現代的な若い女性を等身大に演じ人気を集める俳優・モデルの飯豊まりえは、25歳にしてその芸歴は15年に及ぶ。
10歳でモデルデビューを果たした飯豊は、中学生で芝居に挑戦。次第に多忙な日々を送るようになった飯豊は、ある悩みを抱えるようになった。
飯豊:目まぐるしく、いつも新しい方たちとその時々で出会ってお仕事に向かっていって、入れ替わりが早いときに戸惑いを感じました。毎回大失恋をしているみたいな。
有賀:大失恋…。
飯豊:その時々にすごく愛情を持ってやりたい、取り組みたいなと思って。あと、一度にいろんな役をいただけた時は、同じ期間で何役かやらないといけない。求めていただくことはすごくうれしい。求められなかったら、自分の職業って、何て言うんですかね…そこで終わってしまって…ピリオドが。成り立たない。
有賀:人気商売でもありますからね。
飯豊:それで(人が)求めているものなどに答えていくうちに自分を見失ってしまって。
有賀:何かきっかけがあったんですか?
飯豊:はい。映画の撮影があって、毎日怒られていて。「本当に監督の求められていることだけをやろう」としたときに、今まで好きだったことだったのに、急に「あ、苦手だ」と思ってしまって。もう続けられないと思ったら何かすべて崩れ落ちちゃって、アフレコで62シーンをとり直すことになったんですよ。笑
有賀:62?すごいねえ。
飯豊:そのときは合わせすぎちゃったというか、求められているところにいって自分じゃなくなって、結果良くなかったんですよね。
有賀:ちょっと性格が似ているかもしれないですね。私もとにかく、現場全体がうまくいくこととか、この仕事で求められたことをやる自分がなんか楽しいと思っちゃう性格。
飯豊:究極もう倒れてもいいと思っちゃうというか。笑
有賀:そうそうそうそう!ついついそうやっていくうちに、元にあった自分はどこにいたのかな?って感じる時も多々ありますね。
飯豊:ここはどこ?私は誰?みたいになってしまうときありますよね。
悩んでいた飯豊が、そこから抜け出すきっかけとなったのが料理。
一人暮らしも始め、自分で時間管理をし、大好きな食べ物と向き合う時間を作ることで“自分”を取り戻すことができた。
すると、まわりとの接し方にも少しずつ変化が出てきたという。
飯豊:自分で食材を選んで、料理をして、自分で食べる。食べるために働いているのに、食べる時間がなくなっていると、「それって豊かじゃない」と思って。料理をしていると、「これをやってみよう」「これは自分が好き」というのを、ゆっくり、ゆっくり試すことができて。で、食べていると、誰かと会話したくなって「これおいしいから食べてみて」って。そしてだんだん、自分の本音をポロっと言っちゃうときがありませんか?
有賀:出てくる!料理って小っちゃな行為というか。映画とかはスタートしてから出来上がるまでめちゃくちゃ長いと思うんですけど、料理って今日作って、ヘタしたら30分ぐらい後にはできているから、小さくそこで完結できて、その結果が自分をすごく喜ばせてくれる。何かそこでウキウキってした気持ちになるし。
飯豊:そうです。誰かとご飯を食べることで、なんだかリハビリみたいになっていたんです。本当の気持ちを出すのがとても怖いけど、大好きな食べ物の前では素直になれて。
有賀:じゃあ、そういう期間をしばらく経て、だんだん自分のやりたいことがわかってきて、仕事場でもできるようになってきたっていう感じ?
飯豊:食べることで、自分の気持ちを素直に、正直に伝えることができるようになって。「自分は余裕がなくなってしまうから、一気にいろんな役をやるのではなくて、事前に準備をして、1つのものに集中してみたい」とか、そういうことを言えるようになって。
有賀:すごい大進歩。全然世界が違うでしょ?
飯豊:そうなんですよね。やっぱり暮らしって大事ですよね。仕事して、すぐ次の日の準備をして、お風呂に入って寝てしまうという繰り返しだと、なかなか自分を忘れてしまう。
有賀:さっき「相手の人のために」と言っていたけれど、それは仕事においてはものすごく大事なことだと思うんですね。仕事って基本的に人のためにやるものだと私は思っているんですけど、“自分の希望”みたいなものが入っていかないと、長く続けることはできない。より良い関係を作ることもできなくなるから、暮らしでバランスを整えるのよね。
2023/4/28 スイッチインタビュー「飯豊まりえ×有賀薫」EP2より