2023年7月16日放送「新型コロナ感染拡大は 5類移行でどう向き合う」(後半)

NHK
2023年7月25日 午後6:15 公開

再び経済を止めたり行動制限をしたりすることは考えられない、という声が相次ぐ中、議論はこれまでの感染拡大の波に社会がどう向き合ってきたのか、教訓と残された課題へと進んでいきます。コロナ禍の3年半で私たちは何を学び、今後にどう生かしていけばいいのでしょうか。

ここまでの議論は⇒⇒「新型コロナ感染拡大は 「5類」移行でどう向き合う」(前半)

●コロナ禍3年半の教訓は 「5類」での課題は

新型コロナウイルスの感染拡大が始まったのは2020年の春。その後、国内では感染状況に応じて緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返し出され、感染拡大の防止と社会経済活動の両立を模索してきました。5類に移行するまでに、国内の感染者は累計で約3380万人、死者は7万4000人を上回りました。

(この3年半で何がわかったのか)

尾身:

日本の場合を外国と比較すると非常に分かりやすいんですよね。日本の国の開きがちょっと遅れた。実はそこには理由があって、日本の場合はパンデミックの前半にかなり死亡者を減らしたんです。ヨーロッパはもう前半にバーッといって、文字通りイギリスも医療崩壊が起き8割の人が感染した。日本の場合には、かなり前半の時にしっかりやったために死亡者の数を減らすことができたんですよね。一生懸命やったために、まだ感染者が5割もいってないんですよね。これからその5割の感染者の人が感染する可能性。しかし、感染自体はそれほど今は重大じゃなくて、やっぱりこの中から死亡者が出るということですね。特に高齢者の人。したがって、これから経済を動かす、教育を動かす中で今一番求められるのは、高齢者の死亡をどれだけ防ぐかということだと思います。

(死者数 第8波が多いのは)

尾身:

死亡者の数は、第5波以外はずっと増えている。今度感染者の数、それが感染者の数ですかね。これは第8波の方が第7波よりも少ないんですね。実はこれはもう5類になるということで全ての報告がされているわけじゃないんで、実は我々の判断は第8波の感染者数は第7波より実態は多かったと思います。したがって、致死率はどんどん減っている。良いことですよね。ところが、感染の伝播力、死亡者の数は、感染者かける致死率ですから致死率は同じ、あるいは下がってもこっちが増えている。そのことが今のこのずっと第8波まで死亡者数が増えているという事で第9波はどうなるかが多分一番大事なところだと思います。

(死者数の把握は)

尾身:

それはさっき坂本さんがおっしゃったように、現場の方は毎日見てるんで、現場の感覚っていうのもあるんですよね。今は入院の患者さんが増えてるんですよ。実は正確な数は分からないけども、傾向は増えてるんじゃないかっていうのは分かるんで、そういうところでやるということだと思います。

村井:

実は2類の時は亡くなった方は全部報告したんですけども、5類になりましてから、定点で一定の病院の患者数しか発表してませんで、亡くなった数は分からないんです。報告してないんです。したがって、コロナで亡くなった方がどれくらいいるのかっていうのが、正直今は分からない状況になっています。1つの病院でどれくらいの患者が出ているのかという概略の数しか分からない。ですから、テレビをご覧の方達に是非お伝えしたいことは、コロナで亡くなった方の数が表に出てこないので、油断をしないでいただきたいということです。必ず、特に高齢者の方は、コロナにかかると入院する可能性が高い。入院すると重症化する可能性があるということで、高齢者の方、また基礎疾患のある方は、必ずワクチンを打つといったような対策を自らやっていただきたい。これはお願いしておきたいなと思います。

(高齢者の命を守るための制限は)

髙口:

それが一番つらかったと思いますね。まず、先ほど申し上げたように、介護職員たちは自分のプライベートを制限するからスタートし、そしてお年寄りとご家族の面会制限、行事とか外出とか一切制限し、そしてボランティアさんや地域の方々も遮断されたということですね。人間関係を守るのが介護でありながら、人間関係を遮断することが感染症対策という矛盾の中で、迷いながら仕事をしていました。ただ、現実ターミナルステージ(終末期)の方がごく穏やかに看取りを希望されているのにコロナの時期だからといって、本当一番大事な時期にご家族に会えない、手も握れない、中でも陽性で亡くなられた方はビニール袋で運ばれ、亡くなられても家族と手を握ることもできないような状況を見ると、何やっているのかなってすごくつらかったし。それから、認知症のお年寄りのケアで一番しちゃいけないのは行動制限を日々しなきゃいけない。何より認知症の方が年の単位で家族と会えないなんていうのは、もうありえない。どんどん弱っていくのを見ながら自分たちの介護って何なんだろうっていうのを改めて考えさせられたこの2年、3年だったと思います。

(行動変えるための発信は)

坂本:

コミュニケーションに関することは今も課題があると思います。感染や重症化するリスク、それを防ぐための対策って、もちろんその地域での流行状況、あと一人一人が想像している目の前の場面とか、ワクチンを接種をしたかしないかといったことにグラデーションがあるんですよね。先ほど尾身先生に解説していただいたことって、本当にリスクの考え方。今じっくり時間をかけて聞くことができてよく理解できましたけど、なかなかそういう機会が少なくて、リスクがグラデーションで捉えられていると、柔軟な感染対策の選択が可能になります。ですけれども例えば政府、あるいは政府の専門家のご説明では、リスクや対策がきちっとグラデーションで語られても、例えば政治家の方ですとか、マスコミから発信されるときに、やるやらない、正解不正解みたいな二項対立、医療か経済かみたいな二項対立で発信されることが非常に多かったと思うんですね。そうした発言が、専門家の知見を踏まえたものなのか、政治的な判断を行った結果なのか、説明が必ずしも十分だったと言えないんじゃないかなと私は思っています。これからやっぱりコロナとはつきあっていかないといけないんで、一人一人が自分とか周囲のリスクに見合った対策を柔軟に選択できるような丁寧な情報発信はますます必要だと思います。

(行動制限の難しさは)

中空:

難しいですね。今まで私たち体験したことっていうのは生かしているかってことは考えなきゃいけないと思うんですね。例えば、コロナ禍になってオンライン診療をもっとやろうよって出ましたけど、オンライン診療は根づいたかと言われるとそうでもない、もっと薬剤だって家に宅配便で届いてもいいんじゃないかって話がありましたけれども、そんなに動いていなくて、教育だってどうですかって言われたら、オンライン教育っていうのはもっとうまくいって、北海道に授業が東京で受けられる、東京の授業が沖縄で受けられるみたいなことがあっていいんだと思うんですが、やっぱりまだ一部にとどまってしまう。やっぱり私たちは喉元過ぎれば熱さ忘れるところがあってですね、個人の動きというのが本当にさまざまなことっていうのをちゃんと励行できて遂行できているか推進しているか、それは個人の自由だけではなくて、国や行政やいろんなところがちゃんと後押ししているかっていうことも含めて考えとかなきゃいけないと思います。

(自治体トップの情報発信の重要性は)

村井:

私それすごく感じました。私と仙台市長が並んで記者会見をして、みなさん出歩かないでくださいって(言うと)本当にピタッと止まるんですよね。ですから、首長の果たす役割の大きさは、あの時ほど感じたことはございませんでした。重要なのは、2類と違って5類はインフルエンザと同じような対応になりますから100%ほぼ正しい情報が得られるわけではなくて、大体の統計といったような形で発表になりますけれども、こういったものであったとしても、専門家の先生のご意見を聞きながら、しっかりと情報発信していくのは極めて重要だろうなと思っております。

(コロナ感染症に対する見方は)

尾身:

実はこれはちょっと逆説的なんですけども、今回のパンデミックの前半は今よりもいろんなことが分かってなかったわけですよね、不安だ。ところが社会のある意味じゃ一体感はその時があったんですよね。ところがだんだんと情報が得られることになっていろんなことが分かるとむしろ、まあいろんな意見が出てきて、それはやっぱり、先ほど経済と社会、医療とかっていう話、バランスをとることが大事で、実は今の状況をひと言で言えば、経済の人たちが見る景色と、医療関係者が見る景色がちょっと違うんです。リアリティーは一緒ですよね。そういう意味では私は、これからはコミュニケーションが大事で、今回もいろいろ学ぶことありましたよね。これから、新たには少し相手が違う人たちがどう思っているのかは少なくとも想像はできるんで、今回のような分断みたいな関係がないようにするのが次回の私は教訓ではないかと思います。

坂本:

おっしゃるとおりだと思います。医療か経済かじゃなくて、やっぱり今回のようなパンデミックが今後も起こるといわれていますけれども、そういうときって、共倒れになるリスクがすごく高い問題であるにもかかわらず、どうして対立しているんだろうっていうのはずっとこの3年半を通して感じてきていたことでした。亡くなる場面であっても、実は面会がだめだっていうことであったわけではなくて、やりようによっては会うことのできる方法があったわけなんですよ。だからそのコミュニケーションの問題って、一般市民の中でということだけではなくて、医療介護界の中でも、もっと柔軟な対応に関する積極的なコミュニケーションがあって、幸せな予後を過ごしていた患者さんも本当多かったんじゃないかなというのを、これは私は一人の専門家として大いに反省する部分です。

(「5類」で医療の受け皿増えたのか)

坂本:

コロナは感染力が非常に強いので、大部屋で4人部屋であったり6人部屋であったりするところに、コロナじゃない方と一緒にその方を入れるってことがまず難しいんですね、周りにうつってしまうので、クラスターになる。コロナの方を受け入れようと思ったら、空床を作らないといけない、ベッド数を減らしたり、あるいは数少ない個室に入れないといけない。そこに対応する人員もふだんよりちょっと多かったり、あるいは個人防護具などのものが必要になる。クラスターが起きた場合には検査をしなきゃいけないけど、その検査の費用なんかも場合によっては病院の持ち出しになると言ったようなことで、やっぱりなかなか(受け入れても)いいですよっていうわけにはすんなりいかないところも多いんじゃないかというのと、あと自分のところで受けられなかったときに、今行政の調整がないので、自力で探さないといけないですね、入院先を。今はまだなんとかなっていても、今後は入院患者が増えたときはかなりの困難が生じるんじゃないかなと。行政による入院の調整ってやはり5類になったからといって、全て病院での自助努力でというのは感染状況によって難しくなる可能性があると思っています。

(「5類」移行の懸念や心配は)

髙口:

そうですね。特にターミナルステージの方がね、穏やかに過ごしたいと言っている、もともとは思ってらっしゃった。でもコロナになった途端、ご家族はコロナだけでは死なせたくないとかですね、コロナだから1回は病院で診てもらいたいとか、そういう気持ちに何か心情的にやっぱりなられるんですね。で病院に行っちゃうと、また完全に面会謝絶だし、ビニールだし、という状況でしたけど、結果的にですね、病院は断るんですよ。そして訪問診療の先生であっても、コロナって聞いただけで(診療に)来ない先生だって出てきちゃって、そしてあげくに施設で見ろってなる、在宅で頑張れっていう、その中でどんな医療だってどんな処置だって生活が成り立たないと立ち行かないのに、最も身近にいる在宅ヘルパーが全然無視されちゃったって、ヘルパーは最も重要な存在だったのに、すごく扱いが低かったというか、ずさんだったっていうのがあって、そういうことはすごく感じていたので、でもこの経験で私はコロナでも在宅でも施設でも見られることは分かったんで、ぜひ介護の現場では頑張りたいと思うけれども、ただ家族心情として、1回は病院に行きたいとか、ちょっとは先生に診てもらいたいっていう、その気持ちには、医療は応えてほしいなと思いました。

村井:

皆さんおっしゃっていることそのとおりだと思います。宮城県は最初にまず患者さんがかかるのが小児科、内科になりますので、1000ある宮城県の病院の中で、患者さんを診てくれるという病院が750です。まだ250は意思表示をしてくださっておりません。その数をどんどん増やしていかなければならないですけど簡単にいかない。スタッフがコロナにかかったら大変なことになるというのと同時に、やっぱり経営問題というのがあるんですね。コロナのときは2類の時は、非常に手厚い支援が国からあったんですけれども、これがインフルエンザと同じようになったらどうなるのかというのは非常に病院が心配されています。例えばコロナの患者を診るといっていた病院で、患者さんがもう個室で診られなくなったら多床室を使わなければいけません。1つの部屋で複数ベッドのあるところに患者さんを入れると、そこにはもう他の患者さん入れられなくなりますので、来年の春の診療報酬の改定のときにしっかりと、手厚い支援をしていただけるようなことも知事会として申し入れをしようと思っています。

尾身:

5類になるということは実は、保健所から医療、それから国から市民へと、こういう変化ですよね。この変化は実はかなり激しい変化ですよね。したがってわれわれ専門家はずっとこの議論をするときに、段階を踏んでしっかり準備をしてから移行してくださいと申し上げてきたんだけど、実は今起こっている問題はまさにそうなんですね。医療機関はなるべく参加したいけど、まだいろんなところで、準備ができてないということで、なかなか思うようには進まない。そういう意味ではこれをどう思うか、今回の3年間。実は準備不足だったにもかかわらず、やっぱり市民だとか医療関係者のかなり属人的な努力で乗り越えてきたと思うんですね。その部分は日本は強いんだけど、さっき言った遠隔医療をどうするかとか、こういう今落ち着いてる時にじっくり考えて、根本的なこともしないと、ただ現象に対症療法だけではなかなか難しいんじゃないかと私は思います。

●コロナ予算 成果と課題

新型コロナ対策では、これまでさまざまな分野に巨額の予算が投じられてきました。会計検査院によりますと、令和元年度から3年度にかけて、経済雇用対策に50兆円余り、感染防止策に15兆円余り、地方自治体を支援する地方創生臨時交付金に9兆円余りなどが支出されています。

(受け止めは)

村井:

非常によかったと思います。この財源がなければ恐らく、対応はできなかったと思いますので、私は非常に評価をしております。このあとの来週ですね、行われる全国知事会議でもですね、この地方創生臨時交付金といったようなものを、さらに維持していただけるように政府に要望しようということを皆で決めたいと思っています。

(必要な対策が必要なところに届いたか)

中空:

そうですね。そこが大問題だと思います。村井知事が地方創生臨時交付金もう1回要求と言われたあとで言うのもなんなんですけど、やっぱり早く正常化、平時化しなければいけないものはあると思うんですね。会計検査院の報告で、そこに出ている分だと77兆円ぐらいですか、3年間の間に、コロナ関連予算というのは、114兆円使ったといわれています。このうち使途不明金というか、会計検査院が追えなかった金額も6兆円出てきているんですよね。これはもう報告されています。6兆円ないってどうなっているんですかという話だと思うんです。ですのでコロナに対して、使った予算というのが本当にうまく使えていたか、お金は積んだけれども回っていないものはなかったか、それから十分なお金が行き届いたか、必要な人にいったか、必要じゃなかったとこに余っているものがあるんだったら、それは余っているものとして新たな予算として使うべきである。さまざまな問題を提起していると思います。今できるだけ早くコロナのところからの問題点というのを抽出して、来るべき、来てはいけないですけど、次のパンデミックにどう備えるかということを考えなければいけないと思います。

(支援なくなった後の経済・対応は)

村井:

急にブレーキを踏むということはやっぱり不可能だというふうに思います。私のところにも宮城県の事業者の方から、これから先非常に苦しくなってくるという声も確かに届いているのも事実だと思います。ただいつまでも税金を使って、ずっと支え続けるのも私は不可能だと思います。やはり今回は初めてのパンデミック、戦後初めて経験したパンデミックでしたので、どうしてもいったん全部止めてしまわなきゃいけなかった。しかし今回私はコロナの教訓として今の我々の技術力ではですね、科学技術力では、感染症を全て止めることは不可能である。やはり社会経済を回しながらですね、対策を打っていくということのほうが現実的であることを学習しましたので、今後はやはり社会を回しながら、そして税金をできるだけ抑えていくような、そういう施策を考えていく。そのためにも先ほどおっしゃったように今回のことをしっかりと、これだけの巨額の財源をどう使ってどういう効果があったのか、どこに無駄があったのかということはしっかり検証していくべきだと思いますね。

(医療への支援 費用と効果は)

坂本:

確かにコロナの方を受け入れるために、どうしても空床を確保しないといけない。病院は9割以上の稼働率がないと、なかなか人件費とか材料費を賄っていくのは厳しいところなんですが、その空床が生じてしまうことによる経済的な損失の補てんがあったということですとか、あと陰圧にする、あるいは空気清浄機を買うといった換気の改善を中心とした設備のための補助金などがあったのは非常にありがたかった部分はあります。ただやはり医療従事者も生活者なので、流行の波が来ると欠勤が増える。そしてどうしてもやはりクラスターが起きやすい環境であるといったことで、そうした不可抗力によって業務を縮小せざるをえなかった病院、介護施設もたくさんあった、特にオミクロン株が出てきてからは。そうしたことによるその経済的なダメージというのはかなり大きなものがあって、まだそれを引きずっていて、かつまた今後もまた感染者が増えてくるという事で、どういう人を仕事に戻すのか、働く人をなるべく確保する。でもクラスターを起こしてはいけないという難しい判断がやはりまだ続いています。

(介護現場は)

髙口:

病院と施設を比べたら、やはり施設は弱かったとは思うけれども、後半改めてコロナ陽性の人であっても施設で受けて見届けるということをやったわけですから、そのことの評価は改めてしていただきたいなっていうのはあります。そしてやはり生活基盤である在宅のヘルパーたちがいかに頑張ったか、まだ検査も前の人たちの家に踏み込んでいくってことは大変なことだったし、本人は陽性じゃなくても家族が陽性の状態であっても、ヘルパーたちは頑張ったわけですから、病院がいっぱいになっちゃうんだ、施設も頑張るんだ、だけどおおもとは在宅の支援が必要なんだっていった時の、見えないヘルパーたちの評価をもっともっと高めてほしいなと思います。

(経済の立て直し 何が必要か)

中空:

今日はこのプロの方々にたくさん現場の声を聞いたわけですが、現場っていうのはそんなに頑張っていたんだと、ただ数字上見ると、日本ってコロナの必要な患者数分の病床はあるはずで、ここがとても悩ましいところで、一対一で対応できているはずではないかというのが多分経済側からの視点で、病院、直接医療に従事されている方はさまざまな事情があって足りない部分が出てくる。この現実のミスマッチをどうやって修正するかが一番大事なんだと思います。そして今みたいに落ち着いている間に。そのために必要なものはやっぱりデータだと思うんですね。さっき村井知事が、別の定点観測の件でデータの話をしておられましたけど、私もそのデータについては申し上げたいと思うんです。例えば医療データって、マクロの医療データがないとか、OECDのヘルス・エクスペンディチャーってありますけど、日本だけコロナの数字が入ってこないんですよね。ほかの国入っているのに。どうして比較できないんだってこともあります。こういったことが次々とあるので、データ不足によって、いろんな掛け違いが起きてる可能性があると思っています。ですのでこの少しでも落ち着いてる間に、こういった統計をきちんと整備すること。それによって、次にあってはいけないんですけど、次に備えなければいけないんではないかなと思います。

(ワクチン・飲み薬は)

尾身:

これはかなり巨額のお金を、税金を使って、これは改善するところもあると思うんですよね。まあおそらく国も試行錯誤をしたと思います。これがなぜこういうことが起きたかというと、今回先ほどのど元過ぎればという話があったけど、実は2009年に新型インフルエンザっていうのがあって、随分反省したんです。国も厚生省も。ところが残念ながらそこでの反省がほとんど生かされてこなかったというか、そういうことが実はしっかりしていれば、お金の使い方とか、医療のひっ迫をどうなるべく防ぐかということができるはずなんですけど、やってこなかったからどうしても対症療法になる、日本はみんな頑張ったから、何とか来たんですけど、やっぱり私は今ミスマッチという話がありましたけど、実はデータの不足はもちろんなんとかしなきゃ、そもそも日本の場合には保険、医療従事者が人口当たり少ないです。ICU(集中治療室)、そういうことをこれからどうするか、今しっかりと議論するべきだと私は思います。

(これまでの教訓どう生かす)

髙口:

私はパンデミックっていう言葉が初めて日本にも来たんだなっていうのを実感したんですけども、そのパンデミックの一番の敵は、不安に駆られて思考停止になることなんだっていうことが、もう今振り返っても過剰だったんじゃないか、ちぐはぐだったんじゃないかってこといっぱいあるけど、その時はもう不安で不安でみんなと同じにしなきゃ落ち着かないみたいな、で思考停止っていう状態、そのことがあって、ですからもしこれから第9波とか同じようなことが起きるんだったら、もう1度しっかり見てしっかり聞いて、そして感染症のための感染症対策じゃなくて、人間のためのお年寄りのための感染症対策を1つ1つちゃんとやっていこうっていうのを、コロナから教えてもらいました。

坂本:

短期的にはこれから起こってくるかもしれない医療ひっ迫、中長期的には未来にまた必ずパンデミックは起こるといわれていますので、それに備えた医療提供体制がひっ迫しないという、まあそのためには何をしたらいいのか、医療提供体制がやっぱりひっ迫してしまうと、流行している感染症以外の病気で助けられない人が出てきてしまい、そしてそれがやがてまた経済にも影響があると思うんですよね。流行している感染症とどうやってうまくつきあいながら生活をしていけばいいのか、過剰でもない、過少でもない、その柔軟なメリハリのある対策を行いつつ、そして医療を守っていくという、そのために医療者に何ができるのか、そして行政からどういった支援が必要なのか、金銭的なことだけでなくて、そのコミュニケーションという部分ですね、非常に大事だと思います。今回の教訓を活かしながら、今後、中長期的にも体制を整えていくということは必要だと思います。