数学者は宇宙をつなげるか?abc予想証明をめぐる数奇な物語(前編)

NHK
2022年4月10日 午後10:00 公開

(2022年4月10日の放送内容を基にしています)

2020年4月。「abc予想」と呼ばれる数学の重要な未解決問題を、日本人が証明したというニュースが駆けめぐりました。論文を書いたのは、京都大学数理解析研究所教授 望月新一博士。世界的天才として知られてきた人物です。

abc予想を証明した、博士の「宇宙際タイヒミューラー理論」。査読の完了と専門誌への掲載は、望月博士の偉業が、世界に正式に認められたことを意味しました。ところが…望月の証明はまだ受け入れられないと主張する数学者が多数現れ、今も激論が続いているのです。一つ一つ論理を積み上げていけば、誰もが同じ結論に達するはずの数学の世界。完全に正しいとする数学者がいる一方で、なぜ多くの数学者が理解できないというのか。ある数学者は言います。「その答えを知りたければ、abc予想を解き明かしたという宇宙際タイヒミューラー理論が、これまでの数学と何が違うのか。それを理解しなければならない」と。これは、史上まれにみる異常事態に突入した数学界をめぐる数奇な物語です。

abc予想の証明を発表した望月新一博士は、わずか16歳でアメリカ・プリンストン大学に入学。23歳で博士号を取得した世界が認める天才です。一方で、社交的な場には、ほとんど姿を現さない、謎めいた人物としても知られています。abc予想を解き明かしたという理論は、一体どんなものなのか。2017年、私たちは博士に取材を申し込みました。返ってきたのは一通の丁寧なメールでした。

「『宇宙際タイヒミューラー理論』が、今までの数学と何が違うのかといった問いかけは、一つの有意義なテーマであり、私自身も、多くの数学者と議論してまいりましたが、意味のある議論、もしくは解説が成立するには、非常に高度な専門知識が必要であり、一般の視聴者どころか、一般の数学者でもかなり厳しいものがあると言わざるを得ません。ご熱意に水を差すようで恐縮ですが、以上の理由によりお断りさせていただきます。望月新一」

プリンストン大学時代からの友人、ミンヒョン・キム博士は、望月博士が人前に姿を現さないのは、数学に対する集中力と忍耐力を保ち続けたいと考えているからだろうといいます。

イギリス 数理科学国際センター 所長 ミンヒョン・キム 博士「私の知る限り、彼は誰よりも高い集中力で、高度に抽象的な数学の問題に立ち向かってきました。非常に難解な事柄に焦点を当て、考え続ける彼の忍耐力。それを尊重すべきだと思います」

望月博士は一体どのようにして難問を解き明かしたのか。そして今、数学界で起きている事態の背景に何があるのか。私たちはまず、abc予想とはどんな難問なのか。それを追うことにしました。

フランス・パリ郊外に暮らす、ミッシェル・ワルドシュミット博士。abc予想について教えてほしいという私たちに、「それならまず『かけ算は簡単だけど、たし算は難しい』ということを理解すべきだ」と語り始めました。

ソルボンヌ大学 名誉教授 ミッシェル・ワルドシュミット 博士「あの21という数字。21は3×7という、かけ算に分解できます。ね、かけ算は簡単でしょう?」

「かけ算は簡単で、たし算は難しい」って?私たちの感覚とは正反対ですよね。でも博士は「このことがabc予想への大切な入り口なんだ」というのです。

皆さんは「素数」と呼ばれる数をご存じでしょうか。「1とそれ自身でしか割り切れない数」です。すべての数は、この素数のかけ算に分解することができます。

例えば、126という数は、2と63のかけ算に、63はさらに7と9のかけ算に、9は3×3に分解できます。博士は、このことをもとに「126は、2と二つの3、そして7という、いわば『遺伝子』を持っている」というのです。

ワルドシュミット 博士「数を遺伝子に分解して絵で表してみましょう。かけ算が簡単だという理由が分かるはずです。例えば12には、2という遺伝子が二つと、3という遺伝子が一つ含まれていますよね。これが12の形です。この12に5をかけてみましょう。答えは60ですが、この60の遺伝子の形を見てください。かけ算で生まれた新たな数の遺伝子は、もとの数の遺伝子を完全に受け継いでいるんです」

皆さん、いかがです?分かりましたか?

今の説明を、ワルドシュミット博士も訪れたことがあるという京都の西芳寺(苔寺)で詳しくご説明しましょう。ここが「数学の世界」全体を表していると考えてみてください。地面に生えている無数の苔は、一本一本が「数」です。

例えばこの苔(下の図)は4。4は2×2に分解できますから、その遺伝子はこんな形をしています。2の位置に長さ2の枝が生えているんです。

一方、こちらは21。21は3×7に分解できますから、遺伝子の形は、3と7の位置に長さ1の枝が生えています。

ではここで、4と21のかけ算をやってみましょう。答えは、84。84は2×2×3×7に分解できますから、遺伝子はこんな形になっているはずです。注目していただきたいのは、「84の遺伝子が、4と21の遺伝子の中身をそっくりそのまま受け継いでいる」ということです。いわば親の遺伝子が、すべて子どもに受け継がれている。これが、数学者が「かけ算は簡単なんだ」という理由です。

では、たし算の場合はどうなるでしょうか。やってみましょう。

4+21というたし算(下図)を、遺伝子で見てみると、生まれる子ども25は5×5ですから、遺伝子はこうなっています。お気づきになりましたか?たし算では、遺伝子は全く受け継がれていません。

ほかのたし算でも、ほらこの通り。

たし算はかけ算と違って、親の遺伝子からは子どもの遺伝子の形がどうなるか、全く見当がつかないのです。これが、数学者が「たし算は難しい」という理由なのです。

ワルドシュミット 博士「たし算は、受け継がれるはずの数の遺伝子を、いわば壊してしまうのです。たし算で生まれる数がどんな遺伝子を持つのかは、あらかじめ予測できません。遺伝子をどこまで破壊してしまうのか。破壊の程度を予測する方法はないのか。こうした難しい問題が存在することは、本当に喜ばしいことです」

さらに博士は、興味深い話をしてくれました。数学に、簡単に解くことができない「難問」がたくさんある理由。それは数学の世界に、かけ算だけでなく、遺伝子を破壊してしまうたし算が存在しているからだというのです。

博士が黒板に書いたのはフェルマーの最終定理。解かれるまでに350年もの時間がかかった超難問で、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

「xのn乗とyのn乗をたし算したものが、zのn乗になるような、x・y・zの組は存在するか」という問題です。

けれど仮に、数学の世界にたし算が存在せず、かけ算だけだったとすると、解くのは一瞬です。この式を満たすx・y・zなら、簡単に見つけることができます。

しかし実際には、遺伝子を破壊してしまう、たし算が存在しているため、難問になっているというのです。この「数学の世界にかけ算だけでなく、たし算が存在していることが、数々の難問が生まれる理由になっている」というお話。ちょっと、覚えておいてください。

さて、皆さんお忘れじゃないですよね。私たちは、望月博士が証明したというabc予想とはどんな難問なのかを知りたかったのでした。それを教えてくれる人が、こちら。abc予想を発見した張本人ジョセフ・エステルレ博士です。

二つの数をたした後にできる子どもの遺伝子の形は、親の遺伝子からは全く見当がつかない」。この気持ち悪い事態を何とかしたいなぁと思った博士。試行錯誤を繰り返し、1985年、ついに子どもの遺伝子の形を予言する一つの数式にたどりついたというのです。

a+b=cのとき、子どもの遺伝子の形がどうなるかというと…?これは難しそうです。

この式を単純化すると、下の式になるそうなんですが。まだ全然分かりませんよね。一体この数式が、どんな予言をするというのか。

博士は、「あの遺伝子で考えてみれば分かる」というんです。

a+b=cという、たし算を思い浮かべてください。親の遺伝子の形からは、たし算で生まれる子どもcの遺伝子の形がどうなるか全く見当がつきませんでしたよね。

それに対し、博士の数式の意味をざっくり説明するなら、親であるaとbの遺伝子の情報から、子どもcの遺伝子がどうなるか、ある程度、予言できるというのです。

例えば、ちょっと難しいかもしれませんが、n個の数をかけ合わせた2のn乗と3のn乗のたし算。子どもの遺伝子の形がどうなるかなんて、想像もつきませんよね。

でも、博士の数式は次のように予言するというのです。

「子どもの遺伝子は、nがどんな数だったとしても、『長さ1の枝しかない』または『長めの枝があったとしても5の位置にしか生えない』。そのどちらかに限られるはずだ」というのです。

この予言、本当に合っているのでしょうか?

「n」に、いろんな数(5、10、15など)を入れて調べてみると・・・、

どうです?博士の数式の予言どおりになっていると思いませんか?

エステルレ博士が偶然見つけた、ちょっと不思議な数式。ただし、この数式が、どんなたし算に対しても正しい予言をするのか。それは博士にも分かりませんでした。そこで博士は、これをabc予想として数学界に問いかけることにしたのです。

しかし、abc予想は、ほとんど注目されませんでした。正しくても間違っていてもどうでもいい。いわば「大したことない予想だ」と思われていたからです。

ちょうどその頃、一人の青年が、わずか16歳で名門プリンストン大学への入学を許されました。東京生まれで、子ども時代のほとんどをアメリカで過ごした望月新一青年。早くから天才を輝かせ、博士課程への進学も19歳で果たしました。

その博士課程での指導教官は、ドイツが誇る数学の世界的権威、ゲルト・ファルティングス博士に決まります。32歳の若さで「数学のノーベル賞」と呼ばれるフィールズ賞を受賞した天才中の天才です。自らが目指す数学を学生たちに厳格に求めたといいます。

マックス・プランク数学研究所 所長 ゲルト・ファルティングス 博士「望月は、指導教官の私からみると素直な学生でした。私と意見が対立することはほとんどありませんでした。望月が正しい場合が多かったですが、間違っていても、彼は私の指摘を素直に受け入れました」

そんなファルティングス博士をはじめとした数学者が大切にしている、現代数学の原理原則があります。19世紀の数学者・ポアンカレが語った「数学とは異なるものを同じと見なす技術である」。一見して全く違うものを同じと見なすことが、数学の重要な原理原則であるというのです。

そもそも数学は、違うものを同じと見なすことで誕生したといわれています。例えば、リンゴが三つと、杭に3回まかれたロープ。この二つは全く異なるものです。しかし人類は、歴史が始まるはるか前に、この二つに「全く同じだ」と思える共通点を見つけ出しました。そう、「3」という抽象的な概念の発見です。数学はこうして始まったと考えられているのです。

18世紀から19世紀前半にかけては、「図形」と「方程式」という異なる概念を、同じと見なす考え方が登場しました。全然別物に見えますが、数学者はこの二つに共通点を見いだし数々の難問を解決していったのです。

19世紀末には「コーヒーカップ」と「ドーナツ」が同じ形だという考え方まで現れます。変形すれば同じ形になるものは同じものと見なす。このアイデアは、数学を飛躍的に発展させることになりました。

さらに20世紀には、数学の権威ファルティングス博士らが「1・2・3といった数の集まり」と「曲線」を同じものと見なす考え方を推し進めます。これも、たくさんの難問の解決につながりました。

この現代数学の原理原則を、望月青年はやがて打ち破ろうと考えることになるのです。

ある日、友人との会話の中で、望月青年はこんなことを語ったといいます。

キム 博士「それは、どんな問題を証明すべきか。どんな問題に魅力を感じるべきかという話を、シンとしたときのことです。シンは、問題自身はシンプルでも、その解決には非常な深さと構造が必要であるような根源的な難問を証明したい。そう話していました」

ちょうどその頃、数学界を大きく揺るがす大発見のニュースが駆けめぐります。あの「大したことない予想だ」と考えられていたabc予想が、もし正しいと証明できれば、まるでドミノ倒しのように数々の難問が一気に解けるという、驚くべき事実が発見されたのです。

実際、abc予想が正しいことを前提にすると、解かれるまで350年かかったあの難問も、あっという間に証明できてしまうといいます。

ハーバード大学 教授 ノーム・エルキース 博士「これで『フェルマーの最終定理』の証明は終わりです。abc予想はとんでもなく長い証明を、黒板にも書けるほんの数行のものに置き換えてしまうほど強力だったのです」

なぜabc予想にそれほどの力が備わっているのか。その理由を、またざっくりとですが、説明するとこうなります。

「c=a+b」と定義されているので、式をうまく変形すると、下の図のように、式の左にはaとbのたし算が、右にはaとbのかけ算が現れていることが分かりますよね。

ここで思い出してください。「数学の世界にかけ算だけでなく、遺伝子を破壊してしまうたし算が同時に存在していることが、数々の難問を生んでいる」というお話を。

実は、abc予想には「数学の世界に混ざり合うように存在している、たし算とかけ算を、いわば巧みに分離する力が備わっている」というのです。abc予想が証明できれば、数々の難問も解決できてしまう。こうして、abc予想は、最も重要な未解決問題と呼ばれるようになったのです。

このニュースは望月青年が学んでいたプリンストン大学にも届きました。シンプルな問題でありながら想像を上回る奥深さがある。abc予想は、まさに望月青年が解きたいと語っていたような、根源的な難問だったことが分かったのです。

同じ頃、指導教官のファルティングス博士が、望月青年の博士論文のテーマを決めようとしていました。望月青年は早くもabc予想に挑むことになったのか。

ファルティングス 博士「abc予想はシンプルな問題で、しかもほかの多数の難問とも深いつながりがありました。たし算とかけ算の混ざり合いに関する問題であることも興味深いものでした。しかし、私はabc予想を、博士論文のテーマとしては与えませんでした。学生に挑戦させたとしても、数年考えて何もできなかったということになるのが落ちですからね」

abc予想が博士論文のテーマとならなかったことを、望月青年が残念がったのかどうかは分かりません。しかし博士課程修了後、望月青年は意外な行動に出ます。引く手あまただった欧米の大学のポストには目もくれず、少年時代に数年間だけ過ごした日本に帰ることを決めたのです。

なぜ数学の本場とされる欧米から、距離を置く道を選んだのか。そこでは見つからない新たな数学を探そうと思ったのか。当時目指したいと思っていた人物像を、こう書いていました。

そしてもう一つ、望月青年の胸のうちをうかがい知るためのヒントがありました。それは、博士論文の最後に記された、将来挑戦したい難問のリスト。どれも、abc予想の証明の重要なステップとなるものばかりでした。

いきなり最も重要な未解決問題として浮上したabc予想。1990年代以降、数々の数学者が証明へと挑み始めました。その一人が、ルシアン・シュピロ博士。博士の戦略は、abc予想のaやbといった数を曲線に置き換え、それが交わることを示せれば、abc予想が正しいと証明したことになるというものでした。

二つの曲線は交わるのか?苦難の日々を経たある日のこと。シュピロ博士は、ついに、二つの曲線が必ず交わることを証明したと確信します。そして、親友の数学者の誕生日に開かれた国際会議で証明を発表しようと思い立ちました。パーティー好きで有名だったシュピロ博士らしい演出。会場は博士への期待であふれます。

ところが、思いもよらぬことが起きました。

ロチェスター大学教授 トーマス・タッカー 博士「発表が始まって30分がたったころ、私は気づいてしまったのです。直感的には二つの曲線は確かに交わるはずでしたが、間違いがあったのです。彼のアイデアの根本にかかわる問題でした」

abc予想の証明に、生涯をささげたシュピロ博士。この出来事以降、数学の表舞台に姿を現さなくなりました。その後も、abc予想は、数学者たちの挑戦をことごとくはねつけることになります。

アメリカをあとにした望月博士。日本での研究生活は1992年に始まりました。天才として知られた望月博士にポストを用意したのは、京都大学数理解析研究所。日本の数学研究の中枢です。ここで博士は次々と斬新な研究論文を発表します。1998年には、国際数学連合の総会に招かれ、自らの最新研究を講演。将来、数学界を背負って立つであろう若手だけに許される栄誉でした。

京都大学のキャンパスに、一つのうわさが流れたのは2000年を迎えたころでした。「あの天才望月が、難問中の難問へのチャレンジを始めたらしい」というのです。

日本に帰国後、親交を結ぶことになった加藤文元博士。自らの研究について、めったに語らない望月博士と二人だけでセミナーを繰り返すことになった数学者です。望月博士の挑戦は、まるで天国と地獄の往復を何度も繰り返すようだったといいます。

東京工業大学 教授 加藤文元 博士「abc予想が解けるんじゃないかと気がつかれたのは、彼が、ホッジ・アラケロフ理論というのを構築されたころなんですね。しかし、おそらく徹底的に考えたんだと僕は思うんですけど、徹底的に考えた結論として、無理であるという、非常にそういう意味では大きな結論に至ったんだと。だから新しい数学を作らなければいけないと感じたとおっしゃってました」

なぜabc予想は解けないのか。思い出してください。

数々の難問を、まるでドミノ倒しのように解き明かすabc予想には、左側にはたし算が、右側にはかけ算が現れていました。この数式を証明するためには、数学の世界に混ざり合うように存在しているたし算とかけ算を、いわば分離するという、根源的な課題に切り込む必要があるというのです。

加藤 博士「たし算とかけ算の関係というのは、非常に複雑で難しいものなんですね。数の世界においては、たし算によって作られるのも自然数であれば、かけ算によって作られるのも自然数なわけです。たし算とかけ算の絡まりが、分かち難く固く結びついちゃってるわけです。abc予想は、なんらかの形でそれを分解して、柔らかくしてくださいと、我々に要求している。しかし、普通の数学でそれを解きほぐすっていうことは、ちょっと無理そうな感じがするわけです」

このころから望月博士は、全く新しいアイデアを頭の中でめぐらせ始めます。それはいわば、通常の数学の世界から飛び出し、これまでにない数学を作り出そうとするものでした。

京都大学の玉川安騎男博士は、ある奇妙なアイデアを聞かされ、驚いたことがあるといいます。

京都大学数理解析研究所 教授 玉川安騎男 博士「いわば現代の数学では、禁じ手になってるようなことも取り入れて、何かできないかということを考えたということなんですね。1+1は2でありながら、1+1は5であるとか。二つの直線が交わるということが起こりながら交わらないとか。本来だったら矛盾が起こるようなことを、活用できないかと考えた」

望月博士は、数学者がこれまで敬遠してきた、ある種の矛盾するような論理をも試そうとしたというのです。さらに、「異なるものを同じと見なす」という、現代数学が掲げるあの原理原則をも見直そうと考え始めました。

加藤 博士「ポアンカレが昔言った有名な言葉がありますね。(望月博士は)その逆を行った。つまり、ポアンカレは『違うものを同じと見なすことが大事だ』って言った。望月さんの理論においては、『同じものを違うものと見なす』ことも重要だという」

一度同じと見なしたものを、もう一度異なるものだと考える。いわば、行ったり来たりできる数学があってもいいのではないかというのです。現代数学の変革を目指す望月博士は、一体どんな理論を作り上げようとしているのか。その全貌が姿を現すまでには、さらに数年の歳月が流れることになります。

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