コロナ禍の自粛期間中に、俳優・斎藤工が出会ったのが「発酵の世界」。
微生物が有機物に働きかけることで生みだされる発酵食品は、素材そのものの持ち味を引き出すだけでなく、その健康効果にも関心が高まっている。
さらに斎藤は、発酵がもたらす「旨味を引き出すもの」と「腐敗してしまうもの」という二極の世界観を人間社会に重ね合わせている。「発酵と腐敗」の世界とは…?(2022年5月9日の「斎藤工×小倉ヒラク EP2」より)
小倉:発酵の世界を知って、映画や俳優の仕事などへの影響はありますか?
斎藤:僕は「腸活・菌活」と「クリエイティブ」ってイコールだとわかってきました。フィジカルとメンタルなどの“表裏一体”があって、食は本当にクリエイティブだという。
食と映画作りは“発酵”を起点に、より進化できると僕は思っています。そして日本特有のものになっていくんじゃないかという未来が見えた。
確か(対談相手の小倉に)初めてお会いした時に、「発酵と腐敗」はほとんど一緒だけれど「周りを腐らせるか」「周りのうまみを引き立てるか」という話をしましたよね。発酵と腐敗の大きな違いは、本人(の状態)というよりは「周りの状態」でわかるということが、(食と映画作りに)すごく繋がってくると思っていて。
僕が怖いのが、腐敗の自覚がない場合ですね。
自分の中では発酵に進んでいるつもりで、周りに害があるという事実を認めなければそれは腐敗ではないと本人は思っちゃう。発酵から腐敗に堕ちない2択の究極のゲームのような気もしていて、人生は。
今、映像業界で明るみになっているいろんな出来事を見ていると、確実に発酵とは呼べない状態があって。どこか見て見ぬふりをしてきた僕らの世代も含めて、どのように“発酵”に変えていくか具体的に考えないと(発酵に)間に合わないと思いますね。
小倉:良いものが生まれていかない。
斎藤:そうですね。映画が作られる現場やプロセスがオールドスタイル、負の遺産を引き継いでいるという実態があることをどう受け止めるか。「周りの状態」は、第三者も含めて、そこに聞く耳や眼差しを持つか。発酵のように具体的に能動的に改善していくことが今、本当に問われている。「発酵と腐敗」の間にいる時代と思うんですね。
僕は今、正解不正解は分からないけれど、ヒラクさんの提唱されていた発酵学という発酵の観点、微生物の観点で(時代を)見ることで、絶対に不正解ではない未来がおのずとそこにある気がしています。
EP1で小倉ヒラクさんが語った「心に残る言葉」はこちらから!