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EVシフトの衝撃 ~岐路に立つ自動車大国・日本~

NHK
2021年11月17日 午後0:28 公開

番組のエッセンスを5分の動画でお届けします

(2021年11月14日の放送内容を基にしています)

かつて「エンジンのホンダ」と呼ばれたメーカーが、大胆な経営方針の転換を打ち出した。エンジンを捨てて、電気の力で走る車に生き残りをかけている。

ホンダ・三部敏宏社長「EV(電気自動車)・FCV(燃料電池車)の販売比率を2040年にはグローバルで100%を目指します」

世界で急速に進むEVシフト。

脱炭素社会の実現を訴える市民の声が、これまでになく高まっている。

環境保護団体「温暖化を食い止めるためには、自動車メーカーは2030年までにガソリン車の販売をやめるべきです」

EVシフトの主導権を握りたいEUは、2035年にガソリン車の販売を事実上、禁止する方針を発表。日本メーカー外しだとも指摘されている。

世界のEV市場で、ライバルたちに遅れをとる日本の自動車メーカー。日本を飛び出し、成長著しい中国企業と手を組む部品メーカーも現れた。

世界最大のメーカー「トヨタ」もEVの開発に乗り出したが、極端な転換には、疑問を投げかけている。

ガソリン車に代わって、EVが自動車産業の中心に躍り出る「EVシフト」。

100年に一度とも言われる、大変革の時代。日本はどのような道を走るのか。最前線の現場を追った。

<EVシフトの震源地・EU>

EVシフトが加速するEU。その中心地がフランスだ。去年のEV販売台数は11万台以上。前年の2倍以上に増えた。売れ筋は400万円台。政府は最大で100万円を超える補助金を支給し、ガソリン車からの乗り換えを促している。充電スタンドの整備も急ピッチで進められている。その数はこの1年で倍増し、60万以上。利用料金は15分およそ70円からと手頃になっている。

ユーザー女性「とても便利です。2030年にガソリン車は走っていないでしょう」

こうした中、EUの自動車メーカーはEVを今後の販売の主力に据えようとしている。2021年9月、世界最大級のモーターショーで各社の最新モデルが出そろった。

メルセデス・ベンツは、2030年までに販売する新車すべてをEVにすると宣言した。セダンからSUVまで、タイプの違うEVを一気に公開した。

メルセデス・ベンツ取締役「私たちが新しい基準を作って、主導権を握り未来を切り開いていくのです」

<ルノーのEV開発現場に潜入!>

モーターショーで、一際注目を集めたメーカーがあった。フランスのルノー。いち早くEVの本格的な販売に乗り出し、他社をリードしてきた。この日、初めて公開したのが、来年発売予定の新型EV。売りは、従来モデルから2割伸びた「航続距離」。1度の充電で470キロ走れる。

開発責任者のジャンポール・ドレさんは、提携する日産の技術者の力も借りて、5年がかりで開発した。

ルノー チーフエンジニア・ドレさん「今こそEVに乗り換えるベストなタイミングです。470キロという長い航続距離の車を開発したのですから」

ドレさんの案内で、関係者以外は入れない開発現場の取材が許された。モーターショーでお披露目された新型EVの最終調整が行われていた。

車内のモニターに表示されていたのは、充電中のバッテリーの状態。バッテリーはEVの心臓と呼ばれている。

EVはガソリン車と構造が大きく異なる。ガソリン車の動力源はエンジン。ガソリンを燃焼させるため、CO2を排出する。一方、EVでは、バッテリーに電気を蓄え、モーターを回して動力を生む。クルマが走る際、CO2は一切出ない。

しかし、ガソリン車より航続距離が短いため、どれだけその距離を伸ばせるかが、勝負となる。

ルノーが航続距離を大きく伸ばせた理由は、このバッテリーの進化にあった。新型EVに搭載されるバッテリーの一部を実際に見せてもらった。

ドレ氏「バッテリーパックの厚みは、業界で最も薄い11センチです」

従来のバッテリーよりも、体積が40%減少。にもかかわらず、充電できる容量は車1台あたり15%増えた。30分の急速充電でも、これまでの2倍、300キロ走れるようになった。

こうした性能を実現したのは、徹底したバッテリーの温度管理だ。

ルノーはこれまで販売してきた32万台のEVからデータを収集。ヨーロッパ各地の異なる気候や気温で、電力消費がどう変わるのか、詳細な情報が日々、開発現場に届く。それを分析することで、寒い土地ではバッテリーを温め、暑い土地では冷やすといった、温度管理を進歩させたという。

こうした技術力を武器に、2030年にヨーロッパで新車販売の最大90%をEVにする目標を掲げている。

ルノーが急速に進めるEVシフト。それを強力に後押しするのがフランス政府だ。2021年6月、マクロン大統領が工場の視察に訪れた。ルノーは自社の敷地内に巨大なバッテリー工場を建設し、3年後に稼働させると発表。政府は自治体とともに、およそ250億円の補助金を投入する。国を挙げて、EVの生産体制をいち早く強化しようとしているのだ。

マクロン大統領「EV化の流れは今後ますます進んでいきます。フランスに産業を創出し、雇用を生み出します。恐れることはありません」

これまでハイブリッド車に強みを持つ日本をはじめ、外国勢に押されてきたヨーロッパ。

2021年7月にはEUとして、2035年にハイブリッド車を含むガソリン車の新車販売を事実上、禁止する方針を打ち出した。

実行に移されれば、EVなどCO2を排出しない車しか販売できなくなるため、日本メーカーは警戒を強めている。

ルノーのスナール会長は、EUがルールを作り、官民一体で主導権を握ることが、EVシフトを制する道だと言う。

ルノー ジャンドミニク・スナール会長「EUのような規制は、すぐに世界に広がるに違いありません。政府も民間企業も産業を我々の国に取り戻したい、そうした意識を強く共有しています。EV化を進めることで、我々は世界の自動車産業の中心に返り咲けるのです」

<米中でも国を挙げたEV化へ ~激化する世界の競争~>

現在、世界で保有されているEVは685万台。これが2030年には、1億3800万台にまで増えると予測されている。

爆発的な成長が見込まれるEV市場。いま、その先頭を走るのが、アメリカのテスラだ。販売台数で2位以下を大きく引き離し、去年だけでルノーの4倍以上、およそ46万台を売り上げた。

アメリカ政府は、全米50万か所に充電スタンドを設ける方針だ。2021年11月5日には、総額110兆円規模のインフラ投資法案も可決した。

バイデン大統領は、2030年に新車販売の50%をEVなどの電動車とする目標を掲げている。

バイデン大統領「自動車産業の未来は、EVなどの電動車にあります。もう後戻りはできません」

一方、テスラを猛追するのが、中国勢だ。

中国は世界最大のEV市場。去年の新車販売台数は110万台。世界のEVの2台に1台が中国で売れている。いま最も人気なのが、1台およそ50万円からという格安EVだ。

中国政府もEVの普及を強く後押し。2025年までに新車販売の20%をEVなどの電動車とする目標を掲げている。

<ホンダ “脱エンジン”へ ~“航続距離”をめぐる闘い~>

世界のEVシフトが加速する一方で、販売台数で大きく水をあけられているのが、日本だ。

ルノーと提携する日産が7位にランクインしているものの、その他のメーカーは全て30位以下。自動車で世界を席巻してきた日本が、EV市場では出遅れた形となっている。

こうした中、本格的なEVシフトに舵を切ったのが、ホンダだ。現在、販売台数の99%を占めるガソリン車とハイブリッド車の販売を2040年までにゼロにし、全てをEV、FCVにするという大胆な決断に踏み切った。

次世代自動車開発の中枢・本田技術研究所。EV開発の最前線の取材が、今回初めて許された。

役員たちによる戦略会議の中心にいたのは、研究所のトップ、大津啓司(おおつ・けいじ)さん。長年エンジン開発に携わってきた技術者だ。販売台数の8割を海外が占めるホンダ。世界のライバルを相手に、EVでは何を売りにするのか。

会議の中で、大津さんが強調したのは、やはり「航続距離」だった。

本田技術研究所・大津社長「言い訳なしで、いまみなさんが乗っている車(ガソリン車)相当のものを提供しない限りは、競争力が今の車と比べて落ちちゃう。既存の小型車(ガソリン車)同等、あるいはそれ以上の航続距離を提供していくと、これを目指すしかないよね」

ホンダには航続距離にこだわる特別な理由がある。

去年、初めて販売した量産型のEV。大型の最新ディスプレーなどを搭載し、室内空間を重視した。しかしその分、バッテリーを減らしたため、航続距離は283キロ。未だに販売台数は7000台程度と、目標に届いていない。

航続距離をいかに伸ばすのか。ホンダは今、社運をかけた次世代バッテリーの開発に取り組んでいる。「全固体電池」だ。

エンジニア「非常に薄く高いエネルギー密度を持っておりますので、非常に小さな体積で高容量な電池になっております。従来の5個のセルに対して、この1個で同等の容量を持つということになります。非常に究極的な電池になりうる」

この「全固体電池」、従来のリチウムイオン電池と比べて、多くの電気を蓄えられるのが最大の特徴だ。トヨタやBMW、フォードなどの競合他社がこぞって開発している。しかし、未だどの会社も実用化できていない。材料の組み合わせによっては、航続距離が2倍に伸びるという。

試行錯誤を重ね、現在EVの航続距離を1.5倍にまでは、あげるめどがたった。ホンダは、「全固体電池を載せたEVを2020年代中に実用化する」という目標を掲げている。

エンジニア「非常に難しいし課題が多いと言われていて、それはその通りだと思います。ただポテンシャルがあるのも事実。それができると製造業界、電池業界におけるゲームチェンジも起こりうる」

さらにホンダは、航続距離の飛躍的向上を可能にする、別の次世代車の開発も進めている。

FCV・燃料電池車。水素で発電しモーターで動くため、CO2は一切排出しない。

その航続距離は、ガソリン車に匹敵する750キロに達する。充填にかかる時間はわずか3分。水素インフラが普及し割高な価格を下げることができれば、EVと同様に世界市場で普及する可能性もあるとにらんでいる。

本田技術研究所・大津社長「内燃機関(エンジン)の代わりになるのは、EVかFCV。状況に合わせて技術を開発してたんじゃ、完全に遅れると思いますよ。未来が変わっていくことを前提にして、技術を先に持っておかないと闘えない」

<日本に山積する課題>

一方、世界最大の自動車メーカー、トヨタは極端なEVシフトに警鐘を鳴らしている。豊田社長は、日本はまだEVの普及に向けた環境整備が進んでいないと強調する。

トヨタ・豊田章男社長「EV化すれば全て済むというのは間違っています。ガソリンスタンドよりもたくさんの充電ステーションを作らなきゃいけないってことです。それをやるのに約30兆円から40兆円必要になります」

現在、日本の充電スタンドの数は3万基程度。昨年度には設備の老朽化もあって、初めて減少に転じた。これをどう増やすかが、課題の1つとなっている。

さらに、豊田社長は日本が抱えるエネルギー事情も大きな課題だと主張する。

現在、日本は7割以上をCO2を排出する火力発電に依存している。EVシフトを進めるフランスが、原子力と再生可能エネルギーで9割以上の電力をまかなっているのとは大きく異なる。

日本が、今の電源構成を抜本的に変えない限り、EVが普及すればするほど火力発電の電力を大量に使うことになる。これを解決するためには国家レベルの対応が必要だと、豊田社長は指摘している。

豊田社長「エネルギー政策をどうしなきゃいけないか、それから我々自動車1社だけ電気自動車にしたってしょうがないんであって、世の中のいわば産業をどう構造変化していくかっていう難しい話があると思います」

EVの普及を進める方針を示している日本政府。充電スタンドをいまの5倍に増やすとともに、火力発電を中心としたエネルギーの問題にも対応するとしている。

経済産業省・藤木俊光 製造産業局長「今の電源構成がそのまま続くという前提であれば、確かにEVというのは必ずしも環境にやさしくない。日本もこのカーボンニュートラルをやっていくにあたっては、当然のことながら、再エネをはじめとするゼロエミッション電源、この割合をどんどん広げていかなければならないというふうに思っています」

<成長する中国市場で勝負 ~部品メーカーの挑戦~>

日本のEVシフトに課題が山積するなか、成長著しい中国の市場で勝負をかける部品メーカーが現れた。京都に本社を置く、電子部品メーカー日本電産の早舩一弥(はやふね かずや)専務は、2か月以上の長期出張の予定で中国にやってきた。中国企業との商談などが、分刻みで予定されている。向かった先は、中国のEV市場で3位のシェアを持つ国有メーカー。日本電産のEV用モーターを初めて買った顧客だ。

日本電産が納品しているのが、「イーアクスル」と呼ばれるEV用のモーターシステム。車の動力を生む基幹部品だ。

日本では取引相手が見つからなかったため中国に進出。現地で20万台以上を販売し、部品メーカーとしてシェアトップにのぼり詰めた。

この日、早舩さんには、今後の取引継続に向けて厳しい要求が突き付けられた。2022年秋に予定していたモーターの追加供給を、半年前倒しするよう中国メーカーから求められた。

早舩さん「お客さんから言われている台数を必ず死守する。できません、なんて言ったら、必ずA社B社がいて、もうスタンバイしているんですよ。もう自腹で開発して、自腹で生産設備を立ち上げて、いつでも使ってくださいって言ってきている、そんなのに負けられないですからね、我々は」

競争が激しい中国市場で勝ち抜くため、日本電産は去年、現地に開発拠点を設けた。現地メーカーのモーターを分解し、新たな商品開発に活かそうとしている。早舩さんは、EVシフトに突き進む中国のスピードに遅れをとってはいけないという。

早舩さん「このまま世界のEVの流れが続いていって、日本だけ取り残される。よく言われる、あらゆるもので日本はガラパゴス化と言われるが、ガラパゴス化が進んだ後にEVだと言われても、完全に遅れをとってしまう。しかも中国から高性能で低価格のEVが入る世の中になってしまうと。日本の産業も唯一残された自動車産業も危うくなる」

日産から日本電産に移り、今年CEOに就任した関潤(せき・じゅん)さんは、中国市場を足がかりにEUなど世界へ販路を広げる狙いだ。

日本電産・関CEO「2025年ぐらいに、地域ごとにばらつきがあるもの(需要)が一挙に加速すると見ている。我々は自動車会社さんが欲しい分、全部供給するつもりでいます」

<自動車産業に迫る変革の波 ~失われる技術や雇用~>

世界の自動車産業に押し寄せる変革の波は、痛みももたらしている。

おととし、ドイツ政府がある衝撃的な試算を発表した。ドイツの自動車産業は、裾野まで含めると160万人の雇用を抱える。EVシフトが進めば、その内30万人の雇用が2030年までに失われる可能性があるというのだ。

EVはエンジンが不要となるため、ガソリン車と比べて部品の数が大幅に減る。ドイツではすでに労働者の削減が始まっている。

デモのシュプレヒコール「私たちを無視するな。未来を奪うな」

この日、行われたデモには、自動車産業などの労働者1万人が集結。急速なEVシフトに反対の声を上げた。

ドイツ南部ローディングでは、ルノーなどの自動車メーカーにエンジン部品を納めていた会社が、3年後の工場閉鎖を決定した。従業員450人のうち、すでに4割が仕事を失った。

そのひとり、マーティン・コペツキーさん、50歳。この日が最後の出社だった。はたちの頃、自動車業界に入ったコペツキーさん。エンジン部品の品質管理を担い、家族のために働いてきた。

コペツキーさん「怒りと失望で頭がいっぱいです。人生の一幕が終わりました」

コペツキーさんが勤めていた部品メーカーは、3年前からEVシフトを見据えて事業の転換を始めていた。会社は、社員の専門性や適正などを見極め、EV部品の研究開発に必要な人材には、社内で再教育を行っている。

部品メーカー・人事部門責任者「人材面でのEVシフトは大きな挑戦です。たとえ縮小する部門でも、スキルがある人材は残します」

コペツキーさんは、会社の支援で他社への再就職を目指すことになったが、いまも仕事は見つかっていない。

コペツキーさん「会社はEV用の部品を作るために、大学を出たばかりの若者を求めています。怒りしか感じません。私には再教育の機会すら与えられなかったのです」

日本でも、EVシフトが進めば、雇用に大きな影響が出ると懸念されている。戦後、発展した日本の自動車産業。いまや全体の従事者はおよそ550万人にのぼる。最悪の場合、このうち100万人に影響が出るという試算もある。

栃木県にあるホンダの工場。50年にわたってエンジンを製造してきたが、会社はEVシフトなどを背景に4年後の閉鎖を決定。従業員およそ900人の配置転換を行うとしている。

地元では受注が減少する企業も現れている。エンジン関連の部品を製造してきたこの会社は、おととし以降、ホンダなどからの注文が減り始めている。

アオキシンテック・青木圭太CEO「(この2年で売り上げが)4億ぐらいの減にはなってきちゃいます。2~3年以内に僕らの作るものというのは、きっと無くなってしまうんだろうなと予測していますね」

自動車業界からの売り上げが見通せない中、100人の従業員を守るため、異業種への転換を模索している。なんとか受注にこぎつけたのは、カップ焼きそばの製造ラインだ。

青木CEO「自動車産業だけで、うちの会社を維持していくのっていうのは難しいと思いますし、自分たちでできることを探す必要性はあるなっていうのは思っています」

さらに自ら廃業を選ぶ企業も出てきている。長年、エンジンの製造設備を開発しホンダなどに納めてきた大阪の会社。2021年2月、事業の継続を断念した。

熱による金属の膨張を踏まえた緻密な設計が、アメリカや韓国のメーカーからも高く評価されてきた。

しかしその熟練の技術も、EVシフトの前では価値が失われてしまったという。

「今後、EVシフトが日本全体に波及していけば、自動車産業に大きな影響を与える」と考えている。

大阪技研・大出竜三 元社長「産業構造は壊れます。電気自動車になると壊れていきます。今まであった、自動車業界のピラミッドの中で、上から仕事が出てきて続くんだって、思っているような幻想は捨てないといけない時代になっている」

<脱炭素を目指すトヨタの戦略>

揺らぐ日本の自動車産業。

極端なEVシフトに警鐘を鳴らすトヨタは、独自の戦略を描いている。大分県で開かれた自動車の耐久レース。豊田社長自らがハンドルを握るのは、急ピッチで開発を進めている水素エンジン車だ。

エンジンを使いながらも、ガソリンの代わりに水素を燃やすためCO2をほぼ排出しない。

レースでテストを重ねながら、現在60キロ程度にとどまる航続距離の改善を目指している。

EVとは異なり、エンジンの技術を継承できるため、実用化できれば、下請け企業も含めた日本の雇用を守ることにつながると期待している。

豊田社長「カーボンニュートラルに向けて、心ひとつに今後も闘いをしていくんだろうなと思いますので、是非ともみなさん一緒に闘っていきましょう」

その一方、トヨタもEVの開発に乗り出している。来年発売する新型EVの航続距離は、およそ500キロに及ぶ。こうしてトヨタは、水素エンジン車、EV、ハイブリッド車、FCVなどを同時並行で開発していく構えだ。

EVシフトが進むヨーロッパや中国では、EVなどの販売に力を入れる。北米や日本、そしてアジアなどの新興国ではハイブリッド車も販売するなど、地域に応じた戦略を取ろうとしている。あえて選択肢を絞り込まず、脱炭素時代を勝ち抜く道を見極めようとしている。

豊田社長「カーボンニュートラルに取り組むにあたっての敵は炭素です。決して内燃機関(エンジン)ではないと思います。これが正解ですというものが、今は見つかっていないと思います。正解がないときに選択肢を狭め、これがあたかも正解かのごとく持っていくやり方ではなくて、今は多くの選択肢を与え、是非ともそのサポートをお願いしたい」

<EVの主導権をめぐる争い ~ルノーはさらなる一歩を~>

大胆なEVシフトを進めるフランスのルノーは、さらなる一歩を踏み出している。

脱炭素を目指して、EVの生産段階で排出されるCO2も徹底して削減しようとしている。プレス機から発生する熱を暖房に再利用したり、車の塗装を乾かす時間を効率化したり、使う電力を極力減らそうとしている。

ルノー・EV生産責任者 ルチアノ・ビオンドさん「我々はクリーンな工場で、クリーンな車を作ろうとしています」

背景にあるのは、いまEUで議論されている新たな規制のあり方、「ライフサイクル アセスメント」。CO2を車の走行中だけでなく、原材料や部品の調達から製造・廃棄に至るまで、すべての段階で減らそうという考えだ。

厳しい環境規制を打ち出し、EVシフトの主導権を握ろうとするEU。ルノーはこれにいち早く対応し、ライバルとの競争を有利に運ぼうとしている。

ルノー・スナール会長「EUは今後もCO2の排出規制をより厳しくする方針を打ち出しています。官民で連携しなければいけません。進むべき道は明確です」

<岐路に立つ自動車大国・日本>

エンジンを捨て、EVシフトに突き進むホンダ。航続距離をめぐる極限の戦いを続けている。

行っているのは、EVの空気抵抗の測定。バッテリーの次にEVの航続距離を左右するのは空気抵抗だと考えている。そこで活用するのが、ホンダがF1で培ってきた、空気抵抗を最適化するノウハウ。細かな調整を幾度となく繰り返し、ライバルよりわずかでも前に出ようとしている。

エンジニア「割合として小さいかもしれませんが、1キロずつ伸ばしていく。航続距離で約20キロぐらいは上乗せできるように、今開発していますので期待していてください」

ホンダの技術開発のトップ、大津啓司さんは、従来の技術にいつまでも固執していては、日本企業は生き残れないと考えている。

本田技術研究所・大津社長「長年エンジン開発に携わってきた一人としては、内燃機関(エンジン)が継続されることを望んでいると思います。ただ経営視点を入れると、もうそういう考えはないですね。なぜなら社会が変わっているからですよ。社会が変わっている、技術を変えなければならない」

EVをめぐる世界との熾烈な戦いで、ホンダはどこまで巻き返すことができるのか。

大津社長「これからぐっと増えていく中での闘いなので、僕はまだほぼ横一線だと思っています。そういう意味でもまだ焦りはない」

取材班「ここからが勝負?」

大津社長「はい、ここからが勝負」

世界で急速に進むEVシフト。海外勢は官民一体となって主導権を握ろうとしている。

日本はどのような未来を描くのか。

いま、自動車大国の真価が問われている。