2023年11月5日放送「超・人手不足時代 危機を乗り越えるには」(後半)

NHK
2023年11月14日 午後1:24 公開

議論の後半は、賃上げ実現のための企業の“淘汰・再編”をどう考えるか。そして、「労働移動」をめぐる課題をどう乗り越えるか、リスキリングの重要性などについて、白熱した討論が行われました。

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賃金については、このような声も寄せられています。

(“多重下請け”について)

今野:

政府の対策も非常に重要だと考えますが、一方、やはり実際に最低賃金が上がっていくと、その単価でしか請け負えなくなっていくわけですよね。それを違反していれば、これは労働基準監督署の捜査の対象になってくるということですから、最低のラインを上げていくことによって、そのような下請けの搾取構造というのも、下から是正していく圧力というのが確実に強まっていくはずなんです。ですから、政策ももちろん考えなきゃいけないことはたくさんあるんですが、基本となるこの賃金が無ければ生きていけないというところから社会を作り直していくという発想、これがあらゆるところに効いてくるんではないかなと思っています。

(なぜ“中抜き”は無くならないか)

冨山:

2つありますね。供給側から言っちゃうと、その多重構造の中で色んな人が働いているんですよ。これ自動化しちゃうと、典型的にホワイトカラーなんだけど、ホワイトカラーの仕事減っちゃうんですね。そういう問題が1つあります。それからもう1つは、皆さん言われたように優越的地位の乱用ですね。要するに、全然取引関係がフェアじゃないってことです。これは色んな意味で直さなきゃいけないんだけども、同時に、今言われたように、要は最低賃金が安すぎるんですよ。日本の最低賃金の議論って、僕はちょっと申し訳無いけど、何を議論しているんだろうと。今回上がったんですよ。上がったけど、例えば旅館の仲居さん、あんな値段じゃ絶対雇えないですよ。だから、何を基準に議論しているんだろうとずっと疑問に思っているんですが、あらゆる意味でこの国は高賃金政策を取るべきなんです。それを払えない会社はむしろ淘汰された方がいい。同じ塗装業でも、ちゃんと払えているところもあるんです。だから、むしろちゃんとやっている会社に、人と仕事が移った方がいいんです。もっと勇気を持って進めるべきだし、進めても誰も困らないです。労働者が、よりホワイトな会社で、より良い条件で働けるし、集約化していけば当然交渉力ついてきますから、多重下請けの上の方に対して。だから、そういう集約を絶対進めた方がいい。いまチャンスなんです。

廣濱:

そういったご意見もたくさん伺うんですけど、中小企業の場合は、社会性の面も同時に考えなきゃいけない。コロナとか、あるいは東日本大震災後は、我々の方針としては1社もつぶさないという方針でいろいろ動いたんですけど、なぜかというと、やっぱり1社潰れることによって、例えば疲弊している地域なんかだと、もう生活できなくなっちゃうよねみたいな状態が起きてきたり、業界の中でも、この会社のこの仕事をやってくれる人がいなくなると、どうするのみたいな部分があるので、そういう社会性の部分が1つある。同時に考えなきゃいけないのが、働く場が無くなるということになるので、地域から若者が流出してしまうという、働く場がないからしょうがないよねみたいな、そういう話になる。両面考えなきゃいけないなということは、いつも頭の中にあるところです。

首藤:

たしかに冨山さんおっしゃることは分かります。例えばみんなで価格転嫁を業界あげてやっていこうというときに、価格転嫁をせずに低い価格で仕事を持っていってしまう事業者がいると、やはり全体の価格が上がらないという事態が起きていることも事実だと思います。でも淘汰がですね、適正に淘汰をされるということも考えていかないといけないと思っています。例えばトラック業界を見てみますと、2024年問題を直前にして、かなり二極化が進んできていて、価格転嫁をして賃金上げて人を集めているところもありますけれども、その法改正をある種無視して、コンプライアンス守らずに、長時間労働やって、賃金を維持して人手を集めているところもあるんですね。ドライバーも、結局労働時間削減されて所得が下がると困りますので、そういうブラックなところに流れていってしまうところもありますので、きちんと生産性を上げようと努力している企業が生き残れるような環境を整備していくことが大事かなと思っています。

冨山:

これ、さっきの社会性で言っちゃうと、さっき取り上げられていたバス会社は、本当に会津地方の過疎地域なんですね。むしろそういった、競争力、生産性の高いところに事業を集約していった方が実は社会性を守れるんですよ。残念なバス会社では、あれはできません。過疎地のバス路線を維持できているのは、それなりの経営力や生産性の高い会社がやっているから維持できる。今まさに首藤さん言われたように、そういった会社に集約していくことが大事なんです。1つのポイントは、今の労働基準監督をちゃんと守っているかどうか。いわゆるコンプライアンスの問題と、その一方で「人件費倒産」は止めないってことですね。だからやっぱり給料を払えない会社には退出してもらう。ブラック(な労働条件)を防ごうと思ったら、やっぱり賃金単価が大事で、その賃金単価の安いところには退出してもらうことが大事なんで、そこは逆に余計なことしない方がいいです、これ。今そういう流れが起きているんで。もう1つは、労働移動をスムーズにすることです。運転手が、より少ない時間でたくさん給料もらえるところに移った方が絶対いいはずなんで、そうするともう1つの課題は、日本は労働移動がすごく難しい労働市場の構造になっているので、これをどう変えるかということも同時に進めなきゃいけない。

新藤:

これまず第一に、二者択一ではないってことですね。バランスの問題です。優秀な厳しい経営学をお持ちの冨山さんがおっしゃっていること、この大前提はね、今のまま何も変わらずに、現状でそのまま維持させてくれという企業があったならば、それを努力もない中で維持できるのかというほど、簡単な時代ではなくなってしまったと。だけど一方で、圧倒的に人手が足りないんです。それからまだまだ仕事は合理化したうえで、新しい仕事が作れるわけです。今の企業の中で別々の仕事を分担できるチャンスはたくさんあって、そういう中で私たちはとにかくせっかく仕事したんだから、きちんとですね、維持して、そして次の人たちに渡せるような、そういう経済政策を打つことが大前提です。しかしそれには改革が必要だと、こういうことだと思います。

人手不足分野で、新たな働き手をどう確保していくのか。政府は人手不足への対応を視野に、労働市場改革を打ち出しており、リスキリングなどを通じて、成長分野への労働移動を円滑化させるとしています。

この労働移動についてもさまざまな声が寄せられています。

(労働移動について)

廣濱:

リスキリングについては、非常に重要だとは思っているんですけど、それによる労働移動にどういうメリットがあるかは、自分の周りでいうと、イメージできないというのが実態、実感なんですね。私は製造業をやっているんですけど、やっぱり一人一人の熟練度に依存しているという、そういう部分もなくはない。うちの会社の中だったら、どんどん成長していって働けばいくらでもあるけど、だけど他に行ってどうなるかというと、全然イメージできないというのが今の実態でもあります。周りを見てお客さんなんかも廃業されている方もあるんですけど、そこで働いていた方は、大体他の同じ業界の中で働いているというのが多いなと。周りを見ているとそんな感じなので、ちょっとイメージつきにくいなと。

新藤:

労働移動は、今の仕事から別の会社に移ることを前提に考えなくていいと思うんですね。最も有名なリスキリングをやった、社内公募制をやったアメリカのAT&T。これは結果的に、技術のある人を募り、新しい仕事を提示したら、結果、研修を積んだ8割の社内の人が、新しいポストに就いた。ですから労働移動というのは、単純に今の会社から別の会社に移るんではなくて、まず自分の会社で技術を身につけて、そして省人化によって新しい仕事ができる。省人化を運営するための必要な仕事ができる。その技術を身につけた人がそこに就く。これも労働移動だと思わないと、何か転職することを前提にしてしまうと、会社側は、技術を身につけてもらったら大事な人材が他に行ってしまうのかと思いかねませんので、そうではなくて、自分の会社で居場所があれば、そこできちんとした給料をもらう。一方で別に新しい仕事が見つかったならば、そこに移るけれども、そこには別の技術を身につけた人が入る。こういう好循環をつくっていくことなので、そこは丁寧に私たち説明したいと考えているわけです。

民間のシンクタンクの将来予測です。デジタル化の急激な進展などで、2035年には、事務、販売そしてサービスなどの職種で、480万の人手が余るとされています。冨山さんは先月のNHKスペシャルで、こうした人たちが人手が不足する分野に移る必要があるというふうに指摘していました。

冨山:

これ、要するにホワイトカラーでしょう。ホワイトカラーの仕事は、今後、生成AIとかでもっと減ります。そうするとまさに議論しているようなエッセンシャルワーカーや観光業、むしろ現場の仕事、製造業の現場ですよね。ここもやっぱり生産性上げて、こっちに労働移動を起こさないとだめで、要するにもっとディーセント(きちんとした)でホワイトで賃金の高い仕事にしなきゃだめなんですね。これはもうマストです。(労働移動というと)ついついね、プログラミングのハイブローな仕事みたいなことをすぐみんなイメージするんだけど、これはもうやめた方がいい。ナンセンスだから。むしろこのエッセンシャルワーカーのゾーンで労働移動が起きる。圧倒的に多いのは同一業種内です。移るにしても同一業種内でより生産性の高い、よりホワイトな会社に移るというのが健全な姿で、たまには産業を飛び越えるケースもありますよ。なんだけども、明らかに同一業種内ですごい生産性の格差があるんですよ、実はこのエッセンシャルワーカーゾーンは。さっきのトラックもそうですよね。ここでむしろ労働移動を促す意味でいうと、現状残念ながら三位一体の労働改革がなぜ必要かというと、それを妨げているいろんな仕組みがあるんです、日本は。これをやっぱり排除していかなきゃね、やっぱりスムーズに労働移動起きないし、したがって賃金も上がっていかない。

首藤:

今の議論を聞いていて、まず労働移動をどう定義するかということでもあると思う。やはり企業内の配置転換も労働移動とするのかどうかによっても労働移動の捉え方は変わってくるので。一般的な労働移動は、やはり産業間の移動だったり、企業を越えた移動であるというような理解だと思っています。そういった生産性の低い産業から高い産業に人が移っていくことによって、一国の生産性を上げるというような議論もありますけれども、労働経済の研究の中でも、アメリカやヨーロッパにおいても、この労働移動によって一国の生産性はどれほど上がるのかというと、その寄与度は決して大きくないということを指摘している研究もあります。結局その産業の中で、どういうふうにその生産性を上げられるのかということをやっぱり議論しなくちゃいけないと。ですので、やっぱり医療・福祉のところが、今後多分最大の雇用の吸収場になると思いますけれども、ここをですね、人が移動したくなると思えるような生産性の高さや賃金の高さ、労働環境の良さを整えていくことが大事かなと思っています。

今野:

1つは生産性と言ったときに、その内実も少し議論を深めなければならない部分があると思っています。というのも、確かにケア業界の中に格差があるということも事実だと思うんですが、多くの利用者を少ない人数で効率的に回すことが、経済的には効率とか労働生産性となるわけですけれども、そのときにサービスの質が下がっているという問題も常に私たちのところにはたくさん来る。一時期、問題になりました“縛りつけ”の問題は、究極の形です。あれは少ない人数でたくさんのケアをしたという形は作れます。離職の理由も、多くの場合、ケアワークはそこにあるんです。特に保育の方なんかは、効率的にやっているように見えて、ある意味労働生産性が高い職場ほど、ネグレクトに近い状態になっていて、これが耐えられないということでどんどん離職してしまうという現象も起きています。あと関連してもう1つ、これは是非今日お伝えしたいと思って来たことなんですが、リスキリングとか労働移動に関して、スキルを身につけて産業を移動していくときに、必要になるのは時間なんです。前政権(第2次安倍政権)のときに「失業なき労働移動」を標語にしていたんですが、これは社会政策的に考えるとかなり無茶な話で、大事なことはリスキリングのいろいろな施策を整えていくと同時に、その間、安心して訓練を受けられるということです。失業中に雇用保険を受けている方が、80年には58%、90年には37%、98年37%、2019年は25%です。どんどん下がっています。それは、流動化が進んで不安定になればなるほどみんな受給できていない。この状態でリスキリングというのは非常に無理があるわけですね。ですからここの社会政策の部分というのをぜひですね、課題にしていただきたいと思います。

新藤:

今のはね、とっても重要な指摘だと思うんですよ。日本の大前提は、リスキリングは失業後なんだよね。在職中のリスキリング受講者は4割しかありません。でも世界で最も進んでいるデンマークは7割が在職中なんです。それから、リスキリングも企業経営のリスキリングしかないんです。それがやっぱり7割です。これを私たちは一人一人が自分で技術を身につけたい、スキルアップしたい、そのための受講ができるように、これは5割ぐらいまで引き上げようと思っているんですけども、考え方を変えないと、仕事を離れて勉強してではなくて、オンラインであれば、どこでもできるんです、時間も含めてね。仕事をしながら、その自分の会社で求められる能力を身につけるか、さらに自分を求められる技術を身につけて他に移るか、それはどちらでも選択できるんだけども、いずれにしても、自分の力を身につけたら、それが賃金に反映され、そして働きがいや生きがいにつながる。こういう労働政策を転換させなきゃいけないので、今のご指摘はとても重要で、単純に失敗しちゃったからじゃあもう1回スキルアップして、別のところへ行こうと思ってしまっては、これは先の展開ってなかなか難しいなと、ここは丁寧に説明したいと思っています。

今野:

ちょっと今日の議論とすごく関わるところだと思うんですが、昔からこういうものは労働力の窮迫販売と言われまして、焦って無理なところでどんどん流動化していこうとすると、どんどん低劣な方向に行かざるをえないんです。私はこの20年30年、日本で労働市場で繰り返されてきたのはそこだと思うんですね。流動化政策というのは、派遣を増やしたりとか、職業紹介を充実というんですけれども、それはやっぱりすごく低い方に流動化させる、競争させるということを政策的にしてきてしまったんではないか。やっぱりここのところから抜本的に見直していく必要があると思います。

首藤:

今、新藤大臣もおっしゃったようにですね、当然働きながらリスキリングしていくことがとても大事だとは思いますけれども、オンラインとはいえ、やっぱり平日ずっと働いて、そのあとですね、リスキリング学び直しをするということの時間が十分に取れる人ばかりでもないことも事実なんですよね。やはりリスキリングするための休暇ですとか、その時間の確保は、私はすごく重要だなというふうに思っていますし、あと労働者が技能を高めればですね、労働生産性が高まるということだけではなくて、同時により高い生産性を生み出す仕事に職場の方もつくりかえていかないといけない。それはやはり経営者の努力なんだと思うんですけれども、その両方が組み合わさったときに初めて生産性が高い職場が出来上がるんだと考えています。

廣濱:

私どもいろんな業種業態があって、これはすばらしいなと思う例があります。その会社は水処理をやっている会社なんですが、水処理っていろんな資格が必要らしいんですよね。それでみんなで勉強して資格取って、どんどんいい仕事ができるようになっているんですけど、育った人が退職するんですよ。退職してどこ行ったかというと、そういう資格を必要とされている別の会社に移るんですね。それはしょうがないと、そうやって育ってくれて、世の中でもっと活躍してくれればそれはいいやっていうふうに捉えているんですけど、その人が結構その会社のお客さんのところに行ったりなんかしてね、いい取引がまたできるようになるみたいな、そういう話もあって、そんな形で好循環になっていくと、本当に理想的だなということを感じています。

冨山:

実態としては、とにかく人手が足りないんですね、どの業種も。今どきね、リスキリングの投資、教育をしたから人がいなくなっちゃうっていうね、小さいこと言っている会社はもうだめですよ。淘汰される会社です。うちももう、とにかくそういうのを全然気にしないで、ガンガン大型二種免も取らせるし、いろんな資格取ってもらっています。当然転職者は出ます。なんだけど、逆にそれやらないと人来てくれないですよ。あるいはリテンション(人材の保持)できない。今、幸いそういう状況になってきているので、さっきおっしゃっていたような、下方にどんどん転職するという状況が無くなってきているんですね。むしろこの状況を奇貨として、どんどんリスキリングを国も企業もやって、自分の業種かどうかにそんなにこだわらないで、一人一人のキャリア形成に大事な教育投資ができるように、あるいは選べるようにしてあげることが多分大事で。その意味で言っちゃうと、個人がいろんな選択肢を持つ、何を学ぶのかも選べる。あるいは国の制度を使うのか、会社を使うのか選べるような仕組み、選択を増やすことが大事なのと、それからもう1点ですね、実は一番いい労働移動はM&A(企業の合併・買収)です。要するにM&Aって集団転職なんですよ。いい会社に移ると。むしろM&Aによる生産性向上効果、明らかにたぶん統計的にもあるはずで、それをもっと進めることが大事。そういった意味で言っちゃうと、今度はね、中小企業経営者ね。あんまり事業承継の時に頑張んない方がいいです。しんどいと思ったらいい会社に事業を譲るということをやっていった方が、これは必ずみんな幸せになります。

(政府が掲げる「人への投資 5年で1兆円」の方向性は)

新藤:

このリスキリングをいかに充実強化するかなんですね。さっき首藤先生おっしゃったけれども、たしかに仕事しながら夜だけ(リスキリング)ってわけにいかないですよ。デンマークでなぜそこまで定着しているかといえば、就業中の、もしくは在職している人もリスキリングができるような、そういう形を作っているわけですね。ぜひやんなきゃいけないと思います。それから、リスキリングと言っても、厚生労働省、経産省、それぞれ所管が別々になっています。経営者のための学びについては、経営者の訓練はリスキリングの対象になってないんですよ。これでいいのかって私思っているんです。それから、そもそもリスキリングの補助金が出る講座は決まっているんです。国が認定した講座しかないので、この認定講座を拡大させたらどうだと。各業界で自分たちで任意にやっているんだけども、実はとても大事な講習があると。積極的に受けるためにはその講習に対する補助金、それは国に対して、こういう講習をやっていますと申請してくださいと、PRを今回しようと思っています。ですから、リスキリングの質をもっと高め、そして量を拡充する。これが私たちの方針です。

(超・人手不足時代を乗り越えていくためには)

今野:

これまで働いている人たちに我慢してもらおうということで、ずっと社会は成り立ってきたんだと思うんです。ただその間にその我慢はどんどん限界を迎えてですね、少子化は進んでいますし、もう本当に社会がどんどん劣化してきているんじゃないかというところに来てしまっているわけですから、やはりそこの考え方を今改めるチャンスなんだろうと思います。リスキリングという話が出てきているというのはいろいろ課題はあると思うんですが、これは非常に前向きないい方向だと受けとめていいんじゃないかなと思っています。

首藤:

今、人手が足りていない職場においては、従業員の休日とかを返上させてでもして、どうにか職場やりくりしているところがたくさんあると思うんですね。でもやはりこれ持続可能ではないと思っています。中長期を見ていくと人は減っていきますので、どうやって仕事を回せるのか。さらには人を集めるためには賃金も上げていかなければならないので、どうやって付加価値を高められるのかと。従来はできるだけ人件費を抑えて薄利多売で利益を上げるというビジネスモデルでしたけれども、そこがやはり転換してきているということを、強く認識しなければならないと考えています。

冨山:

これはもうご指摘のとおりで、要はよりホワイトな会社がこれから競争力を持つんです。要は、より賃金単価が高くて、長時間労働ではない会社が競争力を持つことは明らかなので、要は希少資源なんですね。人手が希少資源ですから、そうなっていく会社を応援していく。そうじゃない会社はいろんな規制も含めてもう淘汰していく。僕はこの流れが大事だと思っていて、経営者としてはとにかく戦略はそこだけです。労働生産性を上げて賃金を上げて労働時間をできるだけ減らす。これをちゃんとやっていく経営者が多分今後も成功していくし、これ中小企業含めてなんですけどね、そういった企業を応援していくし、そういったところに働くように労働移動を促していくというのが政府の仕事だと思っています。だから年収の壁なんか、実はそれを妨げているものいっぱいある。それをとにかく除去することが大事だと思います。

廣濱:

これ今日のテーマでは2つあるんですけど、1つはいわゆるエッセンシャルワーカーと言われる方々が誇りを持って働けるような社会的評価と、それに見合う待遇をやっぱり社会として作っていくというのが1つだなと思います。あともう1つは、やっぱり理想的には、全ての人がそのすばらしさを発揮できる社会に向かいたいと思うんですけど、そのすばらしさを発揮する上では仕事というのはとても大きな比重があるというふうに思っています。だから少なくとも、働けるんだけど働けないみたいな環境にいる方を、どうやってすばらしい仕事をできるような形に持っていくか。それもただ単に単純な作業というんじゃなくて、よりスキルのある仕事に携わっていただけるか、その人の持っている一番すばらしいものを一番いい形で発揮してもらう、そういった形で経営者もそういった努力しなきゃいけないし、社会もそういう方向で仕組みをつくっていかなきゃいけない。

新藤:

今日とてもよい議論いただいたと思うんですね。やはり構造的賃上げをきっかけにして、そして労働市場を円滑化する。供給力の強化をする。それは生産性の向上につなげていく。結果、それら全ての要素は、この国の潜在成長率を高めていく。経済の力を自立して、そして民需主導の強い経済をつくる。その中でですね、さまざまなものが供給できるんではないかと。この好循環が生まれるんではないか。ですから、そのための本当にいま改革をしなきゃいけない、大きなタイミングですから、強い信念をもってですね、丁寧に説明しながら進めていきたい、改革進めていきたいと思っています。

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