個性的な歌声とビジュアルが特徴の歌手、UA。1996年発表のシングル『情熱』が大ヒットしたのちも、アーティスティックな世界観と、自然や大地を感じさせるような力強い歌声で、音楽シーンに存在感を放ち続けている。
世紀末に起こった凄惨な事件からは不穏な社会を敏感に感じ、自らの内面を掘り下げた世界観を伝え、沖縄移住の経験からは太古の言葉や母の故郷である奄美の言葉を使い、世の中への「愛」を歌った。
UAは現在、カナダの島で畑を耕し、家畜を育て、自然の中での暮らしを営む。この春リリースした最新作は、近年の祈りを感じるようなムードから一転、ふと口ずさみたくなるキャッチーな曲ばかりだ。
キャリア27年の音楽活動に深く刻まれた “内省の時代”。UAが感じている今の音楽とは?
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中島:沖縄から離れてアルバム『JaPo』ができ、その後のカナダでの定着があったがゆえに何か日本のポップスへの距離の取り方、受け入れが次のステップになったのでしょうか?
UA:そうなんです。反転したんでしょうかね。なんか、神聖/神性とか目に見えない世界とか、祈りとか光に近づきたいとか、そういった欲望があったんですよね。表現上で。
でも『JaPo』という作品。沖縄での耐えた、トライした時間があって、そこからカナダに行ってようやくいろんな自分の理想が形づいてきたところで、内省の時代、内観の時代がきちんと終わっていけたといいますか。その時に本当に「喜んでもらってなんぼ」というか、何か自分のためにどうのこうのっていうのは逆にダサいといいますか。もういいかっていう、いい感じの開き直りというんでしょうか。
中島:今回のUAさんのアルバムは、「ひとかきひとかきずつ」とか「次の信号が黄色ならすぐにブレーキを踏む」とか。止まってみようよ、そして少しずつ少しずつ歩みを進めていこうよという、何かグラジュアル(緩やかな)な世界、UAさんは今、そういうところに立っていらっしゃるのかなと思ったんです。
僕は宮崎駿監督的な感じでいうと、今回のUAさんの楽曲は『魔女の宅急便』のような感じがするんです。結局のところ、何気ない日常の中で一つ一つ頑張っていくっていう。そういう感じでいらっしゃるのでしょうか?
UA:実を言うと、つい最近まで子どもたちに読み聞かせをしてたのが『魔女の宅急便』で、(本では)映画の先のお話がずっと続くんですよね、彼女が成長するまでの。ホント面白いですよね。空想的であって、本当頑張り屋さんで。地に足つけて、魔女なのに。笑
中島:そうなんですよね。だから「魔法が使えなくなった時の世界」に着地しようとしているという物語が僕、すごく好きで、UAさんも『魔女の宅急便』の感じなのかなと思いました。
UA:うれしいです。最高の褒め言葉です。
2022/7/25 スイッチインタビュー「UA×中島岳志」EP1より