山里亮太「今、すごく大事な瞬間が来た気がします」

NHK
2023年11月3日 午後9:59 公開

芸人・山里亮太。ブレイク前は「嫉妬」や「妬み」を燃料にワードセンスを磨く日々。その努力が実を結び、機転の利いたトークが“武器”の売れっ子に。今は、テレビやラジオのレギュラーは9本。春からは平日朝の情報番組のMCも務めている。

順風満帆に見える日々。しかしその裏で、山里は人知れず悩みを抱えてきたという。山里が憧れを抱いているフリーアナウンサーの古舘伊知郎が、山里のこれまで明かしていなかった心の奥に迫る。


古舘: 山ちゃんの、時折ふっと毒っぽいところとか、「何か言っちゃえ!」ってときがいいなと思うんだけど、悩みはあるでしょう?

山里:あります。僕その…なんか…小手先だなと思っているんですよ、自分がやっていることって。何かが起きたときに「あぁそうだったか」って思ってもらえるようなことを全然発信できてなくて、うまくこなせてしまっているっていう。

だから時折、本当に素を出せる人が、例えばヒロミさんとかが冗談交じりに「さっきお前、最高って言ってたけどひとつも思ってないだろ」って言われると、ちょっとじゃなくて本当にえぐられるんですよね。なにかニュースにしてもなんて言うんだろう、勉強してきてそれを言ってるだけとか、これだったら炎上しないとか、でもちゃんと勉強しているように見える…って本当にもう、小手先以上のものが何もできていない、自分は何もできてないなぁとずっと思ってます。

古舘:例えばね、山ちゃんの自虐ネタは見てます。面白いです。聞いている方が切なくなっちゃうけど、あなたの場合はホントそこがうまい。でも、自虐も俺の中ではもしかしたら“防御”かもしれないと思う。「自虐でここまでやってんだから、これ以上『素』の私をめくるんじゃねえ」みたいな防御かもしれないとした時に、「テレビも含めてトークライブでもあんまり『素』は言わないね」って言われない?

山里:…古舘さんいや、それが1問目ですか?!そこが僕、実は古舘さんにずっと相談したいことで、僕って「素を出さない」んじゃなくて「素がない」んですよ。何にもないんです。

古舘:出せないでもなく、「素」自体がそんなにないから出しようがないって。

山里:内に秘めている隠しているものが何もない空っぽな人間なんです。だから古舘さんが、「これに対してこんな思いがある」という姿はキラキラして見える。僕それで、「自由に今からあなたが興味持ってるもの時間あげるからやってください」って言われた時に、身動き取れなくなるぐらい「素」ってものがなくて。だから「素を隠している」んじゃなくて、「素がないことを隠している」んです

古舘:俺もよく言われてきたから、ちょっと敏感になりすぎているのかもしれないけど、「あんまり素を出さないよね」とか俺も言われてきて。アナウンサーだからまだ俺は違うけど、芸人ってさ、ろくでもないことも、かわいげの部分も「素」を出してしまうことで、笑いが巻き起こる世界やマーケットでもあるじゃん。山ちゃんは比較的出さないから、俺みたく「言葉で武装しているのかな」とも思ったりするわけよ。だったら、「素」を出したら鬼に金棒だと思うから聞きたいんだよ。

で、一緒に考えたい。だって俺だって、山里プロデュースに関わりたいもん。ここまで来たら。
 

スポーツ実況からバラエティまで縦横無尽にしゃべりまくり、テレビ界を席巻した古舘。2004年からは12年間、民放ニュース番組のキャスターを務めた。様々なあつれきや炎上を経験してきた古舘は「その声と向き合い、悩み抜いたからこそ得たものがある」と山里に熱いエールを送る。  

古舘: もう苦情が300本500本来るでしょ、ちょっとした僕の一言で。番組批判、俺批判、誹謗中傷、「バカ」「死ね」。これ、全部見たよ12年間。これは俺の役目だと思って、しまいには分かってくること結構あるんだよね。

逆にこれだけしつこくメッタ打ちしてくる人って、俺のファンじゃんって。俺の一言一句注目して怒って、布団かぶって寝て、次の日朝早く仕事行ってるはずなんだよ。余裕しゃくしゃくの人生を送っている人はいちいち見ないし、いちいち俺ごときにガタガタ言ってこないよ毎日のように。

…ていうのが分かってくると、それが俺のメインの仕事だと思って恐れずにまた言うし、また誹謗中傷を言ってくれるんなら言ってくれと思って。12年間見てきたことが自分の柱になってるわけよ。だから「山ちゃん批判や炎上を恐れずやってくれ」って言えるんだと思う。

山里:僕も「素を出す」とか、「自分らしさ」「自分がやっている意味・意義」を探してはいたんですけど、それが全く見えてなくて。で、古舘さんがおっしゃってくれたようなところをちゃんと見れていなかったんですよ。今、古舘さんに教えてもらって。自分のやるべきことってそっちなんだって今、すごく大事な瞬間が来た気がして。

古舘:山ちゃんは素を出すのが苦手で生きてきたのなら、それは宿命だってことと、山ちゃんは「普通だ」という負い目を持っている。俺も「普通だ」って負い目を持っている。普通じゃない人からすると「普通を負い目にするなんてちょこざいな」と思うだろうね。でも見ている視聴者も普通なんで、一番俺らが近いのかもしれないよ。

だから「俺、勉強してないから分からないんだ」って言っていいんだよ、山ちゃん多分。報道ステーションの時はそれができない。「俺、勉強してないからわかんない」ってさすがに言えないんだよね、純然たる報道番組として見られているから。だから、俺ができなかった思いをものすごい今ぶつけてる。山ちゃんに全部俺ができなかったことやってもらいたい。こうなったら許さない。

山里:許さない!?

古舘:もう俺は許さない!

山里:いや、もう、安易な言葉になっちゃうんですけど、俺やります。古舘さん。

古舘:ああ、うれしいなあ…。
 
 

2023/11/3スイッチインタビュー「山里亮太×古舘伊知郎」EP2より