日本のロックを変えたと言われる伝説のバンド「はっぴいえんど」。音楽史に残る そうそうたるメンバーの中心にいたのがz、音楽家の細野晴臣だ。
「はっぴいえんど」解散後は、坂本龍一、高橋幸宏とともに「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を結成。コンピュータを前面に押し出した斬新なサウンドが、世界を席けんした。
その後現在に至るまで、さまざまなジャンルに挑戦してきた細野。
今の音楽に対する思い、そしてこれから目指したい音楽とは。
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細野:今はもう、テクノロジーにちょっと距離を置いていますね。今のテクノロジーは「あれ?」と思うことが多いので、生演奏に回帰しているんです。
小林:うんうん。
細野:まあ音楽に限らず、今の時代は何だろうなあ…うまく言えないんですけど、本当に面白かった20世紀がどんどん遠くなっていくわけですよね。
だから、そういうものをもう一度聞いてきたんですけど、ことし(2022年)から何かが変わってきていますね。「さよならアメリカ」っていう気持ちもあるんです。かといって「こんにちは日本」でもない…「どこに行ったらいいんだろう」っていう。そんな感じですね、今は。
小林:これからどうなさるのかな。
細野:まあ、先のことあまり考えないでやってきたんで。僕の同世代の人たちは、引退宣言とかをする人もいるんです。でも、そんなことをする必要もないわけで、だらだらとやってきたので。ま、多分、倒れるまでやってるんでしょうね。
でも本当に、年を考えると十分やってきたじゃないかと自分なりに思うんですね。あとは趣味で、やりたいことをやるだけですね、ええ。
小林:うんうん。
細野:日本の音楽に、全く興味なさそうに思われているかもしれないんですけど、実は山田耕作とか北原白秋の共作、島倉千代子が歌ってる曲がすごい好きだったり、実は小学唱歌が大好きだったり。決して“アメリカ”だけじゃない、やっぱり“日本人”として何か、郷愁を感じる音楽があるわけですね。
例えば、歌謡曲の仕事が来て、曲だけ書いて提出するっていう時は“日本の情緒”が出てきちゃうんですね。自分でもびっくりしたんですよ。「あ、自分の中にそういうのがあるんだ」と。
決して邦楽ではないんです。『からたちの花』っていう歌が好きだなあとか。アイルランド民謡が好きなのとちょっと似てるんですけど。
小林:うんうん。
細野:今、その感じが蘇っていますね。リズムではない、何か“郷愁のある音楽”っていうのかな。非常にそれを今やりたいんですね。
2023/1/30 スイッチインタビュー「小林信彦×細野晴臣」EP2より