落合博満がWBCワールド・ベースボール・クラシックを"オレ流"展望!!

NHK
2023年3月12日 午後0:48 公開

WBCワールド・ベースボール・クラシックが開幕。バッターの調子は?複雑なルールで投球制限があるピッチャーをどう起用する?落合博満さんがWBCをオレ流展望しました! (2023年3月5日放送)

打線陣は大丈夫?「焦らず普段どおりにやること」

豊原キャスター:大谷翔平選手は打撃練習であの広いバンテリンドームの最上階にまで打球を叩き込んでいましたけど、どうご覧になりましたか?

落合さん:「すごい」のひと言ですよ。あそこまで飛ばすとはね。

豊原キャスター:かつてホームでしたけど、こういう打球はご覧になりました?

落合さん:いや、見たことないです。

中川キャスター: 30人が揃っていよいよという感じですね。

豊原キャスター:その日本代表ですがこれまで壮行試合が(3月5日現在)4試合行われ、中日戦1日目に7失点して敗れました。2日目も日本代表は2人しか得点に絡むことができていませんでした。山川穂高選手もここまでまだヒットゼロ。村上宗隆選手もこの4試合で一安打。これをどう見たらいいですか?

落合さん:(普段の)開幕を考えれば状態そのものはこの時期にしたらそんなに悪くはないんですよ。主力がゲームにそろそろ出てくるっていうような時期なんでね。それを考えれば悪くはないが、6日後に迫っている本番を迎えるにあたってはまだまだっていうところじゃないですか。

村上茉愛さん:WBC大会本番に向けては大丈夫そうですか?

落合さん:それはゲームになれば気合いの入り方も違うし、一球一球丁寧に野球をし始めるので、結果うんぬんよりもまずゲームに出てゲームをこなしていくっていう方が大事なんだろうとは思います。

豊原キャスター:あと数日ですがやれることはどんなことになりますか?

落合さん:普段と同じようなペースでまずは焦らないことですよ。打てないから急仕上げというのも危険だろうし、普段通りのことを普段通りにやれるというのが一番いいことなんだろうと思います。

投手陣の球数制限 落合さんならどうまわす?

豊原キャスター:打線の状態をみると、鍵はいかに投手陣が相手を最少失点で抑えるかということになるのかなと思いますが投手陣起用のポイントはどんなところでしょうか?

落合さん:球数制限があるのでベンチとしたら頭を悩ます事例ですよ。

中川キャスター:その球数制限のルールがとても複雑です。1次ラウンドでは、ピッチャーは1試合65球までしか投げられません。また、50球以上の場合は中4日空けなければなりません。さらに30球以上50球未満の場合と2日連続で投げた場合、中1日空けなくてはなりません。

豊原キャスター:これだけだと分かりにくいので実際にシミュレーションをしてみましょう。

日本代表の日程は9日から中国、韓国、チェコ、オーストラリアと4日連続で毎日対戦することになります。実際どういう起用になるかということですが、取材情報を元に先発を大谷翔平投手、ダルビッシュ有投手、佐々木朗希投手、山本由伸投手と予想してみました。この予想は落合さんいかがですか?

落合さん:この4人で回すことは確実だろうと思いますけど順番は大谷次第でしょう。ダルビッシュは宮崎のキャンプから一緒に行動を共にしているので時差ボケの心配はないが、大谷は日本に来て時差ボケが解消されているかというところだと思いますけどね。

豊原キャスター:先発上限65球ということは、監督としては何イニングまでを計算しますか?

落合さん:最低4回は計算します。65球めいっぱい行かせます。

豊原さん:リリーフのことを考えると回の切れ目ですぱっと代えるのか、例えば3回55球だとしたら?

落合さん:65球までは行かせます。そうしないと、中継ぎで使うメンバーが4人なのか5人なのか6人なのかによって第2戦のゲームで何人使えるかが限られてきますから。

豊原キャスター:では次のピッチャーが回の頭からというのは、こだわらないということですね。

落合さん:はい。

豊原キャスター:仮に先発ピッチャーが4イニング投げきったとします。次の2人目がロングリリーフという事になると思いますがこのピッチャーで何回まで行ってもらいたいですか?

落合さん:最低2回、できたら3回。

豊原キャスター:では7回ぐらいまではいって欲しいということですかね?

落合さん:7回までいってくれれば上出来じゃないですか。

豊原キャスター:ここも球数はギリギリまでということ?

落合さん:ええ、ギリギリまで。

豊原キャスター:次にこちらもあくまで想定ですが、壮行試合の実績からして2人目は戸郷翔征投手、今永昇太投手、高橋奎二投手、髙橋宏斗投手と予想させていただきました。いずれも普段先発のピッチャーですが戦いの途中からでもやむなしというところですね。残り8回9回と1イニングずつと想定します。仮に8回は宇田川優希投手、クローザーはオリンピックでも活躍した栗林良吏投手とします。2人が30球以内で投げきり1回を抑えたとすると、次の日も投げられるが連投は2日までしかできないため、3日目は別の2人を用意しなければいけない。仮に3日目は伊藤大海投手と大勢投手とします。そうすると残りが3人しかいないということなります。

中川キャスター:難しいパズルのような感じですが村上さんどうですか?

村上茉愛さん:今見ていて何となくは分かるんですけど。落合さん、投手陣かなり大変になると思うんですけど。

落合さん:頭悩ませます。これはあくまでも4人の想定ですからね。5人使わなきゃいけないか、6人使わなきゃいけないか。あとはタイブレークもありますから。それを考えるとこのようにはいかないでしょうね。

豊原キャスター:球数制限の中でやりくりをしなければいけない。ではバッターへの攻め方というのも変わってきますか?

落合さん:バッターへの攻め方は変わらないと思います。ただ、ツーストライクになってから1つ2つ遊び球使おうか、様子見ようかというような攻め方がなくなると思います。

豊原キャスター:できればストライクゾーンを攻める?

落合キャスター:はい。どんどんストライクゾーンで攻めていってということになると思います。

豊原キャスター:どんどんストライク投げていくと打たれるリスクが上がってしまうのでは?

落合さん:ピッチャーが何を考えてどういう攻め方をしてくるかというのはピッチャーしか分かりませんから。バッター有利とは考えられません。

豊原キャスター:ではどんどん攻めていく。テンポよくいきたいけれどもゆとりはないということになるんですね。

落合さん:ゆとりはないですよね。例えば5人使ったら、3試合目で15人全員使い切っちゃいますからね。

豊原キャスター:例えば初戦の中国戦で5人目を使ってそのピッチャーが30球以上投げると、韓国戦のゆとりは2人になってしまいます。壮行試合では実際どうだったのかを見ていきます。中日戦1日目ではピッチャーを5人使いました。2人目のロングリリーフを期待された戸郷投手でしたがアキーノ選手にホームランを打たれました。落合さんが気になったのはこの後ということですね。

落合さん:ホームランを打たれたのはもう過去のことですからこれはしょうがない。次の高橋周平選手への攻め方見たら何か引きずっているような形でスリーボールまでいって、普通打ってこないだろうと思っているところに安易にストライクをとりにいって、打たれてしまったというのが次の1点につながったケースだと思う。本番では気の抜いたボールというのは1球も投げられないんでね。

豊原キャスター:結果として球数も増えてしまった。そして3人目の松井裕樹投手は1回もたずに降板ということになりました。

落合さん:調整不足と言えばそれまでなんでしょうけど、ボールにまだ馴染んでないような感じですよね。本人もそういうコメントを出していましたから。でも、ここは代えるのか代えないのかといったら、1イニング投げさせて結果はどうだったかという判断の方が良かったんだろうと思います。

豊原キャスター:あくまで練習試合ですからね。本番だとどのような決断が必要になりますか?

落合さん:本番だったらもっと先に代えています。状態が悪いのをそのまま引っ張って大量失点につながることを考えたら、その前に手は打っていくと思いますけどね。

豊原キャスター:一方で中日戦2日目の試合では伊藤大海投手が8回を12球でまとめ、回をまたいで9回を登板。状態の良さを伺わせました。こういうピッチャーの存在はベンチとしては非常に心強いですよね。

落合さん:でも、これは抑えで使うのか中継ぎで使うのか微妙になってきます。もともと先発ピッチャーですからね。

豊原キャスター:そういう難しさもあると。落合さんだったら本番まで残り僅かな期間は何を最優先に取り組まれますか?

落合さん:そのときの状態のいいように仕上げていくということでしょうね。焦らずにその日できることを最大限ベストな状態でやっていくっていうことが一番鍵になってくるとは思います。