鈴木慶一「“私は不完全”と、うなだれてはいけないと思う。それが当たり前」

NHK
2023年12月1日 午後9:59 公開

日本音楽界で50年以上活動し続けているムーンライダーズのリーダー、鈴木慶一。作曲家としては、人気ゲーム『マザー』などの音楽を担当。さらに、北野武監督の映画『座頭市』では、日本アカデミー賞音楽賞も受賞した。

日本ロックの黎明期から多くのミュージシャンとも共演。アバンギャルドな精神と遊び心でファンを驚かせ続ける鈴木の50年の歩みとこれからを、俳優の三浦透子と語り合う。


三浦: ムーンライダーズの皆さんを見て「自分も変わっていいんだ」と思うことを慶一さんの姿から感じている方たちがきっといるんだろうなと、自分はそう思うので。こんなことも、こんなこともやっていいんだ。でも、ちゃんと、ぶれないものがあるというか。

鈴木: 「この音楽は面白いから一生この音楽をやろう」っていう考えはないの。常に「何か面白いものないかな」「あ、今まで聞いたことないような音楽がある」って。すると、嫌いなジャンルが好きになっていく。

三浦: 常に自分たちのアンテナが向くほうに素直に。「今までこうだったからこれを貫こう」というよりは、外からの要因で、「こういうの面白いんじゃないかな」と、思ったほうに素直に行ってみるようなことでしょうか。

鈴木:すぐ行っちゃうんです。2種類あると思います。ずっと変わらないで自分の好きなタイプの音楽をやっていく人もいるだろうし。例えば、ブルーズをやる人はずっとブルーズをやっていくだろうし、いろいろあると思う。私たち、ムーンライダーズは全員、変わるほうを選んだんですね。選んだ理由は分からないけども、外的な音楽、外からの音楽に影響されやすいっていうのもある。
 


2022年4月に発売したムーンライダーズのアルバムでは、メンバーは事前に一切曲を作らず、現場で即興演奏を行う手法で作られた。若いメンバーも参加し、今なお実験的なサウンドを追求し続けている。

鈴木: 初めてインプロビゼーション(即興演奏)のアルバム(『It’s the moooonriders』)を出したのよ。もう新人バンド。本当にインプロビゼーションだから何も決めないで作るんだけど、あとで聞いてみると、「なんかライダーズだな」って。音色の選び方とかいろいろあると思うんだよね。それが1つ、“らしさ”を構築してる。でも、“らしさ”はなるべく排除したいんだよ。排除しても排除しても残っちゃう、かすみたいな感じの“らしさ”があるんでしょうね。

三浦:隠しても隠しても出てきてしまうものみたいなところに、「もう逃れられない自分なんだな」みたいなところは、芝居をやっていても感じるところはあるかもしれないです。

鈴木:ありますよね。きっと。

三浦: そうですね。私も、“私らしい”ってなんだろうとか、この仕事は受けていいのかどうしようかって悩むときも、自分がコントロールできるものじゃないんだろうなって。

鈴木: たぶんコントロールできないものがコアなところなんだね、きっと。

三浦: 音楽を続けてこられた原動力のようなものをお聞きしてもいいですか…?

鈴木: ええとなんだろうな…。完成品を作らないってこと。意識的に完成品を作らないわけじゃないよ?でも、これは完成じゃないなってどうしても思っちゃうんだよね。

三浦: 常に自分が、「まだここが足りていないから次の機会があればこれを試してみたい」と思う何かが。

鈴木: 不完全である。どこか不完全。「私は不完全で」と思ってうなだれてはいけないと思う。それが当たり前なんじゃないかなと思います。
 
 

2023/12/1 スイッチインタビュー「鈴木慶一×三浦透子」EP2より