるわけではありません。あまりの過酷さに、卵を手放し海に帰らざるをえなくなったもの、そして、力尽きて命を落とすものもあります。

2か月が過ぎました。オスの足元には、ヒナが産まれています。そこへついに、メスが戻ってきました。体の中に、食べ物をたっぷり蓄えています。我が子を天敵から守るため、あえて過酷な環境での子育てを選んだコウテイペンギン。オスとメスの固い絆で、命がつながれています。

大泉さん「なんだか感動的…すごかったですね。人間っぽく見えるんですよね、一列で歩いているところから。やっぱりあそこで産む方が、天敵がいないから確実にヒナを育てられるということなんですね」

長谷川さん「そうですね。南極も昔からずっとあんなに寒かったわけではなくて、だんだん寒くなったんですよ。何万年の間に。でもそこを頑張れば、天敵もいないし…残ったということですね」

大泉さん「ペンギンが同じペアがいいというのは、なぜなんでしょう?」

長谷川さん「リズムがあう、気があう。同じペアだと、どう反応するかよく分かるから、一緒に(繁殖が)やりやすい。毎回だれかを探すより、気心の知れたペアがまた会って、一緒に(繁殖)する方が効率もいいし、ヒナの生存率も上がっているみたいですね」

大泉さん「本当に毎回、同じペアなんだろうか?」

小池さん「私たちから見たら、どのペンギンも同じに見えますけれど」

長谷川さん「人間の観察者も、ちゃんと見分けています」

大泉さん「長い旅をして『今年も楽しみだな』ってやってきて、探していたら『あー!』って言って、違う人と…みたいなことはないんですか?ペンギンは」

長谷川さん「声の質で見分けているのね、基本的に」

小池さん「オスとメスがお互いを信じ合っているというのは、私たちもペンギンを見て学ぶことはありますね」

長谷川さん「人間から見たら、そういうのがロマンチックというふうに思えるでしょうけれど…でももっとオスとメスがいろいろと激しいのもあるんですよ。人間から見たらとんでもない話もあるんです」

大泉さん「ロマンチックだけじゃないの?」

<命がけでメスに近づく オスの運命は!?>

ここは、オーストラリアの森の中。メスに近づくことすら、命がけのものがいます。

ニセニワカマキリのオスです(下写真)。

繁殖期を迎え、パートナーを探しているようです。

こちらはメス(下写真)。恋の季節、オスを引きつける化学物質を発して誘います。

メスに気づいたオス…次の瞬間!

メスがオスに抱きつきます。左側のメスが、大きなカマでがっちりオスをホールド!(下写真)

「カマキリの恋は、なんて激しく情熱的!」と思いきや…右側のオスをよく見ると、体に頭がついていません。なんと、メスがオスの頭をもいで、食べてしまっていたのです。

驚いたことに、オスの体は、胴体だけでメスと交尾しようとしていました。実は、オスの腹部には神経が集中しており、頭がなくなっても、しばらく動き続けることができるのです。力尽きるまでの数時間、胴体だけの状態でメスと結ばれました。

日本でも身近なカマキリ。その恋は、命を落としてもなお子孫を残す、壮絶なものなのです。

生きるか死ぬかの恐ろしい恋。イギリスの草原でも、驚くような恋の駆け引きが繰り広げられています。

草やぶの奥にいるのは、キシダグモのオス。恋の季節を迎えています。

メスを探している真っ最中なのですが、獲物を捕まえました。「恋よりも食い気?」と思ったら…獲物を糸でぐるぐる巻きにし始めました(下写真)。一体、どうするのでしょう。

オスは、そのまま獲物を運んでいきます。

草むらに伸びる一本の糸…オスを誘い出すため糸を操っていたのは、オスよりも大柄なメスです。

オスは慎重にメスに近づきます。そして、運んできた獲物をメスが受け取りました。実は、これがオスの作戦。メスにプレゼントを渡し、メスが食事に夢中になっている間に、卵を受精させます。もしプレゼントをおろそかにすると、オスは瞬く間にメスに襲われ、食べられてしまうのです。

無事に交尾を終えたオスが、また動き出しました。「プレゼントさえあれば、食べられずに済むはず」。早速、次の獲物を物色し始めました。しかし、動きの速い小さな虫を捕まえるのは簡単ではありません。オスは、ずる賢い作戦に出ました。なんと食べることのできない花びらをラッピング。入念に巻いていきます(下写真)。

その「偽のプレゼント」をメスのもとへ届けます。中身がバレたら、自分が食べられてしまうギリギリの状況ですが…うまくだませました。そのままメスと結ばれます。

オスは次々と偽のプレゼントを、メスたちに渡していきます。いかに命を落とさず、恋を実らせるか。メスとの命がけの関係の中で編み出された駆け引きなのです。

大泉さん「カマキリは切ないわ。むちゃくちゃじゃないですか」

長谷川さん「昆虫って、ほ乳類とは違った体のつくりで、感覚世界も全然違うんですよね」

大泉さん「でも『栄養』と言ったって、自分が子孫を残すためのパートナーを食べなくていいでしょう?」

長谷川さん「メスにとって食べることは大事なのよ。オスは精子を渡せば、(遺伝子を)つなげられるから」

小池さん「栄養を他の昆虫でとるというのではダメなんですかね?」

長谷川さん「とても面白い研究結果があります」

小池さん「カマキリの卵の個数。オスを食べた場合が88個、オスを食べない場合が37個」

長谷川さん「タンパク質をとったかとらなかったかで、メスの卵の個数が2倍ぐらい違う。カマキリの産卵は秋なんです。秋は食べるものが少ないし、バッタとかいても逃げるのが速いですから、精子をもらったあとのオスの体は、重要な栄養源なんです」

大泉さん「その点、キシダグモ。あのオスは賢い。最初はちゃんと本物をあげたけれど、そのあと小さい虫を捕まえられないとなったら、全然食べられないものをくるみ出して」

小池さん「でもあれだって、バレたら危険なわけですものね」

長谷川さん「オスにとって、何をしたいか。メスにとって、何がいいか。ちょっとずれているわけですよね。利害の対立というか。そういうのを『性的対立』と呼びます」

長谷川さん「オスは次のチャンスがあるなら生きていたいじゃない。でもメスとしては、今、目の前にあるものは栄養だから、全部食べたい。そうすると、『食べるぞ』というメスと、『逃げるぞ』というオスは、対立しているわけね。メスはなんでも食べたいから、メスがこれ本当に食べられるかなと探している間に交尾してしまうのは、一つの戦略ですよね」

小池さん「さすがに、これ以上の『ギリギリの恋』はないですよね?」

長谷川さん「人間の影響でね、環境が破壊されてギリギリという動物はたくさんいるので、そういうのを見ていきましょう」

<森林破壊で異変 オスとメスの関係>

今、私たち人間の暮らしが、生きものたちの命をつなぐ営みに大きな影を落としています。マレーシア・ボルネオ島北部を流れる、全長560kmの大河・キナバタンガン川です。

この川沿いで暮らすのが、島の固有種・ボルネオゾウ。こちらはメスです(下写真)。

ふだんは子どもや血のつながりのあるメスだけで暮らしています。オスと接するのは、恋の季節を迎えた数日間だけ。オスがいると、子どもがオス同士のケンカに巻き込まれてとても危険なため、オスを群れに受け入れることはめったにありません。

ところが、繁殖期でもないのにオスがやってきました。牙が長いのがオスの証拠です(下写真)。メスたちも嫌がる様子はありません。実は、本来あまり見られないこうしたオスとメスの接近が、最近、頻繁に目撃されています。一体、なぜなのか。

原因は、環境の急激な変化です。

ゾウが暮らす熱帯雨林のすぐ隣には、整然とした畑が広がっています(下写真)。すべてアブラヤシの農園です。果実からとれる油・パームオイルを生産するため、急速に開発が進められてきました。農園開発のための大規模な伐採で、ゾウが暮らしていた森のおよそ40%が失われています。

ゾウたちの好物は、森に生える新鮮な下草です。森の減少により、食糧危機に直面しているのです。

そこでメスが頼るようになったのが、ふだんから広い範囲を歩き回り、食べ物のありかに詳しいオスです。

この日、オスがメスの群れを連れて、川のほとりにやってきました。食べ物がまだ残っている対岸に、メスたちを連れていこうとしているようです。しかし、川は深く、ゾウを襲うこともあるワニが潜んでいます。こんな川を渡るのは、オスにとっても命がけです。

まず、オスが川を渡り始めました。ワニが潜んでいないか、流れが急な場所はないか、探りながら進みます。

渡り切ったオスを見て、メスたちもあとに続きます。なんと、小さな子どもも一緒です。我が子が命を落とす危険があっても、食べ物は手に入れたい。

人間がもたらした食糧危機が、メスたち本来の行動を変え、幼い子どもに大きなリスクを負わせています。森の破壊は、ゾウたちの命をつなぐ営みまで、壊しつつあるのです。

<海洋ゴミでオス激減 切実な繁殖事情>

こちらはハワイの海。ここでも人間の影響で、子孫を残す営みにとんでもないことが起きています。

コアホウドリが、パートナーが待つ繁殖地に帰ってきました(下写真)。コアホウドリは、生涯同じパートナーと連れ添います。毎年、求愛のダンスを踊り、ペアは絆を深めます。

しかし今、コアホウドリたちの暮らす場所に、ある異変が起きています。人が海に放棄したゴミが、コアホウドリの住む島にまで大量に漂着しているのです。

狩りに出る頻度が高いオスが、食べ物と間違えてゴミを飲み込み、命を落とす例が増えています。ハワイの繁殖地では、オスの数はメスより4割も少なくなっているのです。オスの激減で、メスたちは窮地に追い込まれています。

こちらのメス(下写真)。辺りをウロウロとさまよっています。どうやら、交尾をしたオスが帰ってこないようです。海に食事に出かけ、命を落としたのかもしれません。オスを失ったこのメスは、まもなく産まれる卵を一緒に温めてくれる相手を見つけなくてはなりません。

そこに1羽がやってきました。

いい雰囲気…新たな相手に巡り合えました。

数日後。あのメスが、卵を一つ産み落としました。

メスは、産卵で失った体力を回復させるため、これから数週間、海に出て食事をします。その間、新しいパートナーに大切な卵を託します。子育てを成功させるためには、パートナーと交代で卵を温めなくてはなりません。

3週間後。海に出ていたメスが戻ってきて、パートナーと交代します。

しかし…。

メスの卵が、巣から押し出されています。

そして…なんとパートナーが、「自分の卵」を産んでいました。

そう。この新たなパートナーは、実はメス。すでに交尾していた別のオスとの間にできた卵を産んだのです。戻ってきたメスに自分の卵を託し、パートナーも、食べ物を探しに海へと出かけていきました。

親鳥の体の大きさで温められる卵は、一つだけです。メスは、外に出された卵を温めようとしますが、もう冷たくなっていました。

すると今度は、パートナーの卵を温め始めました。自分の卵かどうかに関わらず、巣の中にある卵を温めようとする本能があるのです。

2か月後、1羽のヒナが誕生しました。

最新の調査によると、ハワイの繁殖地では、驚くことにコアホウドリのペアの3割が、メス同士だといいます。オスが少ないため、すでに相手のいるオスと交尾だけをして産卵。子育ては、毎年同じメス同士で行うというケースも報告されています。しかし、メス同士では、どちらか一方の卵しかかえすことができません。人間の捨てたゴミが、思わぬ悲劇を鳥たちにもたらしているのです。

大泉さん「てっきりオスなのかと思っていたらメスなんですね。切ないですね」

小池さん「自分の卵じゃなくても本能で温めるんですね?」

長谷川さん「巣の中にあるものを温めるのは、いちばん強い衝動なので、そういうふうになるんでしょうね」

大泉さん「オスがいない中、ひとりでは温められないわけだから、1個はダメになったとしても1個は残るという選択をしているということですね」

小池さん「オスのゾウがメスを誘導してあげるのも、すごくいいことのように思えたけどね」

長谷川さん「オスは大きいし、オス同士が出会うとケンカするし、勇気があるというか無謀だから、人里に出たりする。そういうことに伴う危険というのは、いろいろなところに出てきます」

大泉さん「メスが、今まで子どものためにしなかった危ないことも、するようになってきているということなんですね」

長谷川さん「そうですね。それでその子どもがどう育つかとか、人の近くに慣れてしまうとか…動物の行動、いわゆる習性というのは、本当に長い時間かかって進化してきたものだから、この10年20年100年とか、すごい短い時間で変えてしまうのはちょっと異常ですよね。これから先、人間がずっと環境を変えて暮らしていったら、動物たちってどうなるでしょうね?」

小池さん「確実に、生きていくのは困難な状況になっていくから、絶滅危惧種が増えていくということですよね」

長谷川さん「もう今でもずいぶん絶滅してしまいました。だから今、動物園が大切な場所になってくるんですよね」

小池さん「この動物園の中で、繁殖させたりするということですか?」

長谷川さん「そうです。昔は、動物園は生きものを見て楽しませる場でしかなかったけれど、最近は絶滅しそうな動物を一緒にさせて、子孫を残していく保全の場所という役割がすごく強くなりました。ここの動物園で、ミナミシロサイの繁殖を進めているんですけれど、準絶滅危惧種です」

大泉さん「繁殖が難しいポイントというのは、どこになるんですか?」

長谷川さん「動物園は、たまたまいるオスとメスを一緒にするわけだから、必ずしも気が合うとは限らない。結構長い時間一緒にいて、においを嗅いだり、一緒に遊んだりしないとその気にならない。人間もそうかもしれないけれど、波長が合わないとやっぱりその気にならないんですね」

小池さん「重要な役割を担っているんですね。動物園って」

長谷川さん「本来の環境を守らないといけないし、動物園で繁殖できたら、できれば本来の生息環境に戻って欲しいですよね」

<人が「恋の手助け」! 生息数を回復するパンダ>

人間の影響でギリギリに追い詰められている、生きものたちの恋。その一方で、人間が「恋の手助け」をすることで、野生での繁殖が成功しつつあるものがいます。

ジャイアントパンダです。

パンダは、その珍しい姿から、かつて狩猟の対象となり、生息地の開発も追い打ちをかけて数が減少。一時は1000頭を下回り、絶滅の瀬戸際にいました。

中国では人工飼育での繁殖を進め、毎年、赤ちゃんが産まれるようになりました。しかし、ある問題に直面します。オスとメスを引き合わせても、なかなか繁殖行動に結びつかなかったのです。それもそのはず…パンダも相手の好みにうるさいのです。

野外での調査から、メスのパンダは、高い木の上から〝自ら〟恋の相手を選ぶことが分かりました。恋の季節、メスは木に登って、鳴き声でオスにアピールをします。メスの鳴き声を聞いて歩み寄ってきたオスの中から、いちばん好みのものを選ぶのです。

こうした調査結果から、中国では、メスが相手を探せるよう、生息地での高い樹木の保全に力を入れています。するとこの30年で、野生のパンダは1100頭から1800頭にまで増えました。

パンダの親子です(下写真)。この幼いパンダもいつの日か恋をして、自分の子どもを未来に残していくことでしょう。

大泉さん「3回にわたりまして、われわれ『生きものの恋の駆け引き』と呼ばせてもらいましたけれども、いかがでしたか?小池さん」

小池さん「恋のあり方もいろいろなパターンがあって、多様性があるんだなと思いましたし、総合的にやっぱりメスは強いんだなと思いました。自分がこの世に誕生することもそうだけれども、命ってすごく神秘的だし、奇跡的なんだなって思いましたね。大泉さんはいかがでした?」

大泉さん「われわれ人間もそうだけれども、こうやって種族がずっと命をつないできたというのが、どれだけ奇跡的なことなのかという…メスは強かったかもしれないけれど、僕は全編を通して、オスはけなげだったなという気がしましたよ」

小池さん「優しいよね、オスってね」

大泉さん「僕はオスであることに、誇りを持ったな」

小池さん「それは良かった。先生はいかがでした?」

長谷川さん「本当に千差万別。生きものって、いろんなところに進出していって、その場所に応じていろいろなやり方があって。人間から見たら、とんでもないというようなこともあれば、すごくすんなりと人間的に感情移入できるものもあって…。連綿と続いてこなかったものは、絶滅して今見られないわけだから」

大泉さん「今ここに生き残っているわれわれも含めて、生きものたちというのは見事にその方法が成功して、今があるということですよね」

地球のありとあらゆる場所にあふれる生きものたち。そこに、恋を育む格好の舞台があるからこそ、命のかぎり子孫を残し続けてこられました。これから先も命あふれる星であるために、生きものたちが自由に恋をして命をつなぐことができる世界を、守らなくてはならないのです。