漫画家イエナガの複雑社会を超定義

アチチ?いつの間にか地球が沸騰化してたってよ

初回放送日: 2023年11月24日

去年の新語・流行語大賞にノミネート!「地球沸騰化」を俳優・町田啓太が15分超速解説。沸騰化って何?“1.5℃の約束”は実現できる?難しい事を漫画CGで楽しく学ぶ 漫画家イエナガ(町田啓太)が先輩漫画家(ふせえり)に新作プレゼン。テーマ「地球沸騰化」。去年7月の世界平均気温が過去最高を記録。国連が「地球沸騰化」と言うほど気候変動の危機感が高まる。そもそも気温上昇をもたらすのは温室効果ガスで、その主犯格が二酸化炭素。いま世界で進む脱炭素の対策。大気中から回収?地下に埋める?最前線に迫る!気温上昇を産業革命前に比べ1.5度に抑えるには?待ったなしの課題を超速解説

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  • 温暖化を超える「地球沸騰化」時代 どう対策する?

温暖化を超える「地球沸騰化」時代 どう対策する?

イエナガ先生と、エナガ先生が描いた漫画のコラージュ

2023年7月、国連のグテーレス事務総長が、「温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と発言し、世界がざわついたのです。その背景は、この7月の世界の平均気温が最も暑い16.95℃になったことです。これまでより0.32℃も高くなりました。

世界の7月の平均気温が、記録依頼最高の16.95℃に達したことを示した、右肩上がりのグラフ

もしかして、たいしたことないって思っていませんか?しかしこのわずかな平均気温の上昇で、気候変動が起こり、災害を引き起こすと言われているのです。実際に南スーダンやルワンダでの集中豪雨による大洪水、カナダでの山火事、チリでのメガ干ばつなどが起きています。

そこでいま世界では、産業革命前に比べ、地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるという目標を掲げています。

キーワード表示。再生可能エネルギーCO2除去、省エネを通して、温室効果ガス排出量を実質ゼロに

ただこのままでは、4年後には、気温上昇が1.5℃を超えてしまう可能性が高いと見られています。この地球沸騰化の原因とされているのが、温室効果ガスです。中でも二酸化炭素が主犯格と考えられています。そこでいま多くの国では、2050年までに温室効果ガスの排出量を減らし、実質ゼロを目指しています。さらに大気中の二酸化炭素を、巨大な機械でまるごと回収したり、バイオマスの力で減らしたりする新たな技術も、注目を集めているのです。

脱炭素に向けた2050年までの世界の累計投資額は、実に4京円と見積もられています。巨額な資金をつぎこんで、地球沸騰化を防ごうとしているのです。

「環境問題って面倒くさそうだし、経済にとってよくないんじゃない?」と思ったアナタ。世界の認識は「もうそんなこと言っていられない」という段階になっています。今回は温暖化から地球沸騰化へと突入したこの時代に、気温上昇の歴史やメカニズム、最新の対応策を知って、私たちにできることはなんなのか、ちょっと考えてみない?というお話です。

アメリカの科学者・発明家のユーニス・ニュートン・フットのイメージ

そもそもどうして地球温暖化が進んでいるのか?

毎年のように「暑すぎる~、異常気象だよね~」と言うようになりましたが、そもそもなぜ暑くなっているのでしょうか。地球が沸騰化している原因、それは温室効果ガスの代表格・二酸化炭素にあります。

このことはアメリカの科学者ユーニス・ニュートン・フットが、最初に発見しました。1856年、フットは世界で最初に、二酸化炭素が何か関係していると指摘したのです。フットは2つのシリンダーにさまざまなガスを送り込み、太陽光線を当てて温度がどう変化するか、比較実験をしていました。すると二酸化炭素がたくさんある状態の方がより早く温まり、冷えるのも遅くなることを発見したのです。そしてこのガスがより多く空気の中に含まれれば、私達の地球をより高温にしてしまうと主張します。

しかし、この研究が世間から注目されることはなく、その後も世界では産業化が進みました。石炭や石油など化石燃料を燃やすことで、二酸化炭素はどんどん地球上に増えていったのです。

キーワード表示。地球の気温が0.25℃上昇したのは大気中のCO2n黄土が増えたからと主張

科学者の目は地球寒冷化に向けられていた!?

実は1938年に、イギリスの科学者ガイ・スチュワート・カレンダーが、過去半世紀の間に地球の平均気温が0.25℃上昇したのは、大気中の二酸化炭素濃度が増えたせいだと指摘しました。でも当時信じる人は少なかったのです。

その上1940年代から70年代にかけて地球の気温が低下傾向になり、地球が氷期に近づいているとも言われていました。そのため地球温暖化の議論は、さらに下火になりました。ただ現在では、この時の気温低下の理由は、大気汚染によって太陽の日射が弱められたためと考えられています。

2021年 ノーベル物理学賞受賞 真鍋淑郎博士の写真

転機は日本人科学者のあるシミュレーション

そんな中、“地球は二酸化炭素によって気温が上昇する”とシミュレーションで証明した人が現れます。それがノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんです。

真鍋さんは1960年代、コンピューターを使い、二酸化炭素の濃度が2倍になると、地球の温度が2.36℃上がることを計算によって明らかにし、世界を驚かせました。1970年代後半になると、世界の平均気温は上昇に転じます。1985年にはオーストリアで、初の温暖化の国際会議「フィラハ会議」が開かれ、この問題がクローズアップされることになりました。

そして1990年、国連の機関IPCC「気候変動に関する政府間パネル」が、真鍋さんのシミュレーションも用いて、二酸化炭素が重大な気候変動につながる恐れがあるという報告書を発表し、危機感を世界に伝えたのです。

キーワード表示。パリ協定で決められた目標。世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち1.5℃に抑える努力をする

国際的に具体的な目標が設定されるも・・・

このころから省エネや再生可能エネルギーへの転換が、叫ばれるようになりました。しかし世界各国は経済成長を目指し、化石燃料を燃やし続けたのです。二酸化炭素の増加を食い止めることはできませんでした。

このままではまずいと、2015年のパリ協定で国際的な目標が定められます。それは「産業革命前からの気温上昇を、将来にわたって2℃より十分低く保ち、できる限り1.5℃に抑える努力をする」というものでした。

ところが現在、世界の二酸化炭素の濃度は1.5倍になり、平均気温は、すでに1.15℃上昇しています。世界気象機関は2027年までに、1.5℃を超えてしまう可能性は66%と推計しているのです。

IPCCによると、平均気温が2℃上がった場合、1.5℃に比べ、豪雨による洪水被害が最大2倍になると予測しています。もし3℃上昇してしまうと、洪水被害は最大3.9倍になると予測されているのです。

二酸化炭素排出の部門別内訳の円グラフ。電力が30%、産業が30%、運輸が19%、林業が14%、建築物が6%、農業が1%。

二酸化炭素を出さない生活はできるのか?

ではどうすれば、二酸化炭素を出さないように出来るのでしょうか?世界の二酸化炭素の排出量の内訳を見ると、電力が30%、産業が30%、運輸がおよそ20%です。

ここで「ノーCO2ライフ」を想像してみます。燃料は薪?移動は歩き?家は石を積み上げ?こんな江戸時代みたいな生活、今さすがに無理そうですよね。

つまり私たちがこの現代社会で経済成長を目指したり、便利な生活を求めたりする中で、二酸化炭素を出さないのは、かなり難しいのです。

温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする秘策とは?

では地球沸騰化を食い止めるにはどうしたらいいのでしょうか?温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするための主な対策を2つ紹介します。

  • ①二酸化炭素の排出削減

1つ目は王道ですが、二酸化炭素の排出を削減することです。温室効果ガスの中で二酸化炭素が占める割合は、75%に及びます。そこで石油などの化石燃料を節約したり、太陽光や風力などの再生可能エネルギーに変えたりします。こうして二酸化炭素をこれ以上増やさないという対策です。

ただ水田や牛のげっぷから出るメタンや、燃料や肥料から出る一酸化二窒素など、二酸化炭素以外にも温室効果ガスがあります。そうした現状から、二酸化炭素の排出削減だけでは、「温室効果ガス排出量実質ゼロ」の実現は、厳しいとされています。

  • ②二酸化炭素の除去

2つ目は二酸化炭素の除去です。Carbon Dioxide Removal(カーボン・ダイオキサイド・リムーバル)、略してCDRと呼ばれる対策になります。

現在二酸化炭素の排出量は、年間368億トンです。2050年にはゼロにする目標がある中、20億トンから100億トンをCDRで取り除くことが期待されています。CDRの中心は植林で、光合成で二酸化炭素の除去をします。しかし規模を拡大すると膨大な土地が必要となり、生態系への影響も考える必要があるため限界があります。

 DACの説明をキーワード表示。直接大気中から二酸化炭素を回収。2017年スイスの企業が商用化

二酸化炭素の除去の切り札DACとは?

今CDRの中でも注目されているのが、Direct Air Capture(ダイレクト・エア・キャプチャー)、略してDAC(ダック)です。機械によって直接大気から二酸化炭素を回収する方法になります。2017年にスイスで初めて商用化された最新技術です。

まず大きなファンを回して、吸気口から空気を取り込み、フィルターに二酸化炭素を吸着させます。その後フィルターを100度まで加熱して二酸化炭素を分離し、回収します。アイスランドのプラントではさらに水で地下まで流し込み、二酸化炭素を閉じ込めるのです。DACは1か所で吸い込み続けても、その場所だけの効果にとどまりません。広範囲にわたって二酸化炭素濃度を均質化させ薄めることが可能なのです。その結果、二酸化炭素を大規模に回収する効果が期待できます。

IPCCによると、この技術を使って2050年までに、年間最大20億トンほど回収できるシナリオもあります。そんな中DACに最も注目しているのが、アメリカ政府です。5年にわたっておよそ5200億円を投資しています。年間100万トンの二酸化炭素を回収できるプラント4か所へ支援しているのです。しかし年間20億トン回収するレベルまで拡大するには、このクラスのプラントが世界で2000か所必要になるそうです。

 キーワード表示。バイオマスの新技術、Bio-Energy with Carbon Capture and Storage、通称BECCS(ベックス)

排出量をマイナスにする!? バイオマスの新技術

いま話題を呼んでいるのが、バイオマスを使った、Bio-Energy with Carbon Capture and Storage、通称BECCS(ベックス)と呼ばれる技術です。バイオマスとは、家畜のふんや、木くずなど動植物から生まれる資源のことです。もともと植物は、光合成で二酸化炭素を吸収し、動物も植物を食べています。そのためバイオマスを発電などの燃料として使うと、トータルで見れば二酸化炭素の量は変わらないとされているのです。しかもこのBECCSは、バイオマスを燃やして出た二酸化炭素を、回収して地下に埋めることができます。結果的に大気中にある二酸化炭素の量は、トータルでマイナスになるのです。

キーワード表示。大気中のCO2の総量はマイナスに!

現在、世界のBECCSの回収・貯蔵の能力は、合わせて年間300万トンほどです。今後大幅にスケールアップがされれば、2050年には最大でおよそ90億トンの回収ができると言われています。

その一方で、バイオマスのための植物を生産しすぎることによる農作物への影響や、回収した二酸化炭素を貯蔵する場所など、課題はまだまだあります。

東京大学未来ビジョン研究センター・杉山昌広准教授インタビューシーン

今後、地球沸騰化対策はどうなっていくのでしょうか。専門家の東京大学未来ビジョン研究センター・杉山昌広准教授に聞いてみました。

東京大学未来ビジョン研究センター 准教授 杉山昌広さん

「コストを下げてイノベーションを進めていくことが必要になります。現在世界中でスタートアップビジネスとかベンチャー企業とかがどんどん立ち上がって、イノベーションが加速しているところです。ただ、こうした技術は非常にコストが高いです。ですから米国のように補助金のような政策が、今後もどんどん必要になっていくと思います。」

いま二酸化炭素回収をめぐって、いろんな動きが活発化しています。アメリカでは、賞金150億円で回収技術を競うコンペが行われています。また石油天然ガスの世界的企業が、DACのスタートアップを、1600億円で買収したりしました。

世界11か国に行った気候変動についてのアンケート結果。Q、気候変動が人々や地球を脅かすことを心配している?「極度に心配している」と「とても心配している」と答えたのは、日本では16.4%。フィリピンの84.0%と比べて五分の一以下。

日本人は気候変動への意識が低い!? どう向け合えばいい?

世界11か国におこなった“気候変動についてのアンケート”で、驚くべき結果が出ています。気候変動を「極度に心配している」「とても心配している」と答えたのは、日本では16.4%です。トップのフィリピンと比べると、5分の1にも満たないのです。日本ではこの問題を「自分ごと」として考えている人が少ないということなのでしょうか。

なぜ日本人の気候変動への意識が世界的に見て低いのか?そして今後この問題とどう向き合っていけばいいのか?専門家の東京大学未来ビジョン研究センター・杉山昌広准教授に聞いてみました。

東京大学未来ビジョン研究センター 准教授 杉山昌広さん

「日本は失われた30年と言われるように、過去に経済がなかなか厳しい状態にあったわけです。ですから、一般市民の方々は、日々の生活や経済状況に非常に関心がいってしまって、環境問題の優先順位が下がっているのかなと、私は思っています。
地球沸騰化は危機であると同時に、機会=オポテュニティでもあると思います。こうした話をちゃんともっと広くディスカッションして、明るい未来を描いていくことも大事です。まず重要なのは、地球沸騰化についてご家族だったり職場だったり、しゃべっていくこと。議論していくこと。それによって自分ごとにしていくことだと思います。」

 いまや待ったなしの「地球沸騰化」。国連が掲げた1.5℃のタイムリミットまであと4年です。これまで世界は経済成長をしながら、温暖化にも対応してきましたが、いま瀬戸際に立っているのかもしれません。ひとりひとりが「自分ごと」と捉えて、何ができるか考え実行することで、毎年夏に暑すぎ!と言わない未来がやってくるのかもしれませんね。

地球沸騰化の巻 相関図