(2022年6月5日の放送内容を基にしています)
4年前の西日本豪雨。3年前の台風19号。そして令和2年7月豪雨。水害による犠牲者があとをたたない日本列島。「なんとしても、命を守りたい」。その出発点として、今、洪水ハザードマップの大改修が進んでいます。これまでは、最大でも“200年に1度の雨”を想定してきたハザードマップ。しかし国は、その想定を厳しくし、“1000年に1度の雨”に切り替えたのです。
今回NHKでは、1000年に1度の雨に対応した「浸水想定データ」をいち早く集積。どこでも、そして誰でも、ウェブサイトで確認できる「全国ハザードマップ」を制作しました。関東では、利根川や荒川の流域で浸水リスクのあるエリアが拡大。洪水対策を進めてきた大阪を流れる淀川は、広い範囲で最大3m、浸水するおそれが。博多駅周辺も、水没する可能性があります。
さらに詳細に分析すると、”住まい方”の盲点が浮かび上がりました。浸水リスクのあるエリアで人口が増えている都道府県が見えてきたのです。いま必要な備えは何なのか。ぜひスマホやパソコンで、気になる場所のリスクを確認しながらご覧ください。
※全国ハザードマップは、放送に伴う試験的なコンテンツです。視聴者の皆様からのご意見も伺いながら、公開期間は検討して参ります。
武田真一アナウンサー「災害から命を守るためにまず必要なのは、皆さん一人一人の備えです。ハザードマップを見ることは、災害のリスクを知るための第一歩。そこでNHKでは、簡単にリスクを確認できる『全国ハザードマップ』を制作しました」
浅野里香アナウンサー「例えば、渋谷駅を検索して、洪水の『浸水想定』を見てみますと、この駅周辺は、浸水の想定が0.5mから3mというふうになっています」
武田アナウンサー「“1000年に1度の雨”を想定し、およそ2200の主要河川をすべてまとめて閲覧できるウェブサイトは、これまでありませんでした。自治体でも鋭意作成中ですが、今回NHKでは、大雨のシーズンを迎え、いち早くより多くの人たちにご覧いただいて備えていただくために、全国から今集められるデータをまとめて、デジタルの地図上で見られる『全国ハザードマップ』を制作しました」
武田アナウンサー「まずは、“1000年に1度の雨”とはどのようなものなのか。おととし、その脅威にさらされた熊本の皆さんを取材しました。これまでの対策が通用しない大雨の怖さ、ご覧いただきましょう」
<これまでの対策が通用しない "1000年に1度の雨"の脅威>
2年前の洪水で、住宅の半数以上が被害を受けた熊本県球磨村渡地区。高台に避難した男性が、当時の状況を撮影していました。
「大雨特別警報」の発表から1時間余り。
「堤防が崩れたんですね?」
「いや崩れていない。あれ(堤防)を乗り越えてきた」
4時間後。堤防を越えた水は町を飲み込み、青い道路標識にかかるほどに。浸水の深さは最大で7.4mに達しました。
市花 保さん「もともと水害常襲地帯にいる人は、『まさかここまで』とみんな思っていて。私も含めてですね」
多くの人が避難するタイミングを逃し、深刻な事態に陥りました。その一人、宮原信晃さんの自宅は、川から100mほど離れた場所。これまでのハザードマップでは、浸水想定は最大3mとされていました。根拠の1つとなったのが、57年前の洪水(昭和40年7月洪水)です。球磨川が氾濫し、大きな被害をもたらしました。
宮原信晃さん「(昭和40年の)大水害にあって、家の中は全滅。その姿を見て、“全滅”という言葉を覚えた。うちの父に『とうちゃん、全滅ばい』と言うたんですよ」
それ以来、大雨の際は自分で決めた避難のルールを守ってきました。
宮原さんは、鳥居の先の水面を目安に、自宅の2階に避難すると決めていました。57年前の浸水は、1階の軒下まで。その後、自宅を1m程かさ上げしたため、2階まで水は来ないと思っていたからです。
宮原さん「確信があるから。ひどい目にあったから、どれぐらい来れば(避難が必要か)というのはみんな知っている」
しかし、2年前の豪雨は、予想を大きく上回るものでした。原因は、最近頻繁に発生する“線状降水帯”です。
白い線(下図)で囲んだのが、球磨川流域。ここに降った雨が球磨川に集まります。
12時間に降った雨は、流域の平均で346mm。一方、昭和40年の雨は、172mm。1000年に1度に迫る豪雨だったのです。
宮原さんは、これまでの対策が通用しない事態に直面します。午前5時半過ぎに目を覚ました宮原さんは、鳥居の先に濁流を確認。2階に避難しました。
氾濫した水が2階にまでおよび、屋根の上に逃げるしかありませんでした。浸水は、これまでのハザードマップの想定を1m上回る、4mに達していました。
宮原さん「まったく通用しなかった。自分の常識が間違いだったことを教えてもらった」
<“1000年に1度の雨”の脅威 命を守る避難の方法は>
ビビる大木さん「1000年と言われると、1000年に1回来るというふうに感じる。それは本当なのか、思ってしまいます」
気象庁気象研究所 研究官 荒木健太郎さん「1000年に1度の雨は、1000年に1回しか起きない雨というわけではない。その地域でその年に1000分の1の確率で発生する大雨という意味。例えば、すごく大雨になって水害が発生した地域があったとして、その次の年にそこで同じような大雨が起こらないというわけではない。地球温暖化によって、大気中の水蒸気の量が、気温の上昇に伴って増えると言われている。1000年に1度の大雨も、今後、全国で起こる可能性があるというふうに考えて、備えていくことが重要」
武田アナウンサー「これまで雨が多くなかった、例えば北日本(北海道・東北)でも、(1000年に1度の雨が)降る可能性がある」
真矢ミキさん「1000年に1度の雨が降ったとき、今ある堤防はどのぐらい耐えられるんでしょうか」
東京大学大学院 特任教授(防災学)片田敏孝さん「国が管理する大きな河川は、100~200年に1回の雨に耐えられるレベルで堤防を作ってきたんです。ここ最近の雨は、1000年に1回ですから、今の堤防では耐えられない。(水が)あふれてしまうこともあるということになる。こうなりますと、『堤防があるから大丈夫』と思ってしまうのは、非常に危険だということになる。だからこそ今、『避難』という問題が重要になってきている」
ビビるさん「自分のふるさとの、埼玉県春日部市の春日部駅周辺のハザードマップを見ている。洪水の最大浸水想定が3mから5m。広域にわたって浸水想定が出ている。どうしたらいいんだろう」
武田アナウンサー「3mから5mが、どのくらいの高さなのかというのをまず体感していただきながら、避難のしかたを見ていきたいと思います。水のイメージを重ねてみますと、ビビるさんが立っている1階の天井、あるいは2階の床下まで浸水する。これが3mの高さなんです」
真矢さん「どういう避難が適切?」
片田さん「安全な場所に事前に避難することが原則ですが、すでに水につかっている場合は、(外へ)避難するほうが危険。3m未満の避難であれば、住宅の2階に上がることも1つの避難の考え方になります。(平屋の場合は事前に避難してください)」
武田アナウンサー「では、浸水5mだとどうなるかといいますと、2階もほとんど水につかってしまう高さになるんです」
片田さん「5mを超える深い浸水は、家にとどまることが不可能です。こういう場合は、ちゅうちょなく安全な高台へ逃げる。とどまるのではなくて、『水平避難』と言っておりますけど、安全な、水につからない場所に移動していただく避難を考えなくてはいけない」
武田アナウンサー「浸水の高さだけを見てきましたが、お住まいの場所によっては、さらに注意することがあるんですよね」
片田さん「特に、川沿いにお住まいの方。水が氾濫して流れたということになりますと、速く流れるわけです。そうしますと、浸水はあまり深くなくても家がもたない。川沿いの方は、それを考えていただくことが必要です。もう一点は、土砂災害。お住まいの地域に土砂災害の危険な場所があるような場合だとか、避難の道すがら危ない箇所がある場合は、浸水だけでなく土砂災害についても注意が必要です」
<浸水リスクエリアで人口増加 なぜ? 住まい方の盲点>
武田アナウンサー「次にお伝えしますのは、『浸水エリアで人口増加 あなたの家も?』」
浅野アナウンサー「1000年に1度の雨で浸水するエリアに、どのくらいの人が暮らしているのか。その数はおよそ4700万人。以前のハザードマップと比べて、1150万人余り増えていることが分かりました。さらに専門家とともに、3m以上浸水するリスクのあるエリアの人口の変化を分析しました。ランキングを見てみますと、1位は埼玉県となりました」
武田アナウンサー「なぜ浸水リスクの高いエリアで人口が増えているのか。その背景には、私たちの気付かない盲点がありました」
分析した研究者のひとり、都市計画が専門の野澤千絵さんです。注目したのは、浸水想定が3m以上のエリアで、特に人口が増えていた埼玉県幸手市です。野澤さんは、かつて人がほとんど住んでいなかった場所を抽出し、その後、人口がどう変化したかを分析しました。
棒グラフは1995年からの20年間で、どれだけ人口が増えたかを示しています。
明治大学 野澤千絵 教授「見て分かると思うんですけど、ブルーが多い。ブルーは市街化を原則として抑制すべき『市街化調整区域』になっているんですが、このようにたくさん人口が、それも3m以上の浸水リスクがあるエリアで、宅地開発などで人口が増えている」
人口5万の幸手市では、市街化調整区域で1600人余り人口が増えていました。
市街化調整区域は、もともと農地などを確保し、都市の無秩序な拡大を抑えるために、宅地開発を規制してきたエリアです。ところが2000年に行われた法律の改正によって、自治体が規制を緩和し、全国各地で次々と住宅が建てられていきました。結果として、浸水エリアの人口が増えることになったのです。
幸手市でも、19年前に規制が緩和されました。
幸手市 建設経済部 狩野一弘 部長「“消滅可能性都市”に幸手市は挙がったことが昔あって、都市間競争という話もあった中で、人口の流出に歯止めをかけるというところでは、その受け皿として(市街化)調整区域のこの制度が伸びてきた」
幸手市では、3年前の台風19号で、近くを流れる利根川の水位が上昇。道路が冠水するなどの被害が出ました。こうした場所で暮らす人たちは、水害のリスクとどう向き合っているのか。
こちらの女性は、夫婦と子ども二人で2階建ての住宅に暮らしています。
土地の広さと周辺の環境が気に入って、4年前、引っ越してきました。当時、ハザードマップを確認したところ、浸水想定は2mから3m。リスクを理解した上で、購入したといいます。
しかし、1000年に1度の雨を想定した新しいハザードマップでは、
「3~5m未満、怖いですね。2階でもダメですね。どうしたらいいんでしょう。家族みんなやられちゃっても困るし、やっぱり早めに子どもたちとも(避難)場所決めとか、しっかりしておかないといけない」
浸水のリスクを、地区の住民はどのくらい把握しているのか、アンケートを行いました。住宅を購入する際に、ハザードマップを確認していたのは、4割ほど。半数以上が、浸水リスクを確認していませんでした。
「住宅を購入するときに重視した項目」を複数回答で聞いたところ、多かったのは、『広さや間取り』『立地の利便性』『価格』でした。
<浸水リスクエリアで人口増加 命と暮らしを守るためには?>
真矢さん「浸水エリアの人口増加。全国的にはどうなんでしょう」
ネットワーク報道部 藤島新也 記者「いちばん多かったのは埼玉県。次いで茨城県、岡山県と続きました。いずれも『市街化調整区域』での開発が進んでいるという共通点がありました。それから、宮城県、新潟県は、『非線引き区域』と呼ばれる住宅の規制が非常に緩い場所で人口が増えていました。国は、住宅や土地の取引をするときに、ハザードマップなどを示しながら、浸水のリスクについて説明するということを義務付けています。ただ、義務付けられたのは2020年8月ということで、ごく最近。それよりも前に購入された方の場合には、この機会にリスクを確認していただきたいと思います」
ビビるさん「こういう浸水のおそれがある地域は、家を建てるのはやめましょうというようなことはできない?」
藤島 記者「一筋縄ではいかない問題。市街化調整区域の開発は、住民の方にとってみると、広いおうちを安く購入できて税金も安い。自治体からすると人口が増える。開発事業者はもうかる。ということで、皆にメリットがあるので、なかなかブレーキがかからないんです。ただ、国は今年4月に法律を改正し、この市街化調整区域の中で、浸水のリスクが3mを超えるような場所というのは開発を抑制しようという方向にかじを切ったんです。ただ、最終的に規制をするかどうかは、市町村が決めることになるので、本当にその規制がしっかり行われるのかというのは、これから見ていかなくてはならない」
ビビるさん「命が助かっても家が浸水して住めなくなったら、どうしたらいいんですか」
藤島 記者「1つは住宅の工夫です。西日本豪雨で被災された、岡山県倉敷市の建築士会が作られた資料です。家を建てるときに使う材料、例えば、柱とか梁(はり)といった部分に使う木材、これは無垢材(むくざい)といわれる、ちょっと割高なんですけれども、切りだした木を乾燥させたようなものを使うのがいいですよとか、配管なども取り替えしやすいものにしておくと、いざというときいいですよ、というようなことが載っています。こういう対策をすると、被災してしまってもいち早く元の生活に戻せる。それからもう1つは、保険とか共済です。皆さんおうちを購入されるときに火災保険、そこに『水災補償』というのが付いているかをご確認ください。マンションの場合、玄関ロビーとか廊下のような場所も水災補償があるかという確認がすごく大事。管理組合にぜひ聞いてください」
<逃げ遅れゼロを目指せ! 水害から助かるために>
武田アナウンサー「次に見ていくのは『自分たちで命を守るには』」
浅野アナウンサー「西日本豪雨で甚大な被害を受けた倉敷市真備町。被災後もこの地で暮らす人たちは、災害に備えてどのように命を守るのか、さまざまなアイデアで乗り越えようとしています」
真備町で復興のための活動を行う住民グループの代表、槙原聡美さんです。あの日、家族で高台に避難した槙原さん。あとになって、自責の念にかられました。
川辺復興プロジェクト あるく 代表 槙原聡美さん「どこまで泥水が上がってくるか分からない状況の中、救助を待っていた人たちがたくさんいたというのを聞いて、私はなんてひどいことをしてしまったんだろうと。声かけもせずに避難してしまったっていうことが、とても後悔として残っています」
今、槙原さんは、“逃げ遅れゼロ”を目指し、地域の住民の結びつきを強める試みを進めています。地元の地区一軒一軒に、黄色いタスキを配布。災害時、玄関先に黄色いタスキが結ばれていれば、住人が避難したことを示すサイン。タスキがなければ、中に取り残されている人がいる可能性があります。近所の人に、ちゅうちょなく避難を呼びかけてもらうための仕組みです。
住民「西日本豪雨のとき、逃げてるかどうか探すのに、だいぶ苦労したんです。これがあればやっぱり便利。もう逃げてるなというのが分かるから」
逃げ遅れゼロに向けた、もう1つの取り組みは「住民同士の情報共有」です。無料通話アプリで、グループを作りました。およそ600人が登録しています。ふだんはイベントのお知らせなど、気軽な情報交換の場として利用。しかし、いざというときには、避難につなげる情報を素早く届ける重要な役割を果たします。
さらに、真備町では、自力で逃げるのが難しい人たちの避難も、課題として浮かび上がりました。介護事業所を運営する津田由起子さんは、当時、利用者の家、一軒一軒へ救助に向かいましたが、一人暮らしの80代の女性が、自宅の1階で犠牲になりました。
介護事業所 代表 津田由起子さん「もっと私たちが日頃から何かできることがあったんじゃないか。ご近所の方たちと日頃から連携を取るような関係性を作ってないと(全員)助けられない」
西日本豪雨の犠牲者は、真備町で51人。その8割余りが、高齢者・障害者など、支援が必要な人でした。こうした人たちの避難でも、住民のつながりが助けになります。津田さんたちが今進めているのが、支援が必要な人の情報を整理し、近所の人たちと共有することです。
いつ、誰と、どこに、どうやって避難するか。
一人一人に合ったオーダーメイドの避難計画を作るためです。例えば、一人暮らしのお年寄りが取り残された場合を想定。近所の人が車で一緒に避難する、あるいは2階に連れて上がるなど、誰がどう助けるのかを事前に考えておきます。
この日は、ある人の避難計画を作るため、日頃から交流のある近所の人たちに集まってもらいました。片岡澄子さん、85歳。腰を痛めていて、歩くのにつえが必要です。長男の茂さんは仕事のため、もしものとき、一緒に避難できない可能性があります。
津田さん「(災害時)もしかして息子さんが出張に行っているとか、そういうことがあったら、ご近所の方で『澄子さんどうする?』みたいに言ってくださるとありがたいかなって」
話し合いでは、近くのアパートの2階にある交流室を、最初の避難先にすることが決まりました。家族がいないときは、近所の人たちが避難の手伝いをしてくれることになりました。
近所に住む人「自分とこでいっぱいいっぱいになりそうな雰囲気もあるんですけど、多少余力があるところは、助け合いをしたらいいんじゃないかと思います」
津田さん「そういう災いを乗り越えられるのは、みんなが顔を合わせて関係を作る、つながりができるというところがいちばん大事かなと思います」
<家族で話し合おう! 水害から助かる方法は?>
武田アナウンサー「真備町で防災活動に取り組む住民グループ代表の槙原聡美さんにお越しいただきました」
槙原さん「このグループLINEは、災害後に情報がなかなか届かない中で、みんなで教え合いながら復旧・復興に向かって今まで歩んできたものになります。本来だったら災害が起きる前から、地域の中でつながりあっておけるような状況を作っておくことが、とても大切だと今は感じています」
武田アナウンサー「そのきっかけ作りとして槙原さんが作って、今、地元で大変人気を呼んでいるものがあるということですね」
槙原さん「防災おやこ手帳です。西日本豪雨災害で被災したお父さんお母さんのアンケートと、そして、私たちの後悔と学びを凝縮したものです」
浅野アナウンサー「その防災おやこ手帳の中には、このようなことが書かれています。『家族で防災ミーティングをしよう』。3つのステップがあるんですが、まず1つ目は『“マイ避難先”を考えてみよう』」
槙原さん「私もそうだったんですけど、西日本豪雨のときに避難所に入りきれなくて、避難できる場所を探し求めて、冠水した道を走ってしまった。1か所だけでなく、何かあったときのために3か所考えておいてほしい。例えば、お友達や知人、親戚のおうちに、お泊まりをするような感覚で避難をする。車中泊やテント避難。アウトドアの好きな方はね、こういった方法もいいのかなと思います(車中泊やテント避難は、周囲の安全やエコノミークラス症候群に注意)。次に、プチご褒美避難です。旅館とかホテルに」
片田さん「すべて行政からの情報に基づいて、行政の準備した避難所という避難の考え方を、こんなふうになったらみんなで逃げようねって気楽に声をかけることだとか、また避難する先についても、久しぶりにおじいちゃんおばあちゃんに会いながらとか、“頑張らない避難”ということをキーワードに考えていただきたいんですね」
浅野アナウンサー「続いてステップ2。『“避難スイッチ”を決めておこう』。行動となるきっかけを決めておこうということです。いくつかこちらに避難スイッチ、まとめてみました」
片田さん「行政からの情報も重要なんだけども、それに加えて『どういう状況になったら避難しよう』ということを、自分でしっかり決めておくこと。これは事前に決めておかないと、そのときですと、川の水位あんなに上がって『怖いよね』まではいくんですけれども、最後の行動の一歩になかなか踏み出せない」
真矢さん「『このような言葉のキーワードが出たときは、本当に気をつけてください』というのはないんですか?」
武田アナウンサー「これは気象庁なども使っていますけれども、『これまでにないような災害が起きるおそれがあります』とかですね。そういった言葉を聞いたら、スイッチを入れていただければなと。荒木さんは、例えばどういう段階でちょっと危ないかなって考え始めるんですか」
荒木さん「私自身は、気象庁・国土交通省の合同会見とかが始まると、いつも起こらないようなすごいことが起こりそうだっていう印象をまずは持ちます。臨時で会見をするというのは、よほどのことでないとそういうことはしませんね」
浅野アナウンサー「最後にステップ3。『“持っていくもの”を準備しておこう』。被災した方がおすすめだという避難グッズがこちら」
槙原さん「子どものために、お菓子やジュースです。食べ慣れている大好きなお菓子だったら、避難先で楽しく食べられるし、子どもが安心して食べてくれると、おうちの人も安心する。あとは、おもちゃもあるといい。ぜひ家族の中で前もって決めておいていただいて、いざというときにスムーズに避難できるようにしておいてほしいなと思います」
武田アナウンサー「ここまでハザードマップをもとに命を守れる方法を考えてきましたけれども、国は全国に無数にある中小河川についても、洪水による浸水想定をまとめるように決めました。すべて終わるにはまだ時間がかかります。ハザードマップにリスクが掲載されていない小さな河川から、水があふれてくるおそれも残されています。私たちも最新の技術をとり入れて、伝え方を工夫していきます。皆さんも準備を進めてください。水害で一人も命を失う人がないようにしていきましょう」
<“その日”に備えて 命を守るための模索>
“1000年に1度の雨”に備えて、全国各地で命を守るための模索が続けられています。
熊本県人吉下球磨消防組合 早田和彦 課長「早めの職員招集を行って、避難の呼びかけができるのではないか」
熊本県人吉市 防災課 鳥越輝喜 課長「守るべき財産や命を守ることができるのではないか」
兵庫県では、6時間先まで河川の水位を予測できるシステムを導入。県内680の河川のリスクを監視し続けています。
兵庫県たつの市 危機管理課 谷口心平 主幹「避難情報などを市民の方に、すぐにお伝えできる体制を作っていきたい」
予測システムを研究 京都大学防災研究所 佐山敬洋 准教授「"想定外"だったことが、想定の範囲に入るわけですね。ハザードマップに加えて、避難などの対応に、より使える情報になっていく」
2年前に浸水した熊本県の病院では、水位の予測情報を生かした対策が始まっています。いつ行動を起こせば、浸水や逃げ遅れを防げるか、検討を続けています。
“その日”に備えて。あなたの準備は大丈夫ですか?