「ジャパン・リバイバル “安い30年”脱却への道」

初回放送日: 2023年4月2日

賃金や物価が長く上がらず、円安も重なり「安い」と言われるようになった日本。国際競争力を示す指標は下落し、海外に進出した日本の企業は商品の獲得競争で苦戦を強いられている。一方で、バブル崩壊後の“安い30年”を克服するヒントとなる動きも。海外企業との連携にチャンスを見いだす企業や、海外からの投資を積極的に引き出して飛躍する企業もでてきている。最前線のルポと専門家のデータ分析から見えた日本の活路とは-。

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(2023年4月2日の放送内容を基にしています)

いま日本は、海外から見ると、あらゆるモノがお買い得だといいます。

一棟7億円のマンションを物色する香港から来た投資家。日本の大都市や観光地にある物件を探しています。

香港の投資家「価格は問題ありません。いま日本はすべてが割安です」

ジャパンハナ不動産/ガラス・ウー代表取締役「世界から見れば、もっと高い価格をつけてもいいのに、日本は良心的な価格をつける」

中小企業を買収したいという問い合わせも急増しています。

日本M&Aセンター 海外事業部/坂本遼介チーフ「問い合わせ件数は2年間で5~6倍。海外の企業とか海外の投資家から見ると、(日本は)セール状態。2割引きみたいなイメージ」

物価の高騰に伴って、賃上げの動きも見え始めた日本。しかし、世界と比べると、バブル崩壊以降の30年で、割安と見られる国にすっかり変わってしまったんです。

このままで本当にいいのか?どうすれば日本は再生を果たせるのか。

ジャパン・リバイバル。 “安い30年”脱却への活路を探ります。

<世界が注目“割安な日本” 最前線で いま何が>

2021年、京都駅前の一等地に建ち、48年の歴史を持つホテルが買収されました。関西の大手私鉄グループからホテルを買収したのは、アメリカの世界最大級の投資ファンド。このホテルを含む8つのホテルを、およそ600億円で買収しました。

いま投資ファンドは、ホテルのオーナーとして経営を主導し、施設やサービスを一新。企業価値を高め、利益を上げようとしています。

ブラックストーン・グループ・ジャパン/橘田大輔 代表取締役「今、円安に大きく振れている中で、(日本が)安く見えるというのは致し方ない。もっと価値が上がる会社、不動産、ホテルは、まだまだあるとわれわれは思っています」

買収に応じた私鉄グループにとっては、コロナ禍もあり、考えた末の選択でした。

近鉄グループHD/江藤健一 経営戦略部長「従業員をはじめ、ソフトにかかるコストは減らせる限界があると思う。従業員をしっかりと守っていきながら、お客様にも愛され続けたいと考えると、この選択肢になった」

このファンドが4年間で投じた金額は、1兆円以上。今後さらに増やそうとしています。

ブラックストーン アジア太平洋/クリストファー・へディ会長「世界、特にアジアの中で、日本はとても魅力的です。日本は金利が低く安定していて、銀行からの資金調達もしやすい。もっと日本での投資機会を求めていきたい」

先進国の中で、賃金水準が低くなった日本の人材も、世界から注目を集めています。

3年前、中国の電機メーカーは神奈川県川崎市に研究開発の拠点を設置。いま、160人を超える日本の技術者を雇用し、その8割近くが大手メーカー出身です。ここで働く今井俊次さんは、日本の大手電機メーカーで洗濯機の開発に10年以上携わってきました。

ハイセンスジャパン 先端技術総合研究所/今井俊次 シニアスペシャリスト「思いのほか自由度が高く、今までやりたいと思ってもできなかった開発が全部できる。非常にありがたいし、本当に楽しいです」

日本の人材の獲得を進めているのは、全世界での売り上げが3兆5千億円にのぼる中国の電機メーカーです。日本を含む8か国23カ所に研究開発拠点を置き、世界中から人材を集めています。経験ある技術者には、月100万円以上の給料も提示。1億5000万円を超える成果報酬も用意しています。

ハイセンス 家電グループ/夏章抓副総裁「優れた製品を生み出す技術こそが、企業発展の基盤であると信じています。 エンジニアは企業の最大の資源です。技術や製品への貢献度に応じて、世界各地の研究開発投資を増やし、より優れた人材と技術を獲得していきます」

今、力を入れているのは、新型の洗濯機の開発です。日本の技術者と共同で進めていて、川崎で働く今井さんも、このプロジェクトの中心メンバーのひとり。中国企業は、今井さんが日本のメーカーで培ってきた知識や技術に期待しています。

一方で、今井さんは、日本企業にはない意思決定の速さが、中国企業の成長を支えていると感じています。

今井俊次さん「試作品を作って、中国のチームや社長とかに話すと、『やってみようよ』って言ってくれる。日本企業にいる時は、関門みたいな人、偉い人がたくさんいて、ハンコを山ほどもらって、みたいなことやっていた。本当に野球でコーチだらけの監督だらけ」

このメーカーでは、能力に見合った待遇を用意し、日本の技術者の獲得をさらに進めていきたいと考えています。

ハイセンスジャパン・李文麗 社長「中国や欧米のエンジニアの賃金は、ここ数十年で上がってきていますが、日本はあまり変わっていません。日本は、賃金を諸外国と同じ水準に維持すべきだと思います。さもなくば日本は多くの人材を失うでしょう」

バブル崩壊後に目立ち始めた日本の企業や人材を獲得する動きは、いま、これまで以上に加速しています。

中小企業の売買を仲介する企業では、日本企業を買収したいという問い合わせが、2年間で4倍に急増。ことしに入ってその件数は、さらに伸びています。

中国や欧米に加え、最近、東南アジアからの問い合わせが増えているといいます。

コンサルタント「全体の25%がASEANの国。シンガポールや、マレーシアとか。構造的に逆転しつつあるのも、一部あるかな」

<バブルから“安い30年”へ 日本の現在地は>

世界から安いと見られるようになった日本。しかし、30年前は、今とは全く異なる時代でした。

日本経済が過熱したバブルの時代。原動力となったのが、自動車や家電など世界を席巻した“メイド・イン・ジャパン”の製品でした。終身雇用を前提に、企業は時間とカネをかけて人材を育成。

高付加価値の新製品を次々と世に放ちます。その結果、利益が上がり、賃金に還元する好循環が生まれていたのです。

しかし、日本の様相は一変します。バブルが崩壊する中、企業が次々と倒産。その後、日本を飲み込んだのはグローバリゼーションの荒波。そして、賃金や物価が長く上がらない”安い30年”に突入したのです。

日本はどうしてこういう状況になってしまったのか。東京都立大学の宮本弘曉教授に聞きました。

東京都立大学 経済経営学部/宮本弘曉 教授「バブルが崩壊して、企業がやるべきことが“コスト削減”に大きく移り、負債を圧縮することが企業の至上命題になっていった。そういった中でリストラもせざるをえない。コストを削減して、価格を下げていくという、“価格競争”に走っていった」

星アナウンサー「日本単体で見れば、そんなに悪いことではないという気もしますが」

宮本弘曉 教授「モノの値段が安いと企業は賃金を上げられないので、結局所得が増えず消費者も豊かになれない。まさに賃金も上がらない、物価も上がらないという負のスパイラルに陥ってしまった」

日本の賃金の伸びを世界と比べてみます。アメリカではこの30年ほどの間、所得が低い層から高い層まで全て15%以上賃金が、上昇しています。

一方、日本はこの間、全ての層で10%から20%ほど減少。安さを追い求めるうちに、世界の成長から取り残されてしまったのです。

バブル崩壊後、日本が選択せざるを得なかった安さ。しかし、いま、世界各国が成長を続ける中で、限界に直面しています。

<アジアで直面 日本の“安さ”の限界>

日本の衣類の一大生産地、ベトナム。人件費の安さに注目し、30年前から拠点を置いてきた繊維商社は、ホーチミンに自社工場を構え、日本の百貨店やセレクトショップ向けの衣類を生産してきました。しかし、最盛期に2000人近くいた従業員は、いま500人ほどに減りました。

この30年、ベトナムのGDPはおよそ7倍に成長。平均賃金も上昇を続けています。その一方で、日本で購入される1着あたりの服の単価は、およそ6割にまで安くなりました。

日本向けの製品をつくるこの工場では賃金を上げることができず、従業員が集まらないのです。

STXベトナム法人/家田洋輔 社長「高い給料を出せば(従業員が)集まる可能性はある。ただそれは製品のコストに跳ね返る。使命は、いい商品を安価にお客様に提供すること。ホーチミンでは限界にきている」

製造業の賃金がアジアで最低水準のバングラデシュでも、安さを求める日本のビジネスは行き詰まっています。

繊維商社の松下友和さんは、日本向けの製品の確保に苦戦しています。この日訪ねたのは、主にファストファッションなど低価格帯のブランドから注文を受けている工場です。

日本で1枚800円で販売するTシャツの商談を進めていました。利益を得るためには、1ドル65セント(日本円で225円以下)で作ってもらう必要があります。

工場側が提示したのは、1ドル80セント。欧米の企業に比べて、圧倒的に厳しい日本の品質検査を懸念していました。かかる手間や人手を考えると、割に合わないというのです。

工場側がしぶしぶ削ったのが、労働者の賃金に直結する加工賃。

工場側担当者「値下げした見積価格です。1ドル70セントです」

松下友和 所長「それやったら難しい」

松下友和 所長「値下げの余地はもうないのでしょうか?」

工場側担当者「5セントくらい、あなたの客のアパレルメーカーに言えるでしょ」

結局、この日商談は成立しませんでした。

その後も、安く作れる工場を探し続けた松下さん。各地で投げかけられたのは、製品の価値に見合った対価が払われないことへの厳しい意見でした。

バングラデシュの業者「日本はどこの国よりも、品質がよいものを安く買いたがる。日本には5ドル以下のTシャツさえあるでしょ。私たちは、もっと高い価格で買ってほしいんです」

蝶理 ダッカ事務所/松下友和 所長「本当に日本が豊かな国で、賃金も上がり、衣料品にもそれなりの出費が出来るんだったら、もっと心地よい商売ができているんでしょうね。そうなってない現実があって」

そして今。かつて海外との価格競争に敗れた日本の縫製工場に注文が相次ぐという、皮肉な結果が生まれています。

久慈ソーイング/中田輝人 社長「シャツワンピース200枚、ワークシャツ300枚の注文があったが、うちだと生産ラインが流れないだろうと断った。あと2~3人いれば、なんとか流れると思うが」

この工場では、20年以上新卒の採用ができず、社員は高齢化。注文の増加に対応する余力はありません。

中田輝人 社長「いま国内に工場が少なくなっているのに海外から回帰してきて、本当に都合のいい話だという感じがします」

<“安い30年”で生じた変化 日本にいま何が>

星アナウンサー「求める品質と価格がかみ合っていない、つり合っていないという指摘を受けている現場がありましたが」

東京都立大学 経済経営学部/宮本弘曉 教授「日本の場合は、かつては外国に出ていって人材費を抑えようとしていた。ただ、その国もずっと経済が成長しないわけではない。例えば、バングラデシュや、ベトナムなど、日本の企業がたくさん出ていった国は、この10年くらいで人件費がだいたい2.5倍になっています。よく先進国、発展途上国という言い方をしますが、日本は一種の“衰退途上国”に入っている状況だと思います」

宮本教授が「衰退途上国に入っている」と指摘する日本。その一端が見えるのが、日本企業が数多く進出するタイです。首都バンコクの人材紹介会社では、“日本の企業は給料が安い”ため敬遠されるようになっていました。

日本とタイの平均年収の伸びを比べたグラフです。入社時は日本が高いものの、課長レベルの前でタイが逆転。差は開く一方です。

パーソネルコンサルタント/小田原靖 社長「採用負けが起きてきたのは、この1~2年です。タイの会社のほうが、成長が見えるんです。もしかしたら2年後、3年後、給料が20%、30%、40%上がっているかもしれないと」

日本の国際的な地位が低下していることを示すデータもあります。スイスのビジネススクールが発表する「世界競争力ランキング」です。30年前までは1位だった日本。しかし、その後が下降を続けます。いまでは、34位にまで転落。マレーシアやタイなど、東南アジアの国々にも、追い抜かれているのです。

東京都立大学 経済経営学部/宮本弘曉 教授「経済力は、国際的な発言力につながっている。それこそ今、中国が国際的な舞台で発言力、プレゼンスを高めているのは、GDPが世界第2位の大国になったからです。そうすると無視できない。一方、日本は相対的にその立場がずっと落ちてしまう。そうすると世界の舞台において日本はなかなか発言ができなくなる。それはまず問題だと思います」

星アナウンサー「こういう状況になると、どこに活路を見いだしていけばいいと考えますか?」

宮本弘曉 教授「“外国”は1つのキーワード。外国の企業がお金を出すことによって、経営が再び回り始める。かつグローバルな視点も持てるとその企業にとって、すごくプラスに働くわけです。そういった動きが出てくると、日本経済も活性化すると思います」

実際に、海外からの投資を利用して、経営を立て直そうとする企業も出てきています。

2021年、アメリカの投資ファンドにおよそ2400億円で買収された製薬会社です。投資ファンドが送り込んだ実績のある経営者がリスクをとって、新規事業に進出。ヒット商品も生まれました。

ブラックストーン・グループ・ジャパン/坂本篤彦 代表取締役「本当のフルポテンシャルを発揮できない、発揮するところまでもたどり着いていない企業が、日本の中にたくさん眠っている。(日本には)リスクが取りにくい風土やカルチャーができあがっているのではないか」

海外との連携や買収をプラスと捉えて活路を見出す。いまそうした動きが広がり始めています。

<生き残りをかけた海外との連携>

国内外のスタートアップ企業が集まるイベントで、地元の町工場を海外の人たちに売り込んでいたのが、大田区産業振興協会。海外の企業が入居できる施設を新たに設けるなど連携を支援。この1年で18件の事業が進んでいます。

大田区産業振興協会/堀田祐一 リーダー「(海外企業が)日本で研究開発の拠点を持ちたい、日本から調達したい、あるいは製造したいとか、そういうような形の企業進出が増えてくると、大田区にとって追い風になると思う」

この動きに生き残りをかける創業52年の精密機器メーカー。会社の主力製品は海苔(のり)の裁断機。会長の熊倉賢一さんは、繊細な素材を切断する高度な技術を海外企業に売り込もうとしています。

最盛期の40年前には、9000軒以上の町工場が軒を連ねていた大田区。しかし、いま町工場は半分以下に減少。バブル崩壊以降、取引先の国内企業がコスト削減を進める中で、多くの町工場の経営が行き詰まりました。国内企業との取引では価格競争にさらされ続けるため、海外との連携に活路を見出そうと考えたのです。

クマクラ/熊倉賢一 会長「開花させるための芽は持っていても、つぼみでずっといるようではどうしようもない。つぼみを開花させる相手を海外に求めてもいい時期が来たのかもしれない」

この日、大田区の担当者が、台湾の半導体設計会社の副社長を連れて訪ねてきました。台湾の企業からは、熊倉さんの裁断技術は意外な分野でニーズがあると伝えられました。

シリコントポロジー/許博欽 副社長「紹介してくれた海苔の機械は、いろんな分野でも応用できるかもしれない。台湾の会社と一緒に太陽光パネルをカットする機械を作れるかもしれません」

クマクラ/熊倉賢一 会長「海外にはニーズがいっぱいある。日本にはシーズ(技術の種)はあったって使い道がない。シーズの使い道をこの方たちは知っているので、それが大田区の残る道だと思う」

外国資本の傘下に入ったことで、経営のあり方を大きく変えた企業もあります。電気自動車EVのバッテリーメーカーです。事故や不具合を起こさない品質を売りに、世界で累計80万台のEVにバッテリーを供給してきました。2007年に国内の大手自動車メーカーの子会社として創業。主に親会社向けにバッテリーを生産してきました。

しかし、4年前、コストがかかることなどを理由に売却されます。中国のエネルギー会社の傘下に入ったことが、転機になりました。

エンビジョンAESC/松本昌一CEO「(海外のメンバーから)刺激を受けますよ、日々。刺激だけじゃなくプレッシャーも大きいですけどね。ものすごいアグレッシブだし」

事業の拡大を狙う新たな親会社のもと、かつて積極的にはしてこなかった営業を世界各地で展開するようになりました。さらにいま、国内外を問わず、自らの手で投資を募っています。この日、招いたのは、海外の銀行の融資担当者。

融資担当者「事故はない?」

工場担当者「もちろんです。私たちはそれを最も誇りに思っています」

融資担当者「彼らには野心を感じます。製品の品質が高く、世界でもトップクラスです。飛躍を期待しています」

世界から集めた資金を元手に、リスクを取って事業拡大に踏み出しています。

フランスでは、いま、およそ2800億円かけて自社工場を建設しています。世界の10カ所以上でこうした工場を建設し、3年後には生産能力を20倍にする計画です。

エンビジョン AESC/松本昌一CEO「いつもちょっとずつ先を行って、利益が確保できる体制を作り続けなければならない」

<海外からの投資 受け入れ“未来を担う世代”へ>

星アナウンサー「海外と力を合わせてやっていく、そういう生き残り方、やり方を、どうご覧になりましたか」

東京都立大学 経済経営学部/宮本弘曉 教授「経営者はいかなる経済状況であっても、利益を出していく姿勢が求められる。銀行からお金を借りる、あるいは社債を発行して資金調達をする、その資金を使って投資をして事業を拡大して利益を上げる。これが本来の企業の役割です。それが外国だと顕著に表れている。そこが、外国資本が入ってくることの一番の魅力で、かつ日本に必要なこと」

宮本教授が活路の1つとして挙げた海外からの投資。GDPに対する海外からの投資の割合を見ると、日本は近年、増えてきているとはいうもののOECD加盟国のなかでまだ最下位。裏を返すと、ここに可能性があるというんです。

そしてもう1つ、カギを握るというのが「人材への投資」です。

宮本弘曉 教授「日本の企業は、すごく労働者を大事にして教育や訓練をする印象かもしれませんが、実はデータを見ると1990年代半ばから人材にかけるお金はどんどん減っています。企業の積極的な経営が徐々に失われていってむしろ消極的になっていった」

企業が研修など社員の能力開発にどれだけ投資したかを国別で比較したデータです。

日本はアメリカの20分の1以下。しかも、年々減り続けているのです。

宮本弘曉 教授「人々にお金をかけないと、中長期的にスキルが伸びません。これは国の経済成長にとって全然プラスではない。ですから、お金をしっかりと人にかけることが重要」

未来を担う世代を育てる環境を整えるため、海外の企業と手を組む人も出てきています。

<“次世代に挑戦の場を” トップクリエーターの決断>

日本の大手ゲームメーカーでクリエーターとして活躍していた名越稔洋さん。15年以上にわたって、総合監督を務めたシリーズは2000万本に迫るヒット作となりました。

2021年、欧米にも拠点を持つ中国企業から全額出資を受け、独立しました。50人のスタッフたちと世界でヒットするゲームを生み出そうとしています。

名越さんが独立する時に誓ったことの1つが、次の世代を担う若手の育成です。名越さんは、自分たちの頃よりも、若手が挑戦する機会が少なくなっていることに危機感を抱いてきました。

名越スタジオ/名越稔洋 社長「開発費もどんどん膨らんでいくという事情もありながら、なかなか大きなチャレンジがしづらい、難しくなった時代というのは、大きな悩みにはなっていた」

そんな名越さんに新たな環境を用意したのが、世界で1.8兆円を売り上げる中国の大手IT企業でした。

ネットイースゲームズ 投資・パートナーシップ担当/サイモン・ジュー総裁「高品質でオリジナリティがあり、革新的なゲームを作るには何年もかかることを理解していますから、名越さんとタッグを組むと決めた時から、リスクも覚悟しています。傑出したゲームを生み出すのはクリエーターたちですから、彼らに集中できる環境を作りたいのです」

今、進めているのは、アクションアドベンチャーゲームのプロジェクト。抜てきされた1人が、髙橋朋也さん、29歳です。大学卒業後、憧れのゲーム業界に入りましたが、大きなプロジェクトを任されることはありませんでした。名越さんの会社では、キャラクターのアクション設計を任されました。

髙橋朋也さん「世界観もストーリーも、ちゃんとこだわって作るという経験が、ほかの会社で今できないので、この会社に入って、わくわくしている。成功させたい」

名越稔洋 社長「実際資金力があって、そこに日本の中でチャレンジに飢えている連中がいて、お互いウィン・ウィンになれる関係性が築けて、そこで結果が出たら、日本の企業の中でも、頭を切り替える人も出てくると思うし、(日本が)ブレークスルーするヒントにもなると思うんですよ」

<“安い30年”脱却への道 カギは異質性>

宮本教授は、海外から注目を集める今、日本は“安い30年”を脱却できるかの分岐点に立っているといいます。

東京都立大学 経済経営学部/宮本弘曉 教授「“異質性”がキーワードだと思っています。例えば、外国の企業が日本に投資をすると、そこから資本だけでなく、経営スタイルや戦略、技術、人材も入ってきます。そこで新しい化学反応が生み出される。それが革新的なものにつながる可能性は、十分あります」

星アナウンサー「それくらいやらないといけないくらい、今変わってきているということですね」

宮本弘曉 教授「実際、そういう動きが出ていると思います。日本は、大きな岐路にさしかかっていますが、日本だけではなく、海外にも目を向ける。そのうえで、もう1回、自分の立場を見つめ直すことが非常に重要なのではないかと思います」

日本が世界を席巻した時代の象徴、ジュリアナ東京。その一角はいま、世界に通用するベンチャー企業を生み出すためのシェアオフィスに姿を変えています。

熱狂の時代から、試練の時代へと移ろった30年。それでも未来を切り開こうというエネルギーは失われていませんでした。

ベンチャー企業 経営者「自由さや、個人の能力が認められる時代でもあると思う。それぞれ頑張れば、バブル期を超えるくらいいけるんじゃないか」

ベンチャー企業 経営者「継続的な進化ができる国にしていきたい」

日本再生の道を探ったジャパン・リバイバル。

実現に必要なのは、まだ見ぬ世界へと一歩踏み出す私たちの覚悟なのかもしれません。