山口遥 パリオリンピックを目指す 最強市民ランナー

NHK
2023年1月20日 午後1:59 公開

今年10月に行われるパリオリンピックのマラソン代表選考レースMGC。すでに出場を決めている女子のうち、唯一実業団に所属していない市民ランナーがいます。山口遥さん(35)です。週に1回以上走る人は570万人とも言われる空前のランニングブームの中、そのいわば頂点に立つランナーとは?パラアスリートの谷真海さんが迫りました。

去年8月の北海道マラソン、ビッグニュースが生まれました。並みいる実業団選手を差し置き、市民ランナーである山口さんが快走。2時間30分を切る好タイムで優勝し、MGCの出場権を獲得したのです。

谷さん「すごくないですか。想像していましたか?」

山口さん「もちろんMGCの資格を取りたいなというのはあったんですけど」

谷さん「そこは狙って取りに行ったんですか?」

山口さん「狙ってはいたんですけど、本当に取れるとはあんまり思ってなかったというか」

山口さんはどんな生活を送っているのでしょうか。まずは朝5時に起きてジョギング。料理や掃除などの主婦業も手を抜きません。

山口さん「(料理は)だいたい毎日しています。旦那と一緒に食べられるのが夕飯しかないので、そこはちゃんと作りたいなと思っています」

そして夜も練習です。驚かされたのはその練習量。市民ランナーだとよく走る人でも月に500キロほどですが、山口さんはなんと多い月には1000キロ走るといいます。

谷さん「疲労とか残りませんか、走りすぎて?」

山口さん「疲労はちょっと残ったりはするんですけど、でも走らないという選択肢はないというか。走っている間に逆にほぐれたらいいなと思いながら走っています」

山口さんが陸上を始めたのは中学生の時。学生時代は目立った成績もなく無名の選手でした。大学を卒業した後、市民ランナーとしてランニングクラブへ。仲間から刺激をもらいながら走る楽しさを満喫してきました。

山口さん「50歳になっても、自己ベスト更新したりする方もいるので、負けられないなと思ったり。いいな自己ベスト、羨ましいなって思ったりするので。そうするとやめられないですよね」

実業団に所属していない山口さんは練習方法もユニーク。この日は本番の半分くらいのスピードしか出しません。ゆっくり走ることで体調の小さな変化に気付けるのだと言います。

谷さん「けっこうゆったり走りますね」

山口さん「びっくりされるぐらい遅めのペースで」

谷さん「(マラソンを)2時間台で走る方だから、驚くようなペースでシューって行っちゃうのかと」

さらに。

山口さん「体幹トレーニングは全くやらない。ストレッチとか」

谷さん「ええ!それでそこまで行けるんですか?」

山口さん「ストレッチとか体幹とか筋トレとか、その時間があったら走りに行こうというタイプだったので。元々体が硬いので、ストレッチをやっていてもつまんないというか。いててーって感じなので」

自分流のアプローチでつかんだMGCの大舞台。山口さんは自分らしさを見失うことなく臨みたいといいます。

山口さん「ひと言で表すなら、「不安」なんですよね。MGCの事で頭いっぱいになると、楽しさを忘れてきちゃうというか。苦しいなって思うことが結構あるので。でも、楽しさ忘れたら続けられない気がするし」

谷さん「そうですよね。そこが山口さんの原点であり、強さのような感じがします」

山口さん「あれだけ好きだったものを嫌いになりたくないというのもあるので。そんなにカッコつけずに、楽しくしっかり(パリ五輪を)目指したいなと思っていますね」

中川キャスター「本当にマラソン楽しんでいるということがよく伝わってきました。一方で楽しむことと結果を出すことの両立って難しいのではないかなと思うのですが、憲剛さんはどんな風に感じますか?」

中村憲剛さん「僕はプロサッカーの世界なので、当然結果は大事ですけれども。結果を追いすぎて楽しむことを忘れてしまうと、すごく難しくなってしまう。意外と楽しんでいる人の方が実は結果を残せているのかなって。自分が現役の時、そういう印象がすごく強くて。結果を追い求めすぎて楽しさを忘れてしまうことはよくあったので」

谷さん「サッカーでもそうなんですね。苦しさも含め、その苦しさも楽しめるようになったら本当に強いですね。そんな山口さんですが、ご自身を色に例えるならスカイブルー。ユニフォームもそうですが、青空のような気持ちのいい走りをこれから目指したいということでした」

豊原キャスター「山口さんは、1月29日に行われる大阪国際女子マラソンに出場する予定です」