混迷の世紀 プロローグ “プーチンの戦争” 世界はどこに向かうのか【前編】

NHK
2022年7月31日 午後9:56 公開

番組のエッセンスを5分の動画でお届けします

(2022年7月31日の放送内容を基にしています)

およそ5か月前の2022年2月24日に始まった「プーチンの戦争」。

一般の市民、少なくとも5000人が死亡。平和な日常は今も、奪われ続けています。そして、私たちの暮らしにも、様々な変化が起き始めています。

多くの食品で相次ぐ、値上がり。アメリカでは軍事的脅威を感じ、核シェルターを買い求める人が増えています。

シリーズ混迷の世紀。

「プーチンの戦争」をきっかけに、世界はどこに向かうのか、考えていきます。大きな転換を迫られているのが、安全保障体制。グローバル経済の構造にも、変化が起きています。食料やエネルギーの流れが滞り、これまでのように自由に手に入れることが難しくなっています。世界に平和をもたらすと思われてきた、民主主義という価値観も揺らいでいます。

私たちはどんな時代に立ち、この先、どんな未来が待っているのか。世界各地にカメラを入れ、混迷の時代を占っていきます。

河野憲治キャスター(NHK解説委員長)「冷戦終結から30年あまり。民主主義が広がり、人や物が自由に移動するグローバル経済が発展すれば、戦争が起きない世界になるはずだ。多くの人がそう信じてきました。しかしロシアによる軍事侵攻は、そうした期待を打ち砕きました」

河野キャスター「私は特派員として、アメリカや中東で取材してきましたが、今回、アメリカの同時多発テロの時と同じように、これまでの秩序や価値観が大きく揺るがされ、これを境に世界が大きく変わっていくのを感じています。世界はどこに向かうのか、シリーズ混迷の世紀・プロローグの今日は、それを占う鍵となる、3つのテーマに注目します」

河野キャスター「世界では以前から、富や権力を持つものと、持たないものの格差が広がり、アメリカと中国という大国が対立することで、安全保障やグローバル経済の仕組み、そして民主主義のあり方をめぐって様々な軋轢(あつれき)が生じていました。世界に蓄積されてきた、こうしたひずみやゆがみが、今回の軍事侵攻のあと、あらわになっています。まずお伝えするのは、世界各地で急速に進む安全保障体制の見直しです。かつての冷戦期のように、人々が軍事的な脅威に身構える時代になろうとしています」

<揺らぐ安全保障秩序 市民たちの不安>

北海道の北東。戦後70年以上、ロシアによる不法占拠が続く北方領土、国後島の対岸にある根室市。ウクライナ侵攻からひと月が過ぎた夜、異変が起きていました。住民が撮影した映像には、地鳴りのような音が記録されていました。実際に異変を目撃した人もいました。島を撮影した映像には、オレンジ色の光が映っていました。

地元住民「まさかロシアがミサイルをこっちに撃ってないべなと思って」

この海域を監視している根室海上保安部も、巡視船から、照明弾のような光を複数回確認したといいます。

根室海上保安部・佐藤昭人次長「私が把握している限りでは、初めてのケースです。昨今のウクライナ情勢もございますので、緊張感を持ってロシア側と水域を接する海域の哨戒にあたっている」

<“国のあり方”めぐる葛藤>

ウクライナ侵攻を受けて、安全保障の秩序が大きく変わり始めているのが、ヨーロッパです。

ロシア海軍の拠点があるカリーニングラードと、バルト海を挟んで向き合うスウェーデン。中でも地理的な要衝に位置しているのが、ゴットランド島です。

2022年6月、ゴットランド島で、NATO=北大西洋条約機構とスウェーデンによる、合同軍事演習が行われていました。敵の部隊が、空から突然侵入してきたという想定で、協力して島を防衛する訓練でした。

島ではいま、有事に備え、市民兵になろうと志願する人が増えています。この日の研修には、子どもを連れて参加する女性の姿もありました。この女性はもともと、のどかな環境で子育てをしたいと島に移住してきました。ウクライナ侵攻をきっかけに、いざというときに家族を守るため、市民兵になる決意をしたといいます。

取材班「武器を持つことは怖くありませんか?」

ジゼーラ・ウッドさん「もし誰かが武器をもって襲ってきて、それを突きつけられるような状況になったら、訓練を受けてきたことによって、自分の身を守ることができるならば、幸運なことだと感じると思います。でも決して誰かを好んで傷つけたいわけではありません」

スウェーデンは長年保ってきた軍事的中立を捨て、NATOへの加盟に向けて踏み出しました。

リンデ外相(スウェーデン)「将来NATOの一員として、同盟国の安全保障に貢献します」

軍事侵攻の直前に発表されたスウェーデン政府の外交方針には、「NATOなど軍事同盟に加わらないことが、地域の安全や安定につながる」と記されていました。

スウェーデン防衛研究所 マイク・ヴィンネルスティーグ部長「これは必要な変化でした。ロシア軍がいまウクライナで行っていることは、残忍なふるまい、法や人権の無視です。自分の国でロシア軍があんなふるまいをすることを、誰も望んでいません」

安全保障政策の歴史的転換。一方で、それは国のあり方を変えることにつながると、懸念する声も上がっています。

「NATOへの加盟は、戦争の拡大や長期化につながります」(加盟反対集会参加者の発言)

スウェーデンの人々にとって「中立」は、およそ200年かけて培ってきた、国のアイデンティティーです。ナポレオン戦争の時代に領土を失った教訓から始まった、軍事的中立。ヨーロッパが焦土と化した、二度の世界大戦にも参戦せず、戦火を免れました。街やインフラが無傷で残ったことで、いち早く経済成長を遂げ、世界有数の福祉国家を築くことにもつながったのです。  

スウェーデン政府は、この5年間で、防衛費を5割以上、増額することを計画しています。

しかし、若者の間からは、防衛費だけが急速に増えることを心配する声もあがっています。

大人になるまで、教育や医療が全額税金でまかなわれるスウェーデン。防衛費が、そうした予算を圧迫することにつながらないか、懸念しています。

イーボ・トマソンさん「政府は防衛費を増やそうとしていますが、そうした予算は、武器や戦争のためではなく、福祉や教育に使われるべきです」

ロシアによる核の使用が現実味を帯びる今、世界の核軍縮の議論をリードしてきたスウェーデンがNATOに加わることを、懸念する声もあります。軍縮や人権のために活動する、設立140年のNGOです。国際的な核兵器廃絶キャンペーンICANにも参加。関わった運動などが、過去4回ノーベル平和賞を受賞しています。スウェーデンが核戦力に頼るNATOに加盟すれば、核軍縮の議論がさらに後退すると危惧しています。

スウェーデン平和仲裁協会 アグネス・ヘルストローム代表「スウェーデンは長年、核軍縮のために働きかけてきました。それが一転、核兵器を持つ同盟の一員になろうとしています。世界はより二極化されるでしょう。核の同盟に入りながら、核なき世界を目指して働きかけることは難しくなります」

<日本への影響は>

先月の首脳会議で、ロシアを「最も重大で直接的な脅威」と位置づけたNATO。さらに、今後の方針を示す「戦略概念」の中で、初めて、中国についても言及しました。

NATOストルテンベルグ事務総長「中国は、核兵器を含む軍事力を大幅に増強し、周辺国や台湾を脅かしている」

中国は、「NATOの安全保障や利益・価値観に課題をもたらす存在だ」と位置づけたのです。中国とどう対峙していくのか。日本の安全保障政策も、転換点を迎えています。

南西地域の防衛を担う、奄美大島の陸上自衛隊・西部方面隊。国際情勢がめまぐるしく動くいま、日本や、その周辺でも何が起こるかわからないとして、訓練を重ねています。

陸上自衛隊 奄美駐屯地司令・日髙正暁一等陸佐「終戦末期に北海道で起きた、北方領土がなぜそういうふうになったのか。それと同じようなことが、台湾や南西諸島で起きてもおかしくない。強い警戒感を持って監視しなければならないと思っています」

今回、海上自衛隊の最新鋭の哨戒機による警戒監視の訓練に、初めて同行取材が許されました。

この日向かったのは、中国軍の艦艇が頻繁に通過している海域。レーダーや音響探知機を使って、潜水艦がいないかも監視していました。

自衛隊はさらに、情報収集の態勢を強化するため、アメリカ軍とも新たな連携を進めています。

鹿児島県の鹿屋航空基地では、アメリカ軍の無人機を配備し、日米が協力して哨戒活動にあたることになりました。

地元への説明会では、防衛力の増強が進むことに、市民の意見は割れていました。

住民「万が一のための、日本とアメリカが共同作戦をするときの、本土の最前線基地としての検証じゃないか。米軍と共同で、中国と対峙する。こういう形になるんじゃないですか」

住民「自分で戦わない国は、世界は協力しない。そういう時代なんですよ。第一線にたって敵と対するのは誰ですか。自衛隊でしょ」

鹿屋基地の近くで暮らす、立元良三さんは「この地区には太平洋戦争中、旧日本軍の基地が置かれ、特攻隊の出撃も目の当たりにしてきた」と言います。世界が再び不穏な時代に向かってしまうのか、複雑な思いを語りました。

立元良三さん「ウクライナの情勢を見て、中国がどんどん軍備を拡張して航空母艦を増やして、世界の情勢を見ると、不安な気持ちが強いですね。しかし、あんな怖い思いは二度としたくないですね。皆さんにしてもらいたくない」

<当事者たちが語る 安全保障秩序の行方>

世界の安全保障の秩序はどうなっていくのか?

話を聞いたのは、2009年から5年間 NATOの事務総長を務めたアナス・フォー・ラスムセン氏。在任中、ロシアとの協調路線を模索し、2010年にはロシアを「戦略的パートナー」と位置づけました。

NATOラスムセン前事務局長「当時、私たちは、プーチン大統領が抱いていた野心を過小評価していました。彼には旧ソビエトの領土で、ロシアの偉大さを取り戻そうという野望があったのです。後から考えてみれば、彼がクリミアを併合(2014年)したとき、私たちの対応はあまりにも手ぬるかったのです。制裁は軽すぎました。我々が差し伸べようとした手を、ロシアは振り払ったのです」

河野キャスター「ロシアのウクライナ侵攻によって、世界の行方はどうなると思いますか?」

NATOラスムセン前事務局長「私たちは、新しい国際秩序を目の当たりにすることになるでしょう。中国が率いる権威主義的な陣営と、アメリカが率いる民主的な陣営の2つに分かれるでしょう。そして、世界のすべての国々は、どちらに属するか選択しなければならなくなるのです。緊張が高まる時代を迎えるのは、避けられないと思います」

一方、アメリカのオバマ政権でCIA長官と国防長官を歴任したレオン・パネッタ氏。アメリカがかつてのような“世界の警察官”ではなくなったことが、安全保障の秩序を不安定にさせていると語りました。

レオン・パネッタ元国防長官(アメリカ)「プーチン大統領は、ウクライナへの侵攻を検討するにあたって、バイデン大統領がアフガニスタン問題への対応で疲弊していると見てとったと思います。また、同盟国の間でのアメリカに対する信頼にも、ばらつきがあると感じたのでしょう。トランプ大統領の時には、自国第一主義を主張し、世界の同盟国をこれまでのようには、支援しない姿勢を明確にしました。こうした積み重ねが、アメリカや世界の安全保障を弱体化させたと思います。今こそアメリカは同盟国と協力して、世界をより安全にしていかなければなりません」

世界の安全保障の「番人」とされてきた国連安全保障理事会。ウクライナ侵攻後、北朝鮮やシリアへの対応をめぐっても、ロシアや中国が拒否権を行使。合意を作ることが難しくなっています。

安保理のメンバーの一つ、アルバニアの国連大使。大国同士の対立が深まる中、危機を食い止める仕組みが機能しないことに無力感を覚えています。

国連安保理理事国 ホッジャ大使(アルバニア)「外交とは、敵対する相手との間で、平和のために交渉するものです。どんなに対立を深めても、話し合いを続けることは必要です。世界が手を携えて、紛争をなくす努力をすることが私たちの使命のはずなのに、いま それが果たせていない状況をとても憂慮しています」

河野キャスター「ロシアの軍事侵攻をきっかけに、冷戦時代のように、対話による国際協調がまったく成立しなくなる危うさを感じます。そして、経済においても、この30年間続いてきたグローバル化が岐路に立たされています。これまで、国境の壁をなくし、人や物が自由に行き来する仕組みを広げれば、豊かな社会につながると信じられてきました。しかし、軍事侵攻の後、エネルギーや食料の供給が滞り、価格が上昇。各国の間で争奪戦が起きるなど、経済面でも分断が深まっています」

<世界を揺さぶる ロシアのエネルギー戦略>

プーチン大統領は、就任の1年前(1999年)、現在に通じる「資源戦略」に関する論文を公表していました。

『膨大な天然資源を持つロシアは、先進国の中でも特別な存在だ』

大統領就任後、エネルギー企業を国家の管理下におき、自らの力の源泉にしてきました。

プーチン大統領「エネルギーは経済構造を変えるチャンスだ。世界市場でしかるべき地位を獲得する」(2006年教書演説より)

今、そのエネルギー資源を駆使して、世界に揺さぶりをかけています。

日本の商社が出資してきた石油と天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」。2022年6月、事業主体をロシア企業に変更するよう命じる大統領令が出されました。

日本エネルギー経済研究所・小山堅 首席研究員「電力需給が非常にひっ迫して、電力の安定供給が大きな課題になっている。まさにそうした、タイミングを見透かすような形で、ロシアが今回のような動きに出ているのではないか」

さらに、ロシアの政府系企業「ガスプロム」は設備の定期的な点検を理由に、ドイツに向けた天然ガスの供給を一時停止しました。 今年の電気の料金は大幅に値上がりすると見込まれ、市民は危機感を募らせています。

ドイツ市民「(節電のため)お風呂は使いません。ガス代、ガソリン代、食費、衣類、学校の雑費だって払わないといけない。こんなの無理です」

プーチン大統領「彼らは“プーチンインフレ”と呼んでいるが、私たちは何の関係もない。現在の状況を招いたのは、欧米諸国だ。制裁措置にも手を染め、さまざまな地域で状況を悪化させた」(2022年6月 若手起業家らとの会合での発言より)

エネルギー問題の世界的権威、ダニエル・ヤーギン氏は、プーチン大統領の戦略は、グローバルな経済秩序をも破壊したと指摘します。

ダニエル・ヤーギン氏「2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻によって、エネルギーや技術、金融のグローバルな動きは失われました。プーチン大統領は、短期的にはエネルギーを利用し、ウクライナ侵攻に反対する国々の結束を打ち砕こうと考えています。その思惑通りになるか、今後、数か月が我々にとっての試練です」

<岐路に立つグローバル経済 食料供給網に混乱が>

ロシアのウクライナ侵攻後、世界の食料供給網にかつてない混乱が生じています。

世界の穀物輸出の3割を担っていたロシアとウクライナ。小麦など、穀物の価格が世界的に急騰。この都内のパン販売店では、今月から8割の商品の値上げに踏み切らざるをえませんでした。

パン販売店・松井成和さん「本当に異常といってもおかしくないくらい。あらゆる面で上がっています。このままだと、パンが高級品になってしまう。気軽さがなくなっちゃう」

最も深刻な影響を受けている国のひとつが、中東・イエメンです。

主食のパンの原料である小麦の4割を、ロシアとウクライナから輸入していました。それが滞り価格が高騰しています。7人の子どもがいるこの家族は、1日1食しか食事をとることができなくなりました。

母親「食べものがなく、誰にも助けてもらえず、子どもたちは栄養失調になりました。今より物価が上がれば、私たちは確実に餓死します。私たちだけではなく、すべての人々が飢え、衰弱するでしょう」

ウクライナの農業政策を担当する閣僚、ミコラ・ソリスキー氏。NHKのインタビューに対して「この危機的な状況は、簡単には解消されない」と語りました。

ソリスキー農相(ウクライナ)「今後5年から10年の間に、価格はずっと高くなるでしょう。なぜなら、あした戦争が終わったとしても、(ウクライナの供給)量を、すぐに増やすことはできないからです。いま世界中のすべての人たちが、侵略者による代償を払っているのです」

ロシアは今、中国への小麦の輸出は大幅に増やそうとしています。

中国の女性店員「ロシアの商品は今とても人気です。特に小麦粉と食用油です。入荷したばかりだし、値段も安いです」

その一方で、プーチン大統領は、経済制裁を科す国々をけん制し続けています。

プーチン大統領「ロシアは食料輸出に細心の注意を払う必要がある。特に敵対国への輸出は、注意深く監視しなければならない」(2022年4月 農業発展に関する会議での発言より)

世界の市場で供給量が減る中、限られた穀物を巡って、各国の間で争奪戦が激しくなっています。

アメリカでJA全農が運営する穀物輸出基地では、アメリカで買い付けたトウモロコシや大豆などの穀物を、日本やアジア各国に供給してきました。

ウクライナ侵攻後、中東やアフリカから、取引を求める声がかつてないほど寄せられました。

穀物輸出施設・統括マネージャー「ウクライナから輸出できない分の穴埋めをしようとしています。穀物需要は高まっており、忙しい状況はしばらく続くでしょう」

穀物市場に、投機マネーも入りこみ、価格高騰に拍車をかけています。

この農家は、トウモロコシの出荷の時期を見極めようとしていました。価格の上昇が、まだ続くと考えていたのです。

トウモロコシ農家「普通は4~5ドルの価格帯です。それが今は7ドル~7ドル50セントです。こんなことは一生に一度しかありません」

穀物集荷担当・伊東重則さん「今まで経験したことのないレベルの状況にある。これからどうなるのかは、正直、はっきりとは言えない。ただ、沈静化するシナリオは、今の状況ではイメージしにくい」

幹部会議では、さらに深刻な事態が報告されました。世界の主だった食料輸出国が、輸出をとりやめ始めているのです。輸出規制に踏み切った国は22か国。自国の食料確保を優先するため、異例の政策をとりはじめているとみています。

全農グレイン・川﨑浩之副社長「食料安全保障を重要と考えている国々のレベル感が変わった。地政学的なリスクをよくわきまえた上で、サプライチェーンを強化していくことが重要になってきている」

<グローバル経済 行き詰まりの先に何が>

グローバル経済が行き詰まる先に、何が起こり得るのか。

元IMFチーフエコノミストで、ハーバード大学教授のケネス・ロゴフ氏に聞きました。

河野キャスター「この30年間グローバル化という言葉が叫ばれてきましたが、いま私たちは、新たな状況に直面しています。これは歴史の転換点だと思いますか?」

ハーバート大学 ケネス・ロゴフ教授「その通りです。私たちはグローバル化から、脱グローバル化という歴史の転換点に立っています。過去にもこうしたことはありました。第1次世界大戦の前は、急速にグローバル化が進む時代でしたが、第2次大戦の前は脱グローバル化の時代で、とてつもなく政治的な緊張が高まりました。同じことが起こる危険性があります。地政学的な問題が関わるので、予測はしにくいのですが、そうなることを大いに懸念しています」

河野キャスター「いま、経済圏が分断され、経済のブロック化が進んでいるように見えます。再び冷戦時代に見たような、経済の分断が起こると思いますか?」

ハーバート大学 ケネス・ロゴフ教授「重要な指摘だと思います。経済面でも第2の冷戦に突入する可能性があります。このままでは、ロシア、そして中国とほかの国々の間に、新たな鉄のカーテンができるかもしれません。インド、南アフリカ、ブラジルなども西側諸国と距離をとれば、30~40年前(冷戦期)と同じことが起こります。世界経済にとって非常に悪いシナリオです。今考えられているよりも、ずっとひどいことになるでしょう」

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