ニュース速報

#1 イカのトリセツ(2021年8月16日放送)

NHK
2021年8月16日 午後8:01 公開

★2021年8月16日放送「イカのトリセツ」

PDFでもダウンロードできます。
https://www.nhk.or.jp/program/torisetsu-show/torisetsu_ika2021.pdf

◆安全上のご注意

  • 生で食べる際は、アニサキスにご注意ください

  • 保存する場所は、冷凍庫など冷たい場所で保管してください

  • 吸盤が吸いついてくる場合がありますのでご注意ください

◆うまみを2.427倍にしたいときは

―イカのうまみの秘密は「筋肉にあり」

 ふにゃふにゃとしたイカ。MRIで検査したところ、脂肪がほとんど見当たりませんでした。イカは「筋肉の塊」だったのです。

  中にはこの筋肉を利用して、海面から飛び上がるイカも。その距離は30m以上にも及びます。

 こうした筋肉は、移動や呼吸の際に行われる胴体部(外套膜)の収縮によって鍛えられていきます。筋肉の中には、プロリン、アラニン、グリシン、グルタミン酸といったうまみ成分がたっぷり。しかし、強じんな筋肉に守られ、そう簡単には味わうことができません。

―うまみを引き出す方法は「イカミンチ」

 筋肉に守られたうまみを引き出す方法。それは「イカミンチ」。包丁で細かく刻むことで、うまみがあふれ出します。

   一般的な細切りにしたイカとイカミンチを用意し、舌が感じる「うま味成分の総量」を調べてみると、細切りが36.1mg/100gに対して、イカミンチは87.6mg/100g。実に2.427倍のうまみが引き出されていました。イカのミンチを引き出したいときは「イカミンチ」がオススメです。
→作り方は後半の「かんたんおいしい極上レシピ集」をご参照ください。  

~プチコラム① スルメの「噛めば噛むほど味が出る」は本当? 
 干しスルメイカは「噛むほどに味が出る」とよく言われます。就職活動の面接でも自分をたとえて、「私は、噛めば噛むほど味が出るスルメのような人間です!」と言う人もいるとか…。でもこれ、本当なのでしょうか?
 番組では「細切り」と「イカミンチ」の、舌が感じるうまみ成分量を比較して、2.427倍だと紹介しました。実はその際「細切りを30回噛んだとき」の舌が感じるうまみ成分量も、分析していたんです。その結果は76.1mg/100g。細切りの2.108倍でした。イカミンチには及びませんが、うま味成分量は確かに増えていました。これは歯でイカの筋肉を断ち切ることで、徐々にうまみ成分が染み出すからだと考えられます。
 今度イカの刺身を食べる際には、噛む回数を数えて味の変化を感じるのも楽しいかもしれません。一方の「イカミンチ」は、本来であれば30回以上噛まないと味わえない“うまみ”を口に入れた瞬間から味わえる方法です。こちらの食べ方もぜひ、お楽しみください。

~プチコラム② 超簡単な干物の戻し方
 実は干したスルメイカを、まるで生のような状態に戻す方法があるんです。その秘けつは、「重曹」。水1リットルに対して重曹おおさじ1を加え、スルメイカを一晩漬けると…プリプリ食感が復活します。これは、重曹にはたんぱく質を分解するパワーがあるため、乾物の皮や繊維を一部溶かし、身の内部に水分が浸透しやすくなるからなんです。さらに重曹のアルカリ成分で、アクやエグミもとれておいしさがアップするんです。

◆あなたが食べているあなたの知らないイカとは

―スーパーで最も売られているイカは「アメリカオオアカイカ」

 世界のイカはおよそ500種。日本では35種以上が食べられています。スーパーに行くとさまざまなイカ商品が並んでいますが、最も売られているイカは何イカなのでしょうか?そこで、あるスーパーを対象に、イカが含まれている商品を探して集め、DNA分析をする調査をしました。すると全59点のうち、56%にあたる33点に、 “赤い悪魔”と呼ばれるイカ、アメリカオオアカイカが含まれることが分かりました。(協力:水産大学校 若林敏江教授)

 実は日本近海のスルメイカは、気候変動などにより数年おきに不漁が来ます。その際に注目されたのが、大きい物で体長2.5mにもなるアメリカオオアカイカでした。1990年代に日本が主体となりペルー沖の漁場を開発。日本に浸透していったのです。アメリカオオアカイカは、日本人の胃袋を満たす、「救世主」のような存在だったのです。

―アメリカオオアカイカの特徴は「肉厚さ」と「柔らかさ」

①肉厚さ
 食べ物が豊富なペルー沖で育ち、さらに寿命も2年(一般的なイカの倍)。それゆえ身体は大きく成長し、身の厚さはスルメイカの2倍以上にもなります。

 ※上が一般的なスルメイカの身、下がアメリカオオアカイカの身

②柔らかさ 
 焼いたアメリカオオアカイカとスルメイカを噛んだときの「最大荷重(最も力が加わった瞬間の値)」を計測したところ、スルメイカは16.18ニュートン。一方のアメリカオオアカイカは7.96ニュートンと、スルメイカの2倍以上の柔らかさであることが分かりました。(協力:学習院女子大学  品川明 教授)

 アメリカオオアカイカの切り身は、「ロールイカ」という商品として販売されていることがあります。※中にはアメリカオオアカイカでないものもあります。

  ロールイカを使った調理法は、「簡単おいしい極上レシピ集」、「プチコラム③」をご参照ください

◆簡単おいしい極上レシピ集

①イカミンチ

【材料】イカの刺身

【作り方】 粗みじんにたたく                                       刺身や細切りと合わせて食べると、食感とうまみを同時に味わえます。かき揚げやパスタに入れるなど、応用してみてください。

②イカマヨトースト

【材料】イカミンチ 40g/食パン 1枚/マヨネーズ 10g/細切りのり

【作り方】①イカミンチとマヨネーズを混ぜて食パンに載せるトースターでイカが焼けるまで焼き、お好みでのりを載せる
※ゲソやひれをミンチにして使うと、イカの風味も増します。

③ジャイアント・アメアカバーガー

【材料】 4個分

・ロールイカ(10×10㎝ 1.5㎝厚) 4枚
・油      適量
・バンズ     4つ
・レタス     4枚

(つけ汁)
・牛乳     100ml
・薄力粉    大さじ2
・塩      小さじ1/2  
・市販のガーリックパウダー 小さじ1

〈衣〉
・薄力粉     200g
・コンソメ顆粒  大さじ1
・塩       小さじ1/2
・砂糖      小さじ1

〈オーロラソース〉
・たまねぎ(みじん切り) 40g
・ケチャップ   大2
・マヨネーズ   大2
・マスタード   小1

【作り方】

① ロールイカの裏表に格子状に切れ目を入れ、Aのつけ汁に15分程浸ける。

② 衣をバットに入れてスプーンなどでよく混ぜる。

③ ①のロールイカに②の衣をしっかりつけ、

  ①のつけ汁に戻し入れる。

  この作業を3回繰り返す。

  (衣がボテボテになっても問題ありません)

④ ③を180℃の油で3分程揚げる

⑤ バンズの下部分にオーロラソースを塗り、

  ちぎったレタス、④の順に重ね、

  さらにオーロラソースを塗り上のバンズをのせて完成。

  お好みのパンやソース類、野菜をはさんで食べてください。

~プチコラム③ 絶品アメアカ・ステーキ

 アメリカオオアカイカの特徴である「肉厚さ」と「柔らかさ」。それを活かしたもう1つの絶品レシピがあります。世界を股にかけて活躍する人気シェフ、ケビン・ショークロスさんが教えてくれました。フライパンで火が通るまで焼く、シンプルな料理です。ポイントは、表面に沢山の切れ目を入れること。そうすることで、ソースの味がなじみやすくなります。高タンパクで低脂肪、おまけに安い!お得で嬉しいステーキを、ぜひお楽しみください。

ケビン・ショークロスさん

◆あれ?おいしくないな?と思ったら

ーイカミンチの食感がない 
 刺身や細切りと一緒に食べることをオススメします。イカの食感とうまみを同時に味わうことができます。

ーアメリカオオアカイカが固い

 アメリカオオアカイカは、皮がついたまま販売されている場合があります。皮は分厚く食感も固いので、柔らかく食べたい場合は、剥いでから調理してください。

ーアメリカオオアカイカを加熱すると身が縮んでしまう

 イカの表裏両面に格子上に切れ目を入れてみてください。身の縮みや反りを軽減することができます。

◆隠し機能

ー透明化

※写真は番組からです。
 イカは、皮膚に備わっているタンパク質(リフレクチン)の配置を変えることで、光の透過率や反射率を制御し、周囲と同化したり、透明化したりします。2020年、カリフォルニア大学の研究チームは、このタンパク質を人間の腎細胞で生産することに成功。この腎細胞を塩化ナトリウムに浸すと、その濃度によって光の透過率が変化することも分かりました。この応用が進めば、人間がその姿を周囲の風景に溶け込ませ、カモフラージュできる日が来るかもしれません。
  Chatterejee et al., 2020 Cephalopod-inspired optical engineering of human cells nature communications  

―自己修復機能

Veikko Sariola et al., 2015 Segmented molecular design of self-healing proteinaceous materials SCIENTIFIC REPORTS

 イカが獲物を捕らえるために使う吸盤のリング(角質環)※画像上には、自己再生能力が備わっています。このリングのタンパク質を元に開発されたのが、自己修復する新素材※画像下。2つに分断しても、水を1滴かけて45度で温めるだけで容易に修復し、強度も分断前と同じ程度に戻ります。その上、弾力性や柔軟性も備えています。ロボットの人工筋肉などへの応用が期待されています。

―巨大化

copyright The Future is Wild 2002 

 第一線の科学者たちの研究によると、2億年後、イカが陸地に進出する可能性が考えられています。“メガスクイド”と名付けられたこの未来のイカは、強じんな筋肉を持つ腕が円柱形のがっしりした脚に進化、重い体重を支えるようになっています。体高はゾウと等しく3mほど、体重は8トンに及びます。触腕を伸ばし、植物や果物、樹上の生き物を捕食します。イカは遠い未来、巨大な陸生生物となる可能性を秘めているのです。