2022年7月31日「日本経済の先行きは」②激論!大規模金融緩和の是非は

NHK
2022年8月5日 午後6:09 公開

①物価高騰にいま打つべき手は?

前半を受けて議論は日銀の金融緩和の是非に進みました。「日銀はもう少し柔軟な金融政策を取るべき」という木内さんに対し岩田さんは「金融緩和をこのまま続けるべき」と真っ向から反論。黒田総裁の“次”が心配だと語りました。出口が見えない中で重要になってくるのが成長戦略。「人への投資」という大きな課題へと議論は進みます。

③なぜ賃金は上がらないのか

およそ24年ぶりの記録的な水準となっている円安、今月14日には1ドル139円台まで値下がりしました。おととい午後5時時点では1ドル132円台となっています。

この円安の背景の1つとして指摘されているのが、各国中央銀行の動きです。インフレを抑え込もうと世界各国は相次いで利上げに踏み切っています。アメリカのFRB、連邦準備制度理事会は、先週、2回連続で0.75%の大幅な利上げを決定したほか、ヨーロッパ中央銀行も11年ぶりに利上げを決めました。

これに対して日銀は、21日まで開いた金融政策決定会合で、今の大規模な金融緩和策を維持する姿勢を示しました。黒田総裁は会見で、金利を少し上げるだけで円安が止まるとは到底考えられない。本当に金利だけで円安を止めようという話であれば、大幅な引き上げになって経済にすごいダメージになると述べました。

木内:

やっぱり金融政策がちょっと柔軟性を失っているなって感じがあります。日本は確かにほかの国より2%、物価2%で、物価上昇率は低いんですけれども、過去長く続いてきたトレンドと比べれば、やっぱり高くなっているわけですし、特に賃金が上がらない中では、経済にダメージが及ぶということですから、本来もう少し柔軟な金融政策をとるべきかなと思っています。円安の主な要因はアメリカの金融引き締めだと思っていますので、日本銀行の金融政策だけでここまで円安が進んだわけではないですけれども、ただ、円はドルだけじゃなくてほかの通貨に対しても弱くなっていますので、恐らくやや硬直的な金融政策が円安を後押ししているという面があると思います。さらに例えば2%の物価目標に非常に紐づく形だったり、長期金利の上昇を抑えるといった形のやや硬直的な金融政策によって、債券市場とか為替市場が混乱するような動きってのが先月あたりからやっぱり見られてきていますので、政策をやはり柔軟化することによって金融市場の安定、経済の安定にもプラスになると思いますし、日本銀行がやや硬直的な政策を進めている中で、どこまでも円安が続いてどこまでも物価高になってしまうという不安が個人にもっと強まりますと、消費をかなり抑えてしまうという形になってしまいますので、まずはやっぱり柔軟化が必要な対策になっていくんじゃないかなと思います。

岩田:

アメリカに追随して利上げした国の為替がどうなっているかというと、イギリスは政策金利を1.2%まで上げているわけですが、これもロシアのウクライナ侵攻前よりも、ポンドもドルに対して11%安くなっているっていう、日本より若干低いですけれどもそれでも同じ様に下がって、ポンド安になっていると。韓国は実は、アメリカより早く7月の13日にすでに2.25パーセントまで政策金利を上げているんですけれども、やはりウォン安が9%と続いているというふうにですね、基本的にはこれは金利差だけではなかなか説明できない。どこが利上げしてても、ほかの国、日本は利上げしていませんけど、ほかは利上げしているのにやっぱりドルに対して安くなっているという事は、見てみますと、1つは資源のない国ですね。輸入している国です。ヨーロッパ、日本とか韓国も特にそうですけども。それと地政学的リスクがある所。日本は核大国3か国に囲まれていますしね。それからヨーロッパも近いところですね。そういうふうに、ところが金利差以外で非常に為替安になっているということです。金融政策だけでそうなっているわけじゃないと。だから他国のように利上げしてもやっぱり円安だと思う。それが解決しない限り止まらないということです。ただ、これから少し落ち着いてくると思います。

木内:

私はやっぱり足元ではかなり金利差だなと思います。ただ、政策金利の差だけじゃなくて、今やっぱりドル円レートにこの数年間非常に大きく影響を与えているのは長期金利差なんですね。日本は短期金利ももちろんマイナス0.1で維持していますが、長期金利の目標も0%程度で維持していまして、さらに上限、変動の上限の0.25%を抑えるっていう、そういう姿勢を非常に足元では強めてきていると。その結果、アメリカの金利がこの3月以降急激に2%を超えて、10年の金利が3.5まで上がっていて、この過程で円安がかなり進んできたということだと思います。確かに日本は、資源がなくて輸入をしているので、今貿易赤字、貿易収支が悪化していると。これも円安の要因としてないわけではないんですけれども、ただアメリカだって貿易赤字国ですから、そういった国が大幅なドル高になっているってことはやっぱり金融政策なんだろうと。ただ、単純に円安だから金融政策を変えるってことではなくて、やはりもともとやっぱり柔軟性を欠いている金融政策の1つの弊害、副作用として、今、金融市場の混乱とか円安とか、その結果としての、国民の物価がどんどん上がってしまうんじゃないかという不安があるので、そこを考えれば金融政策をもうちょっと柔軟に運用するのが経済金融市場の安定にとってプラスではないかなと思います。

柳川:

為替の話は金融政策だけで決まるものではないというのはそのとおりだと思いますし、財政政策であるとか経済構造もやはり大きな影響を与えると、そういう意味ではトータルに政策を考える必要はあるんだろうと思いますけれども、やはり金融政策どう考えていくかというのが大事なポイントで、急に金利を今すぐ上げられるわけでもないけれども、もう少し木内さんがおっしゃった柔軟かというところが恐らく1つのポイントで、金利を上げるとか上げないっていう単純な話ではなくて、長期の見通しであるとか、もう少しさまざまなコミュニケーション戦略があり得るのではないかというのが、今、木内さんのお話のポイントだったと思いますので、この辺りは少し考える余地はあるんじゃないかなと思っております。

(円安の恩恵は)

井上:

以前の円安の時にはもう少し受注が多くて、円安になると日本の製品が売れるっていうイメージがあったんですけれども、今回はそういうふうにはなっておりませんのでただただ不安ですよね。資材ですとか電気代などが高くなるということで。でも需要が実はないというか、引き取ってくれる、買いたいっていう購買意欲は高まっていないというのが今の現場の感じですね。

(日銀は金融政策を続けるべきか)

岩田:

私はそういうふうに思っています。長期金利の問題も、実はアメリカの長期金利かなり下がってきています。短期は高いんですね、アメリカいうのは。どういうことかっていうと、やっぱりかなり利上げをしてきて、ここできて消費はかなりアメリカ弱ってきています。そういうこともあって、恐らくアメリカのパウエル氏はこないだの記者会見でまだまだ上げる、少し上げると言っていたんですが、実はそれは難しくなっているというふうに思います。むしろ景気後退を心配した方がいいという局面で、そういう事もあって、実は、この間のアメリカの利上げに対して、むしろ円は円高に4.2円ですけれども、円高に振れているんですね、もう既に。円安は局面が変わってきている状況です。これ長期的にどうなるかということは、ウクライナ情勢がどのぐらい続くかってことも言えるんですが、あんまりアメリカは利上げを急いできていると、景気後退の心配があって、そういう状況ですから、これからはアメリカがどんどんどんどん金利まだ上げていくということはもう無いと私はにらんでいます。ですからこの辺でそんなに円安がどんどん進むことはあんまり心配しなくていいんじゃないかいうふうに思って、日銀の政策は間違っていないという立場ですね。ただ、急に円高になるというようなことに対しては、日銀よりもむしろ財務省のほうなんですけども対応が、という事であんまり金融政策はこのままでいいと思っています。

(大規模金融緩和の出口は)

岩田:

やはり今需要不足って先ほど申し上げましたように日本は需要不足です。アメリカは需要超過なんですね。全然違うんです、経済の状況っていうのは。ですから日本はまだデフレマインドは強いんで、ですから出口はもう語るのもまだまだ早い話で、2%っていう物価の安定というのは、ある種意味がちゃんとあってやっていることなんで、これをやっぱり安定して持続するまでは、きちっと今の政策をやるということが大事で、黒田総裁のいる間は安心しているんですが、その次がどうなるかが非常に心配だというのがむしろ私の考えです。硬直的というけれども、これはやっぱりコミットしてきちっとやらないと、すぐ出口なんか語り始めると、日本はまだデフレマインドが非常に強い国で、長い間デフレやりましたからね。すぐデフレに戻っちゃいます。前にゼロ金利で解除に失敗して、量的緩和の解除も早すぎて失敗して、出口が早すぎて失敗ばっかりしているんですよね。失敗するとまたやらなきゃならないんで、ここは我慢のしどころだと思います。

日銀が大規模な金融緩和を始めて9年となります。こちら各国の中央銀行の保有資産の推移を見てみても、国債の買い入れなどで日銀がいかに大胆に緩和を拡大してきたかが分かります。

(金融緩和の目的と効果は)

水野:

目的は消費者物価2%、持続的な上昇ということだと思いますけれども、それでそのあと持続的な成長に結びつけていくということですけど、その目的は私は全然達成されてないと思いまして、恐らく効果としてあるのは株高ですね。資産高という、1万円前後だった日経平均株価が3万円を超えるような株高に、異次元金融緩和のときに起きていますので、量的金融緩和というのは、物価が上がるっていうのは1年2年、金融政策の効果がかかるんですけども、だけど資産効果だったら、極端に言えばあした効果が出るということですので、そうすると日本、世界中に金余り状況にありますので、そうすると1年2年物価が上がるのを待つよりは、株式市場できょう買ってあした売るということをやった方がすごく効果が、効率、投資家からすれば効率が高いということだと思いますので、それを効果というかどうか、株式を持っている人は日本で1割前後ですので、非常に二極化を持つ人と持たざる人、どんどん格差を広げていったんだろうなと思います。

(金融緩和の効果の実感は)

井上:

正直申し上げまして、あまりその辺りの大きな数字、世の中の流れというものにさほど影響力がありませんので、流されるままという感じですよね。ただ、我々中小企業としては技術力を上げて競争力を獲得していくことにできれば集中させていただきたいというのが本音でございまして、国の金利ですとか、円安の調整ですとか、そういった国が一丸となって方向性を示して、それに国全体で一丸となって取り組んでいくっていう手法が、我々にきちっと示していただいて、我々もそれに向かって全力を尽くすというような、そういった形が早くすると、我々が理解できるように説明して頂けると、我々も力を発揮しやすいと思います。

(2年で2%の物価目標 なぜ達成できず?)

岩田:

1つは2回消費税をやっている、増税しているということで、1年目増税前まではシナリオどおりちゃんと物価も上がるし、雇用もよくなっているというふうにシナリオどおりなんですけれども、消費税のところからおかしくなってきて、そしてその以後もプライマリーバランスの黒字化を日付ベースで決めちゃうわけですね。経済がどんな状況でもそれをやると。そういうことをやるとそれは需要を下押ししますから、先ほど言ったように需要不足の経済ですから、日本は。ですから金融政策が需要を上げようとしているときに、財政のほうで需要を下げようとしていた。それは物価上がりません、2%には。だからこれが基本的に間違いっていうことですね。両方財政金融策両方ともやらなきゃいけないということ。それから、その中でも、そういう逆風が金融政策が、財政から働いても、結構効果が出るのに、みなさん効果がないって言うのにびっくりしました。大体この量的緩和をやる前は、有効求人倍率は0.5ぐらいしかないんですよ。それが、1.2、3倍にまでなるとか、失業率も4%台だったのが2%前半ぐらいまで落ちるとか。特に、就職氷河期と言われていたのがなくなって、若者の就職がよくなっているってことは、はっきりと雇用はよくなっていて、だからこそ特に若い人の雇用もよくなっているから、若い人の支持率は実は自民党は高いんですよ。それからもう1つ、実質賃金ですが、これは量的緩和をして・・・の前は、労働時間がずっと減っているのは失業が多かったりとか、パートしかなかったりとか、雇用が悪かったからなんですね。ところが、安倍政権になってずっとこの量的緩和やってからは、労働時間が減って、さらに減少しているのは、これは雇用が良くなったんで、高齢者とか女性がどんどん働くようになって、この人は短時間労働でいたいんですね。そのために、労働時間が減っている。この労働時間の減少を考えると、時給でみるべきなんですよ。実質時給は、量的緩和の間できちっと上がっています。その前は下がっていますけど。みなさん「実質賃金下がってる下がってる」と言うけど、きちっと見ていただければ実質賃金上がっています。間違いです。水野さんは間違いです。

水野:

生活水準はやはり時間と、それから総額っていうんですか、で生活しなきゃいけませんので、時間当たり賃金では24時間生活する時には、総額でやっぱり測るべきだと思います。

(金融緩和の効果は)

木内:

まず10年近くにわたる金融政策の評価を考えた時に、効果と副作用のバランスで考えることだと思います。効果については、少なくともやっぱり経済の成長する力を押し上げたって証拠はあんまりないと思うんですね。日本銀行自身が発表している潜在成長率、成長する力で言いますとこの10年間ずっと下がり続けていまして、今足元はプラスの0.1%ということなので、少なくとも金融緩和で下がってく潜在成長率を押し上げるような力はなかったと。ただ為替が急激な円高を修正したってことはありましたんで、それによって一時的に需要を高めたっていうところはありますけれども、それは一時的な効果であって、経済の成長する力が高まって生産性が高まることにならないと、結局は、今話が出ている実質賃金が上がって、生活が豊かになってくというところにつながってこないという意味で、この10年間の壮大な実験っていうのは、私はもう答えは出ているんではないかなというふうに思っています。重要なのは、金融政策とか一時的な財政出動ではなくて、やっぱり成長する力を高める、生産性を高めると。これによって、賃金も上がってくるし、結果として物価が上がってくるということじゃないかなと思います。

柳川:

今木内さんがおっしゃったところに近いんですけれども、やはり金融政策、あるいは財政政策も、一時的な需要の押し上げはできるわけです。それが結果として成長につなげる可能性もあるんですけども、やはりそれはしっかり成長につながるような政策をとっていかないといけないということだったんだと思います。技術力を磨く、あるいは生産性を引き上げる、稼ぐ力を増やすと。こういうことがあってこそ、初めて潜在成長率が上がり、我々の経済がもっと高い成長率を実現できていくと。こういうパスを載せるときに、金融政策が全く効果がないかというつもりもないですし、全く効果がなかったわけでもないと思います。ただ、そのパスに金融政策だけで載せることはできなかったし、やはりアベノミクス、3本の矢の3本目といわれている話ですけれども、やはり成長戦略であるとか、規制改革であるとか。今で言えば、しっかり労働生産性を上げていって、賃金が上がるような政策を打っていくと。こういうところにもっとこれからも注力すべきだし、今までも注力すべきだったんだと思います。