2026年の冬季オリンピックで新たに採用される「スキーモ」。スキーモは「スキー」と、登山を意味する「マウンテニアリング」を組み合わせた言葉で、ヨーロッパではシーズン中に100以上の大会が開催されるなど、とても人気があるスポーツです。長野局・川口由梨香キャスターがその魅力を伝えてくれました。(2023年1月29日放送)
川口キャスター:長野局で取り上げてから注目していたスキーモ。先日おこなわれた日本選手権を取材しました。
勝敗の鍵を握るのは「トランジット」
500mの短い距離で争うスプリント。ゲレンデに作られた4つのエリアからなるコースで順位を争います。
1つ目のエリアは、滑り止めを付けた板を履いてコースを登ります。正確なスキー板の操作が求められます。
次のエリアに進むには、トランジットといい、スキー板を着脱しなければなりません。
2つ目は、スキー板を担いで登るエリア。軍の国境警備隊の訓練が起源となった、スキーモならではの特長です。
3つ目のエリアでは、再び板を履いて登ります。
藤川球児さん:山頂で空気も薄いでしょうし。すごい無酸素運動ですよね。
川口キャスター:かなり急な斜面をすごい力強く登ってきていますね。
そして最後4つ目のエリアがアルペン。標高差70mのコースを一気に滑り降ります。およそ3分から5分でフィニッシュ。体力と技術、両方が求められます。
藤川球児さん:だいぶきついですね。
川口キャスター:みなさんかなり息があがっていました。
日本でも広がりを見せるスキーモ。先月、初の強化合宿が行われました。重点的に強化したのが、トランジットをいかにスムーズに行うか。スキー板を外して担ぐ動作、固定するのが遅れると大きなタイムロスにつながります。
谷真海さん:焦ると余計できないんですよね。
登るエリアでスキー板につけている滑り止めは、最後のアルペンに移行するときに外します。普通は1本ずつ外しますが、レースで上位の選手は、2本同時に外します。
藤川球児さん:技を持っていますね!
川口キャスター:板の重さにも特長があります。普通は1本、2キロほどですが、スキーモでは担ぎやすいように700グラムほどしかありません。しかし、板が軽いとコントロールが難しくなり、転倒のリスクがあるのです。
谷真海さん:重さがない分、安定感が変わりますもんね。
オリンピックを目指す期待の選手 滝澤空良(25)
今回の日本選手権で連覇を狙うのが、滝澤空良(たきざわ・そら)選手25歳。5年前、ノルディックスキーからスキーモに転向しました。持ち味の脚力を生かし、去年ワールドカップにも出場。2026年のオリンピックを目指しています。
滝澤空良選手:すごいスピード感。やっていくうちに、すごく楽しい競技だなと思った。
この日行われたスプリント女子決勝。1つ目のエリアを駆け上がっていきます。
滝澤選手がトップで迎えた最初のトランジット。スムーズにクリアします。しかし3つ目の急斜面の登り、次のトランジットの目前で、試合前に降った雪にスキー板をとられ、もたつく間に追い抜かれます。
滝澤空良選手:先にトランジットエリアに着こうという気持ちが強すぎて、余裕がなくなってしまった。
直後のアルペンへのトランジットに先に入ったのは、ピョンチャンと北京オリンピックのバイアスロン代表、田中友理恵選手。滝澤選手は、滑り止めを外す間に差を広げられてしまいます。その後のアルペンでも、差は縮まりませんでした。優勝は田中友理恵選手。連覇を目指した滝澤選手は2位。課題を克服して、来月の世界選手権に臨みます。
滝澤空良選手:まだまだ伸びしろしかないと感じているので、世界のレースで予選突破、決勝で勝負できるような選手になりたいなと思っています。
パラトライアスロン谷真海さんに聞く“トランジット”
川口キャスター:トランジットがかなり鍵になるスポーツですが、トライアスロンのトランジットと何か共通点はありますか?
谷真海さん:トライアスロンもスイム、バイク、ランでそれぞれトランジットがありますが、もう心拍はバクバクです。その中で頭は冷静に、次に何をやるかを考えて、落ち着いてやるというのが、簡単そうに見えて難しいんですよね。
川口キャスター:そして、スタジオにはスキーモの道具をお借りしてきました。
谷さん:子どものスキー板よりも軽い!
川口キャスター:700グラムなのでかなり軽くて、りんご2個分ぐらいです。
谷さん:わかりやすい。これは背負いやすいですね。
川口キャスター:そうなんです。だからこそ扱いが難しくて、高度な技術が求められます。魅力いっぱいのスキーモ、ぜひ覚えてください。