2022年6月26日放送のサンデースポーツではデュッセルドルフの田中碧選手をゲストに招き、中村憲剛さんと共に日本代表を徹底研究しました。
ワールドカップのキーマン田中碧選手は23歳。日本がもがき苦しんでいたアジア最終予選で反撃の糸口をつかんだのは、田中選手のゴールからでした。
日本は田中選手が先発に定着してから破竹の6連勝。田中選手は日本の新たなゲームメーカーへと駆け上がりました。去年、ドイツ2部デュッセルドルフに移籍。体格やパワーで上回る相手にどう対抗するのか、試行錯誤を続けています。
こちらの写真で憲剛さんと写っているのは、フロンターレの育成組織にいたころの田中選手と三笘選手です。
田中:本当に、スタンドからずっと見てた憧れの選手だったので、当時本当に憲剛さんしか見てなかったぐらい好きな選手だったので、お会いできるとは思ってなかったです。
憲剛さんの当時の田中選手に対する印象は…
中村:正直入ってきた時から(日本代表になると)1ミリも予想してませんでした。正直、プロでやっていけるか、大丈夫かな、この子はって心配したぐらい。ただ、日々見ている中で彼自身が自分に足りないものは何かをしっかり考えてかつ努力をし続けられる選手だなってふうには見ていて感じてましたね。一言で言うと努力の天才です。
田中選手は、憲剛さんと同じく中盤の選手ですが、憲剛さんからみた田中選手の最大の持ち味はというと…
憲剛:シュートももちろんなんですけども、味方を活かすプレーができる選手だなと思います。考えながら相手の弱点を見てプレーできる個人戦術眼がしっかりあるなっていう印象ですね。戦術眼がしっかりしてるのが23歳で日本代表で選ばれてる理由なのかなっていうふうに思います。
ワールドカップの組み合わせについて、田中選手は。
田中:すごく厳しいグループだなというふうには率直に感じていまして。僕が今まで見てきたワールドカップの中でも、同じグループに優勝を経験した国が2か国入るっていうのなかなか見たことなかったので、そういう意味では客観的に見てすごくタフなグループに入ったなっていうふうには思います。
憲剛:昨シーズンからドイツリーグで実践プレーしているけど、初戦のドイツのサッカーの特徴はどう捉えていますか。
田中:すごくフィジカルが強いですし、そのフィジカルを活かしたサッカーというか強度の高いサッカーをしてきますし、自分たちのサッカーをするというより相手にサッカーをさせないように相手に流れを持たせないようなサッカーをするイメージではありますね。選手たちもぶつかってもぶれない、大きいですし鉛のような体でびくともしないですね。
憲剛:碧自身が戦ってるドイツ2部で、Jリーグと比べて違いを感じるのはどんなところですか。
田中:スピード感が一番の違い。身体的なスピードもそうですしゴールに向かう姿勢というか、それはヨーロッパの中でもドイツはすごく特徴的なのかなというふうに思ってて、お互いにボールを奪ったらすぐにゴールを目指す。それを観客の方も望んではいるので、それもあってすごく縦に早いサッカーかなというふうに思います。
ドイツリーグで戦う田中選手には、実はこんなデータがあります。ドイツで重視されるデュエル(1対1)の勝率がリーグ戦の前半戦は43%。ただ後半戦にはおよそ58%にまで伸びています。
田中:最初はやっぱり苦しんだかなと思っていて、ただそれを経験することによって、少しずつ自分より体が大きい相手に対してすごくポジティブに自信を持って挑めるようになっているのかなと思います。シンプルにぶつかるとやっぱり勝てなくなるので、体の使い方だったりタイミングだったり、自分が勝てるチャンスがある時にすごく力を使うようになりました。
憲剛:一方でちょっと気になってるのが、ゴールの少なさかな。ポジション的にゴールが全てではないんですけども、そこをどう感じてますか。
田中:そこは物足りないなというふうには思ってますね。すごくそこは反省をしていて、それを少しずつ意識し始めてゴール前に入っていく回数は増やして、チャンスは増えてるんですけど、そこを決めきるか決めきらないかがやはりプロで一番大事なところだと思うので、そこはよりこだわらなきゃいけないと思ってます。
憲剛:ドイツリーグの特徴も日本代表にとってはとても大切な情報だと思うので、ぜひ代表チームにフィードバックして欲しいなと思います。
日本がワールドカップで世界の強豪と戦う上で物差しとなりそうなのが、今月(2022年6月6日)ワールドカップカタール大会に向けた強化試合として行われたブラジル戦です。
憲剛:実際のところ、ブラジル戦はどうだったんですか。
田中:力の差はもちろんあったなっていうふうにやる前から感じていますし、その中で相手の引き出しの多さ、やれることの幅というのは、すごく自分自身との差はあるなと感じました。
憲剛さんは具体的に世界との差を2つ感じていました。1つ目は、試合中の対応力です。
憲剛:日本はこの試合、遠藤選手を中心に果敢に、丁寧に後ろからビルドアップをして攻撃の形を作ろうとし続けていました。それに対して、ブラジルはパスの出どころである遠藤選手に激しいプレッシャーを2トップでかけて潰しにくる対策をしてきた。
それに対して日本は遠藤選手を助けようと碧がおりてきてパスを受けにサポートにきました。しかし、そこにもブラジルの選手が後ろから碧にプレッシャーをかけて碧自身にボールを触らせない、前を向かせない事をしてきました。ブラジルの選手たちは、試合中に個々人が相手を分析してそのつど最適解を出していた。
田中:自分たちに考えさせる時間を与えないというか、本当に自分自身もいろんなパターンというか引き出しを持ってるつもりでしたけど、それを自分が選ぶ時間を与えてくれないほどの圧力で、彼らが変化してくる。それに対応できなかったのがこの試合だったなというふうに思ってます。
憲剛:その相手のスピードっていうのは、碧の中では想定内だった?
田中:想定内ではありましたね。ただそれ以上に、個人の部分もそうですしチームとしての変化具合というか、あらゆる状況に最適に変化していく姿ってのはすごく差があるなと思いました。
憲剛:ブラジル相手に近くにいる遠藤選手とか他のチームメイト達とはそれについて試合中やり取りはしていた?
田中:やり取りしてましたね。立ち位置だったりボールの運び方を変えようというふうには話していたんですけど、ただ彼らが基本的にはボールを握っている時間が多かったのでそれを変えられるタイミングもなく90分が終わってしまったっていう感覚ではありますね。
憲剛:こういう対応力っていう局面が出てきたときこそたぶん真価が問われると思うんで、碧自身も日本代表としても、対応力をひねり出さないといけないなと思いますし、それが出せるか出せないかが世界との差だと思います。
憲剛さんが感じたもう一つの世界との差は、攻撃面です。
憲剛:特に得点を取る道筋というのがちょっと見えにくかったかなと思いました。伊東純也選手にボールが入って相手陣地に前進して、非常にいい形だったシーンもあったのですが、伊東選手がパスを出しやすい場所には誰も選手がいなかった。イメージがなかなか共有されてない、約束事がちょっとないのかなっていうふうには感じました。
憲剛さんが考えている世界との差を埋めるカギは、「イメージの共有」です。
中村:チームの中でどれだけの数の選手が同じビジョンを描けているのか。そして、相手の出方への対応、これもまたみんなで共有できているのか。より深いレベルでのイメージの共有というのが肝になると思います。
田中:その通りだと思います。個人の力を上げるのはもちろんなんですけど、サッカーは11人のスポーツなのでいろんな選手が関わる事でより大きな力を発揮すると思うので、同じ画を描きながら自分たちがしたいプレーを出来る回数をより増やす事はこれから強い相手とやる上では大事なところかなと思いました。ピッチ外でもピッチ内でもより密にコミュニケーションをとらなきゃいけないなというふうに思いますし、失敗はあると思いますけどいろんな所でたくさんチャレンジをする必要があるのかなっていうふうに思います。
最後にワールドカップへの決意をぜひ聞かせてください。
田中:まずはワールドカップに出るチャンスが自分にはあると思っているので、その切符を獲得する、自分自身が出るチャンスを得るというのと、今すごく日本サッカーにとっても大きな分岐点であると思うので、日本サッカーの歴史を変えられるような結果を出していければいいのかなと思います。