実験都市 深圳 ~メイド イン チャイナの行方~

NHK
2021年11月30日 午後1:09 公開

番組のエッセンスを5分の動画でお届けします

(2021年11月28日の放送内容を基にしています)

<創新を新エンジンに 共産党の狙い>

夜空を彩る無数のドローン。この夏の東京オリンピック開会式のおよそ3倍、5千200機が中国共産党創立100年を祝った。

成功させたのは、成長著しい中国のハイテクベンチャー企業。高い技術力を持つメイド イン チャイナに、世界は、驚きと、警戒心を抱いている。

中国にとっての新世紀が始まろうとしている。

創立から100年を迎えた中国共産党。平等社会の実現を掲げ、建国。熱狂が、ときに悲劇を生んだ。改革開放が解き放ったエネルギーは、劇的な経済成長を実現。軋轢や矛盾を抱えながら、類をみない大国となった中国は、次の100年、世界を巻き込みながらどこへ向かうのか。

世界一の経済大国を目指す中国共産党が、繰り返す言葉がある。

習近平国家主席「“創新”を推し進め、戦略的に科学技術の力を強化する」

「創新(そうしん)」。

付加価値の高い、新たな産業や企業を育てる、いわゆる「中華イノベーション」だ。

中国の経済成長が減速する中、次の成長エンジンとして期待をよせている。

その舞台に選んだのが、沿海部にある深圳(しんせん)。改革開放の舞台となったこの街は、中国共産党による社会実験が繰り返され、世界を席巻する企業を生みだしてきた。

平均寿命わずか3年と言われる中国のベンチャー企業。激しい新陳代謝の中で生き残ったものだけが、中国経済を牽引する存在となる。

起業家「深圳ではお金がすべて。深圳は、勝てば大勝ち、負ければ何の価値もない」

しかし、中国の起業家たちは、共産党の統制という「くびき」を逃れることはできない。

中国IT業界の巨人・アリババも厳しい制裁を受けた。党の管理の及ばないビジネスを手がけたことが理由と見られる。

共産党の存在がもたらす「強さ」と「あやうさ」。そのせめぎ合いの中で、起業家たちは生き残りをはかる。

中国共産党が主導する「中華イノベーション」。いま何を目指し、世界にどんな影響を与えるのか。

中国新世紀・第三回、共産党の実験都市・深圳の起業家たちを追った。

<未来都市・深圳>

住民の平均年齢33歳、深圳は、中国でもとりわけ若く、特別な都市だ。

公共のバスやタクシーはすべて電気自動車。デジタル人民元の実験に市民が参加。ビルの谷間を自動運転タクシーが走る。

経済特区のこの街なら、あらゆる実験が可能だ。

ドイツ人起業家「中国の中でも特別な都市。深圳に昔からいた人はいない。中国全土から集まった。新しいものを高速で開発、とても熱心だ。深圳はユニークな都市だ」

<次々と生まれるベンチャー企業>

深圳のモノ作りを支えてきた巨大電気街「華強北(ファーチャンベイ)」。秋葉原の30倍の規模で、1万店を超える電子部品の問屋が軒を連ねる。

2000年代まで、華強北から偽iPhoneなど「山寨(さんさい)」とよばれるコピー商品が大量に生み出されていた。多いときには5千を超える山寨企業が、本物よりも早く安くつくろうと、競うように製品を開発した。

その激しい競争の中で、深圳には、大小様々な工場群が雨後の竹の子のようにつくられていく。

例えば、ワイヤレスイヤホンの工場だけで、深圳には3千以上が存在する。生き残りをかけた、しれつな戦いを乗り越えたものだけが、さらに成長を続けることができる。

ロボット開発で成長を続けるベンチャー企業「ドラボット」。社長の鄧小白(とう・しょうはく)は、27 歳でこの会社を立ち上げた。いつも着ているのは青いTシャツ。子どもの頃からの夢を会社の名前にこめた。

鄧さん「夢は『ドラえもん』をつくること。100年後に夢を実現したい。日本の『ドラえもん』は100年後に誕生したことになっています。誕生日は僕と同じ9月3日です」

独自開発した製品が特殊なロボットアーム、「ドラハンド」だ。AIとセンサーを組み合わせ、自らモノを識別してつかむ、物流ロボットを開発している。

鄧さん「ドラハンドはオーダーどおりに果物を選別することができます。オレンジ3個、梨2個、リンゴ1個など、たくさんの大小さまざまな果物から選べます」

起業のきっかけは、6年前(2015年)。首相・李克強(り・こっきょう)が、深圳を訪れ「大衆創業(たいしゅうそうぎょう)万衆創新(ばんしゅうそうしん)」を提唱。みなで起業し、新しい価値を生み出そうと呼びかけたのだ。

すぐさま、起業ブームが起きた。この年だけで深圳には、30万社以上の民間企業が誕生した。

鄧も、2人の仲間とパソコン3台だけでこの会社を立ち上げた。 物流ロボットの将来性に期待が集まり、起業を決めた翌日には、民間投資会社から1億7千万円の融資を受けた。起業を促す共産党の政策が、異例ともいえる投資熱を生み出していた。

鄧さん「ラッキーでした。初めての起業でも、投資家の支援をもらうことができて、いいスタートを切ることができました。なぜ深圳で成功できるのか、その理由は私たちが安定した政治体制の下にいるからです」

ドラボットに、ある仕事が舞い込んだ。依頼主は、中国伝統の酒・白酒(ばいちゅう)を製造する国有企業。古い生産ラインを一新したいと依頼してきたのだ。ドラボットの社員が、四川省にある国有企業の工場に向かった。そこには目を疑う光景があった。

狭いラインにひしめき合う従業員。奪い合うように箱を取り、商品をかき分けて梱包。酒の量を目分量で調整。キャップは手作業でしめる。

いまだ生産性の低い国有企業。中国共産党は、いま改革を進めようとしている。

工場長「国有企業は国家戦略に応えて、自動化を進めます。醸造からこん包まで、自動化の実現は国内で前例がありません」

ドラボットの鄧小白は、自分たちの技術で国有企業を一変させたいと考えていた。

鄧さん「なかなかスケール感のある現場でした。国有企業にとって大きな挑戦です。この変化に対応できる生産ラインを我々が提供すれば、国有企業はよりニーズに応えられます」

中国経済の足かせとなっている国有企業。その改革に、深圳のイノベーションの力が必要とされていた。

<実験都市で繰り返される党主導のイノベーション>

深圳は、これまでも中国経済を刷新する役割を担ってきました。

1978年、鄧小平は、市場経済を導入する「改革開放」を打ち出します。

経済特区に指定された深圳に、外国資本が流れ込み、開発がスタート。中国で初めて、国有地の使用権を民間業者に払い下げる、競売会も開催。後の中国経済を牽引する不動産開発に、火をつけました。

かつては人口30万ほどの漁村だった深圳。社会主義市場経済の実験場となる中、街は一変。豊かさを求めて中国全土から人が集まり、人口は、40年で40倍以上に急増しました。

深圳とともに企業も成長していきます。世界有数の電気自動車メーカー、BYD。1995年に創業した当時は、携帯電話のバッテリーをつくる企業でした。2009年に電気自動車・EVの量産を開始しますが、当初は、苦しい経営が続きました。その状況を一変させたのが、共産党の政策です。

EVの購入税の免除など、手厚い支援制度を開始。需要が爆発し、世界最大の新エネルギー車市場が突然、出現したのです。

その巨大市場を背景にBYDは成長を続け、2017年には、新エネルギー車の販売台数世界一となりました。

党が打ち出す大胆な政策と、それに呼応する民間企業。それが車の両輪となって、中国のイノベーションは生まれてきたのです。

BYDアジア太平洋地域 自動車販売事業部 劉学亮さん「開明的な政策、活力ある開放的な市場、BYDの企業努力、この3つがそろう深圳だから、新エネルギー自動車産業のリーダー的地位を築くことができました」

<激化する生存競争の中で…>

改革開放から40年にわたって、中国経済をけん引してきた深圳。

しかし、経済の減速に加え、新型コロナの影響を受け、陰りも見え始めている。党主導の起業ブームも飽和状態となり、おととしから、企業数が減少に転じている。

さらに9月、深圳に衝撃が走った。不動産開発大手「恒大(こうだい)グループ」に対して起きた取り付け騒ぎ。改革開放の象徴として、20万人の従業員を抱えてきた巨大企業までもが、経営危機に陥っていた。

深圳がかつての勢いを失いつつある中、生き残りをかけて苦闘する起業家がいた。

7年前に会社を起こした鄭波(てい・は)。主力商品は、通信機能などを備えた「スマートヘルメット」。

ワイヤレスイヤホンを内蔵。スポーツシーンへの普及も狙っている。後方に、方向指示や急停止を知らせ、もしもの時に備えた機能もある。

鄭さん「衝撃を受けると、しばらくしてから自動的にSOSを発信します。登録しておいた友人などの携帯電話にメッセージが送られ、転倒した正確な場所も表示されます」

180人の従業員を雇い、スマート機能の開発からデザインまで、すべて自社で行っている。

去年、鄭の会社は、深刻な経営危機に陥った。販売先の6割が海外だったため、新型コロナの影響が直撃。売り上げが8割も減少したのだ。

鄭の頭をよぎったのは、1度目の起業を失敗した記憶だった。ニュージーランドに留学し、経営学を学んだ鄭。帰国して自信満々で、家電メーカーを立ち上げた。しかし事業は頓挫。痛感したことは、中国では、共産党の存在や、その方針を重視しなければ、ビジネスは成立しないという現実だった。

鄭さん「いま振り返ってみると、当時の私は本当にバカでした。政府に連絡することもなく、自分の資金や人脈だけでビジネスを行っていました」

いま、鄭は共産党の政策に気を配っている。この日、共産党が、「体育強国」の建設を目指し、スポーツ振興に力を入れるという記事を見つけた。

鄭さん「習近平国家主席の体育強国建設のニュースを読んで投稿しました」

「我が社は重要な任務を背負っている」と投稿した鄭。スポーツバイクなどの利用者が増え、ヘルメットの国内需要も高まると期待を寄せていた。

鄭さん「中国で企業を経営する場合、国の重点的な政策に関心を寄せる必要があります。これから、スポーツ分野に対する優遇措置などが出るかもしれません。我々にとって、大きなチャンスになるでしょう」

<世界とつながる新たなイノベーション>

改革開放の象徴として、様々な規制緩和が行われてきた深圳。世界と直接つながり、イノベーションを起こそうという、新たな起業家たちも登場している。

潘昊(はん・こう)は、深圳でも名の知れた起業家だ。大企業によるトップダウンではなく、個人や中小企業が国境を越えたネットワークを結び、新たな価値を生み出すことを目指している。

潘が立ち上げた会社「シード」。社員は200人あまり。今年はおよそ80億円の売上げを見込んでいる。主力製品は、電子回路。次世代の通信機器やIoT機器の頭脳となる。これまで2千種類以上を開発してきた。

ネットワークを重視する潘が用いているのが、オープンイノベーションという新たな方法だ。例えば、ある電子回路を開発すると、その設計図ごとに公開し、世界のエンジニアなどと共有する。

それぞれが、電子回路に自由にアレンジを加え、カメラや時計など様々な独自製品を開発。専門性を活かし、自由に開発するため、社会に必要とされる製品が素早く生まれる。シードは売上げの一部から、収益を得る仕組みだ。

潘さん「オープンイノベーションでは、数千人数万人の開発者が同じ技術を共有し活用します。例え大手企業でも1社だけでは困難ですが、ベンチャー企業みんなが参加すると、柔軟に効率よく問題を解決できます」

いまシードで、新たな製品開発が進んでいる。自社開発した電子回路をもとに製作した「振動センサー」。AIを内蔵し、取り付けるだけで、構造物の揺れを効率的に検知できる製品だ。

オープンイノベーションを目指す潘は、試作品を手に、中国の土木工学の権威に会いに向かった。議論の中で、専門家から、橋の揺れを検知するだけでなく、もっと有用な使い方もあるとアイデアをもらった。

西南交通大学・張方教授「いま(橋の)ボルトをチェックするとき、肉眼かドローンを飛ばし確認します。その映像を見て100個、1000個のボルトを全部確認しないといけません。落ちたボルトがあれば、すぐに警報を鳴らします。もし振動センサーをボルトにつけたら、緩んだときにすぐに警報を鳴らすことができます」

ボルトの周辺にセンサーを取り付け、振動の変化を観測することで、ゆるみ具合を確認できないか。今後共同で開発することになった。

ネットワークによって進化するオープンイノベーション。さらに潘は、国境を越えたつながりを広げていきたいと考えている。

潘さん「これからのイノベーションにとって大事なのは、個人や中小企業の力です。世界中のイノベーターと、もっと積極的に交流を深め、みんなが安心して深圳に来て創業できるといいですね」

<共産党の統制下にある民間企業>

世界に類を見ない中国の経済体制・社会主義市場経済。その中では、民間企業の活動は党が認める範囲に限定されます。

2017年に施行された「国家情報法」。中国のあらゆる組織や個人は、国家の情報活動に協力するよう義務づけられています。国から情報提供を求められた場合には、民間企業であっても協力しなければなりません。

また、党の管理が及ばないビジネスは許されません。

中国IT業界のカリスマ、ジャック・マー氏は1999年にアリババを創業し、ネット通販の巨大企業に成長させました。金融ビジネスにも進出。独自の融資システムを構築しようとしていました。

2020年11月に予定されていた、3兆6000億円にのぼる子会社の株式上場。マー氏はその直前こう語っていました。

ジャック・マー氏「中国の金融は管理する力は強いが、正しく監督する力は明らかに足りない。古い方式で管理監督されることを恐れる」

この発言の1週間あまりあと、金融当局の指導によって、上場は突如延期に追い込まれます。党の管理が及ばない、大規模な金融システムを導入しようとしたことが問題視されたと見られています。

その半年後には、独占禁止法に違反したとして、3000億円余りの罰金を科されました。

共産党が突如打ち出した政策によって、壊滅的な打撃を受けた産業もあります。

教育熱の高まりを背景に、巨大産業となっていた学習塾ビジネス。共産党は、教育にかかる親の経済的負担を軽くするなどとして、学習塾を非営利団体にする規制を導入。多くの塾が閉鎖に追いやられました。

<共産党と起業家の関係は…>

2021年10月、中国の建国を祝う国慶節(こっけいせつ)。

世界とつながるオープンイノベーションをめざす潘昊(はん・こう)は、父親の誕生日を祝うためにふるさとへ帰った。潘の両親は、大学の教員を定年まで勤め上げた。中国を発展させた共産党の力を誇らしく感じている。

潘さんの父「私の妻も共産党員で、彼女の家族も全員党員です。(党は)中国人民に幸せな生活をもたらしてくれました。簡単なことではないです」

父親は「息子に共産党員になってほしい」と思っていた。いち早く党の意向をつかみ、ビジネスチャンスにもつながると考えていたからだ。しかし、潘の考え方は違っていた。

潘さん「起業家にとって党員であるか否かは、企業の発展とは関係ありません。なかなか表現しにくいですね。起業家にとっての(中国の)環境は、チャンス、チャレンジ、リソースにあふれています。しかし、同時にいくつかの制約にも従う必要があり、その制約の中で価値を生み出すのです」

共産党と一体だと思われることが、世界のビジネスパートナーから警戒される可能性もあった。

<共産党の力を頼りに…>

党が掲げる方針を追い風にし、業績を伸ばそうとしている鄭波(てい・は)。毎月2万個を生産しているスマートヘルメットを増産しようと考えていた。

党が打ち出した「体育強国」の政策によって、国内需要が増加するはずだ。生産ラインを、現在の1つから、一気に4つに増やす計画を立てた。資金を集めるため、鄭は投資家に出資をよびかける資料作りを始めた。

鄭さん「スポーツに関する政策を盛り込もう。『中央政府はいまスポーツ事業の発展に力を入れている』とか」

起業ブームが下火となり民間の投資は減少している。そこで、豊富な資金を持つ政府系ファンドを頼ることにした。

中国に1300社以上ある政府系ファンド。中央や地方政府が資金を出して、民間企業に投資する。政府系ファンドに依存すれば、国有企業のように、経営に関与されるかもしれない。懸念はあるが背に腹は変えられない。

鄭さん「カネはカネです。この視点から見れば、政府系ファンドと、市場での調達は同じものです。政府系ファンドは、政策に基づき投資する。我が社のプロジェクトは、政策に合致するので投資してもらいます」

厳しい競争に打ち勝つためにも、なんとしても、このチャンスをものにしたい。

鄭さん「鈍行列車は速度は遅くても、安定して走り車両も長い。昔の中国の経済に似ています。いまのイノベーションは高速鉄道。一度起業したら止まれない。もし止まってしまったら、そのときは遠くまで振り落とされます」

1か月後、鄭の事業に興味を持った政府系ファンドから連絡が入った。深圳の隣の都市が出資するファンドで、交渉相手は、その都市の党幹部だ。

鄭さん「新しい常務委員が来るので、まず資料の内容を聞いてもらって、質疑応答だ」

社員「どんな常務委員?」

鄭さん「この常務委員はちょうどビジネス誘致を担当しているので、我が社の立場から必要な政策、人材、資金などについてまず私から話す」

鄭はスマートヘルメットが、中国のスポーツ振興にも資する製品だとアピールした。

取材班「話し合いはどうでしたか?」

鄭さん「ほぼ思ったとおりの会談で、いい感じでした。これからまた別の政府系ファンドへ行きます。我々の株主になってくれそうなので、きょうはこの件を固めます。では!」

このファンドから受けた融資額は、およそ10億円。この後すぐに、別の政府系ファンドに向かった鄭。ますます党の力を頼りにするようになっていた。

<メイドインチャイナ 世界との軋轢>

民間企業の背後に見え隠れする共産党の存在。それは世界との軋轢ももたらしています。

中国を代表するハイテク企業ファーウェイ。次世代通信システム5Gなど、情報通信の研究開発で世界をリードしています。一方で、創業者の任正非(じん・せいひ)CEOは、人民解放軍の技術者という経歴を持ち、党や軍と関係が深いとも指摘されています。

このファーウェイ製品を排除しようとしてきたのが、アメリカのトランプ前大統領でした。

トランプ大統領(当時)「ファーウェイは安全保障上の脅威だ」

今後の安全保障のあり方を変えると言われる5G技術を、中国が主導することを警戒。さらに、ファーウェイ製品を通じて、中国に機密情報が漏洩するのではないかと見ていたのです。

おりしも米中首脳会談が行われた2018年12月1日。ファーウェイの孟晩舟(もう・ばんしゅう)副会長が、アメリカが制裁を科すイランと取引を行ったことなどとして、逮捕されました。

それから3年あまり。解放された孟晩舟氏が、熱烈な歓迎を受け、深圳の空港に降り立ちました。

ファーウェイ・孟晩舟副会長「祖国よ、ついに帰ってきました。祖国は私たちの最強の後ろ盾です。政府の管理ルールの下、企業は発展に努め、国と社会のために一層の貢献をいたします」

今月(2021年11月)、バイデン大統領は、ファーウェイなど、50を超える中国企業への投資を禁止する大統領令を1年間延長すると発表。

世界は、中国企業への依存を強める一方で、警戒心もますます高めています。

<進化する中国製造>

共産党が推し進める国有企業改革。

製造ラインの自動化を請け負った、ベンチャー企業・ドラボットは、開発を続けていた。人の手に代わって、箱詰め作業をするロボット。繊細な動作を実現するため、試行錯誤を繰り返す。ビンを固定するひもを引き上げようとすると、下の布までひっかけてしまう。

ロボットの指で布を押してから、ひもを引く動作をAIに覚えさせた。

わずか1か月の間に、自動化ラインの開発に成功。13種類のビンを1時間で300本箱詰めできる。

今後、製造業だけでなく、幅広い分野への応用が期待されるロボット技術。国有企業の改革を足がかりに、ドラボットは着実に技術を蓄積していた。

この日、鄧小白(とう・しょうはく)は、国有企業との契約に向かった。国有企業は工場自動化のために、来年、100億元、1700億円を投資する計画だ。ドラボットの来年の売上げは倍増し、170億円に上る見込みだ。国策の波に乗り、さらなる成長を目指す。

鄧さん「中国主導で、世界規模の注目度の高いプロジェクトが誕生します。海外でも普及できると自信を持っています」

<世界へ その先に待っているのは…>

今月、世界最大手の物流会社との共同開発が進展した。ドラボットはアメリカ支社も設立し、世界進出を加速させようとしていた。

鄧さん「コロナ後で、いいタイミングだ、すべてが回復している。アメリカやオーストラリアなど多くの市場に参入しよう」

スマートヘルメットを開発する鄭波にも追い風が吹き始めていた。

来年1月からヘルメットの安全基準が変わり、仕様変更が必要になった。コロナ禍で成長する大手フードデリバリー企業から、配達員300万人分のヘルメットの注文が舞い込んだ。

鄭さん「中国はいま正しい道、正しい方向に進んでいると思います。正しい方法で進化を遂げている国だと言えるでしょう」

厳しい生存競争、そして、党による管理の強化。

世界と結ぶオープンイノベーションを進める潘昊(はん・こう)、押し寄せてくる現実を乗り越えようとしている。

潘さん「中国は変貌しようとしています。ビジネス環境は10年前、20年前とは大きく変わりました。生き残る力は一番重要です。それが最優先です。変化の中で、チャンスをつかむ。競争相手がこけそうなタイミングを見て、相手に打ち勝つのです」

この先に、何が待っているのか。

共産党主導の中華イノベーションがもたらす、「強さ」と「あやうさ」。巨大な波が世界とせめぎ合いを始めている。