混戦が続く大相撲初場所。場所を引っ張るのは、「突き押し」を得意とする力士たち。元横綱・白鵬の宮城野親方が、その技術を実演解説してくれました。相棒はこの日ももちろん、弟子の日曜鵬(にちようほう)です。
注目取組①大関・貴景勝VS 〝自己最高位〟前頭4枚目・錦富士
初日に続いてまず注目したのは、ここまで6勝1敗の大関・貴景勝。お馴染み、宮城野親方採点ではパワーと突き押しが満点の5点です。対するは、同じ26歳の錦富士。大関戦に、気合い十分です。
激しい一番を制した貴景勝。ひとり大関として、場所を引っ張ります。この取組の解説のために登場したのが、宮城野親方の愛弟子・日曜鵬。初日から少し変化が・・?
宮城野親方:まわしの色が変わりましたね。
そう。まわしの色が、赤からサンデースポーツカラーの黄緑に。
憲剛さん:どんどんリアルに(笑)
谷さん:先週親方といるときは小さく見えたんですけど、結構大きいですね筋肉もバキバキで(笑)
そんな日曜鵬と共に、貴景勝の相撲を解説して頂きます。
宮城野親方:貴景勝、今場所は両手での突き押しが威力を発揮している。そして左右からののど輪、はず押し、これが効きましたね。
さらに、先週に引き続き貴景勝の巧みな間合いの取り方も評価します。
宮城野親方:いつも言っていますが、攻めすぎず、守りすぎず、この中間が出来るのが横綱・大関。貴景勝は、ときには相手をしっかり見て間合いを作ります。そして、のど輪で相手をしっかり起こしてから中に入っていく。これが今場所の結果に繋がっています。
この日の取組では錦富士に反撃される場面もありましたが、上手く「間」を取って対応していたと言います。
宮城野親方:いなしながら守りながら、最後ははたき込み。
激しい「突き押し」相撲の中でも、随所に見られた貴景勝の技術。今場所の結果次第では横綱昇進が諮問される可能性もあります。
宮城野親方:今場所レベルの高い優勝をすれば、という期待がある。きのうも今日もいい相撲を取っているので、相撲内容がこのままどんどん良くなってくれば、(横綱昇進の)チャンスがありますね。
注目取組②〝唯一無二〟の突き押し・大栄翔
7日目まで1敗でトップに並ぶ5人のうち、4人が「突き押し」を得意としています。その中でも親方が「他にはない強みがある」と見ているのが前頭筆頭の大栄翔。親方の採点では、突き押しとパワーが満点の5点です。
この日は惜しくも黒星となった大栄翔ですが、貴景勝とはまた少しタイプの違う突き押し相撲だと宮城野親方は言います。
宮城野親方:私も(大栄翔と)現役時代に対戦しましたが、常に密着しておかないと圧力がある相手。特に〝つま先で相手を押す〟という不思議な持ち味。そして、貴景勝と違うのは、間(ま)を作らないこと。長い相撲になればなるほどムキになってしまってのど輪をやるんですけど、最後ひじが伸びたまま出て行ってしまうと、落とし穴があるんですね。もう少し間(ま)を作れば安定した成績で白星を積み重ねていくと思います。
大栄翔が突き押しをさらにパワーアップしていくのに、必要なこととは?
宮城野親方:相撲の基本は、つま先を外に向けて、しっかり膝を曲げて相撲を取ること。あとは、もう少し心に余裕を持つことが大事ですね。そうして間(ま)を作って、相手をよく見て攻めていく。パワーは十分ありますからね。
注目取組③元大関・朝乃山 十両で勝ちっ放し
最後に注目したのは、元大関の朝乃山。今場所は十両の土俵で、ここまでただ一人の勝ちっ放し。親方の採点でも、5点が3つと高評価です。この日も勝利し、8連勝で勝ち越しを決めました。
宮城野親方は、「朝乃山は〝型〟が完成しているから強い」と評価します。
宮城野親方:朝乃山は、私と身長体重がほとんど変わらない。そして同じ右四つ。右を差して左上手を取る。これが朝乃山の型ですね。相手十分だけど、朝乃山にとっても十二分。今場所の朝乃山は、左上手の取り方が注目ですね。自分より身長体重が上回る相手には、浅く(左上手を)取っている。すると相手のひじがきまるので、土俵際の逆転がない。深く取っていくと危ないんですが、朝乃山は身長体重がありますから、深く取っても、ここからだんだん浅くしていけば、今場所は全勝優勝があるんじゃないかと思います。
朝乃山には、取った上手の位置を取組の中で少しずつ変えていく技術があると言います。
この(上手の位置)数センチで勝敗が決まりますから。深ければ負けますし、浅ければ勝利に繋がりますから。
初場所も後半戦へ。今場所、優勝に最も近い力士は?
宮城野親方:自分も横綱として14年間務めましたので、やはり横綱・大関に頑張ってもらいたいという気持ちがあります。貴景勝にこのまま引っ張って、優勝してほしいなと思います。
優勝力士は1月22日のサンデースポーツに生出演の予定。どの力士がスタジオで喜びを語ってくれるのか、お楽しみに。