半導体大競争時代 第1回 国家の“命運”をかけた闘い

NHK
2023年2月15日 午後5:05 公開

番組のエッセンスを5分の動画でお届けします

https://movie-a.nhk.or.jp/movie/?v=rfvsaq81&type=video&dir=XAw&sns=true&autoplay=false&mute=false

(2023年1月22日の放送内容を基にしています)

私たちの暮らしを支える、ある先端技術。

日本が劇的な勝利を収めたサッカーワールドカップの、あのシーンでも使われていました。

ラインにかかったミリ単位の位置を判定するために使われたひとつが、ボールの中に入れられた小さな部品。大量のデータを瞬時に処理できる「半導体」です。

半導体は次世代の産業を支える、様々な技術に活用されています。

食料危機の解決にもつながる海中農場のシミュレーションや、身振りでテレビを操作できるようにした人工知能の技術など、半導体の市場規模は、10年以内に100兆円を超えるとされています。

巨大な富を巡る闘いの最前線を描く、シリーズ「半導体・大競争時代」。第1回は、半導体の“覇権”を握ろうと、大国が総力を挙げ繰り広げる、し烈な競争です。

アメリカは、7兆円の補助金で半導体工場の国内建設を後押し。安全保障にも欠かせない先端半導体の技術で、世界をリードしようとしています。対する中国は10兆円以上の基金で、半導体の技術開発を加速させています。米中の狭間で、生き残りをかける日本。

国の支援を受ける新会社「これを逃してしまったら、日本のあらゆる産業はだめになる」

私たちの暮らしや安全、産業に欠かせない戦略物資となった「半導体」。国家の命運をかけた闘いを通して、日本の未来を見つめます。

劇団ひとり「半導体ってよく耳にしますけど、一体どんな役割で、どれぐらい重要なものなのか、よくわかってないですね」

真矢ミキ「昨今ニュースとか記事で、半導体という文字をよく見ます。半導体を巡って、世界が駆け引きしているなって」

劇団ひとり「なんでそんな大変な騒ぎになっているのか、よくわからない」

浅野里香アナウンサー「今回は、この半導体についてNHKスペシャルで2回にわたって特集していきます。NHKで半導体といったら、有馬記者です」

有馬嘉男記者「よろしくお願いします。半導体って、取材するとおもしろいんですよ。この小さな半導体を取材していくと、日本のものづくりの栄枯盛衰がわかるし、強みも弱みも見えてくる」

浅野アナ「日本対ドイツ戦のときに使っていたボール。中心部分の小さい球体の中に、半導体が入っています。半導体で、ボールがどの位置にあるか、位置情報を把握しているんです」

真矢ミキ「VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)だ」

浅野アナ「そうです。スペイン戦でラインギリギリの判定がありましたよね」

真矢ミキ「三苫さんの1ミリ。アシスト」

浅野アナ「そう、その判定のときにも、この半導体の最新技術がVARとともに使われていたんです」

劇団ひとり「助かりましたよね」

有馬記者「身近なところに、もっともっと半導体はあります。例えば、最新型のスマホ。この中に、びっくりするぐらい半導体が入っているわけです。数えてみたら50個以上入っていました」

真矢ミキ「半導体って、そんなに種類があるんですか?」

有馬記者「どんな半導体が入っているのか、こちらをご覧下さい」

有馬記者「まず“CPU”。スマホのあらゆる機能をつかさどる、司令塔です。人体に置き換えた場合、CPUは、体のいろんな機能をつかさどるわけですから、脳』です。“イメージセンサー”と言われる半導体はカメラのレンズ、つまり『目』で、日本のメーカーが強い分野です。“顔認証”で力を発揮する半導体、こちらも『目』。それから、“音声認識”をする半導体は、『耳』ということになります」

劇団ひとり「わかりやすいです」

<半導体技術で争う米中>

その小さくて細かい半導体の設計で、世界をリードするのがアメリカです。

IT大手IBMは、2021年、世界でもっとも微細な半導体の開発に成功しました。回路の幅は2ナノメートル。髪の毛の太さのおよそ5万分の1です。

半導体では、回路の幅が性能を決定づけます。幅が細くなればなるほど、電気信号のやりとりを増やすことができ、データの処理能力が上がります。

現在、日本で製造できる限界は、家電などに使われる40ナノ。IBMの2ナノは、AI=人工知能や自動運転などの性能を高める技術として、注目されています。

IBMリサーチ/ムケシュ・カレ副社長「我々は2ナノの技術だけでなく、今は1ナノや、それを上回る技術の開発を進めています。これから10年は、成長が期待できるという自信がみなぎっています」

世界では今、アメリカと中国が半導体を巡って、国の総力を挙げた競争を繰り広げています。

半導体の設計で世界をリードするアメリカ。これに対して、巨大市場を背景に急成長しているのが中国です。市場を牽引するひとつが、大量の半導体が使われるEV=電気自動車です。世界最大のEV市場となった中国、販売台数はアメリカの5倍以上にのぼります。

7年前に設立され、急成長を遂げるEV用の半導体メーカー。主力製品は、EVの電力消費の効率を上げるための半導体です。巨大な市場を追い風に、技術や生産力を急速に向上させています。

基本半導体/蔡雄飛副総経理「この工場の年間の生産能力は、EV25万台分ですが、2025年には500万台分に引き上げる計画です。今後、研究開発や、車への搭載を加速させることで、海外との差を縮めることができるでしょう」

浅野アナ「世界の構図を見てみますと、アメリカと中国。この両者が企業間の競争にとどまらず、国どうしの総力を挙げた闘いになっているんです」

有馬記者「アメリカは、最先端の半導体の設計・開発は得意中の得意。世界の先頭に立ってきましたが、製造は海外に依存していた。一方、中国は『世界の工場』ですから、その威信をかけて、今、半導体をがんがん生産している。こうした状況を象徴的に表すのが、半導体の生産地別のシェアです。アメリカは、製造を海外に依存してきたことで世界シェアの1割ほどに低迷。一方中国は、最先端は製造できないとされるものの、生産シェアでは、すでにアメリカを上回っているんです」

アメリカ/バイデン大統領「現在、我々は先端半導体を全く生産できていない。中国は我々の先に行こうとしている」

浅野アナ「実はもう1つ大事なプレーヤーがいるんですが、ひとりさん、どこかわかりますか?」

劇団ひとり「それは当然日本でしょう。技術といえば、日本ですからね」

有馬記者「残念。台湾です。実は今、世界の最先端の半導体は、ほとんどを台湾で生産しているんです。だからアメリカも、そして中国も、この台湾を巡って対立をヒートアップさせているんです」

<米中から製造請け負う台湾>

台湾ハイテク産業の中心地、新竹サイエンスパークに本社を置くのが、先端半導体の製造で世界をリードするTSMCです。他社からの注文を受け、半導体の製造に特化するビジネスモデルを、世界で初めて確立しました。

アメリカのアップルから、スマホやパソコン用の半導体の製造を請け負い、最新機種では4ナノという最高水準のCPUを量産。さらに、中国のスマホ大手からも製造を請け負うなど、先端半導体の世界シェアで、およそ7割を占めるまでになっています。

米中対立が激化するなかで、台湾にとって先端半導体の重要性は増しています。

2022年8月、アメリカのペロシ下院議長が台湾を電撃訪問。これに反発した中国は、台湾周辺で大規模な軍事演習を実施しました。

台湾当局の経済政策の責任者、王美花(おう・びか)経済部長は、先端半導体を供給するうえで、台湾が不可欠な存在であり続けることが、安全保障の要にもなるといいます。

台湾 経済部/王美花 部長「もし台湾が武力行使を受ければ、中国も含め、世界に重大な影響が及ぶでしょう。経済とハイテク技術の発展において、台湾の存在が他に取って代わられることはありません。台湾海峡の平和は、世界にとって重要なのです」

いま、アメリカは中国に対抗するため、国内の生産拡大を急いでいます。アリゾナ州にTSMCの巨大工場を誘致。アメリカ国内では実現出来なかった4ナノの量産を、2024年から始める予定です。最先端の工場をアメリカに建設するよう、TSMCと数年がかりで交渉してきました。

アメリカは、半導体の国産化を推進するため、政府主導の大規模な産業振興策に踏み出しています。半導体産業におよそ7兆円の補助金を投じる、通称「チップス法」です。

国産化を急ぐ理由として、政府が掲げているのが安全保障。米軍の最新兵器は、海外産の半導体に依存。アメリカのシンクタンクによると、最新鋭の戦闘機に使われている半導体も、台湾TSMC製とされています。

国防総省は、台湾有事などによって、アメリカの軍事力に影響が出ることは避けなければならないと、危機感を強めています。

米国防総省 半導体政策責任者/デブ・シェノイ統括部長「台湾は地政学的な事情で、今後アクセスできなくなる恐れがあります。アメリカにとって半導体は、未来の軍事システムのための“必勝技術”です。軍事的な成功に欠かせません。半導体技術をひとつの地域に依存することは、安全保障上危険です」

アメリカは国産化を進める一方、中国への締めつけも強めています。

中国が先端半導体を、軍事転用する恐れがあるとして、2022年10月、輸出規制を強化。先端半導体を製造するための装置やソフトウエアなどが、中国に渡らないようにしたのです。

これに対し、中国政府は反発。WTO=世界貿易機関に提訴するなど、対立を深めています。

中国 外務省報道官「アメリカは輸出管理の措置を乱用し、半導体などの正常な国際貿易を阻害している」

劇団ひとり「半導体を巡ってこんなにバチバチしていたんですね。TSMC?全然聞いたことなかったけど、すごい大きな企業ですね」

有馬記者「アメリカも、そして中国も、最先端の半導体をつくる台湾を、何とか自分のほうに近い存在にいてほしい」

有馬記者「バイデン大統領が、『中国から台湾を守ります』と言っている一方で、習近平主席は、『そもそも台湾は中国の一部で、統一するためには武力行使も辞さない』と。まさにそれが“台湾有事の懸念”ということになります」

真矢ミキ「なるほど。すごい。点と点だったニュースが全部、線になりましたね」

劇団ひとり「そろそろ日本の話もしてもらっていいですか?」

浅野アナ「こちらのデータを見てください。半導体の売り上げランキング。まず1980年代を見てみると、トップ10まで日本企業が5社入っています。一方、およそ30年たつとゼロ。こんなにも状況が変わっているんです」

真矢ミキ「日本は入ってないんだ」

劇団ひとり「さっきのTSMCは?」

有馬記者「TSMCは、ランキングに載っているような企業から注文を受けて、半導体をつくる企業なので、TSMCがつくる半導体は、インテル製やクアルコム製だったりする。だから、このランキングからは外されています」

劇団ひとり「なるほど。はあー。ここに日本は入ってない」

真矢ミキ「なぜランキングに上がらなくなったのか」

有馬記者「いろんな理由はあるんですが、今回取り上げたいのは、日本企業の“自前主義”」

真矢ミキ「自前主義?」

有馬記者「当時、日本の企業って『メイド・イン・ジャパン』と言われ、隆々とした存在でした。半導体の開発・設計から製造まで全部自社で行う、“自前主義”にこだわっていたんです」

有馬記者「ところが、半導体は大きな工場も必要ですし、何百億、何兆円という巨大な投資が必要なビジネスです。企業が命運をかける巨額投資ですから、大変な決意も判断もいるわけです。半導体は景気の浮き沈みにも大きく左右され、技術も次々に変わっていくから、追っかけっこのようなスピードが必要なんです」

有馬記者「ところが、日本企業のいいところでもあるんですが、それぞれの部門の意見を聞き、調整し、決めていく」

真矢ミキ「時代が、デジタル化というか、スピーディーになったから、皆さんの了解を得ている間に、半導体の流れが進んじゃってるんだ」

有馬記者「ボトムアップで物事を決める日本企業の経営判断のスピードが、半導体市場のスピードにはついていけなかった、ということです」

浅野アナ「でも、まだまだ日本に強い分野があるんですよね」

有馬記者「そうです。“製造装置”と“素材”」

日本の強みである“素材”。例えば、半導体の土台となる「シリコンウエハー」では、日本企業が世界で6割近くのシェアを持っています。

このウエハーを加工するために必要なのが、日本のもうひとつの強み、“製造装置”です。半導体はウエハーを洗浄したり、薬剤を塗ったりするなど500以上の工程を経てつくられます。それぞれの工程では、異なる製造装置が使われていて、日本は洗浄する装置など多くで高いシェアを持っているのです。

有馬記者「こうした日本の企業は、今、懸命に生き残りをかけて闘っているんです」

<大競争時代 日本は>

日本の半導体が凋落するなか、製造装置メーカーは、海外への輸出に活路を見いだしてきました。製造装置メーカーのスクリーンは、ウエハーを洗浄する装置で世界トップシェアです。

ウエハーの上に、何層も回路を書き込んでつくられる半導体。表面にゴミがあると、うまく回路が書き込めないため、層を重ねるたびに洗浄する必要があります。

この会社の売り上げの8割は海外。いま、アメリカや中国での需要の高まりを受けて、増産に乗り出しています。この工場だけでも協力会社を含め、新たに500人近くを雇用。今後、国内5か所に工場を増設する予定です。

需要が高まる一方で、海外から求められる水準は、より厳しくなっています。

これまでの洗浄方法で検出されたゴミは167個。洗浄の質は、水の量や回転数、温度など、数万通りの組み合わせで左右されます。今回、乾燥時間を調整したところ、ゴミをこれまでの5分の1以下に減らすことができました。

開発戦略課課長「技術の鍛錬を重ね、(海外の)ニーズに応える解決策を提供してきた。我々が洗浄装置でトップシェアNo.1を築けた要因だと思っています」

これまで国内で技術を磨きながら、海外の市場で存在感を示してきた日本の製造装置や素材メーカー。しかしいま、アメリカの半導体政策によって、戦略の見直しを余儀なくされています。

アメリカが2022年10月に発表した中国への輸出規制に、衝撃が走っていました。日本から輸出する場合でも、アメリカの技術が使われていれば、許可なしには輸出できないおそれがあるのです。

製造装置メーカー、スクリーンの機械にもアメリカ製の部品が使われています。売り上げの2割を中国でのビジネスが占めているため、顧問弁護士に相談するなど、対応に追われています。

安全保障貿易管理室 室長「極端な例で言うと、ねじ1本なくても機械が動かなくなるので、アメリカの部品が壊れて(中国へ)出せなくなったら、機械が動かない。中国への輸出は当社にとって相当量あるので、対応は必須」

日本企業は、アメリカによる囲いこみにも直面しています。

2022年9月、安倍元総理大臣の国葬に参列するために来日したハリス副大統領。国葬の翌日、半導体の装置・素材メーカーを集め、協力を呼びかけていました。

この場に招かれた1社が、素材メーカーのレゾナックです。半導体を乗せる基板の素材(銅張積層板)では、およそ4割のシェアを占め、世界トップです。最高戦略責任者の真岡朋光さんは、ハリス副大統領から、アメリカに拠点を設けるよう、誘いがあったといいます。

レゾナック/真岡朋光 最高戦略責任者「副大統領が個別の企業と直接会話する場をもったことから考えても、強い意図で参画を促していると理解している」

しかし、その判断は容易ではありません。会社ではこの10年、国内だけでなく、台湾や中国に生産拠点を設け、アジアに軸足を置いてきたからです。現場からは、アメリカに拠点を設けることには、慎重な声が上がりました。

「将来的に、アメリカと中国との関係をよく精査しながら、拠点戦略を練っていかないといけない」

「今ある拠点の中で、生産能力を増やす戦略のほうが向いている。ノウハウの流出防止にもなる」

この日、真岡さんが向かったのはアメリカ大使館。大使から、直接面会したいという申し出があったのです。大使館からは、アメリカに拠点を設ければ、チップス法の補助金を活用できると提案されました。しかし、この法律のもとでは、補助金を受けると、「中国への新規投資を10年行わない」など、ビジネスが制約されるおそれがあります。

制約はどこまで課せられるのか。面会で満足のいく答えは引き出せませんでした。

レゾナック/真岡朋光 最高戦略責任者「中国との情報のやりとりに、どれくらいの制限がかかるのか。昨日できていたものが、今日できなくなるということが起こるとすると、いろいろ難しい」

自国を優先するアメリカが、サプライチェーンを再編しようとするなかで、対応を迫られる日本。政府はその流れに乗ることで、日本に半導体の製造を復活させるプロジェクトを進めています。

世界の潮流から取り残され、アメリカや台湾から10年遅れと指摘される日本。製造装置や素材の強みを活かせず、先端半導体を国内で製造することはできていません。

半導体政策を指揮する金指壽(かなざし・ひさし)課長は、かつての失敗を繰り返さないためには、アメリカとの協力関係がカギになると見ています。

1980年代、世界を席巻した日本の半導体。その凋落のきっかけの1つが、アメリカからの厳しい規制でした。「日本は半導体を不当に安く販売している」「市場は閉鎖的だ」として、日米半導体協定を締結。日本からの輸出や価格を、10年にわたって厳しく規制したのです。

当時、日本との交渉にあたったアラン・ウルフ氏は、半導体協定がアメリカの産業を守ったといいます。

アメリカ半導体工業会 元顧問弁護士/アラン・ウルフ氏「アメリカの日本に対する報復は、まさに今、アメリカが中国に対して行っていることと同じです。効果は劇的でした。日本にとっては衝撃、アメリカにとっては真の出発点だったのです」

2022年10月。先端半導体の国産化を目指す金指課長は、アメリカの協力を取り付けるため現地入りしました。

経済産業省 情報産業課/金指壽 課長「世界の最先端の半導体産業に、日本の半導体産業が戻ってくる。アメリカの関係者に日本の強い意思を伝える。それが一番の大きな目的」

向かったのは、IBM。世界で初めて、最先端の2ナノの開発に成功したIBMとの連携が、国産化のプロジェクトを進めるカギでした。

担うのは、日本の大手企業の出資を受ける新会社「ラピダス」です。IBMにライセンス料を支払い、2ナノ技術の提供を受けます。経済産業省は、アメリカ商務省とともにプロジェクトの進ちょくを管理。“アメリカの「設計」の力を借りることで、10年の遅れを取り戻す”としています。

日本政府は 2ナノの量産だけでなく、さらに微細な次世代技術の研究開発も、アメリカと進めようとしています。金指課長の訪問先には、商務省だけでなく、国防総省も含まれていました。

このとき、金指課長と会談した国防総省のシェノイ氏。日本との連携強化に強い期待を示しています。

米国防総省 半導体政策責任者/デブ・シェノイ統括部長「日本が提案するプロジェクトに協力することで、大きなチャンスが生まれます。日米には、台頭する中国に対抗するという共通の目標があります。研究開発に加えて、中国に対する規制でも、足並みをそろえることが重要です」

かつての競争相手から、“補完する関係”へ。アメリカとの連携が、日本に残された道だと言います。

経済産業省 情報産業課/金指壽 課長「最後で最大のチャンスですよね。今は日本の歯車をむしろアメリカは待っている、早くはまりに来いと。我々としては、しっかり、ぴしっとはめていく。やるべきこと、やるべき方向性は明確なので、もうやるだけだ」

2022年12月。国産化を担う新会社ラピダスが、アメリカ・IBMと、正式に技術提携を結びました。新会社は、国から700億円の補助金を受け、4年後をめどに、AIや自動運転向けの先端半導体の量産化を目指すとしています。

IBM/ダリオ・ギル上級副社長「日本が国を挙げて取り組むのに加え、IBMには半導体で成功してきた長年の経験があります。我々の連携ほど、信頼できるものはありません」

劇団ひとり「ただ、ほんとに良いものを作るとか、そういうレベルの話じゃないですね。いろんなしがらみがあってね。でも、結局アメリカなんですね」

真矢ミキ「『どう歯車に絡んでくるか』って、あの言葉、印象的ですね」

劇団ひとり「『いいね、日本使えるね』って思われないと、やっていけないってことですね」

真矢ミキ「そうそう。だって、歯車って母体ではないから。でも、すごく重要な部分で心臓部分でもある」

有馬記者「経産省が『最大で最後のチャンス』ってこんな表現していましたけれども、アメリカが米中対立の中で新しいサプライチェーンを作ろうって考えている中で、日本にチャンスがあると国は考えている。これまで日本はアメリカとも、そして、中国のマーケットも大事にしながら経済的な関係をうまくやってきた歴史がありますから、巨大市場の中国とのつきあい方は、難しさは問われることになるかもしれないですね」

劇団ひとり「結局メーカーだって、打撃を食らってるわけですもんね。右往左往してね。まず大使館に呼び出されている時点で、『話があるんだったら、そっちが行けよ』って思っちゃった。頼みますよ、アメリカさん」

浅野アナ「その中で、新しい会社をつくって国産化を目指しているわけなんですよね」

有馬記者「ただ、『日の丸プロジェクト』、『日の丸半導体』って呼ばれるプロジェクトについては、過去を振り返ると、失敗の歴史をずっと繰り返しているところがあるんです」

浅野アナ「各国のお金の規模感を見ていくと、まずアメリカはおよそ7兆円。そして中国は10兆円以上。そして、韓国も官民合わせて力を入れています。そしてEU、6兆円を超える投資を計画しているとしています。じゃあ日本はというと、およそ1.3兆円の補正予算が組まれているんです」

真矢ミキ「これは大きいんですか?」

有馬記者「これから政府は『もっと半導体業界のバックアップに力を入れる』と言っていますので、この金額は現時点のものです。ただ、現時点、現状比較すると、こんな実態はある」

劇団ひとり「あんまり前向きな気持ちにはなれないですね。その前はちょっと希望が見えてきたのに、たびたび失敗してきたって言うから」

真矢ミキ「でも失敗ってね、また前進する大きなきっかけにもなるから」

有馬記者「ひとりさん、諦めないでください。日本は頑張っています。特にAIとかEVとか、これから有望な市場の分野で日本は可能性がある」

第2回は、日本の半導体産業の復活を目指す、企業と技術者たちの挑戦をお伝えします!