2021年12月5日放送「子どもの命を守るには いじめ防止への対策は」

NHK
2021年12月27日 午後5:54 公開

昨年度自殺した児童生徒は過去最多となり、深刻ないじめが後を絶ちません。いじめの調査をめぐっては、学校や教育委員会の対応が問われる事例も相次いでいます。子どもの命を守るために何が必要か、議論していただきました。

出演者

文部科学省いじめ防止対策協議会座長       新井  肇 さん

群馬県高崎市教育長               飯野眞幸 さん

NPOレイパス代表                郷原徹志 さん

NPOプロテクトチルドレン代表          森田志歩 さん

<後を絶たない深刻ないじめ 背景に何が>

平成25年に施行されたいじめ防止対策推進法では、いじめについて、心理的または物理的な影響を与える行為で、対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものと定義しています。

新井:

極めて深刻な数字であるということは言えると思います。しかしその一方で、いじめである対象、内容の範囲を最大限に広げている定義になっていますので、法の定義に基づいて、学校で先生たちが、どんないじめも見逃すまいと非常に神経を使いながら、いじめを見つけようとしてきた。その成果として、50万件、60万件という数字になってきたのではないか。51万件という数字ですけれども、1000人あたりで見ると、39.7件なんですね。学級で換算してみると、40人学級としたときに、年間で1件あるか2件ないか。先ほどの定義で、いじめを見出そうとしていったとき、もっとあっても不思議でないかもしれない。実数はもっと多いかもしれない。それを見逃さない。何としても早い段階で芽を摘んで、深刻化させない。そういう努力をしてきた。ただ数が増えればいいということではなくて、徐々に数を減らしながら、いじめの未然防止に努めていく。今の段階で数が増えるということについて、認知が進んでいる、いじめを見逃すまいという努力の成果であるという点を、学校の教職員はもとより、保護者、地域の方々も認めて頂けるとありがたいなと思うところがあります。

郷原:

大前提としていじめは良くない事なのですが、認知件数が増えていることはいいことだと捉えています。子どもにとっていじめが認知され、大人に知ってもらうことが解決の第一歩だからです。一方で保護者目線で申し上げますと、私にも息子がいますが、息子を学校に通わせる際、いじめの多い認知されている学校に通わせたいかというと、やはりいじめが少ない平和な学校に通わせたいというのが親心としてあります。では、いじめが解消されている学校に行けばいいのかというと、解消というのも大変判断が難しいところだと思っていまして、解消という判断を先生がするのか、友達がするのか、もしくは本人が大丈夫だと言っていても、まだ大丈夫ではないというのがいじめの難しいところです。まだまだ認知されていないいじめはあると思っていますし、解消されたといっても、解消されていないいじめもあるというふうに捉えています。

森田:

これはあくまでも認知した件数という事ですので、いじめ自体がそもそも大人の目に気付きにくいと言われている問題ですから、まだ気付けていない、拾い上げられていないいじめというものも、必ずあると思います。そういうものをいかに早く気付くかというところが本題になるんではないかと思います。

飯野:

非常に深刻な問題だと捉えています。現在の定義が先ほどのお話のように、平成25年法律ができた事で定義が変わっているわけですけれども、いじめの成立する構成要件がいくつかありまして、それが今回非常になくなった形で広くなってきている。ところが現場の先生方は、前の、例えば一方的にとか、心理的な攻撃を加えるとか、そういうようなものがやっぱり頭の中にまだまだあるのかなと。そういうものを消し去って、平成25年にできたいじめ対策防止推進法の定義に基づいたいじめの認知という事になれば、もう少し数が上がってくのではないかなと考えております。

(昨年度の減少をどう見る?コロナ禍での休校の影響は)

飯野:

確かに、全国一斉の休校がありました。それから登校できるようになりましても、児童生徒どうしが接触する機会が非常に制限されてくると。そういう部分では、数的には減ってくると思いますけれども、やはり忘れて頂きたくないのは、とにかく学校はものすごく努力しているんですね。子どもたちが朝早く登校します。もう7時15分ぐらいに子どもたちが来ますけれども、そこを待ち受けて、校門に入る前からテントを張って、検温をして、消毒をして。そして子どもたちが帰ると、放課後、机の消毒をするというような形で、従来の業務プラス感染防止の業務があります。そういう業務をこなしながらも、子どもたちに寄り添って、心の安定を図る取り組みをしている。私は教育委員会というところから見ていて、つくづく頭が下がる思いをしています。

郷原:

認知件数が減っているという件と、不登校が増えているという件が、私は関連があると思っています。学校が今まで気付けていなかったようないじめを受けていた子どもが、この一斉休校という、学校をある意味休みやすくなったという機会に、学校に行かなくてもいいという選択肢が出てきて、不登校が増えているというふうに捉えています。いじめから逃れるために学校を休むという選択肢が広がってきているのは、大変いいことではないかと捉えています。その間の子どもの受け入れる場所、安心できるご家庭、教育支援センター、フリースクールといった選択肢が広がってくることが大事かなと考えています。

森田:

文部科学省の方ではコロナの影響によって、いじめの認知件数が減少したと言われておりますが、実際私の元に相談にきた件数では、この間ネットいじめの件数、被害相談が倍増していますので、一概にもコロナの影響でいじめが減ったということは言い切れないんではないかと私は思っております。

(インターネットやSNSなどを通じたいじめは)

新井:

非常に見えにくい。今までだったら、教室でいじめがあって直接見える。家に帰れば、オンオフで言えばオフになる。それがずっと24時間続いている。子どもたちは、もしもスマホの中でいじめられているということを言ったら、大人にスマホ取り上げられるんじゃないか。あるいはスマホの世界、SNSの世界は、自分の問題だと捉えてしまう。さらには、大人は分からないだろうというのでなかなか大人に言わない。子どもと大人が一緒になって、どうやればSNSの世界でリテラシーを作るのかということが非常に大事になってくると思います。

郷原:

私も大阪で不登校の子どもたちを受け入れるフリースクールを経営していますが、フリースクールに通う子どもたちからも、SNSのLINEのグループがしんどいという声を聞いています。クラスでLINEのグループというものがありますが、暗黙のうちに強制されていまして、そこで返信するしない、1つ1つにストレスがかかっている。これが24時間続いているという状況が現実にあります。

森田:

相談体制を整えるということもすごく重要だとは思うのですが、その相談を受けた後、対応される方々が、きちんと的確に対応できる環境にあるかというところが、私はとても重要だと思います。例えば学校でいうと、先生方は限られた時間・人員で対応しなければならないので、いじめ以外にもさまざまな業務があると思うんですね。そういう対応する側の環境がきちんと的確に対応できるかどうかという検討や協議。そういうものもすごく重要になると思います。

飯野:

よく指摘されるのは、教員が1人で抱え込んでしまうという状況があるわけですよね。確かにその部分がより複雑化して、解決が困難な状況になっているという一面はやっぱりあると思うんですね。そういうところに視点を当てた対策は、非常に必要だろうと考えています。

森田:

生徒や保護者にとって学校というのは、無条件で信頼している場でありますから、当然子どもが被害にあったとなれば、保護者も生徒も、先生たちは必ず助けてくれると思っている存在だと思うんですね。ただ現実を考えますと、私のところには、もう365日休みなく、児童・保護者だけではなく、学校や教育委員会からの相談もかなり多いんですね。だから、中立な立場に立って、両者の話を聞く限りでは、対応に当たらなければならない学校現場の先生方も、確かに悪質と言われるような学校や教育委員会もないわけではないんですが、ただ、ほとんどの学校がそうかと言ったらそうではなく、対応しなければいけないと分かっていても、できない。例えば時間の関係であったり、他の業務との兼ね合いであったり、いじめだけではなく、他の相談もあったりとか、他の配慮が必要な生徒がいたりとか。そういうこともありますので、いま法改正とか、さまざまな声が上がっておりますが、そういうものよりもまずは、現場の学校がきちんと相談を受けた後に、対応が確実にできる環境を整えるべきではないかと思います。

(組織的な対応の必要性は)

飯野:

この問題はかなり前から指摘されている問題です。そして高崎市の場合は、「学校におけるいじめ防止プログラム」を平成24年に作りまして、一斉に取り組みを行っているんですね。これによって、とにかく校長が先頭に立って汗をかいて、職員を孤立させない。職員の中にいじめ防止担当教員という人を置いて、何かあれば相談できる体制。学校全体の問題として扱うような、そういう広い範囲に持っていけるという役割を持たせていますし、子どもには、規範意識を持たせる法教育、あるいは児童生徒の自習活動を支援する、そういうものをやりながら、非常に広い視野から教職員が抱え込むということを減らす取り組みをこの9年間やってきました。

郷原:

いじめ対応の前に、不登校対応というところで申し上げますと、本当に学校の先生、熱心に不登校の子どもの支援のために動いてくれています。フリースクールにも足を運んで下さいますし、ご家庭の訪問も熱心にされています。ただ一方でいじめということになると、難しい部分を感じています。フリースクールに通う子どもや親が、いじめ、嫌がらせがあったというふうに言っていても、先生はその件についてはなかなか認めないというところは、何か徹底されているものを感じてはおります。

新井:

子どもの様子をしっかり見る。そして、相談を受けたら話をじっくり聞く。そのためには、時間的な余裕も、心の余裕も必要だと思うんですね。そういう体制を整えていく必要があるだろう。そして、疑いがあった時、心配な事があった時に、こんなこと言ったら笑われちゃうんじゃないか、もしかしたら間違っているんじゃないか。気になったことが言えるような、心理的安全性が確保された組織に学校はなっているかどうか。あの定義は空振りがあってもいい。もしかしたらいじめじゃなかった、そしたらよかったねとみんなで喜べるように、なんでも当たっていこうということだと思うし、そのようなことがやれるようになるといいなと思います。

新井:

日本の学校、特に学級が、非常に凝集性が高い。同調圧力が働いている可能性がある。そうすると、そこに上手く乗れない子が異端となってあぶり出される。そこにいじめが生まれくる可能性がある。ですから、緩やかな繋がりを学級・学校の中につくるということが、いじめ未然防止に繋がっていく。そう考えています。

郷原:

私も同じような認識を持っていまして、クラスの中での同調圧力というのは、大変強いものを感じます。私自身も中学2年生の時にいじめを受けましたが、同じような状況にあったと思っています。もっと学級の繋がりが緩やかになり、子どもがどこで誰と学んでいくのかということも、自由に選べるような学級づくりができたらいいと考えています。

(いじめの加害者側のケアは)

新井:

法律は、加害者の成長支援という視点が弱いです。厳罰主義で。そして、仮に加害被害というのが決まったら、当然責められる。加害をする子もいろいろな問題を抱えている。ストレスもある。加害者の成長のために、いじめの認知をし、関わり、そして、いじめをしない子になっていくっていう成長支援のための関わりだという認識を、教員も保護者も持っていくということが大切だと思います。

森田:

新井先生がおっしゃった部分も確かにあるとは思うんですが、加害生徒となった子どもたちもある意味被害者だと私は思う。正しい教育が受けられていないと私は思いますので、事後対応ばかりではなくやはり未然防止。あらゆる子どもたちにいじめを正しく理解させる。どういうことがいじめなのか。なぜいじめがいけないのか。そこからだと思います。

<第三者委員会の調査のあり方は>

いじめ防止対策推進法では、被害を受けた子どもが、生命や心身、または財産に重大な被害が生じた疑いがある。または、長期間学校の欠席を余儀なくされている場合、学校や教育委員会は速やかに重大事態として対処すべきだとしています。具体的には、第三者委員会などを設置して事実関係の調査を行うと定められています。

新井:

国が重大事態の背景調査のガイドラインというものを出しているのですが、なかなか疑いがあるのにもかかわらず迅速な調査組織の設置ができないとか、調査の開始まで時間がかかるとか、あるいは委員の人選において公平性、中立性が本当に担保されているのかという批判があるわけです。保護者に対してこんなスケジュール感でやっていくという丁寧な説明、調査目的、方法も伝えていく。実際に調査して精度を高めていくためにどんな体制、どんな運用方法が必要なのかということをもう少し具体的に示していく必要があるんじゃないか。各教育委員会、あるいは第三者委員会においても、その制度やかかる時間にだいぶ差がある。できるだけ真実を明らかにし、再発防止に向けて提言をしていくということをやれるように、具体的な指針を示す必要があるという事で議論を始めたところです。

森田:

まず重大事態となった場合に、調査対象となる教育委員会や学校が重大事態という判断をすることになっていたり、委員の人選も教育委員会や学校がしたりしている。そして、決まった委員に対する報酬も教育委員会が支払っている。被害者側からすると、公平性や中立性に疑問を感じてしまう。費用を支払っているのが教育委員会となると、そこに雇用関係があるのではないかという疑問も出てくると思います。

郷原:

被害者側の保護者が、信頼できる人が第三者委員会に入る方がいいと考えています。人選や組織的な対応のスピード感といった課題があるのですが、こういったことを大人が議論して対応している間に置いていかれる子どものことに、もっと目を向けないといけないと思っています。私がフリースクールを開いたのも、こういったいじめの問題に対応している間に子どもがいる場所がないというところに問題意識を持ったからです。大人が一生懸命動いているのは間違いない。その間の子どもの居場所に焦点を当てていきたいと思っています。

飯野:

学校側の調査が不十分で、地方公共団体の長が作った第三者委員会が再調査をしたのは、19年度は14件あったということも報告されていますが、学校の重大事態に教育委員会が絡むときに、先ほどご指摘されたような雇用関係が生じるのではないかとか、そういう疑問が生じるんですけれども、その前に、教育委員会が学校側に寄り添ったサポートではなくて被害者側に寄り添ったサポートをする、そこで被害者側と信頼関係を作るということが大事ではないかと。それによって、また再び委員会を開けというような所に繋がらない部分があるので、教育委員会の存在価値というのはそういうところにあって、私も普段いじめ問題については学校側には立たないという話をしていますが、保護者に寄り添った対応、子どもが取り残されないようにという指導を、教育委員会が先頭に立ってやれば不信感もかなり減ってくるのではないかと思っています。

(第三者委員会設置の“壁”は)

森田:

私のもとへは全国あちこちの学校・教育委員会からの相談も本当に増えています。この調査委員会に関する相談もとてもあるんですね。まず設置となると、どうしても財源の問題が出てくる。予算の範囲内で行わなきゃいけない。委員として専門家を人選しなければいけない。例えば弁護士会に推薦依頼を出しても、必ず日当であったり、そういう部分での交渉の問題があったり、なかなか折り合いがつかない。人選だけで時間がかかってしまう。そういう相談もかなりいただいています。

新井:

中立性を保つために職能団体が推薦する。あるいは学識経験者を学会が推薦する。ところが、労多くして得るものが少ない。非常に労力かかる。大切なことなので、本当にボランティア的に子どものために、いじめを無くすためということでやって下さっている。時間がすごくとられる。神経もすり減らされる。そういう中で、委員を推薦しようとしてもなかなか引き受けて頂けないという状況も、学会や職能団体の中であると思います。ですから、委員を引き受けられるような体制の整備というのを、できれば都道府県レベル、もう少し大きく言えば国レベルで考える必要もあるかなと個人的には思っております。

第三者委員会に、公平中立性を担保するためには外部性を持った専門家が入ってくる。学校の教職員が聞き取り対象にもなる。どこかで自分たちが責められているんじゃないかという感覚を持つ。第三者委員会の方も敵対関係のようになってしまう。そうではなくて、第三者委員会も学校も教育委員会もそして保護者も、みんなで子どものいじめをなくすために何があったのか。二度と同じようなことが起きないように、再発防止のためにどう捉えたらいいのかということを見ていく。もちろん被害にあった本人、保護者の方はとても苦しい状況にあるんだけれども、そのケアをしながら同時に二度といじめの重大事態が起きないようにという取り組みの方向性を見出すということで一致しながら、協力しながらやっていく。そんなことができるといいと思います。

<子どもたちの命を守るために何が必要か>

文部科学省の調査によると、児童や生徒の自殺は増加傾向にあり昨年度は415人と調査を始めた昭和49年度以降、最多となりました。この5年間でおよそ2倍に増えています。

郷原:

子どもの自殺、自死のニュースを見る度に、私は自分のこととも重ねて本当に胸が痛くなります。私にも中学2年生のときにいじめの被害がありまして、サッカー部でのいじめでした。ストレスから嘔吐が続きまして学校に行けない日も続いていました。部活の顧問に相談しましたが、我慢してくれというふうに言われて放置される。そういう日々が続く中で、教室の窓から飛び降りようというふうに思ったことがあります。もう死ぬぞと思った時に思うのは親のことでした。私はギリギリのところで踏みとどまりましたが、簡単に自殺を選ぶ子どもはいません。簡単に自殺する人はいない。この415名という数字を本当に1つ1つの命として重く受け止めていかないといけないと思っています。

新井:

自殺のキーワードは「孤立」なんですね。孤立すると、危機に陥った時に一人で何かやらなければならないと思うようになる。自分が苦しい状況にあることを外に訴える。弱音を吐ける。なかなかそれができない。一人で抱え込んでしまう。自殺予防のキーワードは「絆」なんですね。ですから、自分の弱音をはけるような回路を用意できるかどうか。それがない子たちが追い込まれて苦しくなって、最悪の場合、自ら命を絶つという本当に残念なことになってしまうのではないか。

森田:

私のもとには子供たちからの相談も多数あります。その中には相談の時点で死にたいという言葉を使ったり、自殺未遂を何度も繰り返したりしている子どもたちもいます。その子たちの話を聞くと、今すぐ助けてほしいんだと。必ずそういう言葉が出るんですね。どの子どもたちからも。ただ、子どもたちから大人を見て、大人たちはどうしても法律がどうだとか調査がどうだとかそちらの方の話になってしまって、子どもたちにとってはそうじゃないんだと。自分たちは今助けてほしいんだと。大人が考えてやっていることと実際に助けを求めている子どもの思いがずれてしまっているのかなと。今すぐ救ってあげる。守ってあげる。寄り添ってあげるということが、子どもたちが求めていることだと思います。

飯野:

先ほど紹介した「いじめ防止プログラム」を作る1年前にイギリスにいじめの調査で行ってきましたが、日本のいじめというのは、ちょっと特殊なんですね。寄ってたかっていじめて、しまいには逃げ場のないところに追い込むというのが、日本の非常に陰湿ないじめの特色だというふうに思います。高崎市では子どもたちを主体とした取り組みを大事にしていまして、子どもたちが自分で「いじめ防止宣言」というものを作りました。子どもたちが仲間を傷つけないという発想に立って一生懸命やってくれるということは非常に大事であると。こういう子どもたちを核とした取り組みをこれからも続けていく必要がありますし、それから今、人間関係の希薄化ということが言われています。特にフェイス・トゥ・フェイスということが軽んじられてきている。そういう部分の子供への教育ということも非常に大事ではないかなと思っています。

森田:

事後対応ばかりの議論ではなく未然防止の議論。未然防止を的確に行うというところもとても重要だと思います。そして、いじめが起きない環境作り。または児童、保護者もいじめを正しく理解する。いろいろなことが必要だと思うんですが、いじめを発見してから解決までのスピード感ですかね。被害にあった子どもたちはそれを何よりも期待していますので、そこに時間をかけられてしまうとどんどん絶望感が増していってしまいますので、スピード感がすごく重要だと思います。

飯野:

高崎市は来年度からのヤングケアラーのためのヘルパーを派遣する事業も全国で初めて開始しますし、3年後には児童相談所も作ることになっているんですけれども、市長のポリシーの中に高崎のこどもは高崎で守るという強い信念がありまして、これが教育の中にも反映されています。そして大人が、子どもを大事にしていますよというメッセージを強く出していく必要があるのかなというふうに思います。いじめ対策につきましても、高崎市では議会であるとかあるいは地元の区長さん方が研修会までやって応援してくれているんですね。子どもたちを傷つけない。子どもたちをどこまでも守るというメッセージを、社会全体として強く発信していく必要があると思います。

郷原:

一人一人の大人が、いじめの被害を受けている子どもと本気で向き合うことだと思います。私の場合は母親に救われました。母が、何があっても味方だというふうに強いメッセージを発してくれたことが、私の孤立感からの脱却でした。ただ、気持ちだけではいけないと思っていまして、例えばいじめと向き合う教員がよかれと思ってやったことが子どもにマイナスの結果につながるということもあります。気持ちだけではなくて、スキルを向上させていくことも必要な観点だと考えています。私は、いじめを乗り越えてはいますが、良い経験だったというふうには全く思いません。

新井:

いじめの問題について、大人が正しい知識と理解を持って子どもたちをしっかり見て、子どもたちが苦しかったら弱音を吐ける。助けてくれよって言える。でも助けてくれよっていうためには、相手を信頼しなければ言えない。だから私たち大人が、子どもが相談するに値する、信頼できる存在になっていくかどうか。ここが一番大きなポイントだと思います。

<相談窓口>

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