(2022年1月25日の放送内容を基にしています)
<巨大クラスターに見舞われた保育園>
幼い子どもたちにも感染の拡大が止まらないオミクロン株。全面休園に追い込まれた保育所や子ども園は、全国で過去最多の327か所(2022年1月20日時点)に上ります。
今月(2022年1月)19日から休園している東京大田区の保育園では、100人近い感染者を出すクラスターが発生しました。17日、月曜日。前の週に発熱した園児1人と、園児に関わっていた職員3人の陽性が判明しました。区とも相談して消毒を行い、翌18日も他の園児を受け入れました。しかし、園児や職員、保護者合わせて15人が次々陽性となりました。
社会福祉法人つばさ福祉会・渡部史朗常務理事「感染のスピード、そしてその感染力の強さ。実際にオミクロン株がこうやって入ってきたら、もう打つ手がない。止められないんですね」
最初に感染が確認されてから2日後の19日に休園。その後も感染者は増え続け、昨日(2022年1月24日)時点で93人にまで広がりました。中には、高熱やおう吐など、比較的重い症状が出た園児や保護者もいます。
<ごみ収集 リスクと隣り合わせの現場>
私たちの暮らしを支える、ごみ収集の現場も危機にさらされています。人口70万人の東京・江戸川区を担当する清掃事務所では、(2022年)1月中旬、6人が相次いで感染。クラスターの発生に備え、200人いる職員の配置変えや、業務の縮小を検討しています。
現場が最も恐れているのは、イギリスなど海外で起きた事例です。作業員に感染が拡大し、ごみ収集がストップしたのです。
江戸川区環境部 加山均参事「世界的には清掃事業が止まってしまって、町が相当汚染されているということがありますが、何が何でもそこは起きないように、続けていくことの重要さ、使命感、そこがよりどころになるんじゃないか」
強い思いの一方で、現場で働く人たちは、これまでにないリスクと向きあっています。自宅で療養する人が急増し、ごみの中にマスクやティッシュに加え、使用済みの検査キットなどが混じるようになっているのです。マスクとフェイスシールドを着用し、慎重に作業を進めなければなりません。
江戸川区清掃事務所・金子達也さん「車の中が詰まってくると、飛散をする率が高まる。ウイルス自体が目に見えるものではないので。健康な方が出すごみと、感染して自宅で療養している方のごみが、はっきりわかるものではないので、職員はすごく気を遣っています。感染は怖いです」
<BCPを策定し事業継続へ>
2022年1月21日、経済団体とのオンライン会議を行った、萩生田経済産業大臣は、企業に対して事業を継続できるよう、対策の強化を要請しました。
萩生田経済産業相「まだ、感染症に対応したBCP(事業継続計画)を策定していない事業者に対しては、速やかに策定を呼びかけていただくようお願いします」
1日およそ500万人が利用する東京メトロは、大幅に運行本数を減らす“パンデミックダイヤ”という特別なダイヤを組み、運休を回避するシミュレーションを始めています。
東京メトロ鉄道本部運転部・成田喜代志さん「路線を止めてしまうということは、私たちの使命を全うしていないという部分になりますので、その辺だけは絶対避けていきたいなと」
<高齢者の生活を守る介護施設 事業継続の苦悩>
高齢者の生活を守る介護の現場では、事業の継続を巡り、難しい判断を迫られています。
リハビリや入浴などを行う那覇市の介護施設では、対策を徹底し、施設で感染者は出ていません。しかし、今月(2022年1月)上旬、職員5人を休ませ、3日間介護サービスの停止に踏み切りました。独自のルールで、濃厚接触者だけでなく、その疑いがある職員も一定期間休ませることにしていたのです。
自宅で待機していた作業療法士「本当に感染していないのか、判断が難しい。高齢の方が多くて、基礎疾患を持っている方ばかりなので、万が一、自分がうつすことがあったらと思うと、もやもやする」
感染対策と介護サービス。施設はその両立に頭を悩ませています。
介護老人保健施設パークヒル天久・上里忠樹事務長「マンパワーがいなくなれば、やれることができなくなる。リハビリに来るご利用者が何日も休むということは、体力が落ちたり、筋力が落ちたりということにもつながります。そこにはもっていきたくはない、そのはざまだと思うんですね」
<施設でのサービス中断 それでも高齢者を支えるために>
一方、施設でのサービスを中断せざるを得なくなっても、高齢者を支えようと奔走する事業者もいます。千葉県の施設では今月中旬、入浴介助をしていた職員が感染。利用者4人が濃厚接触者となりました。
そこで始めたのが、高齢者の自宅を訪ねるという取り組みです。濃厚接触者であっても、命と生活を守りたいと考えたのです。
訪ねたのは、認知症がある86歳の女性。高齢の妹と2人で暮らしています。1日2回の介助の前には、体温を測るなど、新型コロナの症状が出ていないか確認します。
支援の停滞が命の危機につながりかねない高齢者。職員は感染のリスクと向き合いながら、事業の継続を模索しています。
社会福祉法人翠燿会・花島京子さん「自分たちで感染対策をきちんとやりながら、利用者さんの生活を見守っていきたい。やっぱり命に関わることだし、独居の方も多いし。ぎりぎりなんだけど、みんなで協力してっていう感じですよね」
<感染拡大 誰もが無縁ではない現実>
感染拡大の影響はいま、誰にとっても無縁ではなくなっています。
全国で休園が相次ぐ中、子どもたちを受け入れている千葉県の保育園も、職員に濃厚接触者が出始め、いつまで園を開けておけるのか、見通せない状況です。保護者たちは、休園の可能性があることを伝えられていて、感染のリスクと暮らしの継続、その中で一人ひとりが揺れています。
保護者・松髙友亮さん「とりあえず朝、携帯を見て『よし、休園の通知が来てない』というような、毎日毎日どきどきしながら、気が休まらない。我が家では、そうなった場合に『子供をどっちがみる、休める?』という話を奥さんとしてます。どのようにしても回避できないリスクではあるのかなと、割り切らざるを得ないのかなという状況ですね」
<緊急提言・感染リスクの高い場面とは>
鎌倉アナ「私たちの暮らしを支えるインフラや社会活動が危機にひんしている、そういった現実が見えてきました。尾身さん、感染対策を進めながら、同時にどのようにこの社会生活を継続していくか、非常に難しいバランスだと思いますが、具体的な対策については、どんなお考えがあるんでしょうか」
尾身会長「これまでに2年間の呼びかけで、今あったこの“BCP(事業継続計画)”という言葉は、ほとんど使ったことはなかったと思います。しかし今回は、さまざまな職場で欠勤者が相次いで、このままだと、社会機能の維持がなかなか難しくなってくる、そうした中でこのBCPというのが今非常に重要になってきています。実はこれまでもテレワークということをずっと呼びかけてきましたよね。これまでも呼びかけてきた“テレワーク”も、BCPの文脈の中でも非常に重要なので、是非皆さんにはお願いしたいと思います」
鎌倉アナ「先回りしてそういった計画を準備しておくことが、両立するためにできる対策のひとつということですよね。国は社会活動も維持していくために、濃厚接触者の隔離期間を14日間から10日間に変更するなどの措置も行っています。暮らしを支えるエッセンシャルワーカーに関しては、感染者に最後に接触した日から6日目のPCR検査で陰性を確認するなどの条件で、待機の解除の方針も示しています」
鎌倉アナ「こういった変更に科学的な根拠はあるんでしょうか?介護施設で働いている方はこういった短縮、リスクの高い高齢者をケアするにあたって非常に不安も抱えていると思います。その辺はどうでしょうか」
尾身会長「確かに不安が多いと思います。これまで発症した人を対象にした疫学調査で得たエビデンスとしては、感染者に接触してから7日ぐらいたつと、大部分の人からウイルスがなくなっているんですね。さらに10日たつと、ほとんどの人からなくなるということがわかっています。確かに100%完全完璧ではないんですが、ちょっとした不確定要素があるので、それを補うために6日目のPCR検査を行うということになったと思います。ほんの数パーセントをなくそうとしてしまうと、どんどんと隔離期間が長くなってしまって、社会機能の維持に支障をきたすということで、これは非常に微妙なバランスの決断だと思います」
青井アナ「オミクロン株への感染対策と社会活動をどうやって両立させていくのか、まとめました。感染リスクが高いことが判明している、大人数・大声で換気の悪い場所でのパーティーや会食などは、当面の間、避けてほしいということですね。一方で、クラシックのコンサート、サッカーのJリーグ、プロ野球などは、これまでの経験により感染リスクが低いと判明しているので、現行の基本的な感染対策の継続と徹底を求めています」
青井アナ「今回の専門家有志が出した提言では、クラシックコンサートなど一部のイベントでは開催が許容されるものだったわけです。拡大の大きさから考えると驚いたんですけれど、この意図というのはどういうことなんでしょうか」
尾身会長「感染者を抑えるためには、感染のリスクに応じた対策が必要だと思います。今回の場合クラシックコンサートというのは、しっかりした感染対策をすれば、ほとんど感染するということがないので、今までどおりにしっかりした感染対策をやっていただければ、続けてもいいということです。逆にリスクが高いとはっきりわかっている場面、大人数のパーティーとか、会食、大声を出す、換気が悪い、そういうところは明らかに感染リスクが高いので、徹底的に避けていただきたい。もちろん状況に応じては、さらに広範な対策を打つということも、求められればやっていただければと思います」
鎌倉アナ「先ほどの提言ではもうひとつ、ワクチンの“3回目の接種の重要性”という部分にも言及されているんですけれども、3回目の接種については、感染を防ぐ抗体の量を引き上げるという研究がある一方で、3回目を打った方でもブレークスルー感染が起きていますよね。本当に3回目の接種は必要なのかという声もあります。その辺いかがですか」
尾身会長「確かに感染予防効果というのは、重症化予防効果に比べて、明確に落ちてきているんですよね。しかし高齢者の場合は、やはり重症化リスクがものすごく高いので、高齢者に優先的に追加の接種をしていただければと思います。高齢者の場合は早く打っていただくことが重要で、モデルナだとかファイザーとか種類に関係なく、機会があれば、なるべく早く打っていただければと思います」
青井アナ「海外にちょっと目を転じていきたいと思います。海外、感染は相次いでいるものの、ピークアウトしたとする国も出てきています。各国の事情に応じた試行錯誤は続いています」
<最悪規模の感染も、隔離期間を短縮 ~アメリカの決断~>
今月に入って1日あたり過去最多となる133万人の感染が確認されたアメリカ。ブースター接種を受けた人はすでに全人口の25%、4人に1人が受けている計算です。
先月、CDC(疾病対策センター)は感染者などの隔離のガイドラインをめぐって、大胆な改定を行いました。
CDCワレンスキー所長「特にワクチン接種が完了した人や、ブースター接種が済んだ人の多くが軽症か無症状で、10日間の隔離は現実的ではありません」
ガイドラインでは、ワクチン接種の有無を問わず、感染者の隔離期間を10日間から5日間に短縮。隔離後、症状がなければ、検査をせずにマスクを着用して社会生活に戻ることを容認したのです。
この根拠のひとつとなった研究では、周囲に感染させる可能性がある人の割合は、陽性と判明してから5日目には31%、6日目では22%に減少すると推定しています。専門家は、社会を維持するうえで、許容できるリスクを考えるべきだといいます。
ジョンズホプキンス大学 アメシュ・アダルジャ准教授「CDCのガイドラインは理にかなっていると思います。各種のデータからは、たとえ陽性であっても6日目以降に人に感染させることはまれです。今回の改定は科学に根ざしたものですが、ウイルスが社会に与える損害を減らすよう、考慮したものでもあります。実際に人々が従うことができる現実的な基準を作るべきなのです」
これまでの感染拡大で交通インフラなど、社会機能が低下してきたアメリカ。ニューヨーク市清掃局では、職員の25%が病欠し、深刻な人手不足に直面してきました。しかし、隔離期間の短縮などによって、何とかごみの収集を続けられるようになったといいます。
北米固体廃棄物協会 CEO「隔離期間が短くなれば、人々がより早く仕事に復帰できるため、収集サービスや他の産業への負担が、軽減されることは間違いないでしょう」
過去最大規模の感染拡大に直面してきたヨーロッパも動き出しています。中でも、規制をインフルエンザ並みに緩和しようと模索を始めているのが、イギリスです。1月の上旬には1日の感染者数が20万人を超えましたが、現在は10万人を下回り、政府はすでにピークアウトしたとみています。
12歳以上では6割以上がブースター接種を完了しています。さらに死亡や重症化も、比較的抑えられているとしています。こうしたことから、政府はロンドンのあるイングランドで、マスク着用の義務付けをやめるなど、多くの規制の撤廃を発表しました。
イギリス・ジョンソン首相「科学者たちによると、イギリスでオミクロン株の波はピークアウトしたようです。政府はこれから、いかなる場所でもマスク着用を強制しません」
ロンドン大学のデビッド・ヘイマン教授は5年前まで、イングランドの公衆衛生庁で、諮問委員会の委員長を務めていました。コロナとの共存を考えるうえでも、インフルエンザと同様の対策に移行しようとする政府の判断は妥当だといいます。
ロンドン大学衛生熱帯医学大学院感染症疫学 デビッド・ヘイマン教授「イギリスでは、ワクチン接種した人やコロナに感染した人が97%に達しています。変異株や感染の急拡大を検出し対応する、すぐれたシステムが整備されています。イギリスは、感染リスクの管理を『政府』から『個人』に移したのです。自国で発生しているリスクは許容できると判断したとみられます。経済を望ましい状態に戻すために、ある程度のリスクを受け入れているのです」
市民は自らリスクを管理する模索を始めています。ロンドン市内に住む、ルイーズ・ミドルトンさんは、すでに3回目の接種を終え、屋外ではほとんどマスクをしない生活を送っています。
ルイーズ・ミドルトンさん「とても幸せです。もうロックダウンには戻りたくないです。社会活動が再開されるのはよいことです」
ルイーズさんは、夫と娘の3人家族。娘のアレックスさんは11歳。イギリスでは、11歳以下の子どもについては、基本的にワクチン接種の対象となっていません。政府は、週に2回、無料配布した抗原検査を子どもたちにも受けるように推奨しています。
ルイーズさんなど多くの親は、感染のリスクを下げるため、子どもには当面マスクをして通学させるようにしています。
大胆な規制緩和に乗り出した国がある一方で、緩和を巡って議論が巻き起こっている国もあります。オミクロン株の流行で、先週(2022年1月18日)、1日あたり46万人の感染が確認されたフランスでは、教育現場での感染対策が不十分だとして、教職員らが政府への抗議デモを繰り返しています。
教師「政府が選んだ戦略は、ウイルスをできるだけ拡散させることだとさえ感じます」
抗議のきっかけは、政府が学校での感染対策を見直し、新たなガイドラインを策定したことです。これまで学級閉鎖は、『クラスに3人感染者が出ること』が基準でした。しかし、これでは十分な対面授業ができないなどとして、学級閉鎖の基準を撤廃。教師が感染したり、生徒の多くが感染したりしない限り、事実上、学級閉鎖が難しい状況となりました。
抗議デモに参加した小学校の校長カリム・バシャさんは、対面授業の時間を増やすことは大事だとしながらも、不安はぬぐえないと言います。
小学校校長 カリム・バシャさん「学校が感染拡大の場になっているような気がします。フランスでは感染者数の記録を更新しました。コロナが始まって以来、最多記録です。ですから、本当に感染を守ってくれる強い措置が必要だと思います」
さらに、医療現場でも模索が続いています。
フランスでは、今月(2022年1月)に入って感染が急拡大し、入院患者が急増。感染して隔離が必要となる医療従事者も増えています。そこで政府は、ワクチンのブースター接種を推奨し、接種率はおよそ5割に上昇。さらに、ワクチン接種済みの医療従事者で、軽症か無症状であれば、隔離をせずに職場復帰できる特例を設けました。医療崩壊を食い止めるために、苦渋の判断をしたのです。
この病院では、感染した医師も最大限対策をした上で、業務に当たっています。医師の間からは、感染が拡大しないか、不安の声も上がっていますが、医療活動を維持するためには、やむを得ない状況だといいます。
医師「これが現実です。とにかく、病院は紛れもない人手不足の状態なので、政府が許可しました。他に選択肢がないのです」
WHO世界保健機関は拙速な規制の緩和には、警鐘を鳴らしています。
WHO世界保健機関 テドロス事務局長「さらなる感染拡大で入院や死亡する人、そして隔離によって仕事ができない教師や医療従事者などがもっと増えます。オミクロン株より致死率が高く、感染力がより強い変異株を生む恐れもあります。私たちは、このウイルスを自由にさせてはいけない。諦めてはいけないのです」
<WHOシニアアドバイザーに聞く・世界の状況とは>
鎌倉アナ「ここからはWHO感染症危機管理シニアアドバイザーの進藤奈邦子さんにお話をお聞きします。進藤さん、ヨーロッパの取り組みをどのようにご覧になっているでしょうか」
WHO感染症危機管理シニアアドバイザー・進藤奈邦子さん「ヨーロッパは、最初に報告のあったイギリスと、他の大陸のヨーロッパの国とは、まだだいぶ疫学的に違いがあります。ロンドンを含めるイングランド、それからニューヨークはかなりドカンとピークを迎えて、今もうピークアウトしている状況ですけれど、次に報告のあったフランスなどでは、今まさにオミクロンの中にどっぷりですね。ほとんどのヨーロッパの国は、デルタがピークを迎えつつある時にオミクロンがやって来たという感じで、かなり長い間、医療がひっ迫した状態が続いているわけです。ですので、私たちが『リラックスするのは、時期尚早ですよ』と言っているのは、ひとつは『個人を守りたい』ということです」
WHO・進藤さん「報告が日本、海外でもありましたが、まだ重症化する人がいるし、亡くなっている人の報告が後を絶たないわけです。もうひとつは、急速に今ほとんどオミクロン株一色になりつつあって、新型コロナウイルスが引き起こす長期間にわたる、うつ、慢性疲労、関節痛、頭痛とか日常生活の快適性を落とすような後遺症が、果たしてこのオミクロン株で出ないのかどうかも、まだ分かっていないので、後遺症も防ぎたい。この2つがあって、まず個人的な健康保護のために、まだ注意してください。3つ目は、どこからも報告されているコミュニティーレベル、社会レベルでのシステムですね。特に医療システム保護ということです」
鎌倉アナ「まだ安心できないということですけれども、一方、オミクロン株を最後に新型コロナが収束していくのではないか、そういう声もあります。まるでインフルエンザのようになっていくのでは、と。それについては進藤さんどうお考えですか」
WHO・進藤さん「流行の状況は各国それぞれで世界一様にパンデミックが、いっぺんにこれで終わりってことは、WHOでもたぶん言えないと思いますね。インフルエンザのように考えるのは、まだ難しいと思います。と言うのは、季節性がまだ全然見えていないですよね。そもそもこのオミクロンが出てきた南アフリカでオミクロンが発生したのは真夏でした。そういう意味では、まだ季節性も見ていないし、地域流行性も見えていないんですが、例えばイギリスのようにちゃんとサーベイランス(検査・監視すること)ができていて、国民の人たちの抗体レベルまでちゃんと把握できている国では、国ごとにパンデミックからエンデミック、いわゆる地域流行あるいは季節流行のような病気に移っていく、ということは、国ごとには言えるかもしれません。最終的にはオミクロンはどうなっていくか、ですが、遺伝子的にまだジャンプするかもしれないですよね。過去の変異株はどれも、大規模なクラスター、感染爆発を母体に発生してきた。これはインフルエンザのようにずるずると、うまくその系統樹が増えていくような形での遺伝子変異ではないわけです。これから先またオミクロンみたいなジャンプが起こらないかどうかってことは、まだ言えないわけです」
青井アナ「新藤さん、ありがとうございました。尾身さん、今見てきた欧米の状況をどう捉えましたか」
尾身会長「欧米の対策は、急に強めたり弱めたりするという傾向があると思います。そういう中で欧米諸国の中には、『もう社会経済活動を元に戻すんだ』と、かじを切った国もあると思います。一方で中国などは、まだ『ゼロ・コロナ』っていうことを目指していると思います。日本の場合は、中国とも違うし欧米とも違って、やはり感染の状況に合わせて素早く修正していくというか、日本らしいやり方をこれからも状況に合わせてやっていくということが、一番求められているんじゃないかと思います」
青井アナ「それぞれの国のやり方があるんじゃないか、ということなんですね」
鎌倉アナ「このオミクロン株、非常にすさまじいスピードで感染が広がっています。高齢者の感染をいかに食い止めるのかも鍵ですし、先ほどの進藤さんがおっしゃっていたように、また変異が続くかもしれない、そういった懸念もある中でなんですけれども、改めて尾身さん、今後の行方について『ひとりひとりの行動が大事』だと重ねておっしゃっています。この気をつけるべき点について、教えていただけますか」
尾身会長「個人レベルではまずはですね、『マスクは鼻までしっかり着用してほしい』ということ。それからウレタンや布マスクは避けて、『不織布マスクをしっかりとつけていただきたい』というのが1点目です。それから外にいるときは、『換気が悪く、大人数、大声を出す場所などは絶対に避けてもらいたい』ということ。それからそうした場所を目的とした外出は避けていただきたい。それから『体調不良の場合にも外出は避けていただきたい』。こうしたことをみんなで実行できるようになるといいなと思います」