羽生結弦「納得するまで突き詰める、この気持ちがわかるのは自分自身だけ」

NHK
2023年10月20日 午後10:00 公開

身体表現に挑み続ける、プロフィギュアスケーター羽生結弦。オリンピック2連覇、世界最高得点など数々の偉業を成し遂げてきた。

2022年に競技選手からプロに転向し、アイスショーでは自ら演出している。ことし2月には、スケーターの単独公演としては史上初の東京ドームで、3万5千人を魅了した。


羽生:  競技時代も、表現しているからそのままの点数で評価されているかといったら、ちょっと自分の手応えと点数が違うときがあったり。逆に「ジャンプが跳べているけど表現はそんなに頑張らなかったな」と思うときに点数をもらえたりとか、そういうことが結構あるんですよ。それが“スポーツ”なんだなって、思うんですよね。

ただ、これが今、プロの世界に入ったときに、自分の手応え、「表現できたな、こういうことを出し切れたな」って思う手応えと、見てくださっている方々の感想が、だいたい一致するようになってきていて。そういう意味では、やっと自分がやりたいことや、自分が表現したいことは、手応えとして伝わるようにはなってきたかなって。

堂本:たぶんそれは、競技をやって突き詰めてきたからこそ感じられるものかもしれない。僕なんかはいまだにステージの上とかで、「あ、きょうは調子良かったな、自分なりの表現できたかもしれない」と思ったときほど、「きょうダメだったね」って言われちゃうんですよ。

羽生: 笑。ありますよね。

堂本:そう。「まじで?」みたいな笑。「きょう、すごく良かったね」みたいなことを言われたときって、自分の中では「ちょっと調子悪いな」みたいな。

羽生:そこ難しいですよね。すごく感情を込めて、もう、うわーって自分の中から出てくるものが全てピタってはまってるのに、「きょう、調子悪かった?」って感じになるのは難しいですよね。押し引きが本当に。

堂本:そうそう。だけどそこで生きてきた、点数をつけられてしまう、順位が決められてしまう。その世界ってどういうメンタルなんだろう。

羽生: ある意味分かりやすいんですよね。できた・できなかったが点数として出てきてくれるので。だから点数低ければ「駄目だったんだな」って思い切れるし、点数が良かったら「誰よりもうまかったんだ」っていう証明になるし。見てくださっている方々も、自分の価値観で固められたものじゃなくて、点数という成績というもので良し悪しを感じられるんですよ、基準があるので。だから、そういう面ではみんなで喜びやすかったところはあるかもしれないです。

堂本:そうか、分かりやすいんだ。評価という部分でね。

羽生:ただ、プロになって枠組みが外れたからこそ、表現としてどれだけ伝えられるかということと、そのジャンプの難しさも含めて、どうやって緊張感やワクワク感みたいなものを味わっていただけるかと、プロとしていろいろ考えますね、最近は。

堂本:なるほど。
 

フィギュアスケーターとして数々の偉業を成し遂げてきた羽生は、飛び抜けた存在として、時には「孤高」と形容されることもあった。  

堂本:練習風景もそうだし。1人でずっとやっていらっしゃって、なんだろう。“孤独”とはまた違うのかな?それこそ“孤高”という言葉が合うのかもしれないけど、何と闘っているのだろうと。

羽生:そうですね。僕、それこそ『Endless SHOCK』を見て、「1つの傷ができれば1つの表現が生まれるだろ」みたいなことを言っていますよね。

堂本:はい、あります。

羽生:めちゃくちゃグサって刺さって。見てるときに、「ウォー、痛え」って思って。

堂本:あ、本当に? ありがとう。
 

堂本が20年に渡り、座長を務める舞台『SHOCK』。演劇に全てをかける若者たちが描かれる。中でも、羽生の心に刺さったというシーンはこちら。

「俺たちは一つ苦しめば一つ表現が見つかる。一つ傷つけば、また一つ表現が創れる。ボロボロになる。その分だけ輝けるんだぞ」

傷つきながらも夢に向かう姿に羽生は自分を重ねたという。  

羽生:自分、ずっとフィギュアと、表現と向き合っていくときに、たぶん光一さんも感じてらっしゃると思うんですけど、周りとの熱量の差が結構、生まれてくるんですよね。自分が突き詰めれば突き詰めるほど、ここまで突き詰めなくてもいいじゃんって思っている方々がたくさんいて、見えているものが違うときが正直あるので。

堂本:はい、ありますね。

羽生:ね。

堂本:それはもうしょうがないです、しょうがないです。あります。

羽生:そのときは、「孤独だな、孤高だな」って思うんですけど、結局、そこまで突き詰めていかないと、実際に自分がやったときに納得はできない。この気持ちを分かるのは自分自身でしかないところもあって。だったら、自分自身とちゃんと対峙して、超えられるようにすればいい、みたいなことは感じます。

堂本:あのね、20代のころの俺に似てる笑。“似てる”っていう言い方、すごい失礼だな!20代のころ、俺もちょっとそう思ってたかも。少しずつ楽になっていったけどね。もう今、この年になるとその辺も楽になっていったんだけど。でも、そうじゃなきゃいけない時期って絶対あるはずだから。

羽生:今、特に一番開発や開拓している時期なので、自分が求めている理想像みたいなものを。

堂本:そうだね。その時期は絶対必要だと思う。

羽生:でも、それがあるからたぶん、今の自分が作り上げたい表現とかが生まれてきている。実際に、テレビにたったちょっと映っただけだったとしても、その演技を見て、「おばあちゃんが元気になりました」とか、そういうお話聞いたら、やらざるを得ないじゃないですか。そうやっていろんな方々が期待してくださっている。

堂本:背負ってるからね。
 
 

2023/10/6、13 スイッチインタビュー「堂本光一×羽生結弦」EP1・2より