(2022年11月20日の放送内容を基にしています)
決戦の時がやってきた。
まもなく開幕するFIFAワールドカップ。舞台は初の中東、カタール。世界の頂点を決める戦い。
ここにサムライブルー・サッカー日本代表が挑む。
国内外で、目覚ましい活躍を続けてきた選手が集結。めざすのは、史上初の「ベスト8」だ。
日本の武器は、前線から猛烈なプレッシャーをかけてボールを奪い取る「ハイプレス」。そして、パスで相手の守備を切り裂き、ゴールに迫る「ビルドアップ」だ。
カギとなるのは、世界屈指の強豪・ドイツとぶつかる初戦。番組では、2つのチームを徹底分析。初戦のゆくえを探った。
ワールドカップ初出場から24年。歴史を変えられるのか。
ドイツとの初戦。日本、勝利への秘策に迫る。
<カタールW杯 ベスト8への道のり>
日本代表、森保一監督。この日、ワールドカップで使う、サムライブルーのユニフォームを初めて手にした。
森保監督「早くやりたいなと思いますね。ピッチ内で躍動している選手たちを早く見たい」
4年に1度、世界トップレベルの選手たちが一堂に会する、サッカーの祭典・ワールドカップ。
選手は、国の期待を一身に背負い、戦う。新たなスターは誕生するのか。一時代を築き上げた選手は、集大成となる大舞台で、どんな輝きを見せるのか。世界中を熱狂の渦に巻き込む。それが、ワールドカップだ。
出場するのは、32チーム。1次リーグでは、4チームずつのグループに別れ、総当たりで試合を行う。
日本は、グループE。優勝経験のあるスペイン・ドイツと同じ、厳しいグループに入った。1次リーグを突破するには、上位2チームに入らなければならない。
カギを握るのは初戦のドイツ戦。日本はこれまで、初戦で敗れた大会では、例外なく1次リーグで敗退してきた。
<W杯に挑む日本の武器は>
ワールドカップに挑む日本代表選手は26人。そのほとんどが、ヨーロッパを舞台に活躍するハイレベルなメンバーが揃った。
日本の攻撃の中心にいるのは、鎌田大地。その武器は、高い決定力。今シーズン、ドイツ1部リーグで、得点ランキングの上位に入る活躍を見せ、強豪クラブも注目する存在だ。
MF/FW 鎌田大地「個人的な意見で言うと、前回大会よりも選手の層は、今のメンバーのほうがいいと思う。みんながいいチームでやって、多くの選手がスタメンで出て、結果を残している状態にある。自分たちが望んでいる結果を取れるチャンスは大いにあると僕は思っています」
高い守備力でピンチの芽を摘み取るのは、遠藤航。ドイツ1部リーグで、1対1のボールの奪い合いの勝利数が、2年連続トップ。日本の中盤を支えるキーマンだ。
MF/FW 遠藤航「今まで自分がシュツットガルト(クラブ)でやってきたことや、代表でやってきたことをシンプルに出すだけだと思っている。対ドイツに関しては、すごくよく知っている選手が多い分、そこはメリットかなと」
伊東純也。圧倒的なスピードで、相手の守備を突破するアタッカーだ。あのメッシやネイマールがいるフランス1部リーグで、チームの攻撃をけん引する。
MF/FW 伊東純也「ボールを持ってドリブルし始めたら、歓声が聞こえてくるので、気持ちいい。驚かせたいというか、番狂わせを起こしたいですね、スペイン、ドイツ相手に」
今回のメンバーを高く評価するのが、南アフリカ大会に出場した中村憲剛。史上初の「ベスト8」も可能だと考えている。
元日本代表・中村憲剛「各クラブでの活躍を見ると、ビッグクラブでプレーしている選手が多い。数字も残したり、存在感を出したり、かなりいるので。そういう意味でも、今回のチームもかなりハイレベル。ただドイツは優勝候補の一角でもある。ベスト8を目指す上では、避けて通れない相手になることは間違いない。そこと五分の戦いができれば、日本がいまだ見ていない景色は見られる可能性が出てくる」
監督の森保がめざしたのは、強豪相手でも受け身にならず、自分たちの意思を持って主体的に戦えるチームだ。世界ランキング1位、ブラジルとの強化試合で、めざす戦い方が明らかになった。
日本がチャレンジしていたのが、「ハイプレス」と呼ばれる守備の戦術。前線の選手が、高い位置から積極的にボールを奪いに行く。相手の攻撃に耐える守備ではなく、自分たちから仕掛けにいく守備だ。
一方、攻撃で試していたのが、「ビルドアップ」だ。後方からショートパスをつなぎ、相手陣内にボールを運ぶ。選手が密集し、ミスが起きそうな場面でも徹底的にこだわった。
なぜ日本はワールドカップに向けて「ハイプレス」と「ビルドアップ」にチャレンジするのか。
中村憲剛が、森保監督を直撃した。
中村憲剛「ワールドカップへ向けての日本の戦い方、考え方、“自分たちが主体的に積極的に戦いたい”と。その意図は?」
森保監督「主体的にというと、ボールを握って相手を圧倒する、上回っていくということだけをイメージされるかもしれませんが、世界の舞台で相手を圧倒する戦いが、どれだけできるかといえば、そんな簡単なことではない。守勢になったとしても、その状況の中で、何ができるかを選択と決断をして戦う。苦しい戦いになっても、自分たちが崩れることなく、主体的に考えて戦うことはやっていきたい」
森保は、日本が自分たちの意思を持って戦うために、「ハイプレス」を採用したと語った。さらに、中村には、「ビルドアップ」について気になっていたことがあった。
ビルドアップは、相手陣内にボールを運ぶ途中で奪われるリスクを伴う。一方、そのリスクを回避するのが、「ロングボール」だ。プレッシャーが激しくなる中盤を飛び越すことができる。それでもロングボールを蹴らず、ビルドアップにこだわる理由は何なのか。
中村憲剛「ロングボールをあそこまで蹴らないということは、なかなかないと思うので、森保監督からの指示があったと思いますが」
森保監督「単純にロングボールを蹴っても、チャンスになることは確率的に低い。相手に回収されれば、我々は守備で振り回されることになってしまう」
森保が危惧していたのは、ロングボールの欠点。落下点で競り合いに勝たなければ、相手にボールを奪われ、攻撃を受ける。
森保監督「守備で振り回されると、無駄な体力ロスが出て、攻撃に移る体力が保てない、バランスも悪くなって、結局は押し込まれて疲弊して、最後はやられてしまう。過去の日本がやられた試合の中でも、出てきているところ。選手たちには(ビルドアップに)チャレンジしてほしい」
これまで日本がワールドカップで喫した、幾多の敗戦。
世界の強豪と肩を並べるためには、「ハイプレス」と「ビルドアップ」が不可欠だと森保は考えていた。
<敏腕コーチが操るドイツの「ゲーゲンプレス」>
日本が初戦で戦う、ドイツ。ワールドカップで過去4回の優勝を誇る強豪だ。
攻撃の中心は、トーマス・ミュラー。ワールドカップ得点王に輝いた実績を持つ。司令塔はヨシュア・キミッヒ。決定的なパスでチャンスを演出する。そして、世界トップクラスのゴールキーパーとして、その名が知られる、マヌエル・ノイアー。スター選手をずらりと揃え、ねらうは、ワールドカップ最多に並ぶ、5回目の優勝だ。
ドイツはいったいどんな戦い方をしてくるのか。
私たちは、日本代表キャプテン吉田麻也から、興味深い情報を聞いた。かつて吉田が所属していたチームで、アシスタントコーチを務めていた人物が、ドイツ代表のキーマンになるのは間違いないという。
DFキャプテン 吉田麻也「ほぼ彼が練習メニューを組んでいて、すごくおもしろかった。ドイツは何となくこういう風にやってくるというのは、分かっているつもりだが、それにドイツ代表の選手のクオリティーの高さが加わると、かなり難しい」
私たちはドイツ代表の練習拠点へと向かった。ことし、およそ200億円をかけて建設された広大な施設で、練習は行われていた。
チームを率いるのは、ハンジ・フリック。ドイツの強豪クラブでの実績を買われ、代表監督に就任した。その隣にいたのが、吉田が警戒するアシスタントコーチ、ダニー・ロェールだ。戦術の分析力や、効果的なトレーニングを考える能力が高く評価され、32歳という若さで抜擢されたという。
交渉の末、特別に15分のみ、ロェールへの取材が許された。まず口にしたのは、ドイツが今大会にかける強い思いからだった。
アシスタントコーチ ダニー・ロェール「私たちのミッションは、再び世界の頂点に立つこと。W杯に最高の状態で臨むために、チーム・選手として成長を続けていく」
そして、ドイツ代表の戦い方を象徴する、ある戦術について語った。
ダニー・ロェール「私たちの戦い方は明確。ボールを奪われたら最初の5秒で奪い返す。“ゲーゲンプレス”だ」
「ゲーゲンプレス」。それは、世界のサッカー界を席けんする戦術のひとつ。
ボールを持った相手に複数で襲いかかり、5秒以内に奪い返す。
日本の「ハイプレス」との違いは、そのタイミング。相手が前掛かりになった瞬間を集中してねらう。強力なカウンター攻撃が可能になるという。
ダニー・ロェール「ボールを奪われた瞬間は、相手が前がかりになるタイミング。背後にスペースができる。そこで奪い返せれば大きなチャンスになる」
ドイツが誇る戦術、「ゲーゲンプレス」。日本はこれと対峙することになる。
取材班「日本の分析はどこまで進んでいるか」
ダニー・ロェール「正直に言うと、まだ分析はしていない。これから準備を始める。たとえ弱点が分かっていても、ここでは絶対に明かさない」
<日本×ドイツをサッカー・アナリストが徹底分析 >
ドイツとの初戦、日本に勝機はあるのか。
番組では世界中で行われるサッカーのプレーをデータ化し、分析する会社に協力を依頼した。この会社のシステムに登録されているのは、46万人に及ぶ世界中のサッカー選手の情報。各国のクラブや代表チームの試合のデータから、戦術の傾向や対策を導き出すことができるという。
ワールドカップに出場する8割のチームが、このシステムを利用している。
私たちが日本対ドイツの分析を依頼したのは、アナリストのトム・グッドル。世界最高峰、イングランド・プレミアリーグの複数のクラブで、専属アナリストとして9年活動した経歴を持つ。
アナリスト トム・グッドル「私が日本のアナリストであれば、ドイツが日本と似たチームと対戦した試合を分析する。データと映像を駆使して、日本がどう戦うべきか最適な情報を探す」
今回、グッドルが分析の対象に選んだのは、日本とドイツが 6月から9月に行った、それぞれ6試合。当時世界ランキング14位だったアメリカ。1位のブラジルとの試合などを分析して、日本の力を測った。一方ドイツについては、5位のイングランドや、7位のイタリアとの試合などを使った。
対戦相手に違いはあるものの、いずれも強豪と対戦していた日本とドイツ。これらの試合をもとに、分析はおよそ2ヶ月にわたって行われた。
<驚くべきデータが出た日本の「ハイプレス」>
分析結果は驚くべき内容だった。中村憲剛が聞いた。
中村憲剛「日本の勝率は、どれくらいあると思いますか」
トム・グッドル「分析の結果、両チームの実力はほぼ互角。厳しいグループにおいて、とてもいい試合になると思う」
戦い方次第では、日本とドイツは互角。その結論を導き出したひとつが、日本の「ハイプレス」に関するデータだった。それは、「PPDA」と呼ばれる指標。どれくらい強力なプレスをかけていたかを示す。
PPDAを出すには、ボールを奪いにいく間に、相手に何本のパスを回されたかを数える。プレスが強力であればあるほど、相手はパスを回しにくくなる。そのためPPDAは、数値が低いほど、強いプレスをかけていることを示す。
今回グッドルがはじき出したドイツのPPDAは、平均10.07。世界平均を大きく上回る数値だ。これに対し、日本は9.20。ドイツを上回る数値を示した。
互いに強いプレスを武器とする日本とドイツの戦い。ボールの激しい奪い合いが繰り広げられ、きっ抗した展開が予想されるという。
トム・グッドル「日本のプレスは世界的に見ても激しい。それがPPDAの数値に表れている。不思議なほど日本とドイツは似ていて、常に同じような戦い方をしている。よく似たチームどうしの試合は興味深く、エキサイティングになるだろう」
中村憲剛「両者ともに、強度の高いプレスをする者どうしが、どちらがプレスをはがしてゴールにいけるか、どちらがその回数が多くなるかがポイントだということですね」
トム・グッドル「その通り。勝敗を分ける鍵は私もそこにあると思う。どちらもプレスが強力。どちらのチームが、相手のプレスを恐れず突破できるかの勝負になる」
日本はいかにして、ここまでのハイプレスを作り上げたのか。
チーム内で変化があったのが、9月に行われた、1週間あまりのヨーロッパ遠征だった。選手やスタッフが、これまで以上に戦術の細部まで話し合い、意識の共有を図ったという。
DFキャプテン 吉田麻也「何の仕事もそうだけど、同じ方向を向いていないと、うまくいかない。だから、そこをしっかりすり合わせる。意見が分かれることは、何年やっても絶対起こり得ること。自分の経験から、そうなったらダメだから。なぜなら準備期間が短いから。この合宿でそこをすり合わせたいことを、チームにも監督にも伝えて。うまくこの合宿でやれたんじゃないかと思っています」
意識の共有は、日本のハイプレスのレベルを引きあげた。
9月のアメリカ戦。ハイプレスをかけてボールを奪いチャンスを作ったこの試合。まず動いたのが前線の前田と鎌田。プレッシャーをかけ、サイドへボールを出させる。さらに、そのサイドでもプレッシャー。中へ出させたパスを、守田が待ち構えていた。
ボールをどう奪うか。チーム全体で同じ絵を描いていたからこそ、このハイプレスが成功した。
MF/FW 守田英正「サイドに限定することは、第一にやらないといけないこと。その前からフォワードの選手や、ウイングの選手がいい守備をして、相手のパスコースの限定をしてくれているからこそ僕たちが取れるので、一概にボールを取った選手だけでなく、そこに追い込んでいくまでの過程が大事。そういうところが、よくなっていると思います」
MF/FW 鎌田大地「チームとして共通認識があって、僕たちがサイドに追い込んでボールを取った瞬間、どこが空いているかはチームの戦術でもやっていて、自分たちはいいチームになれるという感覚はありますね」
<日本の「ビルドアップ」は「ゲーゲンプレス」に通用するか>
さらにデータ分析では、日本のもう一つのチャレンジ、「ビルドアップ」についても、興味深い結論が導き出された。分析に使ったのは、プレス強度を示す「PPDA」。日本が対戦した相手を調べた。
これにドイツを重ねる。パラグアイ、ブラジル、アメリカ、エクアドルが、ドイツに近い強度でプレスをかけてきたことがわかる。
日本は、この4試合を、ビルドアップにこだわり戦ってきた。その結果、2勝1敗1引き分けと、勝ち越したことは、ドイツと戦う上で大きな経験値になるという。
アナリスト トム・グッドル「日本は攻撃的なプレスをかけてくる4チームと戦った。素早いパス回しで、プレスに打ち勝つことができていた。ドイツも間違いなくプレスをかけてくる。だが日本はそうしたチームとうまく戦った。十分に可能性はある」
強いプレスに打ち勝つビルドアップ。その鍵も、意識の共有だった。
アメリカが日本に強いプレスをかけてきた試合。日本はビルドアップでプレスをかいくぐっていく。そのまま前線につながり、得点をあげた。ビルドアップから生まれたゴール。可能にしたのは、1本のパスだった。
そのパスを出したのは、吉田。はじめは、アメリカのプレスによって、パスコースを封じられ、ビルドアップのスイッチを入れる前方へのパスを出しあぐねていた。その状況を打開したのが、守田の動きだった。一瞬の動き直しでフリーになると、吉田の前方へのパスを受ける。この動きで守田は3人の相手を引きつけ、サイドに展開。すると、守田に気を取られたアメリカのプレスがパスに追いつかなくなる。一度、後手に回ったアメリカは、立て直すことができず、日本のビルドアップが成功した。
ゴールの起点となったのは、一見何気ない吉田と守田のやりとり。これこそが、2人の間で行われていた意識の共有だった。
DF 吉田麻也「前後にボールを動かすことで、相手のプレスの的を絞らせない。常にあそこに顔を出してくれる(守田選手のような)ボランチは、絶対必要」
MF/FW 守田英正「簡単なようで難しい。これくらい相手と離れれば、僕たちは当たり前にパスを受けられる。そのタイミングで顔を出してあげると、逆サイドまで持っていける。こうなると相手は、誰に対して守備していいかわからないので、ぐちゃぐちゃになってしまう。そういう回数を増やしていく作業を、チームでやっていければと思っています」
日本の「ビルドアップ」は、ドイツの「ゲーゲンプレス」への対抗策になり得るのか。
アナリストのグッドルがヒントになると見せたのが、9月に行われたドイツ対ハンガリーの試合だった。ハンガリーは当時、世界ランキング37位。ワールドカップは予選で敗退している国だ。
ハンガリーが見せていたのが「ビルドアップ」だった。ドイツが「ゲーゲンプレス」を仕掛ける。ハンガリーは、そのわずかな隙間にパスを通す。プレスに人数をかけたドイツは、後ろの守りが手薄になった。
ハンガリーは、この1年負けなしだったドイツを相手に競り勝ち、番狂わせを起こした。
トム・グッドル「この試合はドイツのホームで行われたが、日本よりランキングが低いハンガリーが勝った。日本にとっては、W杯へ向けて自信を持てる結果になったはず。大切なのは、これまでやってきたボールをつなぐ戦い方を捨てないこと。日本はドイツの強烈なプレスを受けても、勇気を持ってチャレンジすべき」
中村憲剛「ドイツがどういうスタイルなのか、日本がどういうスタイルか。また世界の中で日本が、データ上ではひけをとらない。日本の選手たちも自信を持って、ドイツに向かえるというデータはそろっている」
<紙一重のドイツ戦 森保はどう挑む>
データからは、紙一重の差になると予想される日本対ドイツ。森保は、どう挑もうとしているのか。
中村憲剛「「今やっているスタイル自体がかなり似ている。僕個人としては、イメージはしやすいのかな。要は自分たちと似ているので、やられたら嫌なことをやればいいんじゃないかと思うんですけど」
森保監督「優先順位でいうと、奪った瞬間に相手がプレッシャーをかけてくるので、そこは逆手にとって背後を取っていく。高い位置に起点を作って、前向きの選手が出ていく、攻撃に参加することは、やっていきたい。9月で、すべてではないにしても改善はされて、チームとして同じ絵を持てるようになった。より強固に自分たちはこうやっていけるようにというベースを作りながら、日本人の持つ器用さで、いろんな対応ができるようにしていきたい」
中村憲剛「どこにこの勝負を分けるポイントがあると思いますか?」
森保監督「ドイツにも、ゲルマン魂という言葉がありますが、それを上回る勤勉性と、継続してやり抜く力が日本のほうがある。粘り強く戦えるのは日本だというところで、差を出せればいい。最終的には相手のほうがじれて、われわれのほうが試合をものにする、という戦いにできればいいと思います」
<日本代表 リベンジをかけるW杯>
日本代表には、忘れられない敗戦がある。
前回2018年のロシア大会。ベスト8進出をかけて、強豪・ベルギーに挑んだ。日本が2点をリードして迎えた後半。
実況:まだあります、川島が、ああっ入ってしまった、入ってしまった!
実況:しっかりついている、左足で上げてきたシュート!同点だー!
そして、終了間際。
実況:さあ、カウンターのスピードが上がる、デブルイネのスピードが上がる、デブルイネに付いていきたい、ああ!フリーの選手が一人いる、長友がそこについている、ルカク、スルーしてシュートー!
大逆転負け。相手に主導権を渡してしまうサッカーでは、ベスト8にはたどり着けない。それが教訓だった。
今回、日本が目指したのは、自分たちの意思を持って戦えるチーム。
DFキャプテン 吉田麻也「ミスが多く出てしまうと、ドイツやスペインなんかは一瞬でやられてしまう。もっともっと、チームとして“これ”というサッカーをしないといけない」
今度こそ、歴史を変えるという決意だ。
DF 吉田麻也「日本人って、グッドルーザー(潔い敗者)が、すごく美化される。まさにその4年前の僕たちがそうで、日本に帰ってきて、みんなに褒められて。自分の感覚とは、まったく違う感覚だった。それじゃダメだなと。もうグッドルーザーはいいと正直思っている。グッドルーザーで、素晴らしい国だったと、ロッカーも掃除してって、取り上げられて評価されて。正直そんなのもういい。グッドルーザーよりウィナーになりたい。勝ちたい。日本の新しい歴史を作りたい」
4年前の雪辱を胸にワールドカップに挑む。悲願のベスト8へ。運命を握る初戦。
日本代表 森保監督「勝利を目指すのは大前提。それしか考えていない」
ドイツ代表アシスタントコーチ ダニー・ロェール「日本の試合はとても楽しみにしている。勝つのは私たちだ」
DFキャプテン 吉田麻也「プロである以上、結果がすべて」
MF/FW 守田英正「この1戦目がすごく大事なので」
MF/FW 鎌田大地「100%で集中して」
MF/FW 遠藤航「チャンスがようやく目の前にある」
いざ決戦へ。
取材班「どんな景色が終わったとき見られると思いますか?」
日本代表 森保監督「日本代表のサポーター、国民の皆さんと一緒に喜んでいる景色が見られるのかなと思います」