国際共同制作 パーフェクトプラネット ~生命あふれる“奇跡の惑星”~

NHK
2022年1月1日 午後8:36 公開

(2022年1月1日の放送内容を基にしています)

アフリカ・タンザニアのナトロン湖。周辺にある火山の影響で、水には強いアルカリ性の毒が含まれています。毎年、乾季に湖の水位が下がり、陸地が現れるタイミングを狙って、数千キロもかなたから飛んでくる鳥たちがいます。フラミンゴです。東アフリカ中から示し合わせたかのように集まってくる、その目的は子育て。周囲の毒の水のおかげでハイエナなどの天敵が寄りつかないのです。百万羽ものフラミンゴが一面を埋め尽くします。

ところが、ヒナが誕生しても安全に飲める水がありません。そこで数日もたつと、まだ飛べないヒナたちが群れを作り始め、新鮮な飲み水が湧き出す別の場所へと大移動を始めます。乾季に起きる湖の変化を熟知した、独特な子育て。自然のリズムを見事に利用して命をつないでいるのです。

私たちの地球は、そんな大自然のリズムにあふれています。季節によって変化する太陽のリズム。湧き上がる雲がもたらす雨のリズム。海の中にも海流や波が生み出す特有のリズムがあります。今回私たちは、地球上のさまざまな環境で生きる生き物たちの姿を、4年の歳月をかけて撮影しました。見えてきたのは、どんな環境でも生き物たちが地球のリズムに適応し、完璧なバランスを保って生き抜いている姿です。しかし、その大事なバランスが、いま異常気象などの影響で崩れ始めている現実も目の当たりにしました。

さあ、私たちの地球が育んだ、尊い命の営みを見つめる旅の始まりです!

鈴木亮平さん「なぜフラミンゴのヒナたちは、みんなで一斉に水場に行かなくちゃいけないって分かるんだろうね」

上白石萌音さん「本当ですね。でも、生まれたときからピンクじゃないんですね」

そう。実はフラミンゴは、干上がった湖に大繁殖する赤い藻類を食べることで、次第に羽が赤くなっていくんです。

鈴木さん「次の目的地は、北極。さらに南半球・ニュージーランド、そしてまた北に行き、アリューシャン列島へと飛びます」

北極圏にある、カナダ・エルズミーア島。4か月続く冬の間、太陽は一日中昇ることがありません。気温マイナス50℃。こんな過酷な環境に適応して生きるのが、氷河期の生き残り、ジャコウウシです。夏の間にたくさん食べて脂肪を蓄え、厳しい冬を耐え抜きます。

このジャコウウシを糧にして冬をしのぐものもいます。ホッキョクオオカミです。

狩りを取りしきるのはメスのリーダー。厳冬を生き延びるには、少なくとも3週間に1度、大きな獲物が必要です。円陣を組んで守りを固めるジャコウウシ。オオカミは弱ったものがいないか探し、挑発します。群れを引き離す作戦です。オオカミのわなにはまった一頭を助けに、仲間が戻ってきました。オオカミの冬の狩りは、ほとんどが失敗に終わります。

北極圏が太陽のない厳しい冬に見舞われるのは、地球という惑星の特徴に理由があります。地球の回転軸、「地軸」は、太陽に対しておよそ23.4度傾いています。そのため数か月にわたり、北極圏には一日中太陽の光が当たらない暗闇の季節が訪れます。ところが、やがて太陽に対する地球の向きが変わると、今度は一日中北極圏に太陽の光が当たり続けるようになります。恵みの季節です。

6月。北極圏に太陽が戻ってくるタイミングを捉えて、毎年1500キロ離れたアメリカから渡ってくるのが、ハクガンです。沈まない太陽の光を受けてぐんぐん育つ植物を糧に、子育てを行うのです。

同じく太陽の季節に子育てを行うのが、ホッキョクギツネです。

まだ生後3週間の育ち盛りの子どもたちは、母乳だけでは栄養がたりません。そこで母ギツネは、ハクガンの卵を狙います。わずか3週間で800個以上の卵をかすめ取ります。

ハクガンも、必死に卵を守ります。北極圏の短い夏では、たった一度しか卵を産み育てられるチャンスがないのです。なんとか守りきった卵から、ヒナが生まれました。降り注ぐ太陽の光が育む草をおなかいっぱい食べて、すくすくと成長します。命が輝きを増す、北極圏のつかの間の夏です。

季節の変化を生み出す「太陽のリズム」を最大限に利用して生きているのが、ハイイロミズナギドリです。南半球が夏の間は、ニュージーランドの孤島で子育てをします。しかし冬の訪れを感じ取ると、旅立ちの準備を始めます。太陽を追いかけて太平洋を縦断し、夏を迎える北半球へ移動するのです。その距離、1万6000キロ。地球上で最も壮大な、生き物たちの大移動のひとつです。

目的地は、アリューシャン列島。太陽が照り続ける夏が始まろうとしています。光あふれる海の中ではプランクトンが大発生し、それを食べるたくさんのオキアミが現われます。ミズナギドリは、このオキアミを目当てにはるばるやってきたのです。海の中には、ザトウクジラの群れが。暖かい赤道近くで繁殖し、やはり北半球の夏を目がけて旅をしてきました。

空からはミズナギドリが、水中からはクジラが、オキアミを求めて大饗宴を繰り広げます。あらゆる生き物たちが、恵みをもたらす太陽のリズムを熟知して、自分たちの生き方を定めているのです。

鈴木さん「きょうはこの地球旅行をもっと楽しませてくれる、すてきなガイドさんにも来ていただきました。気候学者の阿部さん、どうでした?生き物たちのドラマ」

気候学者 阿部彩子さん「最初のジャコウウシ。私は氷河期の研究しているんですけど、そんな昔からの生き物が時間を越えて生きているのはおもしろいなと思いました」

生態学者 山田俊弘さん「僕は熱帯ジャングルによく行くんですが、生き物たちは警戒心が強いので、めったに僕の前に現れることなんてないんですね。その生き物たちにあそこまで迫って映像を撮っているのは驚きです」

鈴木さん「生き物たちにとって、太陽のリズムが大事なポイントでしたね。地軸が23.4度傾いているから、いろんな変化が気候に起こる。そもそも、なぜ地球の地軸はまっすぐじゃなくて傾いているんですか」

阿部さん「地球ができた最初のころに『微惑星』という小さな惑星がぶつかりあったりして、だんだん惑星が成長したんですけど、最後にこういう(地軸がおよそ23.4度傾いた)形で終わったんですね」

鈴木さん「ということは、惑星によって自転軸の傾きは違うんですか」

阿部さん「自転軸が立っている惑星(水星など)も、ほとんど寝ている惑星(天王星など)もあります。自転軸がまっすぐ立っていると、真横からしか太陽光がささないので、極地はいつまでもとても寒く、赤道周辺はとても暑いと、すごく差が出る。地球の場合は、それがたまたま23.4度ぐらいの適度な傾きで安定したんです」

鈴木さん「もし地球に季節の変化がなく、ずっと同じ気候だったら、生き物たちの世界はどうなっていましたか」

山田さん「年間を通じて環境が同じということは、その環境に適したある一部の種だけが数を増やし、生態系はとても単純になっていたはずです」

上白石さん「その季節の変化とか、動物たちが知っているのがすごいなと思うんですよね」

山田さん「きっと彼らが数千年、数万年という僕らの感覚ではないもっと長い時間、繰り返し季節変化を経験してきたからこそ、遺伝子レベルで季節の変化を読んでいるんです」

鈴木さん「地球は地軸が適度に傾いているからこそ、生き物も移動もするし、進化もしないといけない。傾きっていうのは、“奇跡のキー”だったんですね。ここまで太陽のリズムに適応した生き物たちのドラマを見てきましたが、生き物たちにとって太陽のほかにも必要なものがありますよね」

上白石さん「水ですか?」

鈴木さん「そうです。海と川だけじゃなくて、この水もあります」

鈴木さん「空の上の水、雲です。地球上のいろんなところで雲が生まれて、雨が降って、水の循環を生んでいる。今度は、この『雨のリズム』に適応した生き物たちのドラマを見ていきましょう。旅の行き先は、南米・アマゾン。一気に暑い世界に行きましょう」

地球上で最も雨の多い場所のひとつ、アマゾンの熱帯雨林。雨季に降り続く雨が、毎年、洪水を引き起します。森は、深い所で10メートルも水につかるため、生き物たちは飛ぶか、泳ぐか、木に登らなければなりません。ところが、驚くべき方法で危機を乗りきる生き物がいます。ヒアリです。地下の巣が水浸しになり、群れは大混乱です。ところが、次第に重なり合い、足を絡め合って、構造物のようなものを作り始めました。ひとかたまりになって水に浮いています。ヒアリの体は細かい毛にびっしりと覆われていて、その毛が空気を含むことで水に浮かぶのです。まるで「生きたいかだ」です。

アリたちのいかだは、大事な幼虫や卵を載せて、数週間も水に浮かんでいられます。丈夫そうなヤシの葉にたどり着くと、まずは大切な女王アリのサナギを引き上げ始めました。ここを新居に決めたようです。決まったリズムで訪れる雨季が、ヒアリたちにこんな驚くべき「生きるための技」を編み出させたのです。

一方、アフリカ南部。全長2570キロメートルの大河・ザンベジ川の中流には、世界三大瀑布のひとつ、ヴィクトリアの滝があります。雨季のピークには毎秒5000トンもの水が流れますが、乾季になると、ほとんど干上がってしまいます。ここでも、雨季と乾季のリズムが何千年もの間、繰り返されてきました。

雨が乏しい乾いた季節にも、生き物たちは見事に適応しています。ザンベジ川の最も大きな支流・ルアングワ川は、乾季でも枯れない貴重な水場です。乾燥が進むにつれ、水を求めて生き物たちが集まってきます。中でも、毎年乾季に、数百キロも離れた場所から子育てを目的に飛んでくるのが、ベニハチクイです。

乾季に川の水位が下がると現れる川岸の崖に、6000あまりのつがいが巣穴を掘ります。切り立ったこの場所なら、天敵が簡単には近づけないからです。

そんなベニハチクイを狙うのが、ワニ。そして、サンショクウミワシです。乾季には、ここに獲物が集まってくることを知っているのです。ベニハチクイの子育ては、まさに命がけです。

ところがある日、ベニハチクイたちに大変なことが起こりました。大地が例年になく乾き過ぎていたため、崖が巣穴もろとも崩壊してしまったのです。実はこの年の乾季は、過去に経験がないほどの大干ばつに見舞われていました。地球温暖化の影響とみられています。

同じく気候の異変に見舞われているのが、南米・アマゾンです。乾季に川の水位が下がり、至る所に広い砂地が現れると、5万匹ものオオヨコクビガメが集まってきます。砂地に卵を産むためです。

産卵を終えると、温かい砂で卵を隠し、泳ぎ去ります。また次の乾季に産卵するときまで、ここには戻って来ません。2か月後。雨季が始まる時期に合わせて、一斉に子ガメがふ化します。雨で水かさが増す絶好のタイミング。ふ化した子ガメはすぐに水に身を隠し、天敵から身を守ることができるのです。ところが、近年の異常気象で、雨季が早く訪れてしまう年が増えています。雨が去ったあとの砂地には、たくさんの子ガメたちの死骸が。砂から出る前に水かさが増し、溺れ死んでしまったのです。

世界で起きている急速な異変。いま、地球と生き物たちの完璧なバランスが、崩れ始めています。

上白石さん「日本で生活していても異常気象だって言いますけど、それがこんなふうにダイレクトに命に影響してるっていうのを、いますごく実感しました」

鈴木さん「雨季と乾季のリズムというのは、本来は規則的なものなんですか?」

阿部さん「ある程度規則的で、場所によっても時期によっても決まっています」

過去100年間のデータを平均して得られた、地球上の雨の量の季節変化です。たとえば南米アマゾンの上空をみると、白く示された雨が少ないエリアが広がる「乾季」のあと、そこに北から青い雨のゾーンが下りてきて「雨季」となります。1年を通じて、雨季と乾季の場所が規則正しく入れ替わっているのが分かります。

鈴木さん「いま地球温暖化って言われていますが、この平均的なリズムがちょっとおかしくなってきているということですか?」

阿部さん「温暖化によって海から蒸発する水蒸気の量が増えると、雲ができる量が増えて、雨季の雨量が多くなったりするんですね。一方、乾いた場所では、温暖化によって地面からより素早く水分がなくなってしまい、厳しい乾季になるわけです。だから、雨季はよけいに雨が降り、乾季はよけいに乾く。差が激しくなると考えられています」

鈴木さん「地球温暖化による生き物への影響は、世界中で起きている?」

山田さん「例えばオーストラリアでは極度な乾燥によって、森林大火災が起こるようになりました。2019~2020年にかけての森林大火災では、コアラが8000頭も犠牲になっただろうと推定されています」

阿部さん「産業革命が始まった1850年ぐらいから、この150年で、地球平均気温が1.1℃くらい上がってしまっているんですね」

鈴木さん「150年で1.1℃というのは、どれぐらいの変化なんですか」

阿部さん「実は地球の過去を振り返ると、もっと大きく温度が変わっているときもあったんです。恐竜が絶滅した6500万年前ころは、いまよりも10℃ぐらい地球平均気温が高かったのではないかといわれています。そこからだんだん平均気温が下がっていき、現在よりももっと気温の低い時代があった。それが、マンモスなどが生きていた氷河期です」

鈴木さん「ということは、今はそこからまた温かくなってきているということですか」

阿部さん「2万年前から1万年前にかけての地球平均気温の変化をみると、だいたい1000年に0.5~1℃ぐらいのペースで平均気温が上がってきているんですね。そこからこの1万年、あまり気温変化のない状況が続いていたんですけれども、直近の150年を見ますと、すごく針のように平均気温が上がっていますね」

鈴木さん「このあとはどうなるんですか」

阿部さん「温暖化対策を何もしないでいると、100年で3℃、あるいは300年で8℃近く地球平均気温が上がってしまうとも予測されています。問題は、変化がすごく急に起きていることなんです」

山田さん「生き物たちは季節を予測する驚異的な能力を発達させてきましたが、その予測が、最近は裏切られることが多いんですよね。100年に1度といわれるような異常気象が毎年のように起こっているわけですから。これは“進化の想定外”です」

上白石さん「明らかに人間がいろんな活動していることによって起きている」

鈴木さん「人間って同時に、自分たちのせいでほかの生物を絶滅させているとか、地球の環境を変化させているって気づいた、おそらく初めての種じゃないですか。だからこそ何かできるはずで、止められるのも人間の能力だと思いますし、何ができるかというのを試されている地球上で初めての生き物なんじゃないかなと思います」

山田さん「僕らにこれから何ができるか。これによって将来の地球が変わっていくと思うんです。いまだからこそ、真剣にそういったことを考えるべきだと思います」

鈴木さん「美しくもはかない地球の生き物たちの調和をめぐる旅。次はいよいよ海の中に飛び込みます。オーストラリア・グレートバリアリーフ。そこから南アフリカの沿岸、さらにガラパゴス諸島へと向かいます」

広大な海では、地球をめぐる風が波を引き起こし、絶え間ない特有のリズムを生み出しています。波は、海の生き物たちの命を支える大事な存在です。オーストラリア・グレートバリアリーフの島。澄み切った海水の波打ち際を、小魚の群れが泳いでいます。実はこの澄んだ海水には、ほとんど栄養が含まれていません。小魚を育んでいるのは、波が一定のリズムで巻き上げる砂の中の小さな生き物です。

そこへ、小魚を狙う大型のアジ(ロウニンアジ)がやってきました。小魚たちはひとかたまりになって身を守り、大きな敵が近づけない波打ち際のギリギリまで逃げ込みます。ところが、さらに大きな敵が現れました。サメです。突然、サメとアジが一緒に泳ぎ出し、並んで浅瀬に接近してきます。協力して狩りを始めるようです。アジが小魚を波打ち際へ追いやると、サメが浅瀬に乗り上げた小魚を一網打尽。沖へ戻ろうとする小魚を、今度はアジが挟み撃ちにします。砂を巻き上げる波の力が、わずか水深10センチほどの世界に、こんな命のドラマを生み出しているのです。

適度に傾いた地軸を中心に自転する地球。自転の力は、海全体をも動かす巨大な水の流れを生み出しています。「海流」です。リズミカルにめぐり続ける海流は、まさに「海のハイウェイ」。イルカの大群が、海流に乗って移動しています。目指すのは、海流と海流がぶつかる南アフリカの沖合。そこで見つけたのは、海流が運ぶ豊かな栄養分を目当てに集まったサバやイワシの大集団です。イルカが下から魚たちを海面へ押し上げ、空からはカツオドリの群れが猛スピードで急降下してきます。海流の恵みをめぐる大饗宴です。最後にやってきたのはサメ。海の生き物たちは、海流を生命線として、つながり合っているのです。

食べられた魚の残骸は、ゆっくりと深い海の底へ沈んでいき、微生物によって分解されて、新たな栄養分となります。この深海の栄養分もまた、海流によって運ばれていきます。

深海を流れる海流が陸地にぶつかる場所のひとつ、エクアドル沖のガラパゴス諸島。殺伐としたこの島に、海流が運ぶ栄養分のおかげで、大繁栄できた生き物がいます。ウミイグアナです。

ウミイグアナが海へと歩きだしました。島の周辺には、海流が深海から運んだ栄養分でたくさん海藻が茂っていて、ウミイグアナはその海藻を食べて生きているのです。そのために、トカゲの仲間で唯一、海に潜って食べ物をとれるよう進化を遂げました。といっても、30分も潜っていると体が冷えきって筋肉が動かなくなり溺れてしまいます。平たい顔と鋭い歯で器用に海藻をかじり取ります。最後の一口を食べると、急いで陸に戻ります。最後に立ちはだかる岩場の岸壁。体が冷えきって力が出ないなか、なんとか登りきります。毎日こんなに苦労して食べ物を得るは虫類は、ほかにいません。

この島では海鳥も海藻を使って巣を作り、子育てをしています。もし、規則正しくめぐる海流がなければ、不毛な絶海の孤島にこんな命の営みが見られることはなかったでしょう。

鈴木さん「今回の旅で出てきたポイント、『海流』です」

阿部さん「日本の沖で、黒潮と親潮がぶつかり、黒潮が蛇行している様子もよく見えます。潮の境目でいっぱいお魚がとれる」

鈴木さん「海の幸に恵まれているって、言い方をかえると海流に恵まれているっていう。山田先生、海の生き物たちも、地球温暖化の影響を受けるんですか?」

山田さん「1990年ぐらいにアリューシャン列島で起こったことなんですが、魚の数がすごく減ったんです。地球温暖化が影響しているんじゃないかとも考えられているんですが、ある1種の生き物が消失すると、それが別の生き物にも影響して、最終的にはたくさんの生き物がいなくなってしてしまうという、“絶滅のドミノ倒し”というような事態が起こってしまうことがあるんです。(アリューシャン列島では)魚が減ったというドミノが、「トドやアザラシの減少」という次のドミノを倒しました。魚を食べて生活していたトドやアザラシが、結果としてほぼ壊滅状態になってしまった。困ったのがシャチ。トドやアザラシがいなくなると、彼らはおなかをすかせて、通常なら食べないラッコを襲い始めたんです。結果として、ほとんど海域からラッコがいなくなってしまった」

山田さん「ドミノ倒しはまだ続きます。ラッコはウニを食べて生きていたんですが、ラッコがいなくなった海ではウニが大繁殖し始め、そのウニが20~30メートルにもなる巨大な海藻を食べ尽くしてしまったんです。1990年の前、魚が減る前に比べて、今ではアリューシャン列島の海の中は全く違う姿になっています」

上白石さん「これまで、いかに繊細なバランスで成り立っていたかってことですよね」

山田さん「そうなんです。しかも、ドミノ倒しが終わったあとに、僕ら人類は気づくんです。あれが原因だったのかとか、ラッコってこんなに大切だったの?とか。いなくなってから気づくっていうのが、難しいところなんです」

鈴木さん「最初の原因を作ってしまっているわれわれ人間としては、何とかこのバランスを保っていく方法というのはあるんですか」

阿部さん「この先どうなるかということは、大気や海洋の動き、あるいは温暖化の仕組みっていうのを、基礎から研究して、それが生物にどう影響を与えうるかを計算できるようになった。それは大きいと思います。それをもって、世界中の人が話し合ったり、次の方針を決めたりという、すごくいい方向に国際的な動きがあると思うので、それは非常にこれから期待したいと思っています」

山田さん「ほかのすべての生き物にとって何をしてはいけないのか、何をすべきなのかっていうことをしっかりと考えていきたいですよね」

鈴木さん「もっと便利に過ごしたいとか、もっと経済的にも技術的にも発展したいという思いが、人間の大事な本能ですし、その悪影響を止めるほうに働くという、流れを作ることができるのも人間だと思います。両方を大事にしながら、ほかの生き物との調和を目指していきたいと思いました」

上白石さん「同じ地球にすむ生き物として、地球にいいことをちょっとでもしていけたらいいのかなと思いました」

長い年月をかけて地球のリズムに適応してきた生き物たち。

ロシア・カムチャツカ半島では、毎年夏になると、産卵のためにベニザケの大群が海から戻ってきます。海流が運ぶ栄養分をたっぷり蓄えた彼らを、ヒグマたちが待ち受け、糧にしています。

海から陸へ。地球の恵みは、生き物たちを通じてつながっているのです。地球と生き物たちの完璧なバランスが生み出した命の光景です。

奇跡に満ちた私たちの星。生き物たちの美しくもはかないドラマが、きょうも繰り広げられています。