古舘伊知郎「4、5歳ぐらいで 既に言葉が面白くてしょうがなかった」

NHK
2023年10月27日 午後9:59 公開

フリーアナウンサー、古舘伊知郎。自称「言葉の変態」。スポーツ実況からバラエティー、報道番組のキャスターまで務め、テレビ界の寵児と言われた。35年前から続くトークライブは、毎年大盛況となっている。

古舘は、1954年に東京・北区に生まれ、4人家族で育った。両親も姉も、たぐいまれなおしゃべり。にぎやかな家族に囲まれ、古舘本人は「自分は無口だ」と思い込んでいたという。しかし、高校生のとき、同級生たちと行ったプロレスの無料興行で実況したことで、しゃべることの快感に目覚める。その後、“言葉”を操るアナウンサーとしてテレビ朝日に入社し、プロレス実況で一躍注目された。

「いつか古舘のような話術を身につけるのが夢」と語る芸人の山里亮太が、名実況の極意を問う。  


山里: 古舘さんって見える景色を全部言葉に頭の中で変換して発信するの、すごく好きじゃないですか。街中でちょっとやってみようと思ったんですけど、まぁこれが難しくて。

実況って、自分が持っているスキルの応用ができないなと思って。あの瞬間に絵コンテというかカット割り全部できて、瞬間にストーリーも作れちゃうわけじゃないですか。あれ、なんなんですか?

古舘:実況リポートとか実況中継っていうと、やや特殊な話芸になるわけよ。だからスポーツ実況アナはスポーツ実況専門みたいになりがちなわけよ。実況だと思うから「街歩いていて実況無理だわ」ってなるけど、「描写」と思えばいいですよ。

山里:はあ…。

古舘:頭の中が切り替わるから。「自分は描写するんだ、言葉で。何か感じたものを」ってことは、山ちゃんいつも言葉で描写してるじゃん。

山里:はい…。

古舘:描写と思えば自分が常日頃にやっていることを、あとは言葉を多くパッチワークする分量の問題だから。だからできるんですよ。

山里:なるほど。それでいうと古舘さん、“言葉のパッチワーク”っておっしゃって、僕まさに、古舘さんが作り出した「古舘節」と言われる実況解説があるじゃないですか。パッチワークでも、この素材とこの素材をくっつけるっていう距離の遠さが、多分僕が知っている言葉を使う人たちの中でも、古舘さんが一番遠い距離をくっつけるんですよね。

それって意識されているんですか?全く違うものをくっつけたら面白いと思っているのか、それとも、完成したものがパッと生まれ出てくるのか。

古舘:明らかに前者の方で、「関係ないものってどっかでつながっている」と小さいころからいつも思っていて。これ「因果則」って言うんですけど、「全く関係ない言葉と言葉をよく出会わせますね」って山ちゃんが言ってくれるけど、それは俺の中ではそんなにつらいことじゃなくていつもそう思っているから。

山里:へええ…。

古舘:だから何か分かんないけど「山里さんって赤い眼鏡のフレーム好きですよね」で終わっちゃったらつまんないわけで、「この赤が、もしかしたらスペイン、アンダルシア地方の闘牛の牛から流れる血の滴りかもしれない」って思ってて「関係ねえだろお前、スペインは!!」ってあるんだけど、こういうことがどっかでつながってくるわけ。それが楽しいからいつもそう思ってんだよね。だから遠くないんだよね。俺の中ではね。

山里:なるほど!つなげていくっていう作業が楽しいんですね。

古舘:好きなんだよね。
 

山里:古舘さんの言葉の数と、言葉の組み合わせって、どうやって増やしているんですか?俺それやろうと思うんですけど。

古舘:俺は真面目に言うと、言葉に敏感。老いも若きも使っている言葉の流行にも当然、過敏になっているわけですよ。

例えば、美容室で髪の毛を洗ってもらっていたら、40代手前、アラフォーぐらいのいいとこの奥様・お母さんっていう感じの人がいて、自分の子ども2人のことを馴染みの美容師さんに髪の毛を洗ってもらいながら語ってんだけど、

「長男の方はさ、なんて言うのかな『大人っぽい』ところがあるんだけど、」

その時は「大人っぽい」って言ったんだけど、

「下の子のほうはさ、もう、けっこうな歳いってるのにさ『赤ちゃん感』強いのよ」

って言ったのね。

そうすると「『大人っぽい』なら『子どもっぽい』でいいだろ!!」って、変なガーゼ外して「『ぽい』と『感』どの根拠で使い分けてますか!?かゆいとこないですかっ!」て言いたくなるわけだよ。

山里:笑。古舘さん、それって自然と湧きでる感情ですか?それとも、人の言葉に対して意識的にそう思おうと思ってずっとやったらいつの間にか染み付いたっていう感じですか?

古舘: 両方です。それはもう、この年になって思うことは両方。片方が欠けてもない。やっぱり両方。言葉に対するこだわりとか言葉を覚え始めて、物心ついてちょっとしてぐらい、4歳とか5歳ぐらいですでに言葉が面白くてしょうがなかったんですよ。母親が使う自分の知らない言葉、父親が使う言葉とかすごく面白くてね。
 
 

2023/10/27 スイッチインタビュー「山里亮太×古舘伊知郎」EP1より