サッカー新生日本代表がついに始動。ワールドカップベスト8の壁を今度こそ越えるために、中村憲剛さんが攻撃のキーマンとして期待するのが久保建英選手です。天才少年として注目を集め、数々の最年少記録を更新してきました。武器は緩急自在のドリブル。そして左足から繰り出す正確なシュート。普段、メディアの前で多くを語らない男がインタビューに応じてくれました。進化を続ける21歳の久保建英。3年後のワールドカップへの覚悟を中村憲剛さんと語り合いました。(2023年3月26日放送)
中川キャスター:久保選手は10歳でスペインのFCバルセロナの下部組織に入団。15歳のときに史上最年少でJリーグ出場。18歳で史上2番目の若さで日本代表に選ばれました。日本サッカーの未来を担う逸材として、早くからスポットライトを浴び続けてきました。
藤川球児さん: 10歳の小さな小さな少年が世界を渡るって、親心で「大丈夫かな」なんて思った記憶がついこの前のことですね。
中村憲剛さん:今はスペインリーグで現在4位のレアルソシエダードに所属しています。今シーズンはリーグ戦でここまで23試合出場して5ゴール3アシストの活躍です。試合を決める選手になりつつあるなと思っています。
豊原キャスター:その一方で、ワールドカップではなかなか本人の思うとおりのプレーができなかったという印象もあるのですが。
憲剛さん:だからこそ、間違いなく3年後のワールドカップに日本の攻撃の中心を担ってもらわないといけない。そんな選手だと思います。
久保建英×中村憲剛
久保選手:僕はフロンターレの下部組織にいたので、中村憲剛選手がジュニアの僕たちの練習をよく見に来てくれたりして、すごい子どもながらに嬉しかったのを覚えていますね。
久保選手:お疲れ様です。
憲剛さん:お疲れ様。
久保選手:すいません遅くに。僕が練習終わるのがこの時間なので。
憲剛さん:いやいや、むしろ久保建英と喋れる機会なんかなかなかないから。
久保選手:やめてください、やめてください。
憲剛さん:ここからどう積み上げていくのか本当に楽しみで。
久保選手:楽しみですね、僕も。ここからどういう選手になれるのか。
憲剛さん:プレッシャーは感じますか?
久保選手:周りからのプレッシャーは感じないですけど、自分からのプレッシャーは感じますね。自分で自分の首を絞めるじゃないですけど。「理想のお前ってこんなもんじゃないよね」っていうのは、日々せっぱ詰まってじゃないですけど、厳しくやってます自分には。
初めて出場したワールドカップ 久保選手にとってどんな大会だったのか
久保選手:まさかこんな形でワールドカップが終わるとは思っていなかったので。すごく悔しかったですし、やっぱりまだ忘れられないところもあります。もう切り替えて試合中は前を向いていますけど、たまに思い返したりすることはありますね。
ワールドカップ1次リーグ、強豪ドイツとスペインとの試合。久保選手のポジションは左サイドハーフ。相手の強力な攻撃の前に多くの時間を守備に追われました。ほとんどチャンスを作ることができないまま、2試合とも前半で交代。日本は逆転し、歴史的な勝利を収めましたが、久保選手は結果を残すことができませんでした。
憲剛さん:ドイツ戦もスペイン戦もすごく守備のタスクが多かったという印象で、久保選手が守備の意識が高いからこそ、ファーストチョイスで出ていたんだろうなと思っていて。ただ半分(前半)で交代されるというのは選手としてすごく悔しい気持ちがあったと思うので。
久保選手:自分に課していた期待感から比べると、本当に何もできなかったなっていう悔しい思いがある。左サイドももっと高い基準でできたら、たぶん代えられることもなかっただろうし。その反面、やっぱり自分の本来1番得意なポジションではなかったこともまた事実ですし。
憲剛さん:出たいポジションは、真ん中、右?
久保選手:トップ下。このポジションで僕は争っていきたいかなと。
出たいポジションは「トップ下」。攻撃の中心を担うポジションです。ワールドカップでそこを任されたのは鎌田大地選手でした。
久保選手:自分が世界と戦えるだけの武器をまだ持ってなかった。次の代表からはまた新しくなるので、今回はユーティリティー(複数ポジションをこなすこと)っていうよりは、自分の1番得意なポジション、4年間あるのでしっかり勝負していけたらなとは思っています。
久保選手がこだわるトップ下のポジション、憲剛さんには今でも忘れられない試合があります。2年前、24歳以下の日本代表がアルゼンチンと対戦した試合。トップ下で出場した久保選手は、みずからドリブルをしたり、味方に決定的なパスを通したり。何度もチャンスメイクをする姿を見て、やはり彼の適性はトップ下にあるのではないかと感じました。
憲剛さん:あの時の久保建英選手、非常に僕の中では輝いていて。中間ポジションを取りながら、いつでもボールを引き出せるようにして、前を向くところもすごく積極的にやっていましたし。ピッチにいるだけで安心感だったり、相手にとっては恐怖心だったり、結果を残すことで存在感をより出す選手になってもらいたいんですけど。
久保選手:僕はまだ代表選手としては、実績は足りないと思うので。今からまたゼロからのスタートだと思う。そこで次の試合からワールドカップが始まるまで1番結果残したいなとは思いますね。
トップ下を任される選手になるために、久保選手が新たに取り組んでいるのがスピードの強化です。
久保選手:あと少しスピードが欲しいと思っていて。たとえ難しい状況からよーいドンでも勝てるっていう速さがほしい。自分が理想としているリオネル・メッシ選手(のように)、縦に運んで行くドリブル、間を割って縦に進んでいくドリブルをピッチの真ん中でできる選手が僕は一番すごいと思っているので。今はできないことをできるようにするために、練習ではできないことにもトライするようにしています。難しいところに難しいところにっていう。はた目からしたらボールロストばっかりと思われても、できる幅を広げないといけないので。自分が引っ張っていくっていうぐらいの強い気持ちで臨まないといけないのかなという責任感もありますね。
3年後のワールドカップへ 久保選手が見据える未来像とは
久保選手:(次の)ワールドカップが終わって、1番日本で活躍していたのは“満場一致で久保建英”って言われる活躍をするのが、自分の子どもの頃に描いていたキャリアの中に絶対あると思うので。次のワールドカップは自分も25歳で選手としても1番脂が乗り出す時期だと思う。そこで世界から見ても大会のベストイレブンに入れる活躍が理想です。1番活躍して4年前とは違って“今回は久保の大会だったな”と言われる大会にしたいですね。
憲剛さん:本当に僕自身も期待していますので、また会えるのを楽しみにしています。
久保選手:はい、よろしくお願いします。ありがとうございました。
中川キャスター:次のワールドカップは自分の大会にしたい。その熱と思いがまっすぐに伝わってくるインタビューでした。
憲剛さん:日本代表は、これまでワールドカップごとに監督が交代して新しいサッカーをゼロから作ってきました。今回は森保監督が続投なので積み重ねてきた組織的なサッカーをベースに、個の力をどれだけそこに融合していけるかがポイントになるかなと。その個の部分で、久保選手には圧倒的な存在感のある選手になってほしいと思います。
豊原キャスター:藤川さん、どうですか?
藤川球児さん:僕はこのインタビューを見て、(久保選手の)視線がずっと真っ直ぐなんですよ。野球界の大谷翔平選手と全く一緒で、自分の世界観を持たないと世界で戦えない。指導者の方を向いたり、世間の方を向く事なく、自分で突き進む道を作っていっている。その世界観に世界で戦うヒントがあるなと感じましたね。
豊原キャスター:憲剛さん最後に久保選手にひと言お願いします。
憲剛さん:本当に前回のワールドカップは悔しい大会だったと思うんですね。すごくそのようなコメントを残していましたから。だからこそ今、クラブでもすごく頑張っていますし、自分で自分にプレッシャーをかけるタイプだと本人も言っていたので。自分にプレッシャーをかけながら、それをはねのけて最高のパフォーマンスを出していく久保選手に期待したいなと思います。