日本の命運が懸かった戦いが、いよいよ迫ってきた。FIFA ワールドカップ初戦のドイツ。過去4回優勝している、サッカー超大国だ。日本はどう立ち向かうのか。10月30日放送のサンデースポーツで中村憲剛さんが初戦ドイツを徹底分析。導き出される攻略法とは。
ドイツ「攻撃に針を振っている超攻撃的なスタイル」
豊原キャスター:ハンジフリック監督率いるドイツ代表のサッカー、ずばり特徴はどんなところでしょう。
憲剛さん:攻守で自分たちが主導権を握りたい、攻撃に針を振っている超攻撃的なスタイルだと思います。
豊原キャスター:超攻撃的。
中川キャスター:先月のイングランド戦ですね。
憲剛さん:(イングランド戦解説)=まず(ドイツが)カウンターからボールを奪って、前線の選手にボールが渡り、ここの選手がタメをつくったところ、後ろからどんどん人が湧いて出てくるように(ドイツの選手がゴール前に向かう)。それに引き付けられてスペースが空いて、フリーの選手がシュートを決める。カウンターからのゴールの1つ。
豊原キャスター:猛烈なスピードですね。
中川キャスター:そして6月のイタリア戦です。
憲剛さん:(イタリア戦解説)=パスをつないで連携でゴールを決めるシーンですが、縦パスが入って、裏にボールが入ってダイレクトで浮かして、それを決めると。
豊原キャスター:鮮やかな連携ですね。
憲剛さん:連携プレーでも、ゴールができます。
中川キャスター:状況に応じて攻めのパターンを持っているということですか。
憲剛さん:持っていますね。カウンターがワンシーンと、相手の陣地に入ってから緻密なパスワークでゴールを決める。相手をしっかり見て、自分たちの攻撃の形を決めたうえで、技術も伴ってゴールを決められると。
憲剛さん予想!ドイツのスタメンと鍵になる選手
憲剛さん:基本システムは、4-2-3-1。そうそうたるメンバー。所属クラブがレアルマドリード、マンチェスターシティー、バイエルンミュンヘンとすごいメンバーです。
豊原キャスター:すごいクラブですね。ドイツは最新の世界ランキングは11位で日本24位ということで、その日本ですが、ここ2試合は4-2-3-1を採用してきました。フォーメーションがドイツと対称、ミラーゲームとなりますが、チームのコンセプトはどうなっているのでしょうか。
憲剛さん:攻守ともに似ていて、ほとんど同じと言ってもいいと思います。攻撃では、どちらも後ろの選手たちがしっかりとビルドアップをして、相手陣地に入って点を決めたい。守備は、前線の選手たちが前からしっかりプレスをかけて、連動してボールを奪ってゴールを決めたい。どちらも同じスタイルです。
中川キャスター:似たスタイルのチームと対戦するというのはどうですか。
憲剛さん:これだけ見てもマッチアップする選手がほぼ分かっているので、ある意味やりやすいかなと。1対1のデュエルのところがポイントになると思いますし、あとは技術や一人一人の戦術眼というところの優劣の差が、結果に結び付いてくると思います。
豊原キャスター:システムもやり方も似たようなチーム同士だけに、1対1の局面が大事になってくると。
憲剛さん:大事ですね。ここで勝てれば自分たちのリズムになってきますから。
ドイツvs.日本「中盤の三角形」
豊原キャスター:その相手ドイツですが、特に鍵となるポジションを挙げるとすればどこになるでしょう。
憲剛さん:ここの三角形。ミュラー選手、ギュンドアン選手、キミッヒ選手。この3人で構成する中盤の三角形がドイツのチーム力です。
中川キャスター:トップ下のミュラー選手は20歳で南アフリカ大会の得点王、今大会で4回目のワールドカップとなるベテランです。
憲剛さん:何が何でもボールをゴールに入れるっていう嗅覚、メンタリティーですよね。ドイツの精神的支柱ですね。ゲルマン魂を体現している選手です。この選手が一番僕は危険だと思っています。
中川キャスター:続いては中盤のキミッヒ選手です。
憲剛さん:チームの舵取り役ですね。本当にキックが正確なので、味方にアシストする事もできますし、セットプレーのキッカーとしてもいいボールを蹴ることができます。かつボランチの位置からペナルティーエリアに入ってゴールを決めることもできるので、オールラウンダーです。嫌な選手だと思います彼も。
豊原キャスター:捕まえづらそうですね。
憲剛さん:捕まえづらいと思います。
中川キャスター:そのキミッヒ選手と中盤でコンビを組むのがギュンドアン選手。
憲剛さん:彼もまた捕まえにくいですね。中盤から前線に、ゴールに直結するプレーが得意です。ドリブルもできますし、ラストパスも出せます。とにかく技術力、あとは戦術眼が非常に高い。何をしなきゃいけないかよく分かっている選手なので、素晴らしい選手だと思います。
豊原キャスター:“ちょっと待ってよ”って感じですよね。
憲剛さん:キミッヒにボールが入って、ギュンドアンとパス交換、ミュラーも絡んできます。相手をしっかりと陣地に押し込んで、ミュラーへギュンドアンが縦パス。ミュラーが前を向いて、裏にスルーパスからゴール。非常に嫌な三角形です。
豊原キャスター:良いところだけ見てしまうと、どうするよって感じですけども、この3人に対して日本はどう対抗していったらいいのでしょうか。
憲剛さん:日本にもこの三人に引けを取らないトライアングルがあります。
中川キャスター:三角形ですね。
憲剛さん:鎌田選手、遠藤選手、守田選手の3人ですね。
中川キャスター:まずは遠藤選手。ドイツ1部リーグで2シーズン連続デュエルと呼ばれる1対1の局面の勝利数がリーグトップです。
憲剛さん:デュエル王ですから。1対1にとにかくめっぽう強いです。非常に中盤のバトルのところで頼りになる選手。普段ブンデスリーガにいて、ミュラーやキミッヒと何度も対戦して止めているシーンも多いので、頼りになると思います。
中川キャスター:そして守田選手。
憲剛さん:彼は試合の状況を読みながら、パスでコントロールできる選手ですね。アシストもできますし、攻守両面で非常にキーになる選手かなと思います。
中川キャスター:さらに鎌田選手、今シーズン公式戦で既に11得点の活躍ですよね。
憲剛さん:正直絶好調ですね。彼の真骨頂はとにかくポジショニングだと思います。相手が嫌がるポジショニングですね。彼のそういう神出鬼没なポジショニングでキミッヒ、ギュンドアンを守備に走らせたいところ。
豊原キャスター:守備の意識を高めさせるってことですね。相手の中盤に。
憲剛さん:そうですね。
豊原キャスター:このドイツの三角形と日本の三角形、どんな戦いになるのでしょうか。
憲剛さん:技術力もそうですし、さっき言ったデュエル、ぶつかるバトルのところもそうですね。あとは戦術眼、運動量、とにかく中盤の選手いろんなものが求められるので、そこの対決に進むのではと思います。
豊原キャスター:日本からすると遠藤選手がミュラー選手を潰すという感じになりますか?
憲剛さん:守田選手と遠藤選手2人でミュラーを管理しながら、鎌田選手はこのキミッヒとギュンドアンを困惑させたい。そういう役回りだと思います。
豊原キャスター:そのコンビネーションを作らせないということですね。
中川キャスター:この三角形同士の戦いが、試合の行方を決めてくると。
憲剛さん:個人的にはそう思っていますね。どちらもこの三角形が機能すると攻撃が活性化すると思いますし、周りの才能豊かな選手達が輝き出します。
ドイツの豊富な攻撃陣
憲剛さん:まずサネですね。主に左サイドですけど、とてもスピードがあります。ドイツの武器です。スピードがあるのでシュート、パワー、パンチ力もあります。彼を乗せてしまうとちょっとやっかいです。
豊原キャスター:サネ選手を「自由にさせると(やっかい)」ってことですね。
憲剛さん:そうです。あとはムシアラ、19歳です。彼はパス、ドリブル、アイディア、意外性、19歳にしてかなり持っています。ひょっとしたら今大会最大のサプライズになる選手かもしれません。落ち着きも持っていますからね。
豊原キャスター:このトライアングルと絡むと確かにやっかいそうですね。
憲剛さん:はい。できるだけ絡んでいただきたくないです。
強国ドイツに勝つためには
中川キャスター:強力な攻撃陣に見えますが、その能力を直近のヨーロッパの国際大会でもいかんなく発揮しました。こちらイングランドやイタリア相手に互角以上の戦いと。
豊原キャスター:この戦いぶりを見て、今のドイツのチーム状態はどう考えたらいいでしょうか。
憲剛さん:得点がとにかく取れるというのはこれでもよく分かると思いますけど。ただ同時に失点もしているので、絶好調ではないかなと思います。
中川キャスター:これよく見てみますと突っ込み所もありましてハンガリーとの対戦、世界36位の相手に1敗1引き分けと苦戦しています。
ドイツ×ハンガリーを“教科書”に
憲剛さん:ハンガリーの戦い方はおおいに参考になるかなと思います。
(ハンガリー戦解説)まずディフェンス。ハンガリーはボールを奪われるんですけど、ミュラー、キミッヒ、ギュンドアンに対してズレたところを見逃さずにプレスして勝つ(ボールを奪う)。この3人に時間を与えないこと。ミュラーにボールが入るところで2人(ボールを取りに)いく。次も4人でボールを奪いとっている。このようにいけばドイツといえどもミスが起きます。さらに、ミュラーに入ったボールをタイトなディフェンスで勝って、奪ったところからすかさず前に運ぶ。上がっているのでスペースができる。ハンガリーがここを使って決定機までもっていっていますから、“いい守備からいいカウンター”、これ効くと思います。
豊原キャスター:いいテキストになりそうですね。
憲剛さん:はい、なると思いますね。
豊原キャスター:プレスからのカウンターが非常に有効という事ですが、逆に日本がボールをポゼッションしている、保持してからの攻撃っていう時にはどうしていったらいいですか。
憲剛さん:後方からパスを繋いで組み立てるビルドアップっていうのが鍵になる。
(ハンガリー戦解説)ドイツがプレスを前からかけてきていますが、(ハンガリーは)前線や中盤の選手がサポートしてポジションをずらしながらパスコースを作ってプレスを回避しています。サイドチェンジも効くと思います。そこからフリーの選手がボールを上げて、落としてシュート。ある意味プレスを無効化できています。この丁寧なビルドアップ効くと思います。
豊原キャスター:丁寧にやっていくと。
中川キャスター:憲剛さんのお話伺っていると勝つチャンスがあるんじゃないかという気持ちになってきました。
豊原キャスター:ありそうな気がしてきました。
憲剛さん:そうであってほしいです。
Kengoʼs分析まとめ
憲剛さん:「リスペクトし過ぎるな!!」。やっぱりドイツ強国で大国でもありますし、そこを受け過ぎてしまうとドイツペースになってしまうので。しっかりと自信を持って攻守で自分たちのプレーをすること。そうすることが勝利の近道になると僕は信じています。