WBC組の活躍が目立つ大リーグですが、WBC組以外にも忘れてはいけない選手がいます。今シーズンからニューヨーク・メッツに移籍した千賀滉大投手です。ここまで4勝1敗と素晴らしい成績で防御率も3点台。その千賀投手に話を聞くため上原浩治さんがニューヨークへ。スーパースターのチームメートから刺激をもらいながら、大リーグ1年目を戦う千賀投手の胸の内に迫ります。(2023年5月7日放送)
中川キャスター:上原さんが1年目はどうだったんですか?
上原さん:僕は2か月ですぐ怪我してしまったんで全く貢献できなかったです。
中川キャスター:それだけ1年目というのは難しいものですか?
上原さん:そうですね。文化も気候も違いますし、あとは言葉の壁、生活リズムが違う中で本当に大変だと思うのですが、その中で開幕から1か月。千賀投手はいまどんなことを感じているのか、ニューヨークまで行って会ってきました。
上原さんメッツ本拠地へ
上原さん現役時代に私も何度か訪れたメッツの本拠地「シティ・フィールド」。この日の対戦相手はブレーブス。懐かしい方々に会いました。まずはワシントンコーチ。私のレンジャーズ時代の監督です。
さらにオリオールズ時代の投手コーチ、クラニッツさんも。
私にフォークの握り方を聞いて来たのはカービー・イェイツ投手。4年前のナ・リーグセーブ王です。「こことここ、かけたほうがコントロールはしやすいと思う。」とアドバイス。
知り合いに囲まれ楽しいひとときでしたが、この日は気温13℃、とにかく寒かった。国土の広いアメリカならでは。慣れない1年目の選手にとっては、この気候にアジャストするのも大変なんです。
”おもしろい選手になれているんじゃないかな”
上原さん:ローテーションの一角としてチームトップの4勝。千賀投手は、ここまで私の予想をはるかに上回る活躍を見せてくれています。千賀投手といえば“おばけフォーク”。ソフトバンク時代に猛威を振るった魔球は、海を越えても健在。球場の至るところにおばけのキャラクター。ファンの間でもすっかり”おばけフォーク”は定着しています。
上原さん「僕もびっくりした、テレビ見ていて。おばけのフラッグっていうか、やってくれるファンの人たちの反応をみてどうですか?」
千賀投手「おもしろい選手になれているんじゃないかなと思って、なかなかそういうキャラクターになれる選手っていないと思うので本当ありがたいなと。そういう面白い選手でいるためにはやっぱり成績を残さないと。成績もしっかり伴いながら、そういうので楽しんでもらえる選手というのは本当に光栄だなと思っています。」
育成出身の選手として初めて大リーグの舞台に上り詰めた千賀投手。メッツには、ともにサイ・ヤング賞を3回受賞したジャスティン・バーランダー投手とマックス・シャーザー投手などスーパースターが在籍。多くの刺激をもらっています。
千賀投手「マックス・シャーザーは、試合中もベンチにいる時は横にきて“さあ話そうか”みたいな感じで“Let’s talk!”と言って野球の投球術の話をしてくれて、“今ここがよかったから抑えられたんだ”、“今のはここがダメだったから打つよ”という話をすごい丁寧に教えてくれるのですごい勉強になっています。」
上原さん「すごいよね。そんな事してくれるんですね。」
千賀投手「僕もびっくりしています。エース級だけじゃなくて、僕たちのローテーションのところでしっかり勝たないと優勝は見えてこないということが伝わってきたというか、ちゃんと働かないとなってすごい思わされました。」
上原さん「いい先輩っていうかね、いい人に出会っているなっていうのは思いますね。」
千賀投手「ありがたいです。まさかのです。」
登板間隔が6日から5日へ
上原さん「今、中5日で回っていますけど、そのルーティーンはもう決まりました?」
千賀投手「これが正しいか正しくないかは正直まだ分からなくて、これから作っていくものだなと思うんですけど。」
上原さん「日本のときは中6日だったわけじゃないですか。今は中5日。その1日って全然違いますか?」
千賀投手「正直、日本の時に僕は中6日も長く感じていて。(先発間隔が)短ければ短い方が集中が続くんで、その方が気持ち的に楽だった。気を抜く時間が少ない方が僕はうれしい。」
フォークボールの軌道に変化
順調な滑り出しに見える千賀投手。でも、ここまでのピッチングを見ていて気になることがありました。
上原さん「試合を見ていると、ちょっとこういう(横に流れる)感じのフォークボールになっているんじゃないかなと。日本にいた時は、真っ直ぐ落ちている感じのイメージがあったんですね。」
千賀投手「そうですね。」
上原さん「右にちょっと行くようなシンカーじゃないですけど、扱い方の難しさというのは今ちょっと感じている?」
千賀投手「そうですね。本当に自分の投げたい球を扱えているということがあまりにもできてなさすぎて。」
上原さん「そうなんですか。」
千賀投手「ストライクゾーンから縦にしっかり落ちてくれるのがいいと思っているんですけど、今はもうどうしてもストライクゾーンに行っても横に流れてしまうので。」
その原因の1つと考えられるのが寒さです。初登板の試合はドーム球場で22度。この日は6回途中1失点で初勝利を挙げました。しかし3戦目は13度で4失点。続く4戦目も15度で4失点。寒い環境では失点が多い傾向にあるのです。
千賀投手「正直キャンプ地でやっている時は本当にもうめちゃくちゃ暑くて、手にボールがすごい馴染んで何が困るんかな?って思ったんですけど、みんなに“寒くなったら変わるよ”とずっと言われて、いざ本当に寒い場所で投げたら本当に手につかなくて。」
上原さん「寒さってどうしても手がサラサラっていうか、しっくりこないっていうのがすごい分かるんで。フォークボールの握りを変えたりとかもあるんですか?」
千賀投手「そうですね。本当に少し変えてやっていて。やっぱ滑るので、指のあたる面積をちょっと増やすというか、ちょっと僕もその辺は悩んでいるところです。」
上原さん「僕の場合は人さし指だけではなく、中指のほうも縫い目にかけているんで。」
千賀投手「両方ともですか?」
上原さん「両方ともかけてるんで、だから滑らないっていうのは多少なりあったかもしれないですね。ただシーズン中にそれをやる難しさっていうのももちろんあると思うんですけど。」
千賀投手「難しいですよね。ちゃんとしたフォークが投げられたら、ちゃんとストライクゾーンにいって、バッターが“はい、甘い”と思った瞬間にワンバウンドになる球を投げられてたら、3球で多分終わると思うんですけど。」
上原さん「振ってくるもんね。」
千賀投手「それが投げれないんで、じゃあどうしようかみたいな感じです、今は。」
上原さん「今はじゃあ我慢かな。」
千賀投手「はい。うちの監督も上原さんと一緒にやられていて、上原さんの話をよくされるんですけど、“どんどんストライクゾーン投げ込んでいるぞ”みたいな話を。“あいつはああやって肝が据わってんだ”みたいなことをいつも言っているので、(上原さんは)しっかりフォーク・スプリットを扱える準備ができているからこそなのかなって思っているんですけど。」
上原さん「でも悩んでいるような表情じゃないですよね。」
千賀投手「めちゃくちゃ楽しいです。めちゃくちゃ楽しいです本当に僕。」
上原さん「いろんな経験をしているっていう感じで。」
千賀投手「本当にそんな感じだと思います。」
上原さん”千賀投手の表情が全てを語っている”
豊原キャスター:千賀投手、日本の印象だとあんまり笑顔が多い選手というイメージがなかったので、ちょっと意外でしたが。
上原さん:あの表情が全てを語っているのかなと。あと寒さって言われましたけど5戦目6戦目、寒い中で抑えていますからあまり関係なかったのかなと思いますよね。
豊原キャスター:あのフォークの軌道自体はこの先も心配ないですか?
上原さん:暖かくなってくれば、どんどん自分の思い通りに投げられるようになってくると思うので、まだまだ活躍はしていくと思います。
中川キャスター:そして千賀投手は、エブリンさんと同じ愛知出身ということですけど。
エブリンさん:そうなんですよね。愛知県は“星”が多いなって。落合さんも“星”って言わせてもらったんですけど、千賀投手も本当に愛知の星だし、あとは育成からやってきてメジャーまで行くってすごい子どもたちに夢与えますよね。
中川キャスター:そうですよね。
豊原キャスター:あのフォークの軌道も気にしながら、今後の登板も期待したいと思います。