端正な風貌と確かな演技力で不動の人気を誇る、俳優・佐藤健。シリアスな役からコミカルな役まで、人を魅了する表現で作品を輝かせる。佐藤が大切にしている作品観とは。
―――――――――――
佐藤:作品を作るときにいつも大事にしていることは「物語が好き」ということ。良い物語をひも解いていくと実はキャラクターが良いと思って。つまり、物語を作っているのは絶対にキャラクターだから、ストーリーが良いってことはキャラクターが良いってことなんですよね。そのキャラクターがキャラクターらしく動き回ってくれれば、ストーリーが面白い、作品が面白いということにつながるんです。
奈良:(佐藤が少年時代から好きと語る)ゲームも、普通だったらただやって、うまくいくと「良かった」で終わっちゃうじゃない?ただ楽しむんじゃなくて、ずっとやるんでしょう?
佐藤:小学校のときに『クロノ・トリガー』っていうRPG(ロールプレイングゲーム)をやったんですけど、そのキャラクターに愛着がめちゃくちゃ湧いたんですよ。ずっとゲームをやっていると、とにかくそいつらにすごく愛着が湧いて、レベルも上がって強くなって、いろんな武器を装備させて、一緒に旅をしてる感覚。最後、ゲームクリアでエンディングやエンドクレジットが流れると、クリアして嬉しいんですけど、そいつらと別れることが寂しくて泣いてました。
奈良:それ、すごくよく分かる。一緒に旅するんだよね。一緒に暮らして、一緒に育って。最初、出会ったときは全く知らない者同士なのに、ゲームの中ではお互い進化していって、最後クリアしちゃったら終わっちゃうみたいな。
佐藤:良い作品は多分、ドラマでも映画でも、もちろんゲームやマンガはそうですけど、最終回を迎えたときに、ファンが「寂しい」って言うんですよ。とにかく続きが見られなくて寂しい。でもそれ以上に、このキャラクター、この人物との別れが寂しいんですよね。そこまで持っていけたら良い作品だなって思います。
奈良:…深いですね。
佐藤:ほんとですか?笑
奈良:役者の人って、お話があって台本があって、それを頭の中にたたき込んだり、物語全部を咀嚼(そしゃく)してアドリブが出てきたり。台詞、台本について、どう考えているのかなと思って。
佐藤:もちろん作品によって台本や役への向き合い方って全部違うんですけど、僕はあんまり気にしないですね。台本は何となく芝居の流れだけ確認して。台詞のディテールまですごい何回も練習して覚えるというよりは、書いてあってもその場で自然に出ない台詞は、出なければいいやと思っているし、書いていなくてもその場で自然と出る言葉があるなら、それをしゃべればいいやと思っているんですよ。
ただその場で生活したい、その場に存在したいって思ってます。
奈良:台詞にとらわれたら学校の勉強じゃないけど、ただの詰め込みになっちゃうのかなと実は思っていたので、そういう話が聞けてよかったなあ。
佐藤:ありがとうございます。でも、奈良さんが「絵を描くことにもライブ感がある」とお話してくれたじゃないですか。「これを描こう」と思って描いているんじゃなくて、「何となく目を開いていたけど、やっぱ閉じた」とか。
完成したものが全然想像できない最中に描いていて、ある瞬間で「これが完成なんだ」という話を聞いたときに、クリエイティブは用意されたものをなぞるとどうしてもチープになってしまうと思った。多分それ、芝居も一緒なんですよね。こういう芝居しようって用意していった時点で死んじゃうんですよね。
2022/11/28 スイッチインタビュー「佐藤健×奈良美智」EP2より