ジェンダーサイエンス (2)「月経 苦しみとタブーの真実」

初回放送日: 2021年11月6日

体の性の実態に最新科学で切り込む「ジェンダーサイエンス」。第2集は人類史上初の“異常事態”となっている「月経」▼現代女性の月経回数は少子化などを背景に50回から450回に増加。深刻な病も。労働損失は年間4900億円▼月経は母親と赤ちゃんによる高度な生存戦略?父親の驚きの役割も?進化生物学の最新研究▼理解を阻むタブー視はなぜ▼苦しみとタブーの真実を解明し、誰もが生きやすい社会を実現するヒントを探る。

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目次

  • ■ダイジェスト動画
  • ■まとめ記事(前編)
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■まとめ記事(前編)

(2021年11月6日の放送内容を基にしています)

<最新科学が迫る! 月経 苦しみとタブーの真実>

体の性の実態に最新科学で切り込み、ジェンダーを問い直す、シリーズ「ジェンダーサイエンス」。第2集は、月経です。

月経について、およそ1,000人の女性に聞いたアンケート。86%の女性が、「男性に月経のことをもっと理解してほしい」と答えています。

仕事のパフォーマンスへの影響も深刻です。労働損失は年間4,900億円あまりと試算されています。

実はいま、女性の体に、人類史上かつてない“異常事態”が起きています。何百万年もの間、生涯に経験する月経の回数は、50回ほどだったといいます。

しかし現代は、450回。9倍にまで増加しているのです。

そうしたなか、最新科学が、苦しみとタブーの真実を解き明かそうとしています。月経は、母親と赤ちゃんが、互いに生き延びようと進化した結果、うまれたことが分かってきたのです。

月経の仕組みや役割を知ることで、誰もが生きやすい社会を実現するためのヒントを探ります。

千原ジュニア「いや、僕もう、ほんとに全く分からないんで、ただただ、勉強させてもらうということだけです」

YOU「ね、分からないもんね」

千原ジュニア「月経って、生理ってことですよね」

YOU「そうです」

千原ジュニア「それが、昔は50回やったんですか?」

久保田佑佳アナウンサー「驚きの少なさ」

YOU「どういうあれなんだろうね。月1回とかじゃないっていうことだよね!?」

久保田アナウンサー「NHKスペシャル・ジェンダーサイエンス第2集、テーマはズバリ、『月経』です。ジュニアさんはご家族で、お母様や奥様から話を聞いたことっていうのは?」

千原ジュニア「母親とそういう話をしたことは1回もないですし、奥さんにいつ月経がきてるのかも、僕は全く知らないです。生理用品がどこに置いてあるのかも知らないです」

YOU「一緒に生活してて、だいたいね、生理前とか、ちょっと突っかかって、けんか吹っかけたりとかしてましたから、私は。だって、幅跳びとか絶対したくないもんね」

久保田アナウンサー「絶対したくないですね(笑)」

YOU「大股でカツカツとかできないんですもん。もうずっと着物着てるみたいに」

久保田アナウンサー「月経について女性たちがどう感じているのか調査したアンケートがあるんですが、『女性どうしなら月経のことを理解しあえる』と答えた人はたった16.5%。女性どうしでも分かりあえないと思っている人がほとんどなんですね」

千原ジュニア「へえー」

久保田アナウンサー「実際の声で、『生理のたびに具合が悪くなって電車の中で倒れる私は、生理痛のない女性の先輩から仮病だと思われていた』」

千原ジュニア「女性でも理解できない人がいるってことですね。軽い人なんかは、すごく重たい人に対して」

YOU「そう」

久保田アナウンサー「男性も女性も知らないことが多い月経ですが、女性の活躍が推進されて働きやすい環境作りが求められる今、月経は誰にとってもひと事ではないんです」

<女性活躍は待ったなし ひと事ではない月経>

1万2千人が働く生命保険会社(大樹生命保険)です。社員の8割以上は女性。その活躍推進を、企業目標に掲げています。しかし、管理職のおよそ8割を占めるのは男性。月経に対するサポートは進んできませんでした。

そこでことし、女性の執行役員が男性管理職へのヒアリングを始めました。

執行役員 丹波由規枝さん「女性は月経っていって、月に1回しんどいときがくるんですが、課題として感じていることとか、全然関心なかったよとか、本音を教えていただきたいんですけど」

男性管理職「意識はしてはいませんでした」

男性管理職「積極的になにか、気遣うとかいうところまでは至っていないのが現状かなと」

全員、月経についての知識はほとんどありませんでした。なかには、こんな声も。

男性管理職「相手の受け止め方によっては、セクハラに取られかねないこともあるので、非常に距離感をはかりながら会話するというか、そんなことがいちばん難しいなあというところですね」

<井上咲楽さんの月経周期に密着! 毎月女性の体で何が>

では実際、女性たちは、月経についてどんなことに悩んでいるのでしょうか。

タレントの井上咲楽さん、22歳です。

テレビや雑誌で大活躍の毎日ですが、1か月のうち半分、月経の苦しみに悩まされています。

井上咲楽さん「ずーっと眠いんですよ、生理中」

この日は月経初日、猛烈な眠気と、痛みに襲われていました。

井上さん「おなかの下らへんがきゅーって痛くなったりとか。思わず、ううって縮こまりたくなるような。ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるきゅー。きゅーって絞られて痛いみたいな感じですかね」

月経がいつ始まるのかも把握しにくく、こんな経験も。

井上さん「生放送の仕事のときに、極度の緊張みたいになっちゃって、本番15分前に、ぱっと立ったときにお尻のところが、すごい真っ赤になっていて、いきなり生理がきちゃってて。そのとき座ったソファーも拭いて衣装も着替えて」

本番には間に合いましたが、2時間の生放送中、月経血の漏れが気になり集中できませんでした。

その月経血、ただの血液だと思っていませんか?実は、子宮内膜の細胞がまじっています。

子宮の内側にある粘膜、子宮内膜。毎月分厚くなり、受精卵を迎え入れる準備をします。

妊娠しなければ、子宮内膜は排出されます。これが月経です。

子宮は子宮内膜を外に出すため、しぼりだすように収縮します。

子宮を収縮させるのは、プロスタグランジンという物質。この物質が下腹部の痛みだけでなく、他の臓器の筋肉や血管にも作用し、さまざまな不調を引き起こします。

井上さん「起きたときの腰痛が最悪でした。明らかにいつもとはちょっと違うような重だるさだったりとか、頭の回転の悪さだったりとか」

仕事中は、こうした不調を見せないようにしている井上さん。男性はおろか、女性のスタッフや共演者にも話せないと言います。

井上さん「甘えてる気がして嫌だなって思っちゃう部分もあるし。『生理期間でこんなことがあって』と言っても、『普段からそうじゃない』って思われたら嫌だなとか、そこまで考えちゃうとなかなか生理だからこうなんですよねとも言いづらいですよね」

5日間の月経が終わると、およそ1週間、絶好調のときが訪れます。

井上さん「体調はすごい万全です。バッチリです。仕事に集中して、それだけに集中できるっていうのは、ありがたいって思うし。『おい、(いつも)これくらいでいておけ』って思うんですけど」

この時期は、最高のパフォーマンスを発揮できると言う井上さん。体のなかでは、エストロゲンというホルモンが上昇しています。肌にツヤを与えるなど女性の健康に欠かせないものです。

このエストロゲンには、もうひとつ重要な役割があります。子宮内膜を、分厚くさせるのです。厚さ1~2ミリから、およそ2週間で10倍近くになります。

次の月経まで、あと1週間となったころ。

絶好調だった井上さんに異変が起きていました。食欲が止まらず、気分の落ち込みが激しくなっていたのです。

井上さん「私なんでこれ我慢できないんだろうな、とか、食欲さえもコントロールできないんだなとか、どんどん嫌になりますよね」

排卵を機に、エストロゲンは降下。代わりに上昇するのが、プロゲステロンというホルモンです。分厚くなった子宮内膜を維持する働きがあります。このように、ふたつのホルモンが大きく変動するため、月経中でないにもかかわらず、不調をきたすのです。

イライラするなど精神面にも影響をおよぼし、**『PMS・月経前症候群』**と診断されることもあります。

月の半分は体調に影響が出る井上さん。これを毎月繰り返しています。

井上さん「これからもずっと続くものだし。(閉経の平均年齢50歳まで)あと30年?30年続くと思って・・・、しかも毎月、みたいな」

千原ジュニア「そこまで、そんなに仕事に影響すんのかっていう。だから、例えばテレビはもちろんですけど、例えば舞台とか。女性芸人が集まって1位決めるみたいな、生放送であったりするときも、そこに当たるか外れるかで、全然違うんじゃないかなとか思いました。もっと言ったら、やりたいコントあったけど、きょうこれやから無理やとか」

YOU「それもありえますし、ほぼね、3週間、なんか不自由なんですよ。イエーイっていうのは1週間ぐらいで」

千原ジュニア「うわ~、すごいそれ」

<人類史上初の“異常事態”  現代女性を苦しめる月経>

女性の仕事や日常生活に大きな影響を与える月経。日本など先進国の女性が生涯に経験する月経は、およそ450回にのぼります。実はこれ、人類史上かつてない“異常事態”なのです。

いったいどういうことなのか、アフリカ・ウガンダにそのヒントがありました。

自給自足の生活を送る、ギスと呼ばれる民族。カナ・ナンドゥトゥさん(35歳)は、18歳のとき1人目を出産し、6人の子どもを育てています。

ウガンダの農村部の女性が産む子どもの数は、平均6人。日本の4倍以上です。妊娠中、月経はおきません。授乳中も排卵機能が抑制され、月経の再開が遅れる傾向があります。ここでは粉ミルクが普及しておらず、2年間にわたり母乳で育てます。

カナ・ナンドゥトゥさん「妊娠・授乳中の2年以上は月経がないから、長い間月経をお休みすることになるの」

ギスの民族を研究している大阪大学大学院の杉田映理 准教授が、もうひとつ着目したのは、月経が始まる、初経の年齢でした。

大阪大学大学院 准教授 杉田映理さん「ギスという民族の女子中高生に聞き取りをしたところ、(初経年齢の)平均が14.6歳だったんですね。(日本より)2年半くらい遅いというイメージですかね」

日本の平均初経年齢は12歳に対し、ギスの女性は14.6歳。日本は、食生活が豊かになり、栄養状態が高くなったなどの理由で、早く月経が始まります。さらに、初産の年齢。日本の30.7歳に対しウガンダは19.2歳です。初経から初産の期間だけでも、月経回数に大きな差が生じるのです。

杉田さん「初産も早いし子どももたくさん産む。そういった意味では、少子化が進んでいる日本の状況とは(月経回数が)だいぶ違うのかなと思います」

何百万年もの間、女性が経験する月経の回数は、50回ほどだったと言われています。

それが先進国では、社会の発展とともにライフスタイルが一変し、450回まで増加。かつての9倍となっているのです。

そして、月経回数の増加は、女性の体に深刻な病をもたらしています。日常生活に支障をきたすほどの痛みが生じる**「月経困難症」**。日本では800万人が苦しんでいます。

月経困難症の患者「焼きごてでおなかの中をぐあーって、刺されているような強烈な痛みで目が覚めて。(仕事で)ちゃんとしたパフォーマンスを出さなきゃいけないということで、病院に行くのに時間が空いてしまったということもあって、気がついたら大変なことになっちゃった」

さらに、月経を経験するほど発症リスクが上がる**「子宮内膜症」**も切実です。260万人が患っています。

子宮内膜は月経によって、すべて排出されるわけではなく、一部が卵管を逆流することがあります。

月経が起きるたびに、その機会も増加。卵巣などに付着して炎症を引き起こし、3割から5割が不妊症となります。

この女性は、卵巣のなかに古い血液などがたまった5センチあまりののう胞ができていました。

女性は去年、35歳で結婚。いま、不妊治療を行っています。

子宮内膜症の患者「子どものことも考え始めていたので、『このタイミングか』と正直思いました」

東京大学医学部 産婦人科 准教授 甲賀かをりさん「今のいろんな女性の社会進出とかもそうですし、文明の発達のおかげで起きた恩恵と、このネガティブなことのバランスだと思うんですけれども、今いきなりみんなでやっぱり文明を昔に戻して、じゃんじゃん子ども産みましょうっていうことには、なかなかならないと思うので、月経を何回経験するとしても困らないような、医学的なこともそうですし、社会の仕組み等も変えていく必要があるんじゃないかと思います」

久保田アナウンサー「ここからは2人の専門家の方にも加わっていただきます。改めて、現代の日本人女性の月経回数、昔のおよそ9倍に増えているんですよね」

総合研究大学院大学 准教授 大槻久さん「はい。これはもう異常事態が起きてるんですよね。伝統社会の女性であるとか、日本も戦前は7~8人産むっていうのが当たり前だったと思うんですよ。ところが、この50~60年で少子化が起きて、今、日本だと子どもを1人とか2人とか、あと、産まないっていう選択をされる女性も多いと思うんです。そうすると、ずっと月経がくるわけですね。それで月経の回数が9倍になってしまった。これは人類史600万年から見ると本当に最近のことで、人類史を1年に例えるとすると、大みそかの数分ぐらいの出来事なんです」

東京大学医学部 産婦人科 准教授 甲賀かをりさん「本来の人類の歴史から考えても、こんなに多く、排卵・月経、排卵・月経を繰り返すっていうことに(体が)想定されていないというか」

久保田アナウンサー「先ほどの井上さんもつらそうだなと、拝見したんですけれども、この月経、毎月つらい方はどうすればいいんでしょうか」

甲賀さん「最近では、医療の力でもお薬等で月経をコントロールする方法もいくつか出てきております。井上さんのような方は、産婦人科のクリニックに相談していただければ、いろいろな方法をご提供できると思います」

久保田アナウンサー「先ほどもありました子宮内膜症ですけれども、病気自体は昔からあったんですが、今ライフスタイルが変化して、現代、さらに悩みが大きくなっているということなんです。女性が第一子を出産したときの平均年齢の移り変わりです。1950年には第一子の出産の平均は24.4歳。30歳までに3人産んでいた。これが2020年には、30.7歳が最初の子どもを出産している平均年齢なんですね。で、子宮内膜症というのは、実は30代から患者さんが増えてくる」

甲賀さん「昔は同じ30歳でり患した場合でも、もうお子様を産み終わっているので、子宮も、例えば手術で取っちゃってもいいです。卵巣も取っちゃってもいいですっていうんで、わりと治療法が迷わなかった。ところが、今はこのご病気になってから、『子どもが欲しい』となるので、そうすると、子宮、卵巣を取ってしまう、手術で取ってしまうってこともできないですし、それから、ホルモンの治療などもいろいろと、お子さんが欲しいということがあると限りがありまして、治療に難渋することがある」

YOU「結局今の社会で、じゃあ23、24歳、大学を出たら子どもを産みましょうっていうのは、なかなかありえないと思うんですよ、選択として。なんかでも、人の体とかって、進化するじゃないですか。今、30代、40代で産む方が増えてくると、そうやって変わっていかないですかね」

大槻さん「やはりね、進化はね、ゆっくりなんですよね。例えば月経っていう現象は、猿はどのぐらい持っているかっていうと、3000万年とかそういうスケールでずっと持っているものだから。今減らしたいって言っても、やっぱり進化が起きるにはですね、何百万年とかそういうタイムスケールで待たないと、月経が減るっていうことは、自然にはないと思うんですね」

YOU「逆に、じゃあ、男性は女性の月経に当たるような、なんかこう、自分ではコントロールしにくくて、人にもなかなか相談しないみたいな、体のことってあるんですか?」

千原ジュニア「ないです」

大槻さん「ないですよね、うん」

YOU「のんきね」

大槻さん「月経の話をね、聞いてしまうとどうしても、それに比するようなものはないような感じがしますね」

千原ジュニア「全くないです」

YOU「だとすると、ちょっと不公平ですね」

千原ジュニア「妊娠・出産のためとは言え、そこまで大変じゃなくてもいいんじゃないのと思いますけどね」

YOU「そうだよね」

■まとめ記事(後編)

(2021年11月6日の放送内容を基にしています)

<なぜ人間には月経が? 最新科学が解き明かす>

なぜ人間には月経があるのか。その秘密を解き明かそうとしている、アメリカ・イェール大学の進化生物学者、ワグナー教授です。

イェール大学 生態・進化生物学部 教授 ギュンター・ワグナーさん「他の動物と比較して興味深いのは、月経がある動物は非常に珍しいということです。胎盤を持つ哺乳類はおよそ5000種いますが、月経があることが知られているのは、100種に満たないのです」

進化の結果、胎盤を持つことになった哺乳類はおよそ5000種。月経が確認されているのは、私たちヒトやチンパンジーなどの霊長類、そして、一部のコウモリなど、2%以下にすぎません。

月経は、動物にとって大きなリスクをともないます。血や子宮内膜を排出すれば、そのにおいで敵に襲われる可能性があるからです。月経のある動物に共通するのは、出産する子どもの数が「原則1」であるということ。

たったひとつの命をなんとしても、世に送り出さなければなりません。ここに、リスクを上回る月経の意味があるといいます。

それを教えてくれるのが、子宮内膜。ここを舞台に、母親と赤ちゃんが互いに生き延びようと、ドラマを繰り広げます。

受精卵は、母親の子宮内膜に潜り込み、成長していきます。

子宮内膜に包まれた赤ちゃん。へその緒の先にあるのが、母親とつながる胎盤です。

赤ちゃんは枝のような組織を、たくさん突き出しています。

赤ちゃんは枝状の組織をぐんぐん伸ばし、母親の子宮内膜に入っていきます。

血管を広げ、母親からそそがれる酸素や栄養をたっぷり受け取り、自分の体を成長させるのです。

このとき、もし子宮内膜が薄いままだと、母親は、赤ちゃんの組織によって、子宮の筋肉を傷つけられ、大量出血などを引き起こしかねません。

そこで母親が考え出したのが、厚い子宮内膜で自分の体を守る作戦です。

そうすれば、わが身を守りながらも、赤ちゃんにたっぷり栄養を与えることができるのです。しかし、あまりに分厚くなった子宮内膜は、吸収することができないため、はがして外に出す、月経という仕組みができたと考えられています。

ワグナーさん「胎児と母親が協力し、妊娠、そして出産を成立させます。この両者の関係は人間が進化の過程で獲得したものなのです。月経は、月1回の出血では言い表せないほど、実に奥深いものなんです」

もうひとつ、人間に月経がある理由があります。毎月子宮内膜を作り替えることが、たったひとつの受精卵を迎え入れるために重要だと、最新の研究で分かってきたのです。

イギリス・ウォーリック大学のブローセンズ教授は、世界で初めて、子宮内膜の驚きの能力を発見しました。

受精卵がやってくると・・・子宮内膜の一部が寄っていき、捕まえるような動きをしたのです。

ウォーリック大学 産婦人科 教授 ヤン・ブローセンズさん「受精卵に異常がある場合、例えば染色体に異常があると、子宮内膜の細胞は近づかないのです。驚くことに、子宮内膜は驚異的なバイオセンサーで、受精卵の状態を識別していることを発見したのです」

子宮内膜には、受精卵の状態を把握し、見分ける能力があると考えるブローセンズ教授。受精卵は、うまく分裂できないものが多く、子宮内膜にやってくる8割は、完璧な状態ではありません。確実に子孫を残すために、毎月月経によって、子宮内膜をフレッシュな状態にするのだと言います。

ブローセンズさん「月経によって、子宮内膜は再生を繰り返しながら、受精卵を見分けているのです。妊娠を成功に導く、信じられないほど賢く、ダイナミックな組織が、月経によってもたらされるのです」

YOU「すごくないですか?私たち」

千原ジュニア「ねえ」

YOU「最初っからその能力があったってこと?」

東京大学医学部 産婦人科 准教授 甲賀かをりさん「そうですね」

YOU「そういうセンサーが、なんか脳とかにも欲しかったですね。これは立派なオスであるとか、見分けるセンサーがね」

久保田佑佳アナウンサー「月経の研究が進むことによって、病気の治療にも生かされていくんでしょうか?」

甲賀さん「そうですね。こういう子宮内膜の研究をすることで、例えば先ほどあった、赤ちゃんがお母さんのほうに枝を伸ばしていくのがうまくいかなくて、奧のほうまで枝が伸ばせない結果、赤ちゃんが育たないとか、あと、先ほどのセンサーがうまく働かなくて、全部妊娠してしまって、途中で全部流産してしまう、流産を繰り返す原因を調べることができたり、治療法の開発に応用できたりするってことはあります」

久保田アナウンサー「ジュニアさん、実は月経が生まれたとされるメカニズムは、男性も無関係ではないそうなんですよ」

千原ジュニア「ほう」

総合研究大学院大学 准教授 大槻久さん「VTRにもあったように、赤ちゃんはお母さんの血液をたくさん得てですね、養分を吸収して大きくなろうとしているわけです。ここで実はお父さん側の遺伝子っていうのが、重要な役割を果たしていて。お父さんの遺伝子っていうのは、赤ちゃんに入ってますよね」

千原ジュニア「はい」

YOU「うんうん」

大槻さん「だから、お父さんの遺伝子からすると、赤ちゃんが大きくなると自分の遺伝子が残るわけです。そこで、お父さんの遺伝子はどうするかというと、『お母さんからなるべく養分を吸収しなさい』『そして、君は大きくなりなさい』と、こう命令を出すわけです。そうすると赤ちゃんは大きくなる。で、赤ちゃんが大きくなるからお父さんは遺伝子を残せる」

千原ジュニア「われわれも多少やらしてもらってます」

YOU「よかったです。なんか、きっと男性って、『妊娠しました』『やったね』って言うんですけど、そっから先ってちょっとひと事っぽくなるっていうか。でも、今のお話で、きっと世の中のお父様たちは、そうやってちょっと、俺も仕事をしていたんだ」

千原ジュニア「そうですね。あずかり知らないところで、仕事さしていただいてるっていう」

久保田アナウンサー「月経の仕組みってほんとに奥深いものですね、大槻さん」

大槻さん「そうですね。女性だけと思われがちなんですけれども、実は男性と女性、両方が関わっている営みで、その意味ではですね、男女ともに月経を理解するっていうことが必要になってくると思います」

千原ジュニア「ほんまですね。なんでなんかこう、触れたらあかんようなことになったんでしょうね」

<歴史のなかで作られた 月経へのタブー視>

月経へのタブー視を象徴するものが、愛媛県に残っています。月経中の女性を隔離する月経小屋。かつて日本各地に存在しました。

女性たちは、家族と離れ、月経小屋で食事と寝泊まりをしていました。戦後すぐまで月経小屋を使用していた、工藤照子さん(94歳)は、幼いころから、“月経は穢れだ”という認識をすり込まれてきたと言います。

工藤照子さん「神仏に無礼があったらいけないとかですね。穢れがあったときには、そこ(月経小屋)で生活をする。言われたとおりにですね、しただけのことですね。深い考えはなかったと思います」

月経について、日本でもっとも古い記述があるのは、「古事記」です。ヤマトタケルノミコトが、妃であるミヤズヒメの服に血がついているのを見たとき。「つきたちにけり」、「月経がきたんですね」と歌をおくりました。月経はタブー視されることなく、自然に会話に登場していたのです。

歴史社会学者 田中ひかるさん「挿話の中にはですね、月経に対する穢れっていうのが全然表れていなくて、あっけらかんとして詠んでいるので、この挿話が成立した時点では、月経は不浄視されてなかったっていうのが一般的な解釈です」

それが、平安時代。国のまつりごとについて定めた貞観式(じょうがんしき)に、「月経中の女性は、祭祀に参加してはいけない」という規定が作られました。月経は穢れとされ、月経中の女性は宮中の行事から除外されたのです。

そして、次第に男女の違いを明確にする統治の方法が選択されていったと考えられています。

田中さん「当時の政治的な背景から、女性を排除した方が統治しやすいというふうに、為政者が考えたというふうに言われています」

その後、男性中心の社会が強固になっていく中で、月経は、タブーとされ続けたのです。

田中さん「月経がやはり穢れである、恥ずかしい事である、汚い事であるっていうイメージを女性自身も持っていますから、月経に関して何か言われても、それに対してなかなか声を上げづらかったんじゃないかと思うんですね」

久保田アナウンサー「月経をタブーとする空気、それを象徴するアンケートもあります。男性のうち『月経など女性が抱えるつらい症状について理解したい』と答えた人はおよそ8割」

千原ジュニア「うん」

久保田アナウンサー「大多数の人が理解したいと思っているんですけれども、『理解が広まらないハードルとなっているのは何かですか』と聞いたところ、男女ともに1位だったのが『オープンな話題にしにくい風潮』だったんですね。みんな、男性も女性も何となく言わないほうがいいと思っている」

YOU「さっき咲楽ちゃんも言ってたけど、なんか、我慢しなきゃとか、みんなそうだから、『甘えてる』って言われてるのも嫌だってなるかもしれないですね」

久保田アナウンサー「自分が我慢して済むならそれでいいっていうか、でも、ほんとは我慢しきれてないところもある」

YOU「そうなんですよね」

久保田アナウンサー「この月経の不調による労働損失は、年間およそ4900億円と試算されているんです」

千原ジュニア「ええっ」

久保田アナウンサー「下腹部の痛みとか、眠気、自分ではコントロールできないイライラなどによって会社を休んだり、働いていても仕事がはかどらなくて、パフォーマンスが低下したりすることが、女性が活躍する上で大きな課題の1つになってるんですよね」

千原ジュニア「すごいな~」

久保田アナウンサー「ただ、450回にも増えた月経回数によるさまざまな苦痛に、女性の体がすぐ適応できていくかというと、進化の観点からそれはとても現実的ではないですよね。そうした中、問われているのは、社会としてどう向き合っていくかです」

<進むテクノロジー開発 月経の労働損失減も>

多くの女性でにぎわう、フェムテックフェスというイベント。フェムテックとは、テクノロジーで女性特有の健康課題を解決する製品やサービスです。

生理用ナプキンを使わなくても、特殊な生地が月経血を吸収するショーツや、月経がきた日を入力すると、次の月経のタイミングや月経周期にもとづいた体調のアドバイスをしてくれるアプリなどがあります。

大手電機メーカー(シャープ)も、ことしからフェムテック製品の開発に乗り出しています。月経周期を管理するアプリの利用者に調査を行ったところ、ある課題が見えてきました。

女性開発担当者「生理日などのデータ入力が面倒、入力忘れなどが原因で続かなかったという答えが多かったですね」

男性開発担当者「生理周期をしっかり管理しようとしている・・・、管理するのが大事なんですか?」

女性開発担当者「大事っていうか自分が困るんですよね。急に(月経が)きちゃって準備してなかったりとかして、いちばん困るの自分じゃないですか。なのでできれば記録しておきたい」

そこで開発を進めているのが、IOT技術を使った収納ケース。生理用品を取り出したことを感知すると、アプリに、在庫の状況や月経周期などが自動で記録されるのです。

新規事業企画開発部 寧静さん「生理周期を記録してない方もいまして、もしこの商品が知るきっかけで生理の記録を始めたら、実はいろいろ自分の健康面の気づきもあるし、万が一何かあるときにも役に立つのではないかと」

国も、企業や医療機関などに補助金を出し、フェムテックの活用を推進。女性たちが正しい知識を持ち、治療などにつながることで、月経による労働損失を半減させられるとしています。

<月経を正しく理解し 誰もが働きやすい環境を>

冒頭で紹介した生命保険会社(大樹生命保険)では、男性管理職へのヒアリングのあと、意識改革に乗り出しています。

この日は、保健師やキャリアカウンセラーを招き、オンラインセミナーを実施。月経など、女性の健康について学ぶことで、働きやすい環境作りや、キャリア支援につなげようとしています。

グループ長の秋吉英智さん。部下には30人以上の女性社員がいます。

セミナーのテーマは「女性社員の気持ちになって考えよう」。月経中の女性が声に出しづらい悩みが紹介されました。

女性社員の悩み事例「会議が始まって1時間。ナプキンから月経血があふれそうで気持ち悪い、早く取り替えたい。でも上司が休憩とる気配はなし。あふれて洋服やいすを汚すのが嫌。休憩とってくれ~」

営業総務グループ グループ長 秋吉英智さん「ナプキン替えたいとか、まったく想像もしていなかったので・・・」

続いて実践編。重要なプレゼンを控えている女性社員に月経の予兆が・・・。そんなとき、女性がどんなサポートを求めているか考えます。

女性社員の悩み事例「ずっと温めてきた企画で、私が中心になってきたものだから頑張りたい。でもおなかが痛い、生理が始まりそうだ」

男性たちが、女性社員になりきって考えた答えは。

「できることはないか声をかけてほしい」

「社内であれば日を変えてほしい」

秋吉さんが絞り出した答えは、「資料作り手伝って」

秋吉さん「本当に女性が活躍している会社になっていくための1つの過渡期だと思うんですよね。その1つの責任を持っているんだなというのは感じますよね」

セミナーの主催者は、女性も男性も体の仕組みや違いを理解することが、具体的な施策を考えることにつながると言います。

さんぎょうい 社長 芥川奈津子さん「全員が同じ認識を持って、そして共通言語を作るという風土を形成するというステップがない限り、片方だけが知識を持っても、なかなか解決できない問題だというふうに理解しています」

千原ジュニア「ほんまに今までずっと、女性の頑張りにあぐらかいてるというか」

YOU「そうですよ。そう、だからほんとに、特番5時間とか言われると、『休憩って何分ぐらいにありますか』って聞いてんのは、サボりたいんじゃなくて、計画立てたいわけよ」

千原ジュニア「なるほど」

YOU「楽屋に帰れなかったら、ポーチとかを持ってスタジオ入らなきゃいけないし」

千原ジュニア「はーはーはー」

YOU「楽屋に帰れるんだったら、その時間を計算して・・・、とかあるから」

千原ジュニア「はーはーはー。でも、どう声かけていいのか。なんかしんどそうやな、きょうちょっといつものパフォーマンスより低めやなと思って、『生理なの?』って聞いたら、意外とそうじゃないっていうこともあるでしょうし」

YOU「『失礼ね』ってなりますからね」

千原ジュニア「そうそうそうそう。難しいわあ」

東京大学医学部 産婦人科 准教授 甲賀かをりさん「あえて生理か生理じゃないかっていうことは、別に確認する必要はないと思うんですね。ただやっぱり、あまりにも想像もつかなかったって、先ほどもありましたけども、そういうことで苦しむかもしれないなっていうことを少し心に留めておいて」

千原ジュニア「そうですね」

甲賀さん「それで、女性のほうから『生理で』っていうことがあったら、うろたえないで、『それは大変だね』っていうふうに対応してさしあげればいいし、そういうことがあるのかもしれないなって想像して、気遣いができればいいんじゃないかなと思いますけどね」

総合研究大学院大学 准教授 大槻久さん「生物学の立場からすると、男女っていうのは同じところもたくさんありますけれども、決定的に違うところっていうのがあるわけですよね。それで、妊娠であるとか出産っていうのは、この十数年で、企業がいろいろ努力をしたりして、なるべく、例えば男性が育児休業とったりであるとか、手厚くサポートがだんだん始まっている分野だと思うんです。それに対して月経っていうのは非常に立ち遅れていて、こういう知識を深めることによってですね、より月経に対してどうやって社会全体で立ち向かっていくのかっていうことを、みんなで考えるっていうことが大切だと思います」

久保田アナウンサー「ジュニアさん、全くの未知の世界から」

千原ジュニア「ほんと未知でした。だから、今の子どもたち、女子より、まず男子を集めて、月経の授業受けたほうがいいですよね」

YOU「そうです」

千原ジュニア「ちょっと今、早く家帰って奥さんと会議したいですもん」

YOU「ぜひしてください」

千原ジュニア「はい」

甲賀さん「そうですね。おうちの中でパートナーとか奥様とかにそういうことを話題にして、それでまた知識を入れておいて、で、職場ではそういうことがあるかもしれないなって想像して女性の方に対応するっていうので、少しずつ知識を高めていけば少し違うんじゃないかと思います」

久保田アナウンサー「ぜひ身近なところで話が進むといいですよね。きょうは皆さん、どうもありがとうございました」