2005年、ダンスアンドボーカルグループAAAのメンバーとしてデビューし、ソロではラッパーとしても活躍の舞台を広げるSKY-HI。3年前には自ら起業し、社長兼プロデューサーとして次世代の育成にも力を注いでいる。
自らのことを“音楽界のはみ出し者”と表現するSKY-HIが大切にしているのは、ラッパー、プロデューサー、起業家と立ち位置が変わっても「自身の声に従って突き進むこと」。そして他者に対しては「想像力」と「やさしさ」が大切と語る。
大迫:次世代に伝えたいことはありますか?
SKY-HI:いっぱいあるな。いっぱいあるけど、(ファンの)一人ひとりがみんな家で何か月も前からバイトや仕事のスケジュールを空けて、「何やるだろう」ってワクワクして。で、「(ライブが)終わった、楽しかったね」って帰る人がいるって相当なことだよって。そう思うと、「ありがとう」にも実がこもってくるし、自分の行動でみんながどういう感情になるか、想像力のある人になってほしいな。
自分が一番“優しいコミュニケーション”の仕方は意識しないといけないと思ってるし、人は簡単にコミュニケーションで傷つけあったり、嫌いあったりしてしまうことを認識して、良質なコミュニケーションを生んでいきたいですね。
大迫:僕自身もチームのディレクションをすることがある中で、その“優しいコミュ二ケーション”はすごく勉強になります。
SKY-HI:“優しい”は本当に大事だと思う。
大迫:さっき僕、ファンの方と比較的距離があるかもと話しましたけど、もしかしたら考え方次第で、もうちょっと違う捉え方ができるかな。今、お話を伺ってめちゃくちゃ思いました。
SKY-HI:すげえ想像しやすいやつで言うと、子どものランナーが大迫さんの記録を取ったところを見て、「うおー!俺もこうなりたい!」っていう人がめちゃくちゃいるわけじゃないですか。その尊さが強すぎますよね。
アスリートが与える次世代アスリートへの影響は、アーティストより直球な気がします。0.01秒がご自身の記録にも直結しますけど、その人の夢に0.01秒が影響するってすごい“0.01秒”っすね。
従来の音楽業界の常識を打ち破り、自分らしく道を切り拓いてきたSKY-HI。音楽も生き方もHIPHOPそのものの36歳、これから向かうところは?
SKY-HI:自分の音楽、言葉があるので、自分がどういう人間なのかを作れば作るほど、1曲作ったら1曲分、(自分のことが)わかるんですよね。自分がどういう人間で何をやる人なのかということにだけに集中できるようになったのは、この2年くらいです。
大迫:海外のアーティストと今後、どう戦っていくんですか。僕がやっている世界でも同じことがいえるんですけど。
SKY-HI:本当に世界で戦われている方ですからね。
大迫:ぜひアドバイスを。
SKY-HI:ええっ俺が!?やめてくださいよ。笑
大迫:ビジョンというか、どのようにして戦うのか。
SKY-HI:「スタイルを強く認識する」は大事にしようと思っています。
自分の音楽観を信じるしかない。自分はどこかのフェーズから、こんなにHIPHOP、ラップに焦がれて生きてきたけれど、それが一番自分がHIPHOPからもらった精神性の中で自分のスタイルを追求することは本当に大事だったと思う。
少し昔は、音楽家って海外にウケそうな曲を作ろうとか、“海外に挑戦”、僕はすごくその言葉が嫌いだったんですよね。勝手に我々はいろんな影響を受けていて、勝手に個性豊かなんですよ。その個性が一番輝く形でのパフォーマンスや音楽を作ることに集中すれば、それは多分、他の国の人から見たら「ユニークだね」って思われるものにできると思っています。
大迫:まさしくBe myself。
SKY-HI:そう!Be myself!本当にそうだと思います。
大迫:全てをなんか体現されている感じですね。あの…おじいちゃんになっても続けますか?
SKY-HI:いい質問!笑。おじいちゃんになってもラップやりたい。ラップはやると思います、おじいちゃんになっても。
それこそ多分、自分みたいな人間もこのまま生きていくと、どんどん人間的に、歴史が面白くなっていっている。今はまだ、人間として起業家3年目なんで、本当の自分の中でのアウトプットとして出すべきHIPHOPはひょっとしたら6~70歳くらいに出るかもって、今思いました。
大迫:僕自身も何か自分がワクワクしていたいし、10年後20年後をどう感じているか。今からワクワクで楽しいと想像できる方向へ転がっていきたいなって。すごい腹落ち感が。
SKY-HI:本当ですか?いや良かった。ワクワクしてたいっすよね。
2023/6/2 スイッチインタビュー「SKY-HI×大迫傑」EP1より