近藤麻理恵「片づけは“私が持って幸せになるもの”を見つける作業」

NHK
2022年10月3日 午後11:19 公開

片づけコンサルタント、こんまりこと近藤麻理恵。

2010年に発表した著作『人生がときめく片づけの魔法』は、独自の片づけメソッドで150万部を超えるベストセラー。

実際に触れてみて「ときめく物」だけを残すという斬新な片づけ法を記した著作は、世界40か国以上で翻訳される。人気を受けて2019年にはネットフリックスで冠番組がスタートすると、こんまりがアメリカ人の家庭を次々と片づける様子に世界中が驚がくした。

その番組はことし、テレビ番組最高峰のエミー賞を受賞。アメリカではコンドーという言葉が「片づけを意味する動詞」として使われるほど、大旋風が巻き起こっている。

のちに自らを「片づけの変態」と呼ぶこんまりは、5歳のころから片づけ特集の雑誌を読みふけり実践の日々を送る。中学生の時には「片づけ研究」と称し図書館の片づけ本を全部読破。片づけ=捨てるという選択肢を得てからは、自分の部屋だけではなく家族の部屋の中まで捨てるものを探すようになり、とうとう家族から「片づけ禁止令」が出されてしまう。行き詰まりを感じていた時、天命とも思える出来事が起きる。  

――――――――――――

こんまり:高校2年の時に、片づけノイローゼで失神してしまったことがあるんです。
 

春菜:えっ、倒れた?
 

こんまり:本当に倒れた。
 

春菜:当時の状況は?
 

こんまり:「今日捨てるものあるかな?」と思って部屋の扉をバーッと開けた時に、部屋の中のものが全部「見たくない、嫌い!」というような感覚になって。「もう片づけしたくない」って思った瞬間に何かプッって切れちゃって、倒れ込んでしまって。

そこから誰にも気付かれないまま、2時間後くらいにむっくり起き上がって、パッと目を開いた時に急にひらめいたんですよ。「私、今までの片づけ法って間違っていたのかも」って。
 

春菜:へええ…。
 

こんまり:パッと見た時に「これ全部、私が残しているということは大切なものだよね」って。片づけって“捨てるものを探すこと”ではなくて、自分が持っている大好きなもの、私が持って幸せになるものを見つける作業なんじゃない?

つまり、持っていて“ときめくものを選ぶのが片づけ”なんだ!ってその時気づいたんです。
 
 

そうして「ときめき」という武器を手に入れて以降、数々の片づけ伝説を残しはじめる。

社会人から独立し、片づけをなりわいにして13年。

たくさんの人生をときめかせてきたこんまりは、心に残っているエピソードを短編集として出版した。

―――――――

片づけを仕事とする主人公の少女。ある日訪れた家は、足の踏み場もないゴミ屋敷だった。部屋の主は一人暮らしの中年男性。「捨ててはいけないものまで捨ててしまいそうで」と、なかなか片づけられないという。 

そこで少女が提案。「ときめかないものは全て写真に撮って手放しましょう」 

写真を撮り続けるうち、男性はあるものを発見する。かつて結婚していた頃、子どもに買ってあげた目覚まし時計…。 

片づけられなかったのは、現実を直視するのが怖かったから。しかし、時計を目にした男性の中で、何かが動き出す。 

片づけをすることで、人は思い出を、人生を、整理していくのだ。

―――――――  

春菜:実際にあったお話を物語にされたんですよね。
 

こんまり:そうなんです。今まで伺ってきたいろんなお客様のいろんなエピソードのエッセンスを交えながらお伝えしているので、かなりリアル。けれど物語だからスッと読みやすくなるようにしていて、実際に片づけをしたいという方が読んで、すぐ実践できるような形で物語にしてみたんです。
 

春菜:最後、「こういう出会いがあるから、この方は片づけしたかったんだな」っていうところにぐっとくる…。
 

こんまり:皆さんもそう。「片づけをしたい」とということは、必ず人生の中で「片をつけたいという“何か”がある」ということなんですよね。だから、実際に片づけすることで、自分の心と体を動かして、自分の環境を変えることで、人生が変わっていく。私は実際の経験で、片づけをすると人生が変わるのを確信しています。
 
 

2022/10/3 スイッチインタビュー「近藤麻理恵×近藤春菜」EP2より