強烈な存在感を放つ俳優・片桐はいりは、今年でデビュー40年。
子どものころは「舞台に立つなんて自分とは無縁だ」と思っていたこともあったが、大学で演劇部に入ったことから俳優・片桐はいりの人生が動き始める。
――――――――――――
片桐:何か演じたいとか、自分じゃないものになりたいみたいなことは小さなころからなんとなくあったので、舞台に出たら“他人”の役、しかもその時アガサクリスティーの戯曲だったので「キャサリンです」みたいなことを言わなきゃいけなくて。
初舞台で“キャサリン”になるんだったら「血とか逆流して全部入れ替わっちゃうような体験ができんじゃないか…!」とわくわくしてやったらあまりにつまらなくて。「なあにこれ…もうがっかり、、、」ってわぁっと泣いてたら、新人の女の子たちが「初舞台で感動して泣いてる!」と言ったんだけど、そういう涙じゃなくて「何これつまんないーーもう何にも面白いことないーー」という涙だったんです。笑
でもそこから「そんなはずない、そんなはずない」と思いながら、今もやってるんですけどね。笑
大学卒業後は劇団を経て、型にはまらない独自の表現を追求するようになった片桐。ほかの人が手を出さないような個性的な役を、次々に演じ続けてきた。
中野:いろんな役柄のオファーがあるんでしょうけど、その選択や、あるいは役を自分なりに変質させていくことはどうやってらっしゃるんですか?
片桐:笑。まぁ、さっきも話したように「普通の演技ができない」と言ったらなんですが…いや別にできないわけじゃないんでしょうけど、いろんな人がいるから人がやんないこと、やりにくいことをやった方がいいじゃないですか。お互い、得意なことをやった方がいいでしょ?笑。そう考えたときに、ある人の人生を着実に忠実に再現するとか、台本をより感動できるように表現する、ということにそんなに興味がなくて。
「変なことしたい」それだけの欲望だと思うんですね。そう言うとみんな馬鹿にしてんのかって怒られるかもしれないけど、何か面白いことをしたいっていうことしか多分私の中にはないので。
しょっちゅう言ってるんですけど「うん!?」「うぇ!?」って二度見したくなるというか、ビックリマークとクエスチョンマークが一緒になったみたいな。「ん、なんだ!?」っていう気持ちが一番、私の最上級の喜びなんです。
「!?」を求めてるから、それがある役だと「あ、やるやる!」と思うし、よく真似して怒られるけど、岡本太郎さんの「なんだこれは!?」っていうものが欲しいだけなんですよ私は。果たして俳優と呼んでいいんだろうかといつも思うのですが…。
中野:いいんじゃないですか、そういう俳優ということで。笑
片桐:私、そういう俳優ですよね。笑
2022/9/5 スイッチインタビュー「片桐はいり×中野純」EP2より