体操個人全日本選手権 村上茉愛さん パリ五輪へ向けて注目の選手

NHK
2023年4月28日 午後1:03 公開

先日行われた体操全日本個人総合選手権。大会3連覇がかかる東京五輪王者の橋本大輝選手をはじめオリンピックのメダリストたちがしのぎを削る中、村上茉愛さんが注目したのは予選をトップで通過した三輪哲平選手。これまで世界選手権やオリンピックへの出場経験はなし。「最後まで橋本選手に食らいつく」と決勝に挑んだ。試合直後のインタビューとともにお届けします。(2023年4月23日放送)

全日本選手権決勝を村上さんが解説

橋本選手を抑え予選1位の三輪選手。最初の床はひねり技から。「固さがあった」と磨いてきた着地で手をついてしまいました。その後もミスが続き、3位に順位を落とします。3連覇が懸かる橋本選手は、去年落下が多く、課題としてきた2種目めのあん馬でダイナミックに旋回、着地もまとめトップを守ります。

中川キャスター:村上さん、橋本選手は1月に疲労骨折をして、練習ができない時期もあったんですよね?

村上茉愛さん:はい。リハビリ期間中に、あん馬の旋回など基本的なものを見直したそうで、限られた練習でも力を底上げして、かつ本番で完璧な演技をしてくるのは、さすが王者だなと思いました。

その橋本選手に迫ったのは、東京オリンピックメダリストの萱和磨選手でした。3種目めのつり輪ではパリを見据え演技の美しさ、完成度を高めてきました。僅差の2位で橋本選手を追いかけます。逃げきりたい橋本選手は4種目めの跳馬で着地が乱れます。「力んでしまった」と橋本選手。逆転のチャンスが訪れた萱選手は、橋本選手と同じ高難度の技”ロペス”に挑みましたが、こちらも着地が決まらず順位は変わりません。

中川キャスター:難しい技での対決でしたね。

村上さん:はい。跳馬は全体のレベルが上がっていると思います。そんな中でも萱選手もより難しい技に挑んだっていう攻める姿勢は素晴らしいと思いますね。

このトップ争いにくらいつき、3位で最後の鉄棒を迎えた三輪選手は途中で落下。7位で大会を終えました。しれつな争いを制したのは橋本選手。離れ技を確実に決め3連覇。内村航平さん以来の快挙です。

橋本選手は試合後「結果を見て、本当にほっとしています。目標は(パリ五輪の)団体金と、個人総合金メダルなので、結果を出せるようにしていきたいと思っています。」と話していました。

パリ五輪へ 代表争いの行方は

中川キャスター:(橋本選手)着地もピタリと決めて流石でしたね、藤川さん。

藤川球児さん:最後の着地の表情、あそこに王者の強さというか、金メダリストだなというのが出ていましたね。

豊原キャスター:秋に行われる世界選手権の代表5人ですが、男子はすでに橋本選手が内定しています。残り4人のうち、今大会と5月のNHK杯の合計スコア上位2人が内定。残り2人は6月の大会の結果を踏まえて選ばれます。現在の状況を整理しますが、僅か0.7ポイント差の中に5人の選手がひしめいているということで、この中で村上さんが特に注目されているのが予選トップだった、三輪哲平選手ということですね?

村上さん:はい、そうなんです。最終的な順位は7位に終わってしまったんですけど、ポテンシャルの高さは、私は日本一だと思っています。初の代表入りを目指す三輪選手に話を聞いてきました。

三輪選手「めっちゃいい経験した」

村上さん「どうも、お疲れ様です。きつかった?」

三輪選手「きつかったです。」

村上さん「三輪選手にとって、今回はどんな大会になりました?」

三輪選手「予選では自分がやりきったら優勝できる、トップまでいけることが証明できたと思うし、2日目の決勝ではまだまだだなという弱さが見えた試合だったという、両方見えた試合だった。」

6種目すべてで高得点を狙えるオールラウンダーの三輪選手。しかし、これまでオリンピックや世界選手権に出場したことはありません。東京オリンピックの選考会では勝負どころで実力が出し切れず、代表入りを逃しました。今日の決勝でも前半の種目でミスが続きました。

三輪選手「プレッシャーはありました。初めて1位通過だったので、周りの声だったり“期待してるよ”というのがあったので、ちょっと固い演技になっちゃったのかなって思います。」

それでも私(村上さん)が成長を感じたのが、4種目めの跳馬。力強い踏み切りと美しい空中姿勢で、出来栄え点9点を超える高得点。続く平行棒でも得点を重ね、3位まで立て直しました。

村上さん「跳馬・平行棒から笑顔がすごく多くあって、失敗がありながらも粘って良い試合しているなって思ったんですけど。」

三輪選手「後半が自分の中では得意とする種目が多いので“跳馬から切り替えていくぞ”と諦めず最後までやれていたこと、気持ちを切らさずにできたっていうことが1つきょうの試合での収穫。」

確かな手応えも感じた今大会。5月のNHK杯で、逆転での世界選手権代表入りを目指します。

三輪選手「もちろんこれから挽回できますし、代表に入れるチャンスもあるのかなって思います。NHK杯では本当にノーミスできれいな体操で着地まで意識の届いた演技ができるように頑張っていきたいと思います。」

村上さん「持っているポテンシャルは一番高いと正直思っています。」

三輪選手「はい。思っています、僕も。まじでN(HK)杯やばいです、多分。すごい(高得点)いけると思います。(今大会)めっちゃ良い経験したって思います、本当に。」

村上茉愛のmyオシポイント!

中川キャスター:素の感じが出ていて、すごく貴重な感じがしました。

村上さん:もう既に前を向けていると思いますね。そこで今日のmy推しポイントは、三輪選手にエールを込めて「#無心で挽回!!」です。三輪選手は予選の演技が良すぎて、決勝はどうしたらいいか分からないだったり、気持ちがなかなか乗り切れなかったと話していたんですけど、次のNHK杯ではプレッシャーだったり、順位などにとらわれ過ぎず、自分の実力を出し切ることだけに集中して、ぜひ頑張ってもらえたらなと思います。

女子は渡部葉月選手が初優勝!

中川キャスター:そして、女子の決勝は昨日(4月22日)行われ、以前myオシで取材した渡部葉月選手が初優勝しました。予選2位から臨んだ決勝。1種目めの跳馬で出来栄え点9点を超える演技で波に乗りました。村上さん、いかがでしたか?

村上さん:この技は、この春から新しく入れた技なんですけど、ここまでの完成度は素晴らしいですし、試合全体の良い流れを作ったんじゃないかなと思いますね。

中川キャスター:昨日はけがで途中棄権する選手も相次いで、現場で取材していても重苦しい空気を感じたのですが、最後まで自分の演技をやりきった渡部選手の強さ、どんなふうに感じていますか?

村上さん:一瞬不安だったりとか、恐怖心というのが少し芽生えてしまったようにも感じたんですけど、一度世界選手権で演技をしている選手なので、自覚を持って強い気持ちで切り替えて演技できていたので、そこはさすがだなと思いました。

中川キャスター:渡部選手は試合のあとに、“村上さんのような常に日本のトップを走る選手になりたい”と話していたということですよ。

村上さん:ぜひ頑張ってもらいたいです。