Jリーグ30周年を記念して、ワールドカップ以来となる中澤佑二さん&中村憲剛さんのコラボスペシャル企画が実現!テーマは「Jリーグの未来予想図」。それぞれの道で活躍するサッカー愛あふれる方々と、思う存分夢を語り合っていただきました。1993年の発足以来、30年の歴史を積み上げてきたJリーグ。創設当初から掲げてきたのが「Jリーグ100年構想」です。「サッカーを通して豊かなスポーツ文化を育み、100年続くようなリーグを目指していく」という壮大なスローガン。この30年はまだ通過点です。ここから70年、どんな成長を遂げ、2093年にはどんな未来予想図が現実となっているのでしょうか。(2023年5月14日放送)
中澤さん:お願いします。
憲剛さん:お願いします。こういう形なんですね、今回は。
中澤さん:おもしろい形ですね。まずはカメラの数よね。
憲剛さん:多いですね。
中澤さん:めちゃくちゃ多いよ、きょう。聞いたらね、13台。
憲剛さん:13台。かなり力入ってる。きょう座談会ですから。
中澤さん:座談会はね、憲剛頼みだからね。
憲剛さん:おかしいでしょ。(笑)
中澤さん:すごい方々が来るから。
憲剛さん:そうなんですよ。
国立競技場に各分野のスペシャリストが集結!
舞台は国立競技場。30年前、Jリーグの歴史が幕を開けた記念すべきスタジアムにその道のプロフェッショナルが集結しました。
“ガッツポーズお姉さん”こと城所あゆねさん。2年前のリーグ戦、大好きな名古屋グランパスがゴールをあげた瞬間、たまたま中継カメラに映った渾身の「ガッツポーズ」がなんとネットで230万回再生。これをきっかけにタレントに転身。筋金入りのサポーターとして、ファンの声を届けます。
城所さん:Jリーグについて私が魅力を語っていきたいなと。たくさんガッツポーズできればと思います。
建築士の伊庭野大輔さん。70年ぶりに全面改修するFCバルセロナの聖地・カンプノウスタジアム。伊庭野さんは世界的なコンペを勝ち抜き、その設計を任されました。世界を知る男がスタジアムの未来に独自の視点で迫ります。
伊庭野さん:今後の自分の設計にも生かしていけるように頑張りたいなと。
そして鹿島アントラーズ社長の小泉文明さん。大手フリマアプリ「メルカリ」の事業に創業直後から携わり、急成長させました。敏腕経営者が見据えるJリーグの未来とは。
小泉さん:夢がある、そんな話ができればいいなと思っています。
サポーター、建築士、経営者。そして元Jリーガー。異業種5人がJリーグの未来について、とことん考えます。
あなたのJリーグ未来予想図は?
憲剛さん:Jリーグは地域に密着して長続きするリーグをめざす“Jリーグ100年構想”というものを理念として掲げています。まずは皆さんが思い描く70年後のJリーグについて伺っていきたいと思います。まず1人目を指名って書いてあるので・・・。
中澤さん:なるほど。ズバッと指名してやってくださいよ。
憲剛さん:じゃあ中澤さん、お願いします。
中澤さん:俺を見るな!(笑)70年後、生きているかどうか分からないですけれども。
憲剛さん:中澤さんは生きてそう。
中澤さん:間違いないね。僕はJリーグ自体が海外から追われるという立場だよね。ヨーロッパからJリーグに来たい。若手の登竜門じゃないけども、Jリーグでレギュラーになればどの国でも代表になれるとかね。
憲剛さん:僕も今日本が海外に追いつけ追い越せみたいな形で、選手もどんどんと(海外に)行く形になっているんですけど、逆になってほしい。例えばこのあいだのワールドカップ、日本代表26人のうち、Jリーガーが1桁。見に行きたくても、いないじゃないかって。(城所さんは)名古屋グランパスのサポーターとして、名古屋の選手がワールドカップ出るのと出ないのとでは?
城所さん:そうなんです。やっぱり盛り上がり方はちょっと変わってくるかなと思いますね。サポーター目線でいくと、Jリーグが日常になっている人が増えてほしいっていうのもあって、私はJリーグの日程が発表されてから、仕事やプライベートのスケジュールを組むんですよ。そういう人がきっと世界中、日本中にあふれるんじゃないかなと、70年後は。
小泉さん:応援する文化として、これからサッカーがまた生活に根づいていくみたいなのは、あるんじゃないかなと思っていて。ちょっと経営的な目線で言うと、多分仕事はこれから減るんですよ。機械とかテクノロジーとかで、週休3日とか週休4日とかになるんですよね。この休みにサッカーが心の豊かさみたいなものを提供できると、もっと価値があがるんじゃないかなと思っていて。
伊庭野さん:僕、去年までスペインで5年間ぐらい住んでいてすごく感じるのは、結構おじいちゃんとかもサッカーをずっと続けている人が多いんですよね。僕もバルセロナで草サッカーをしていたんですけど、対戦相手のおじいちゃんがもう50歳とか60歳の人でも普通にめちゃくちゃうまくて。よぼよぼなのにボールのキープの仕方がめちゃくちゃうまかったりとかして、全然とれないみたいなそういう感じで。今、カズさんが年配でまだ続けているのがすごくニュースになりますけど、スペインとかだと(年配でも)続けているから、カズさんが当たり前になるみたいな未来が来ると、本当にもっとサッカーが皆好きになるのかなって気がしましたね。
サポーターがみる未来予想図
夢が広がる70年後の未来予想図。サポーターのみなさんはどんなふうに思い描いているのでしょうか。
城所さん:サポーターの声を集めたのがこちらのボードになるんですけれども、文字が大きければ大きいほど、(声の)数が多い。1番多いのは“盛り上がり”。
中澤さん:ワールドカップより上なんだね。面白い。
城所さん:“増”なんですけど。なんだと思いますか。増えてほしいこと。
中澤さん:あれじゃないですか。年俸ですよ。
憲剛さん:そこも増えてほしいですけどね。
中澤さん:ヨーロッパまでとは言わないですけど。やっぱり増えてほしいよね。
城所さん:サポーターの声・・・。
中澤さん:ごめん。選手の声だった。
憲剛さん:生々しかったな、いまの。
城所さん:サッカー専用スタジアムが増えて欲しいであったり、地上波での放送。私もすごい思っていて、増えれば絶対身近になると思うんですよ。身近になればなるほど、サポーターの数って増えてくんじゃないかと思っていて。私1つ言ってもいいですか?“野球”なんですけど、2万3万人が普通に平日入るじゃないですか?ルヴァンカップの試合って、1万超えるのも難しいときがわりと多いのかなと思っていて。だから野球をちょっと超えたいなって。
小泉さん:去年水曜日の試合の時に、スタジアムでリモートワークのスペースを用意したら、オープンしたらすぐに満員になって。働き方が多様化してきているので、午前中からリモートワークして、5時ぐらいに切り上げてサッカー見るみたいな。
城所さん:めちゃめちゃいいですね。
伊庭野さん:スペインって街1つ1つにサッカー専用スタジアムがあって、その横に必ずバルがあって、試合が終わった後みんなそこで飲む。お父さんが試合したあと、自分の子供がそこで試合しているのを飲みながら見られるとか、そういうコミュニティーが出来上がっているんですよね。そういうのってすごい大切だなって思うんですよね。
サッカーを文化に“スタジアムの役割”
サッカーが日常の一部となり文化として根づいていくために。100年近い歴史を持つヨーロッパのリーグとJリーグで大きく異なるのが“スタジアム”です。ヨーロッパでは街中にサッカー専用スタジアムが点在。サッカーが地域に根づいている証です。
伊庭野さん:この模型は、カンプノウスタジアムの完成した状態の模型になります。今年の夏から工事が開始予定となっていまして。
およそ70年前の建設以来、ほとんどその姿を変えてこなかったFCバルセロナのカンプノウ。伊庭野さんはその大幅な改修設計を世界的なコンペを経て勝ち取った、日本の設計会社の中心メンバーです。
伊庭野さん:このコンペはすごくおもしろかったのが、その途中途中にワークショップといって、何回かFCバルセロナさんと話し合いをしながら進めていくというような形式で、“民衆のためのスタジアム”にしてほしいという話ですね。それが顕著に表れているのが、まず大きな屋根。もともと既存のカンプノウスタジアムはメインスタンド側だけに屋根がかかっていたんですね。クラブの理念としては、片側だけに屋根がかかっているという状況はよくないから、全員に均等によい環境を作りたいという話があったんですね。
コンペを通して伊庭野さんが感じたのは、「どこまでも市民・サポーター目線で考える」という、FCバルセロナの徹底した姿勢でした。
伊庭野さん:普通スタジアムって新しく作る時に外装を付けるんですね。思い切ってじゃあその外装をやめちゃおうと。そのかわりにコンコースをその外装をやめたお金で広くしてあげて、カフェとかそういう場所も外に椅子を設けて、試合前に来てちょっとお茶したり、試合が終わったあともそこで飲んだり食べたりして帰れるという、スタジアムの滞在時間を伸ばせるのかなと。ヨーロッパのスタジアムっていまだに男の空間なんですよね。5分前にサッカースタジアムに来て、ワーッとなんか文句言って、負けていると15分前に帰っちゃうみたいな。途中で帰っちゃう。
中澤さん:15分もてばいいですね。
伊庭野さん:もてばいいです。やっぱりそれではよくないというのがFCバルセロナさんの考えで、男だけではなくて家族、小さい子からおじいちゃんおばあちゃんまでが長くこのスタジアムにいられるような場所にしたいというのは常々思っていたと。
憲剛さん:Jリーグは何を学べばいいでしょう。何を学べますかね?
伊庭野さん:我々がこのスタジアムを設計していた時に考えていたのは、とにかくこの地域になじんだ、公園のような場所にしたいなというのがあったんですね。誰でも入って誰でも出ていける、そういう場所を作ってあげるというのは、未来のJリーグにとっても大切なことなのかなと思いますね。
中澤さん:スタジアムに学校を併設とか入れこむというのはどうなんですか?
伊庭野さん:すごい面白いと思いますね。学校とか、メッシが小さい頃にいた寮が実はこのスタジアムのすぐ横にあったんですね。“ラ・マシア”と呼ばれているところなんですけど、いつもカンプノウを見ながら学校にも通って、練習場に通っていた。あとは図書館とかそういうパブリックスペースが一緒になるとスタジアムに来やすくなるのは間違いないですよね。
中澤さん:「よし試合だ、行くぞ」という時代から、少しずつ自分たちがふだんから身近に感じられるような場所になってくると。
伊庭野さん:気付いたら試合がある日も行っているみたいなほうが。ハードルが下がるみたいなのが絶対いいですよね。
ファン層拡大のためには
スタジアムに人を呼び込むためのさまざまなアイデア。ヨーロッパほどまだサッカーが生活に根ざしていない日本では、どのように新たなファンを掘り起こしていけばいいのでしょうか。
小泉さん:今のJリーグで1番課題だなと思っているのが、ファンの構造がだいたい三層構造なんですよ。1番真ん中がいわゆるコアな層で、まさしく(城所さんのような)「ゴール裏のサッカー中心です」がこの層。2層目が「誘われたら行くよね」とか「なんとなく代表戦が好きだ」とか、サッカーのにわかでもいいけどファンで、年1回2回行くようなライト層。3層目がまったくサッカーに触れてない人たち。最近ちょっとサッカーに触れる機会が減ってきていて、この真ん中のコア層がちょっと細くなっているんで、僕はにわかのライト層をどうやって広げようかなというのが今1番経営として大事なポイントなんじゃないかな。そこが多分徐々にコア層に変わっていくんですよ。
城所さん:私のいとこが小学校6年生なんですけど、全くサッカー興味ないんですよ。ただ、サッカー漫画は全巻そろえて読んでいます。だからここは引っ張るしかないなと思って。
伊庭野さん:そういう人たちってさっきの話の予備軍に絶対あげられる可能性がある人ですよね。
城所さん:これ、私の力でどうにかなりますかね?
伊庭野さん:絶対なると思います。
城所さん:頑張ります、じゃあ!
小泉さん:中澤さんがサッカーを超えた先にいろいろ出てるじゃないですかテレビ番組。憲剛さんは最近知ってます?声優をやってるんですよ。
城所さん:知ってます!コナン。
中澤さん:知ってますよ。声優デビュー。見ましたよ、ネットで。
憲剛さん:サッカーに興味がない人たちが見る番組、たとえば教育番組とか、僕がそれに出ることでふだんサッカーを見ない幼稚園児、たとえば僕の子どもが幼稚園児の時に「みいつけた!」という番組があって、それまでに1回も僕のほうに目くばせもしなかった園児がそれに出た瞬間に「ああ!何々くんパパは、オフロスキーと友達なの?」「そうだよ」って。今度サッカーで等々力に来るからおいでよって言って来てくれたんですよ。
小泉さん:引退後もクラブのレジェンドとして、ブランディングというと語弊がありますけれども、皆でその人のことをずっと見ていくというのをやっていくのが僕はすごく文化を作っていく上で大事だなと思っています。
Jリーグとの約束
2時間にも及んだ熱いトーク。最後はそれぞれが誓う「Jリーグとの約束」をユニフォームに書いていただきました。
中澤さん:書き終わったところで誰からいきましょう。これはじゃあ、せっかくなんで俺からいこう。
憲剛さん:自分からいくの。(笑)
中澤さん:基本的にはNHKさん、サンデースポーツとズブズブでいきたいなということでボナライズの自分のコーナーで全国47都道府県まわって、OBとしていろんな大人も子供も一緒にサッカーに触れ合う機会をサンデースポーツの力を使ってボナライズのコーナーでやっていきたいなというのが僕の決意です。
城所さん:スタジアムに行き続けて、Jリーグを発信することかなと。スタジアムで私をガッツポーズで有名にしていただいたので、今度は私がJリーグを発信して、私がJリーグを有名にできるような、そんな存在になりたいと思います。
伊庭野さん:僕が書かせていただいたのは、「人々のためのスタジアムを創る」。本来僕らの仕事は、スタジアムだけじゃなくて、いろんな建物とかの設計をさせていただくんですけども、特にスタジアムというのがそういう場所にもなりえるというのが、すごく今日話をしていて改めて気付かされたことなので、そういう場所を今後も作っていきたいなと思っています。
小泉さん:僕はひと言「きっかけ作り」。できることたくさんあるなと思っているんで。サッカーチームがサッカーだけやっていればいい時代は終わる。社長業をしている身としたら、いろんな場所にもっとJリーグを身近に感じてくれるようなきっかけをたくさん作っていって、大きなコミュニティーを作っていきたい。それが文化に繋がっていく、そういうことかなと今日感じていましたね。
中澤さん:最後に憲剛さん。
憲剛さん:「指導者、普及者としてサッカー界の発展に貢献したい」。育成年代の選手たちを育てて、次の日本代表を背負う選手たちも育てたいという思いもすごくあって。あとは皆さんと今日話をしていて、エキスパートの人たち同士でやっぱり手を組むというのはすごく大事なこと。今日初めましてですけど、これだけ本当にたくさん実のあるお話もできて。みんなでやっていきたいなって。サッカーを日本の文化にするっていう目標が1つ、ここであると思ったんで。
中澤さん:憲剛の話を聞いて、ワールドカップのメンバーと一緒だよね。
憲剛さん:そうですね。
中澤さん:それぞれ個性があるメンバーが集まって、それぞれやりたいこととかも思いもあるけど最終的に目標は1つで。そこに向かって皆で思いを1つにして、日本がベスト16入った時もそうですけれども、うまくいく時って皆そうで。これからもね・・・
(音):ガタン
中澤さん:すいません。僕の備品が・・・(ポケットから落ちました)。
憲剛さん:なんでポケットに鼻炎の薬入ってるんですか。(笑)オウンゴールです。めちゃくちゃいい話してたのに。
城所さん:全部持っていかれました。(笑)
中澤さん:以上になります!
座談会をおえて
中川さん:その後鼻炎の具合は大丈夫ですか、中澤さん。
中澤さん:ありがとうございます。おかげさまで鼻通っております。
中川さん:最後いい話されていましたけど、どうでした?皆さんと語り合って。
中澤さん:僕は答えられないんで憲剛さん、お願いします。
中川さん:じゃあ憲剛さん、最初に。
憲剛さん:サッカー選手、サッカー関係者たちじゃなくていろんな方たちとサッカーの話をするのが、VTRでも言いましたけど本当にいいなと思った。もっと多くの方たちといっぱいいろんな話がしたいなと思いましたね。
豊原さん:中澤さん、改めて。
中澤さん:そのとおりだと思います。ほんとにねえ、ダメージが大きすぎて。ちゃんと使うんですね、NHKさんね。ありがとうございます。
豊原さん:でも30年って、私たちからするとあっという間だった気がしますけど、この30年、確実に何かこう積み上げられているなという感じもしましたよね。なので70年後、私もちょっと生きているかわかりませんけど、“100年構想”というのを見届けたいなと今日のこの座談会を拝見して改めて思いました。ありがとうございました。