2022年5月8日「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」(前半)

NHK
2022年5月9日 午後8:45 公開

子どもや若者の幸せについて考えるNHKのプロジェクト「君の声が聴きたい」に参加した今回の日曜討論。日本の子どもを取り巻く現状や課題、そして社会や政治に次の世代の声をどう反映させていくのか、野田こども政策担当大臣と専門家、現場で支援活動を行う団体の代表と共に考えました。前半、日本の子どもを取り巻く現状や、経済的な課題について議論しました。

出演者

こども政策担当大臣                      野田聖子

日本総合研究所上席主任研究員  池本美香 (子ども・子育て政策が専門)

NPO法人パノラマ理事長            石井正宏  (学校で孤立防止・居場所支援に取り組む)

ゆめさぽ代表理事・モデル         田中れいか(児童養護施設の経験をSNSなどで発信)

キズキ代表                   安田祐輔 (不登校・生活困窮への支援事業を展開)

日本の子どもを取り巻く現状は

今回のプロジェクトが立ち上がったきっかけの1つが、ユニセフによる調査結果です。生活満足度と自殺率を元にした子どもの「精神的幸福度」で日本は先進38か国中37位だったのです。

その背景や理由を探るため、プロジェクトでは10代から20代の若い世代、全国1万人を対象にアンケートを行いました。その中で「あなたは自分の将来に期待を持てますか」と聞いたところ、「期待を持てる」と答えた人は45.2%。一方、「期待を持てない」と答えた人は26.9%。「どちらでもない」は27.8%でした。

(日本の子どもの精神的幸福度の低さとアンケートの結果をどうみるか?)

野田:

こういう子どものアンケートというのは、なかなかこの国では見ることも聞くこともできないということで、ようやく子どもにフォーカス、焦点が当たってきたいい兆しだと思います。「期待を持てない」と言った子どもたちがオレンジ色の「期待を持てる」ようにするために私たちが声を聞く場を作ること。これが子ども真ん中政治の第一歩だと信じています。

(「期待を持てない」という答えが4分の1については)やはり1つには、子どもが子どもということで、この国では自分の意見や権利が主張しづらいということと、あとはやはり、なにかあればすぐ親に相談するとか、親が責任を持たなきゃいけないっていう閉鎖的な状況になっているので、今後はやっぱりそういう狭い中にいる子どもたちを解き放って、多くの大人であるさまざまな人たちに触れることによって、いろんな希望を見出せるような取り組み、そういう社会を作っていかなければならないと思っています。

田中:

率直に悲しいなという気持ちと、ちょっと共感できる気持ちがあります。この幸福度が低いという話ですが、私自身は正直施設で暮らしている間、自分が幸せとも不幸とも思ったことはありませんでした。施設を出て、施設出身者が弱者だとか可哀想だとか報道されるのを見て、初めて自分は可哀想なんだとか、不幸な存在なんだというのを知って落ち込んだことはありました。この幸福度というのは恐らく、外からの情報によって大きく左右されることがあるのではないかなと思っています。なので、この現状を取り巻く日本の社会状況というのが、子どもたちにとって閉塞感だったり、苦しいなということだったり、影響を子どもたちに与えているんじゃないかなっていうふうに思っています。なのでアンケートで期待が持てるという回答が45.2%あるのは、逆にポジティブに受け止めています。

安田:

期待を持てないという声が、やはり想像するよりも多いのかなというふうに感じます。ただこれは私たちが不登校の子どもたちや生活困窮世帯の子どもたちを支援する中で非常に感じていることですね。

またデータでも、小中高の不登校の数、この10年で2倍ぐらいに増えたり、子どもの自殺も10年で3倍ぐらいに増えたりという状況がある。特に一番感じるのは経済格差が子どもたちの心に及ぼす影響というのはすごく大きいと思います。さまざまな自治体が子どもの自己肯定感に関する調査をしていますけど、自分の将来がまさに楽しみだとか、自分のことが好きだといった項目で、生活困窮世帯と一般家庭で明らかな差がどの自治体も出ている。そういった子どもたちの自己肯定感の低さを反映した結果になっているのではないかと思います。

石井:

僕は高校をフィールドに活動しているんですけども、学校には校則とかあって、あれもいいけどこれもいいよねという、そういう多様性が認められてない、モノトーンな教育環境だと思う。そういった中で子どもたちが、学校や先生たちの正解に自分を寄せたりだとか、あるいは過剰に適応してしまったりとか、そういうことをしている中でどうやって子どもたちが将来の期待を見つけていくのか、自分に自信が持てるんだろうということを考えてしまったという結果だなというふうに思っています。学校という型にはまれない子たちというのが、例えば不登校の子どもたちは19万人いるわけですけども、その学校の型にはまれないと幸福度が上がらないみたいな、その学校がどういうふうに型を広げていくのかということがすごく大事なことなんだろうなというふうに思っています。学校が多様性に寛容で、選択肢の多いカラフルな世界を教えていないのに将来に期待を持てという方が難しいんだろうなというふうに感じています。

池本:

このアンケートもそうなんですけども、実際にいろいろなデータですね。いじめ、体罰ですとか、先生に性被害を受けるといった数も増えているということ。あるいは保育施設においても事故が多発している。ほんとに非常に深刻な状況にある子どもが実際に増えているんだろうなということを思います。それからもう1つ期待が持てないというところについては、やはり社会がものすごい今変わっていると思うんですよね。ですから、例えば将来どんな仕事に就こうかと思っても、今ある仕事がなくなってしまうかもしれない。あと昔すごく憧れていた保育園の先生とか先生が、今すごく賃金が低いだとか、すごく労働時間が長いとかで、夢が持てる仕事が減ってしまっているということもありますし、あとコロナのことも心にすごく影響を及ぼしていると思います。

●子どもたちの“お金がほしい”との声 背景に何が?

今回の1万人アンケートでは、「もし1つだけ願いが叶うとしたらあなたは何を願いますか」と聞きました。希望の職業に就くこと、コロナの収束、幸せな家庭を築くことといった声があがる中で、多かったのは「お金が欲しい」という声。1万人のうち、1700人以上に上りました。その理由を聞くと、大学に行くための学費が欲しいといった切実な声や、選択肢が増える、お金で自分の将来が縛られたくないからというものなど、さまざまな声が寄せられました。

安田:

今の子どもたちというのは格差を目の当たりにしている状況があると思います。例えば首都圏の小学生でいえば、中学受験をしている割合はたぶん20%ぐらいいる。一方で、7人に1人が子どもの貧困といわれている。例えば中学生でも低所得世帯と高所得世帯だと習い事に使えるお金が3倍ぐらい違ったりすると、そういうものを見せつけられている。同じ学校・同じ地域の中で、中学受験できる家庭できない家庭、習い事できる家庭できない家庭というのを常に直面している、そういう状況があると思います。近年、親ガチャみたいな言葉が流行りましたけれども、こういった格差によって心配されるのは、もう自分は何やっても無駄だと。生まれたときから親がお金あるかないかで決まってしまうんじゃないかと。そういう子どもたちに無力感を与えてしまうという懸念を、いつも現場ではしています。

田中:

若者世代として感想をお伝えしますと、やっぱり子どもたちは大人が思っている以上にすごい現実的で、何かをするためにお金が必要ということをすごくよく分かっているんだな。なので、ああいった声になるんだなというふうに感じました。

野田:

いろいろ皆さんの話を聞いていて、まず今の日本というのは、そもそも結婚されても離婚されるのが3組に1組。で、ひとり親になる確率が非常に高い。これは再婚も含まれていますから実は3分の1以上ではないかと。そして女性の仕事というと、7割ぐらいが働いているが、その半分以上がたぶん非正規。ですからコロナ禍から3年になるんですけれども、実は平時に女性の働き方とか、またセーフティネットをしっかり作ってこなかったので、非常にその部分が大きくて、先ほど自殺の話も出ましたし、不登校の話も出ましたし、何もないときにちゃんと子どもの声を聞いてなかった、女性に対してしっかりと枠を作ってなかったっていうことが、今この3年とても大きく出ています。であればこそ、急いで子ども政策を進めなきゃいけないということを痛感しているところです。

池本:

海外と比較しますと日本はとにかくお金がないと何もできない。例えば、北欧の図書館のお話を専門の先生に伺ったんですけれども、北欧の図書館には必ずコンピューターゲームができると。それはなぜかというと、ゲームが買えない子どもでも他の子どもと同じように遊ぶ権利があるんだということで、図書館でコンピューターゲームもできますし、あと塾に行けなくても、図書館に行って勉強していると司書の方からいろいろ教えてもらって、図書館に通うことで大学受験を成功させている子どもは何人もいるという話も、ちょっと日本とは状況が違うなと思いました。あと、日本というのは習い事をしなくてはいけない。それがまた高額なんですけれども、ドイツでは、家族割引のような形で、定額でスポーツクラブに通えたりですとか、あと図書館、美術館、あるいは消防署なんかがイベントで、子どもたちがいろんな社会経験ができたり、そのような環境がある国とない国で、やはりそういった随分違いが出てきているなというふうに思っています。

石井:

僕の実感でいうと、この「お金が欲しい」というのは欲しいものを手に入れたいという前のめりな欲望ではなくて、お金を持っていないとヤバイという防衛的なところからきているんだろうなと感じます。マズローの欲求5段階説というのがありますけど、お金は、多分下から2番目の安全の欲求という身を守るための必要な経費というふうに考えている。あるいは生理的欲求で維持するために必要な食べ物を買うためのお金が必要とか。かなり低次な欲求の部分でお金を欲しがっているというのが僕の実感の中にあって、それぐらい子どもたちが追い詰められているんだろうなというのが、このアンケートの結果かなというふうに思っています。それでいて大人たちは10年後のなりたい自分って何?みたいなキャリア教育をやるわけですけども、それはマズローで言えば頂点の方、一番上の欲求なんですよね。子どもたちはその下でもがいている。ここに繋ぐところが何もない中で上滑りでものが動いているんじゃないかなと感じています。

野田:

必要なお金はしっかり届けなくてはいけないと思いますし、申し上げたいことは、この国の政治の中で子どもが中心に議論が交わされたことというのはほぼなかったんじゃないかと。予算委員会で委員長をやったときには、ずっと統計問題でした。でももう既に子どもにいろんな危機が生じているにも関わらず、やはり、いわゆる平時に子どもをどう育てていくか、どう伸ばしていくかという全体的な議論が欠けている。ですから、やることはいくらでもあるし、やっていないことの方が多いというふうに、今の状況は大変厳しいけれども、でもむしろ蓋が開ければ、今日専門家の方々のさまざまな知見もあるし、そして使うべきだけど使われてこなかったお金というのもしっかりと手に入れていかなければならないというふうに私は感じているんです。だから決して悲観的ではなくてやってなかったんだと。だから、やれることはいくらでもあるというところに今私たちは立っているのかなということで、日々、こども家庭庁なんかの議論を進めています。

●子どもの貧困率・いま必要な支援は?

こちらは貧困状態にある17歳以下の子どもの割合を示した子どもの貧困率の推移です。一時よりは減少したものの、2018年の時点で13.5%に上っています。

また母子家庭など、ひとり親世帯の貧困率を見ても48.1%と半数近くに達しています。なおこのデータは、コロナ禍が起きる前のものです。

池本:

仕事が、特にコロナで突然貧困になってしまうということが起きていて、本当に食べるのにも困るんですとか、そういう状況が起きてきていて。ただそれが、1つはなかなか見えなくて、きちんとそれを把握する方法を今まではあまり考えてきてなかったんではないかなというふうに思います。で、貧困は、日本はあまりないものという感じで考えられてきたと思いますけれども、やはり子どもの権利条約の中でも、どんな子どもにもきちんと「子どもの権利条約」(※子どもの「生きる・育つ・守られる・参加する」権利を定めたもの。1989年国連総会で採択され、日本は1994年に批准)で保障されている。勉強できることですとか、遊べることとか、あるいは情報にアクセスできること、文化芸術活動に参加できることですとか、そういうことに権利を保障すべきだということがやはり掲げられていますので、そういった、先ほど最低限のところというお話がありましたけど、もっと高いレベルに子どもをもっていかなくてはいけないなというふうに思います。

石井:

夏休みになると子どもの体重が落ちる。これ給食がなくなることによって起きていることだったりするわけなんですけども、その給食が高校になると、もうないんですよね。僕は高校の中で、無料でお菓子やジュース、お味噌汁や食べ物なんかを提供する、校内居場所カフェというのをやっていますけども、 そういうことをしていると、何杯もおみそ汁をお代わりに来る子どもたちがいて、心配になって話を聞くと、お弁当を持って来てないし、お昼代ももらえてないという、そういう子どもたちがいるわけですね。

そのカフェを始めた時に管理職の先生が、こんなに食べられてない子たちがいるんだと、ちょっと目に涙を浮かべていたというのがすごい思い入れがあるんですけども、自分の食事代や交通費を自分で、バイトで稼いでいる高校生たちがたくさんいます。言い換えると自分で稼げないと学校にも来られないし、食事もとれないという、そういう状況に置かれている子どもたちがいると。自分の生活を維持するために部活や勉強やそういったものを優先することができないという点では、ヤングケアラーの問題と非常に酷似している問題だなってふうに感じています。そういうのは偉いね、と美化されがちなんですけれども、そうではなくて、もっとフォーカスして保障していくべきじゃないかなというふうに思います。

安田:子どもたちが格差を感じないようになるための支援というのがすごく必要だと思います。先ほど申し上げたように格差というのは自己肯定感に強く影響を与えてしまうからですね。隣の人はできるのに自分はできないという、そういう格差ですね。例えば塾や習い事の支援。低所得世帯の子どもたちが塾や習い事に行くことに対してクーポンを出すような自治体なんかもあります。そういった支援というのはすごく有効だと思います。あとは私たちもやっているんですけれども、自治体から委託を受けて、子どもたちの生活や学習面の支援をやっていくような、そういう支援を自治体がやっていくということもすごく重要だと思います。あと特に今はコロナの影響を受けているご家庭、もちろん所得の問題もあるんですけれども、小さなことに見えるかもしれないんですが、家がやっぱり狭いことによって子どもの勉強する場所がなかったり、あとは狭い部屋に大人数がいることによって、すごくストレスを抱えたりするご家庭なんかの話もよく聞きます。やはりそういった支援もコロナ禍においては必要なのかなというふうに考えています。

野田:

皆さんのお話を聞いていて、やはりある意味壁を作っていたのは親という存在で、全て貧困も親の責任で、私たちも国というよりも社会全体、他人がかかわれないような、子どもを追い込んでしまっているんじゃないか。今それを皆さんが解放してくれていて、おっしゃったように格差がないこと。この間も車座のときにお目にかかった湯浅(誠)さんに会った時に、子ども食堂はとても大事だけど、逆にあそこは貧しい子たちが行くところだというイメージを作っちゃいけないんだと。ここが子どもたちの集まる場所になって、所得に関係なく。結果として大人を繋ぐコミュニティにしていく、そういうふうにしなければならないということで、要は、子どもは私たちにとっては財産なんですね。そこをちゃんと自分の子でない子どもに対してそれをやっぱり認めていく大人の力が試されているんだと思います。

(子どもたちに支援は届いているか?)

田中:

ちょっと難しいなと思います。支援はあるんですが、その情報を知らない子がたくさんいるんじゃないかなと思っています。私自身も施設を出て、精神的にも経済的にもちょっと困窮した時期もあったんですが、支援情報を知ることで社会と繋がって、そこにいる大人と繋がって、職業と繋がってという経験があるので、まずそこが必要だと思っています。一方で私自身も一時期ありましたが、支援を受けたくない、支援されていると思われたくないと思っている若い子もいると思うので、そこをどう、やはり大人側が雰囲気作っていくかというのも大切かなと思います。

野田:おっしゃるとおりで、子どもに関しては統一的な場所がないんでバラバラに。例えば文部科学省であったり、厚生労働省であったり。中間的なグレーなのはどこも責任を持たないから情報すら発信されていない。で、いろんな情報を作っているんだけれども、どっちかというとプッシュ(型)じゃないんで来たら面倒見てあげますよというのがこれまでの子どもに対する大人目線。だから、今後はやっぱりプッシュ(型支援)にしていかなきゃいけない。全く違うアプローチで、私たちの方からおせっかいでもいいから寄っていく。あともう1つ、冒頭おっしゃった田中さんの、中にいる間には、さまざまな差別を感じないけれど、外に出た途端、社会が作ってしまう差別というのは私自身も障害児を持っていて感じます。家の中では自分の息子を障害児だと思って育てていないんだけれど、外に出た途端周りが障害児という。そういう格差を変えていくというか、みんな等しい子どもたちなんだというプラットフォームを作らないとだめだなと思っています。

(子育て世代への支援をどう考えるか?)

池本:

まず子どもの権利条約を実現するためには親への支援は不可欠というのがセットになっているわけなんですね。例えばイギリスですと、子どもの貧困をなくすために保育所をどんどん利用してもらおうということをやっていまして、仕事に就いてない親も保育所に子どもを預けて、そこで親が就職に繋がるパソコンを学んだり、あるいはお金のことで困っていると言ったら、その保育所を通じて支援に繋げたり、あるいは学校の方もイギリスですと、例えば親が、ストレスが発散できるような場を学校内でレクリエーションの場を設けたり、あるいは学校でも必要な、先ほどの情報提供ですね、困ったことがあったらどこに繋ぐかというのを学校というところを利用してやったりしていまして。そういった親を支える、そして親にきちんと情報を届けて、子どもの支援に届くようにするというような全体的な制度を日本でも作る必要があるかなというふうに思います。

安田:

親の負担を減らしていく支援というのはすごく大事になると思います。私たちが普段接する一人親家庭ですと、お金がないとか、習い事、塾に行かせられないだけでなくて、例えばパートを掛け持ちしていて子どもの宿題を見られないですとか、もしくは子どもの相談にのる時間がとれないとか、そういったご家庭もあります。例えば親が精神疾患を抱えているご家庭なども、子どもが親の代わりに生活を支えているケースなんかもたくさん私たち見ています。そういったご家庭、決して親が悪いとかそういう話ではなくて、親も頑張りたいけれども、どうしても頑張りきれないポイントがこの社会にある時に、それをどう社会として支えていくかということが大事ですし、そういった親を支えることが、実は間接的には子どもの支援に繋がっていくということがあります。私自身も自治体からいろいろ委託を受けて家庭訪問の支援などをやったりします。家庭訪問をすると生活の様子がすごく見えて、親のニーズもすごくつかみやすいなというのを感じているので、こういった家庭訪問するような支援なども増えていくといいのではないかなというふうに思っています。

野田:

こども家庭庁の議論に入る前に、子ども庁じゃなくて「家庭」をつけるのはいかがなものかというご意見がたくさん来ましたけど、安田さんがおっしゃったように、親を支える、要するに家庭というのは、別に親だけのものじゃなくて子どもの居心地のいい場所にしなきゃいけないということで、親が苦しい時にやっぱりちゃんとその親がまっすぐ歩けるような支えを、やっぱり今まで社会や国、政治レベルでは基本的にしてなかった。そこをちゃんとやろうよということで、皆さんおっしゃっているように、子どもは一人で育ちませんから大人が誰かいなきゃいけない。一義的に親という存在が。これは血が繋がっていようと繋がっていないと、親がいて、家庭というものがあって、そこがやっぱり安定することが子どもにとって安全安心。それをやっぱり国が責任をもって担っていこうと、みんなの力を借りて担っていこうというのがこれからの姿だと思っているので心強く思いました。

石井:子どもは学校に来るのでリーチしやすいですけれども、親、保護者の顔はどうしても見えないというのがあると思うんですね。で、この貧困の支援というのは非常に恥の意識を刺激する支援、スティグマ(注:社会的な烙印。特定の属性を持つ人に対するネガティブな態度)とかが壁になるわけなんですけれども、そういった意味で保護者が援助希求をためらうと思うんですね。まず保護者との信頼関係というのをどういうふうに行政や支援者や地域が信頼の貯金をためていけるかということがすごくポイントになると思います。自分の子どもにたくさんの愛情を注いでくれる他人がいるんだよということを親が知って、その保護者が自分だけじゃないんだということを感じられることが支援へのハードルを下げるんだと思う。その時に教育的とか評価的とか指導的ではない形でアプローチできる民間の人たちというのがいることが、保護者の皆さんをセーフティネットの網にうまく乗っかってもらえることになるのかなというふうに感じています。