「めまい」のトリセツ

NHK
2023年1月12日 午後7:54 公開

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【まずはチェック!タイプ別めまい】

●めまいの原因の多くは内耳に

めまいの原因の多くは、耳の奥にある内耳の異常。どんな異常が起きているかで、症状や対策が異なってきます。

めまいの原因の多くは内耳

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<タイプ1>最も多いめまい

□ぐるぐる回る もしくはふらふらするようなめまい

□5分以内に治まる

□頭を動かしたときに起こる(寝返り、寝起き、首を上下に振るなど)

□めまい以外の症状が一緒に起こらない(難聴、耳鳴りなど)

すべて当てはまるとBPPV(良性発作性頭位めまい症)の可能性大→【トリセツ01】へ

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<タイプ2>治りづらいめまい

□ぐるぐる回るようなめまい

□1回のめまいが10分~数時間程度続く

□めまいのとき 耳の聞こえづらさが伴う

すべて当てはまるとメニエール病の可能性大→【トリセツ02】へ

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<タイプ3>原因不明のめまい

上の2つに当てはまらない場合は、【めまい診療最前線】へ

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注意!命に関わる危険なめまいについて。めまいのなかには脳卒中などの兆候の場合があります。「物が二重に見える」「手足がしびれる」「ろれつが回らない」などの症状が一緒に起きている場合は、すみやかに医療機関(救急外来、脳神経内科、脳神経外科など)を受診してください。

【トリセツ01 最も多いタイプの原因&対策】

●原因は内耳の中で欠けた耳石

めまい診療で最も多いのは、耳石 が原因で起きるBPPV(良性発作性頭位めまい症)。内耳には頭の傾きを知るための「耳石」と頭の回転を知るための3つの「半規管」があります。耳石の一部が欠け、半規管に入り込むことで脳に異常な情報を伝えてしまい、めまいが起こるのです。

<耳石が欠ける要因>

①加齢 ②女性ホルモンバランス異常(カルシウム代謝異常) ③ストレス ④内耳の病気 ⑤頭部外傷 など

半規管と耳石

●すぐに治る治療あり!

BPPVは頭を適切に傾けることで半規管から耳石を追い出す「耳石置換法」で治すことができます。耳石置換法は、耳鼻咽喉科専門医、めまい相談医(日本めまい平衡医学会に認定されためまいの専門医)などが行うことができ、およそ8割の人が改善します。

耳石置換法。頭を傾けることで、めまいがしているときに起こる目の動き(眼振)をとらえ、どの半規管に耳石が入っているかを見つける。

●自宅でできる!耳石くずし体操

半規管内の耳石は頭を動かして崩す!

BPPVは再発しやすいため、自宅でできる耳石くずし体操(Brandt-Daroff法)がおすすめ。半規管に入った耳石を動かすことで、影響がでない大きさに崩せると考えられている。

  <耳石くずし体操>

下絵の➀~⑦を5回繰り返して1セットです。朝晩1セットずつ行います。1週間程度で効果が現れます。1か月で4~6割の人が改善します。  

※注意※ 体操中にめまいがおこることがあります。めまいが30秒以上治まらない場合は体操をやめ、医療機関を受診してください。首や腰に痛みを感じる方はお控えください。

耳石くずし体操のやり方

大きな写真で見やすい!<耳石くずし体操ハウツーページ>はこちら👇

【トリセツ02 治りづらいタイプの原因&対策】

●原因は内耳の水ぶくれ

これまで効果的な治療法がなく、治りづらいめまいと言われてきたメニエール病によるめまい。過度な身体的・精神的ストレスによって、脳から「水をためろ」というホルモン(バソプレッシン)が分泌され続けることで、内耳に水ぶくれができてしまい、めまいが起こります。近年は、MRIで水ぶくれの様子がわかるようになってきました。

●治療法の選択肢が増えている

現在 メニエール病では次の治療がある。① 生活指導・ストレスのない規則正しい生活・水分摂取・有酸素運動・暗くして寝る ➁ 薬(利尿剤など) ③ 内耳加圧法(中耳をマッサージする) ④ 手術(内耳から水を抜く)奈良県立医科大学附属病院めまいセンター センター長、北原 糺さん

●今注目!水分摂取療法

水分を摂取することで、脳からの「水をためろ」という指令を減らすことができる仕組みが注目されています。この仕組みを利用して開発されたのが、「水分摂取療法」です。

<参考>厚生労働省によると1日に推奨されている水分摂取量は1.2L。すでにメニエール病の診断を受けていて、日ごろ水を飲んでいない人は試してみてはいかがでしょうか。

メニエール病の治療として水を飲む。1日に飲む量は1.5L~2.5L。 (体重1Kgあたり35mL)。注意!心臓や腎臓に疾患がある場合は体に負担がかかってしまうため、自分で判断せず、必ず医師の指導のもとで行ってください。水分摂取療法を考案した北里大学 医学部 神経耳科学 教授、長沼 英明さん

【原因不明タイプに朗報!めまい診療最前線】

●ポイント①最新の検査情報

2022年の4月にvHIT検査が保険適用に。わずかな目の異常を検知し、三半規管のどこに異常が起きているかがわかるようになってきました。現在100か所以上の医療機関で検査を受けることができます。

vHIT検査

●ポイント②最新の診断基準あり!

めまいの原因は内耳以外にもあります。なかでも近年、脳が原因で起こるめまいに診断基準ができ、診断と治療ができるようになりました。

ふらふらしためまいが3か月以上続く、過去に激しいめまいを経験、陳列棚を見ると起きるなどの場合は、PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)の可能性。片頭痛がある、30~40代の女性の場合は前庭性線頭痛の可能性。

●ポイント③最新の治療法!

今注目されているのが前庭リハビリテーションと呼ばれる治療法。めまいが起こる動きを繰り返すことで脳を慣れさせます。3か月以上続くめまいが対象

前庭リハビリテーション

【めまいに困ったときのめまい診療の受け方】

●長引くめまいはまず耳鼻科へ

めまい診療は主に耳鼻科医が行っています。なかでも、めまいの専門知識と基本的な診療技術を備えている医師を「めまい相談医」として日本めまい平衡医学会が認定しています。

●めまい相談医の探し方

めまい相談医は2022年12月時点で全国に800名以上います。日本めまい平衡医学会のホームページではめまい相談医を地域ごとに検索できるようになっています。

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