佐藤祐輔「自然の恩恵が得られる“オール秋田の酒造り”を目指したい」

NHK
2022年10月11日 午後10:59 公開

日本酒業界の革命児と称される蔵元・佐藤祐輔は、現在の日本酒生産スタイルを一転、伝統技術を用いた独創的な酒造で注目されている。

秋田市内にある佐藤の酒蔵は、1852年に創業。

幕末から170年間に渡り、秋田の地で日本酒を造り続けている。

経営が傾いていた酒蔵を継ぐと、酒造りを抜本的に見直した佐藤。原料から醸造方法まで、最も重要視したのは美味しくて他の蔵にはない味を作ること。

試行錯誤する中で、曾祖父の時代に作られていた昔の酒にそのヒントを見出した、

全て木の道具を使用し、作業はほぼ人の手で行うように。原料には添加物を一切使わず天然の成分のみ。手間と時間のかかる伝統的な手法で日本酒を作る。

天然の微生物や酵母菌などで独特の風味が出る木桶は、天日干しを必要とするなど設備維持も容易ではないが、いずれは秋田の杉で作りたいと佐藤は語る。なぜそこまで“オール秋田”にこだわるのか。

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佐藤:全国津々浦々に千何百社も蔵元があって、流通が発達する前は地元の原材料や道具で酒造りしていたんです。それがその土地土地が存在したという証で、そこに人が住まって「文化」を作ったっていうものの「端的な証」なんですよね、日本酒というのは。
 

高橋:オール秋田を目指すというのは、何か所以(ゆえん)はあるのですか?
 

佐藤:曾祖父やその前の先祖とか、実際この蔵のこの景色の中、秋田の杉で酒造りしていたわけですよね。この蔵にとっては、“秋田の杉の時代”の方がずっと長いんですよ。それに、秋田の杉はやっぱり秋田の酒に絶対マッチすると思うんですよ。秋田のお米だけでやる、秋田杉だけでやる、どっちも植物だしね。

自然から受ける影響として共通した何かマッチするようなもの、自然の恩恵が得られるんじゃないかなと僕は思っているんですよね。
 

高橋:社長の話を聞いていると、考え方が広がっていきながら全部がつながっていくじゃないですか。自然とか、その裏側にある哲学じゃないけど、世の中のあり方とか我々の時代とかとつながっていく感じが。日本酒造りから何か得たもの、教わったことは何かありますか。
 

佐藤:それはめちゃくちゃあるかな。ずっと音楽が好きだったり、物書きが好きだったり、そういうような欲求がずっとあって。でも、酒造りで自分が表現することは本当はあまりなくて。

結局、いいものを作る時に、自然の素材や自然な造りとかを生かして、自分を消しながらモノを作っていくのが素晴らしいモノ作りの根本だと。別のジャンルでも、音楽でも彫刻でも何でも、本当に素晴らしい作品はきっとそうなっているのかなと。そういう“気づき”みたいなものは酒造りで得られましたね。
 
 

2022/10/10スイッチインタビュー「高橋克典×佐藤祐輔」EP1より