生田絵梨花「続けることに意味があると思ってずっとやっています」

NHK
2023年11月17日 午後1:05 公開

俳優・生田絵梨花。アイドル出身の生田は現在、芝居、歌、音楽番組の司会、そしてコントと、多方面に活躍の場を広げている。

10年間、アイドルグループ・乃木坂46の1期生として活躍した生田は、アイドルを続けながら、幼い頃に憧れたミュージカルの経験を着実に積んでいく。2014年、手塚治虫原作のミュージカルの主演に抜擢。2017年のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』では、オーディションでヒロイン・ジュリエット役をつかみ取った。


松尾:アイドル活動をしながら、あなたはミュージカルにも出始めるわけじゃないですか。めちゃくちゃ大変だったんじゃないの?

生田: そうですね。アイドルだけやっていた自分だと、何を基準にがんばっていいのかが、自分の中ではあんまり良く分からなかったんですね。何がどうなるから、たとえば人気が出るとか、センターになれるとか、明確ではないのかなと思って、アイドルって。

自分は何を軸にして頑張ったらいいのだろうというもので「1つこれかな」と思ったのが、ミュージカルの要素かなって、当時。ミュージカルって明確じゃないですか。歌をがんばんなきゃいけないとか、パフォーマンスしなきゃいけないとか、そういうのを自分が目指していけたら、アイドルのほうにも還元出来るかなと思って、当時はやっていましたね。

松尾:なるほど。でも、ミュージカルとは言え、歌はちゃんと歌わなきゃいけないし、周りはめちゃくちゃプロフェッショナルな、アイドルとは別な歌い手さんや踊り手さんがいて、しかも演技も出来なきゃいけないわけじゃない?そういうのは、どうやって培っていったんですか。

生田: 舞台界は、ミュージカルとかモンスター級に出来る人たちがいっぱいいるじゃないですか。だから、そういう先輩方を間近で見て、あきらめちゃいけないんだなって。今、出来ないとか、今、全然だめだとか思っていても、続けることにきっと意味があるんだろうと思って、ずっとやってる感じです。

松尾:じゃあ、演技のレッスンとかしないまま、ボンと飛び込んでいったってこと?

生田: そうです。

松尾:すごっ。

生田: 演技のレッスンは全然してないですね。

松尾:それがすごいと思うのよ。あのね、事務所に入ってる子でも、ワークショップを受けたりして、演技って慣らしていくもんですけど、あなたたちって、いきなり飛び込んでくるもんね。

生田:そうですね。もう本当、場を踏んで、実践して、学んでいく、みたいな。

松尾:それが出来るのがテレビの世界で活躍、まあ、テレビの世界だけじゃないもんね。テレビに行く前のステージみたいなものの数っていうのは、べらぼうにやっているわけでしょ?

生田:度胸みたいなものは、活動の中で自然と培われるので。それをいろんなところに何かぶつけちゃうのかもしれないですね。
 

生田と松尾が初めて仕事をしたのが2019年上演の『キレイ』。現在、過去、未来が交錯する世界で、「生きる」ことの意味を問う物語。シュールな笑いや下ネタも炸裂する、「松尾流ミュージカル」だ。

生田はここで、松尾率いる「大人計画」や、映像畑で著名な俳優たちと芝居を交わし、新境地を切り開いた。


生田:大人計画の皆さんのすごいなって思ったところは、ステージに立つ時に、私は、何かちょっとギア上げたりとか、スイッチをぐって上げたりする感覚がないと立てない感じだったんです。でも皆さん、楽屋開けてそのまんま、スタスタスタふーって感じでステージに上がるじゃないですか。あの感じすごいなって、めっちゃ思ったんですよね。

松尾:それは年食ってるからじゃない?いちいち、ぐってやってたら疲れるんですよ。

生田:うーん。疲れるっていうのもあるし、結局何か力んじゃうみたいなこともあるだろうし。

松尾:あー。でも、いくちゃんは力んでるようには見えなかったね。

生田:本当ですか?

松尾:うん。「下手したら楽しんでる、この女は」って。

生田:いやいやどうなんでしょう。『キレイ』に関しては、周りがもう本当にすごい人たちだったんで、皆さんにめっちゃほぐしてもらいながら立たせてもらってました。

松尾:でもね、いくちゃんはセリフが入ってくるんですよね。

生田:あ、本当ですか。

松尾:うん。それは何でなの?

生田:何でなんだろう。私、もともと、いろんなことに関して“なぜなぜ魔”なんですよ。なんで?をすごい考えちゃう人で。だからセリフに関しても、「なんでこれ言うんだろう」「なんでこう言ってたのに、この時に違うこと言ってるんだろう」とかを全部考えちゃうから、思考的になってガチッて固まっちゃうっていう。ネガティブな面もあれば、いま松尾さんが言ってくれたように、良い面になってる部分もあるのかなって。

松尾:そんな真面目なのに、良くあの『キレイ』のでたらめなセリフを…。

生田:だから私、めっちゃ憶えてるんですけど、稽古場で、「これなんでだろう」っていうところが何か所かあって、松尾さんに聞きたいなと思って。たまたま、隣にいた猫背椿さんに、「これってどういう意味なんですかね」って聞いたら、「いくちゃん、意味は聞いちゃだめだよ、私たちも分からずやってるから」という一言をいただきまして。

松尾:それ、いいことじゃないと思うんだよね。一瞬いいことのように聞こえるけど。

生田:でも、良かったなと思うのが、松尾さんのワールドって、言葉にしちゃうと多分そのサイズ感にならないというか、枠にはまっちゃうというか。語れない部分がすごくたくさんある気がしてて。なんで、松尾さんのお芝居に関しては、「どういう意味なんだろう」って考えるよりも、まず飛び込むとか、言われたことに対してやってみる。そうすると、「自分の世界も、作品の世界も、広げてくれるんだろうな」って、稽古場のときにすごく実感しました。

松尾:うん。まあ、そうだね。それ、何か、忸怩(じくじ)たる思いで聞いてます。

生田:え、どういうことですか。

松尾:そういう、何も聞かない俳優たちを、つくりあげていってしまったっていう、モンスターみたいな、何も聞かないけど、とにかく与えられたセリフは言えるっていう不思議な俳優たちを育ててしまったっていうのは、ちょっと俺、いかがなものかなと思って。

生田:じゃあ実際、大人計画の役者さん方は、「これ、これどういう意味ですか」とか聞かれないんですか。

松尾:一切、聞かないです。

生田:そうなんだ。

松尾:でも最近ね、ぽつり、ぽつりと、阿部サダヲが、「これはこれでいいんですか」とか、聞いてくるようになったの。

生田:おおー。それはどうなんですか、松尾さん的に。

松尾:「阿部、年を取ったな」と思ってる。年を取ったら、意味がないともたなくなってくるんだなっていう。

生田:笑。
 
 

2023/11/10 スイッチインタビュー「松尾スズキ×生田絵梨花」EP1より