2023年12月24日「“人口減少時代” 私たちの未来は」(前半)

NHK
2023年12月25日 午後7:27 公開

日本が直面する人口減少。現在の人口は、2070年にはおよそ7割にまで減少すると推計されています。人口の4割近くが高齢者となり、社会機能が維持できなくなることが懸念されています。加速する人口減少で、経済や社会保障はどうなるのか。日本社会のこれからを専門家が議論しました。

【出演者】(左から)

Will Lab代表取締役 小安 美和さん(地方で女性の雇用創出や起業家支援に取り組む)

中央大学教授 宮本 太郎さん(福祉国家論や比較政治学が専門)

内閣官房参与 山崎 史郎さん(人口問題・社会保障を担当)

東京大学大学院教授 白波瀬 佐和子さん(人口社会学・家族と社会制度の変化を研究)

リクルートワークス研究所主任研究員 古屋 星斗さん(労働市場や若者のキャリアなど研究)

このあとの議論はこちら ⇒「“人口減少時代” 私たちの未来は」後半

加速する人口減少 現状は

まず日本の人口減少の現状です。こちらは日本の人口の推移です。戦後、増加傾向が続き、2008年にピークの1億2800万人あまりになりました。しかし、2011年以降は減少に転じ、ことし7月1日時点の総人口はおよそ1億2400万人となり、12年連続で減少しました。そして今後、人口はさらに減少すると見込まれています。国がまとめた推計によりますと、2056年には人口が1億人を割り込み、2070年にはおよそ8700万人に。今後50年で現在の7割にまで減少するとみられています。また、さらに長期の推計も参考として示されていて、2120年には5000万人を割り込むと見込まれています。

急激な減少で人口構成も大きく変化しています。1970年は安定した「富士山型」で、大勢の現役世代が高齢者を支えていました。その50年後、2020年には若い世代が減り、ピラミッドの形が崩れ、「つぼ型」となりました。現役世代およそ2人に対し、高齢者1人の比率となっています。さらに50年後の2070年、少子高齢化は一層進行し、現役世代およそ1人に対し、高齢者1人という比率の人口構成になることが見込まれています。

人口減少の現状と見通しについて

山崎:

非常に厳しい状況だと思っています。人口減少を正確に理解する必要があると思っておりまして、少子化・人口減少とよく言いますが、これはある意味違うものだと思っていただいた方がいいと思います。日本は50年前から少子化だったんですね。子どもはずっと減ってきたのですが、人口は増えていたのですね。いよいよそれが最終的には人口減少にまでになったと。これから少子化は牙をむき出すと言っているのですけど、本当に厳しい局面が始まる。実は人口減少は人口はもちろん減るのですが、それだけではないんですね。実は高齢化が一緒に伴ってくる問題になります。先ほどの数字では、2070年に8700万人ですが、例えば2100年にちょうど6300万人で半分になるんですが、(過去にこの人口だったのは)100年前なんですね。ところが100年前の日本は、実は高齢化率が5%で若い日本だったんですね。逆に言いますと、決して昔に戻るわけじゃない。人口減少と高齢化が一緒にやって来ると、その面では非常に厳しい状況だというふうに言わざるを得ないと思っています。

宮本:

人口減少と人口構造の変化、さらに地域間のアンバランスが重なって非常に厳しい状態になっていると。日本の人口が1億人を超えた時に、現役世代と高齢世代の比率は10対1だったんですね。1億人を下回るのは2053年頃、このときは1対1になるわけですね。よく「肩車」と言われますが、肩車もできるのだろうか。支える側とされる現役世代はより非力に、つまり非正規になったり、女性は相変わらず最初のお子さんを産む時に4割近くが仕事を辞めてしまったりしている。高齢世代は単身で年金にも入れないまま、どんどん重くなってしまって、もう肩車どころか重量挙げだ。さらに地域間のアンバランスが重なるということですね。山手線に乗っていて、人口減少になると少しはラッシュ緩和されるのではと期待するのは、それも期待薄であると。なぜならば、どんどん東京に若者が入ってくる。ところが、東京は合計特殊出生率が一番低い。つまりブラックホールみたくなっちゃっているわけですね。人は吸収するけれども、ここから人は出てこない所に人がいっぱい集まってくる。つまり東京というブラックホールを底にした「ろうと」のような状態に日本全体がなっているということだと思います。

白波瀬:

社会がどう変化するかということ以前に、人口が変わる時代的な大きな背景としての変化と、人々の生き方、もっと具体的に言うと、結婚するかとか、子どもをいつ持つかというようなことが絡まってくると思うんですね。人口減になりますと、少子化が継続して高齢化が進む。つまり平均余命を持っている少ない人たちが増えてくるという、人口学的な構造だと思うんですね。その中でどういう生活の仕方があり、従来からの考え方をどう転換していくのか。人口推計というのは、今あるところから見ていくという話ですので、今をどう変えるかに議論を集中すべきかなと思います。

小安:

実は地方においてすでにかなりひどい状態になっておりまして、ピラミッドに関しても、もうすでに「つりがね型」、「つぼ型」でもないような状態がございます。ですので、地方においては本当に労働力不足で産業が維持できない状況の町もございますし、あとは地域コミュニティーを維持できない状況にもうすでになっていると思っています。ですので、限られた人口の中でどうやって地域、産業を維持していくのかということで、私自身はジェンダーギャップの解消、男性・女性両方が地域や産業の中で活躍できる状況を作ることが突破口かなということで、取り組みをさせていただいています。

古屋:

人口減少も、年齢構造が均衡して減少していく分には、そんなに問題ではないのではと思っております。この構造が変わってくということは、人口減少に入っている中、唯一増えていく年齢層が85歳以上の方々なんですよね。今600万人いらっしゃるのが1000万人まで増えるという推計が出ております。こういったことが生活にどういった影響を与えるのか、これを労働の需要と供給、労働市場の面から研究しています。85歳以上の方の観点では、人手を介する生活サービスへの依存度が高い。医療、介護、物流、様々な人手を介するサービスへの依存度が高いわけですが、一方で働き手が減っていく。結果として人口減少の最初の局面で最も課題になるのは、深刻な年齢構造の変化に起因する働き手不足。これが今地方で大きな課題になっている著しい人手不足の正体。これがまだ序の口だということを強く懸念しています。

白波瀬:

人口構造の変化は、非常に時間をかけて実現していくんですね。1970年代半ばから、少子化は始まっている。もう手遅れだよと言う方もいますが、手遅れだと言った瞬間に未来はないので、次の世代のことを考えると、働き方とか考え方とかも含めて、いかにキャッチアップというか、我々がいいなと思う未来に向かってどう走っていくかが一番重要だと思います。

宮本:

人口の規模の縮小も極めて重大な問題だと申し上げたように、これに合わせて構造の変化が進むということなんですね。これまでのように現役世代が支える側で、高齢世代が支えられる側という二分法で考えていくと、もうもたないということで、老若男女を問わず、「元気人口」といいますかね、社会に参加して力を発揮できる人口を増やさなくてはいけない。そのためにも、今人口を減らしているような家族のあり方とか、働き方を変えなきゃいけない。規模を維持することと、構造の変化に対処するっていうのは、重なっていると思います。

山崎:

非常に厳しい状況なのですが、もちろん政府も諦めてはございません。少子化の流れを何としても変えたいと思っています。今の問題は、このままいくと果てしなく落ちていくということなんですね。2070年8700万人とありましたけど、ある通過地点にすぎません。その後もどんどん落ちていく。やっぱり安定させることは、どうしても必要だろうと。果てしなく撤退と縮小を繰り返すような、人生や社会を作るのは私どもも問題があると思っていまして、出生率、少子化の流れを変えていく。まさに2030年までがラストチャンス、時間との戦たたかいになっていますが、早くそれをした上で、構造問題にも一緒に対応していくと。同時並行に、安定化させるとともに構造対応するという、この2つをやっていくと。これが非常に大事だと思っております。

少子化の現状 政府の対応は

人口減少の要因の1つである少子化。その対策を強化するため、政府は12月22日、こども未来戦略を決定しました。児童手当の拡充や、子ども3人以上の多子世帯の大学授業料の実質無償化、また育児休業給付の給付率の引き上げなどが盛り込まれています。こうした一連の対策のために、政府は今後3年かけて新たに年間3兆6000億円ほど予算を増やすとしています。

(政府の対策をどう見る?)

小安:

これまでの子ども支援は、どちらかというと女性向けの母親支援という要素が強かったように思いますが、今回両親に対して、育児休業給付率の引き上げが行われたことに関しては非常に良い傾向かなと思っていますし、児童手当の拡充に関しても進歩かなと思っております。ただ給付や支援だけではなく、社会の風土というか、規範みたいなものを見直していかないかぎり、男性も女性も共に子育てをしながら、産み育てたい人が育てやすい社会にはならないと思っていますので、その辺りの機運醸成は必要かなと感じております。

白波瀬:

子どもの数が減ることは、人口学的にはしばらくしょうがないんですね。なぜならば、分母である15歳から49歳の女性の割合は、すでに出生率の低下で少なくなっているので、子どもが産まれる数自体は減少する。ですからもう1つの局面は、結婚をするかしないか、子どもを産むか産まないかという、若い人たちを中心とした行動変容がずっと積み重なってきたということなんですね。そういう意味でどこにプレッシャーを当てていくかということなんですけど、かなり長期的でないと人口学的には変わらない。非現実的な期待を持たせてはいけないかもしれないと思うんですね。その一方で教育という点、手当を中心に今回やられて、私も方向性としては間違っていないと思いますが、もう少し足元の教育・医療という現物のところにメスを入れることは必要だったかもしれない。

宮本:

子育て支援がここまで政府の政策の中心に取り上げられている、これは画期的だと思いますよ。けれど、いま少子化を引っ張っている原因は何かといった時に、有配偶出生率、つまり結婚している世帯からは、それなりに子どもが生まれている。もっと深刻なのは、有配偶率というか、そもそもお金の問題で結婚できない若者が増えている。ところが政府の政策は、子育て支援という点で、有配偶出生率に対する現金給付の対応としてはいいのですが、結婚できないでいる若者たちに対する支援は戦略方針にはかなり書き込まれています。ただ、具体的な政策としてリスキリングと書いてあるんですよね。リスキリングっていうのは職業訓練などで収入を上げていくことなんですけれども、政府の人材開発支援助成金は、大きな会社で新しい研修のコースを作る時に支援をするお金で、本当に地域でお金がなくて、結婚したくてもできない若者たちに届く政策にはなっていないわけですね。したがって、本当の子育て支援から少子化対策にしていくためには、結婚できる条件は整えていくということが大事だというふうに思います。

古屋:

働き手をどう支えるかの観点が最も大事だなと、この少子化に関しても思うわけです。少子化の当事者の多くは現役世代の働き手ですよね。そう考えた時に、私はこういった給付はもちろん大事な事ですし、大前提だと思います。そういった点では一定の評価ができると思いますが、ポイントは現役世代の可処分時間をどう増やすかということだと思うんですよね、子どものいる30~40代は平日の家事時間が、(子どもが)いない世帯と比べて倍以上多いというデータもございます。金銭もそうですが、時間的な余裕がないと子どもを持とうという発想にならない。こういったことを考えた時に、例えば企業がリモート環境を整備する。今回も努力義務で盛り込まれておりますが、こういったことは実は企業の話だけじゃなくて、社会全体に恩恵が大きいということなのかなと思います。合わせて共働き・共育ての推進と書かれていますが、それに閉じずに、社会全体でどのように現役世代を支えているのか、こういった発想が重要だと考えます。

山崎:

私も1年前に、岸田総理が「異次元」と言われて正直驚いたんですけど、結局1年経って本当に異次元だと思っております。色んな意味がありますけれど、1つはやっぱり規模の問題なのですが、確かに対策は目新しいものはありませんが、実は今まで足りないものがたくさんあるんですね。全体を一気に、遅れを取り戻そうという意味で意味があると思っていまして。実は2028年まで中心は3年ですけれど、3.6兆円。今大体8兆円ぐらいですけれど、それを伸ばそうとしています。来年度予算でも1.3兆ぐらい伸ばすのですが、実はこれまで10年間、大体2000億ぐらいしか伸びてないんですね。そういった意味では本当に集中的にやろうと。それはできますので、1人当たりの対GDP比でスウェーデン並みになりますし、さらに2030年は倍増すると言っていますから、次の先までこれを取り組もうとしてます。それとプラス内容は、今言った全部はもちろん完全にできていませんけれど、少なくとも我々が今まで言われてきたことを総ざらいで、一気にこれをどうにか挽回すると。ラストチャンスというつもりで。その面で私は20年ぐらいこれを見てきましたが、ある面は異次元じゃないかなと思っております。

少子化の背景 若者の意識は

少子化の背景の1つが、一度も結婚をしたことのない人の割合、未婚率の増加です。1970年の50歳時点の未婚率は、男女とも5%未満でした。それが2020年には、男性が25%、女性が16%あまりに増加。男性は4人に1人が未婚です。

一方で内閣府の調査で独身者に結婚の意思を聞いたところ、20代では女性の6割以上と男性の5割以上、30代では男女ともに5割近くが結婚の意思があると回答しました。

また、理想の数の子どもを持たない理由について聞いたところ、調査で最も多かったのが、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」といった経済的理由です。また、「高年齢で産むのはいや」、「ほしいけれどもできない」などの年齢・身体的理由。さらに、「育児の心理的・肉体的負担に耐えられない」といった育児負担も挙げられています。

古屋:

私の研究所でライフキャリアに関する調査もしておりますが、結婚や子の出生、特に結婚は思った以上に、経済面も含めた良い影響も大きく、こうした正確な情報提供ということが足りてないのかなと感じることもございます。また、家族留学という育児過程を疑似体験するような取り組みも今あります。こういった形で体験してみると分かることが多いなというふうに感じます。そのうえで、いちばん体験してほしいのは、経営者や政治家の皆さんだなと私は常々申し上げておりまして、例えば今のカップルの生活、育児の状態、こういったことを知らないのではないかと思わされる事が多いです。この10年で全く変わっているなというふうに感じますし、私は若手の意識が変わったことが問題ではなくて、経営者や政治家の皆さんの意識が変わっていないことが問題なのではないかなと考えています。やはり仕事とプライベートを組み合わせて、自分の人生をつくっていくことが、性別関係なく当たり前になってきた。こういったことが、さまざまなライフスタイルの変化につながっています。それが結果として、さまざまなライフスタイルを選択できることにもつながっていますし、こういった多様な状態に対して、どのような打ち手が打てるのかという観点で考えていく必要がございますよね。

白波瀬:

若者だけで切り取ることができるかというのはあると思うのですが、やはり変わっていることは事実で、それで仕事も家族も子どももという意識も、昔よりはずっとあると思いますし、それで経営層の話もあったんですけど、全体としては何となく変わっていくということはあるとは思うんですけれども、それをどう実質化していくのかというか、意識もそうですけど制度が変わらないので、個々人は決定をその制度のもとに下しますからね。その意味で、ほしいけどもほしくないというのが、ある意味では本音のところだとは思いますね。

宮本:

結婚とか子どもを持つとか、そういうことに対して、決して消極的になっているわけではないのですが、学生と話す機会が多いので感じるのは、若い世代っていうのは、非常に繊細でセンシティブになっていて、何を恐れているかというと、子どもが増えてく、愛情の対象が増えてく中で、例えば子どもが病気になったり障害があったり、あるいは経済的に困窮したりしていく。そういう中で、やはり幸せにしてあげられないんじゃないか。そのことによって自分自身が傷ついちゃうんじゃないかというおそれが非常に強いというふうに思うんですね。つまり、病気や障害があることだとか困窮することで、根本的なダメージが人生のダメージが生まれてしまって、親子ともども傷つくような社会っていうのが、少子化の原因として背景としてあるんじゃないかな。それが若者たちをしゅん巡させてるんじゃないかな。序列をつけるような社会っていうのは、少子化を止めることができないし、ましていろいろなリスクに幅広く対処できている社会こそが、少子化を抑制できるんじゃないか、そういうことを若者と話していて強く感じるところであります。

山崎:

若者自体の意識が変わっているわけですが、きっとその中には周りの経済要因とか、いろんな要因があるんだと思うんですね。ご本人の気持ちというよりは、そう思わざるをえないような状況があったり、ある面社会や経済が若い方のそういう気持ちを、将来に対してどう持つかという面で、非常にネガティブなイメージを持たれているある面があると思うんですね。我々として経済的な面をしっかりするのは非常に大事ですし、子育ての環境についても、私は今の状況が一番厳しいんじゃないかと思っていまして、もちろん昔も大変だったわけですけれど、これだけ孤立といいましょうか、夫婦だけでお子さんを育てるようなそういう状況がたくさんあるわけですけれど、非常に大変な状況だと思うんですね。従って変わったというよりはむしろ、周りが、状況が変わった部分があって、それをちゃんとすれば、また意識の方も明るくなって、そういう前向きなものを持っていただけるんじゃないかなと思っております。

少子化の背景 経済・雇用環境は?)

小安:

やはり賃金、所得を上げていくことだと思うんですけれども、今皆さんがおっしゃったように、賃金を上げるところも大事なのですが、やはり働く場において、上の世代がどういう発想で、その空気や職場を作っていくかも非常に大きいかなと考えています。私自身は1971年に生まれて1995年に社会人になっているんですが、そこから30年経っているわけですけれども、残念ながら二者択一で働くか子供どもを産むという時代の中で、子どもを実は授かれなかったという立場にあります。なので、20年30年後をいま見据えた時に逆算して、これから子どもを持ちたいという世代に対して、経営者がどのような職場環境をつくっていくのかが、実は非常に大きいんではないかなと感じています。

宮本:

子どもを育てる事にお金がかかり過ぎるっていうのは事実で、賃金の問題もありますけれども、子どもを育てるのにどれぐらいお金かかるか、よく実費コストの話にいくんですね。つまり子どもを22歳まで育てるのに対して、大体、公立文系で徹底しても、3000万円弱かかる。でもこれは一部であって、もう1つ機会コスト、働き方の問題なんですけれども、大卒フルタイムで働いていた女性が、そのまま子どもを産むのを諦めていくのと、子どもを産んで子どもが6歳になったときにパートで仕事に戻る時と、生涯賃金の差が2億1500万円くらい、これは一昔前の国民生活白書ですけれども、この機会コストと実費コストを合わせると、今日本で子どもを産む、育てるコスト2億4000万円。こういう実態があることで、お金がかかる時に働き方の問題が関わっていること。この2つが重要だというふうに思います。

白波瀬:

今あったように、正確な数値で将来を見ているようには思えないんですね。基本的には日本の社会はいま過渡期にあると思います。過渡期にあるんですけれども、もう1つ日本社会の特徴として、リスクを社会の中で取ってあげないという構造があるんですね。だから1回失敗したら終わりっていうことを、若者たちは何となく感じていると言える。もちろん少子化対策としては全体としてはこういう底上げ、まず給付からっていう流れも受け入れてはみるものの、個々人の人生からいくと、2年後は就職を考えなければいけないというところの中で、失敗はしたくないという構造があるような気がするんですね。ですから、いろんなレベルのところで支えてあげるなり、やってごらんよということを、制度が最初だと思いますけど、やるのがいいんじゃないかなと思っています。

山崎:

働き方の問題が原因の7割ではと思っているんですけれど、1つは所得の問題があります。所得の高さもありますが、将来に対する見通しというか。結婚する、お子さんを持つというのは将来に対して安心できるかというのは決断の大きな部分ですから、そういう雇用とか所得の安定性が大事だなと思うんですね。もう1つは共働きの方が大変多いわけですね。そのときに、いまだに女性の方が出産に伴って会社を辞めなくてはならないとか、仕事を変えなくてはならないことで、ものすごく所得が落ちるケースがあるんですね。費用がかかるのではなくて、むしろ所得が落ちるダメージが大きな問題で、この部分を考えると、働き方、女性の就労のあり方、継続的に就労できるような環境をつくる。これが大変大きな部分で、今回いろんな制度はやっていますが、最後は企業の皆様の理解とですね、まさに全体の職場を変えていくというのは本当に大きな意味があると思っています。

古屋:

経済的リスクを考えた時に、残された最大の論点は実質賃金なんですよね。どう上げるかがポイント、名目賃金は30年ぶりに力強く上がってきていて、いま構造的な人手不足になっていると考えておりますので、来年、もしかするとそれ以降も、名目賃金は上がっていくのではと考えていますけれども、ただ、手取りが増えないわけですよね。物価高、社会保障費、さまざまな影響で現役世代の手取りが増えてない。働いても働いても豊かになれない。そういった状況が働き手不足にもつながっていますし、ひいては家族を増やすことに対する最大のリスクになっていると考えています。これに対する解というのは1つで、設備投資をして生産性を上げる。そして無駄な仕事をなくしていく。こうしたことによって働き方を変えていくことによってしか、できないんじゃないかなと考えています。

山崎:

それぞれの企業の中での生産性がありますけれど、それぞれの価値を高めていくのが非常に大事になってくると思いますね。その上でこれからの人口減少、女性と高齢者の方に頑張っていただくことが非常に大事ですね。その方々が働きやすい環境を作るというのは逆に言うとコストの面も含めプラスになってくると思いますから、やる事は無駄をなくしながら生産性を上げて、いかに活躍してもらうかが、最終的には少子化問題の大きな部分じゃないかなと思います。